昔派手なワイアーアクションの「マトリックス」という映画に感動した。当時オブジェクト指向プログラミングの次の世代の概念であるエージェント指向が話題となっており、その雰囲気をうまく表現していたからだ。
エージェント指向でプログラミングされ、暴走したAIと電脳空間で人間が戦う表現にワイアーアクションが使われたわけだが、この映画のもう一つの工夫として人間とコンピューターとの対話があった。
残念ながら現代のAIはマトリックスに登場したAIのように自律していない。自律できない、といった方が適切だろう。現代のAIを教育するときにさえ人間の知恵の介添えが必要で自律的な学習はできない。
それができるという詐欺師まがいの学者がいるので困る。どのようなAIであっても人間がオブジェクト指向の言語を用いてプログラミングしている。データもアルゴリズムも人間が「作っている」のだ。
それでも学習が十分に完了したAIでは、新たなデータから特徴を見出し、あたかも人間のように判断を下すような芸を見せる(注)。
しかし、AIがデータを理解するためには、あらかじめ人間が組み立てたルールに従い、「ベクトル量」に変換して覚えさせる作業がそれを支えていることを理解できれば、AIを作成した人の身代わりで新たなデータに判断を下しているに過ぎないからくりに気がつくだろう。
(注)3年ほど前に放送された「AI美空ひばり」というNHKの番組では、一生懸命AIを創り出すからくりを見せていたが、これで現代のAIの本質に気がつかれた方はどれだけいるのだろうか。ちなみにAI美空ひばりの動き部分は、天童よしみのモーションキャプチャーデータをもとに創り出している。ここまで書けば人間の芸の一つ、という位置づけ表現をご理解いただけるのでは?
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コロナ感染ではクラスターという言葉がよくニュースで使われたが、パーコレーション転移は無限クラスターができて安定化する。
すなわちパーコレーションについてその挙動を理解できればコロナ感染のクラスター理論の雰囲気まで理解できる。
技術者によるパーコレーションの理解が重要なのは、高分子にフィラーを分散した時に必ず現れる現象だからだ。フィラー以外でもパーコレーションは起きる。
導電性粒子を絶縁体高分子に分散した時の転移は1000倍以上の抵抗変化を伴うのでその現象に気がつくが、強度や線膨張では、パーコレーション転移による物性変化の偏差は小さいのであまり関心を示されない。
しかし、あるフィラーの添加率で線膨張率のばらつきが大きくなったり、強度データのばらつきが大きくなったりするのはパーコレーションの影響である。
パーコレーションを数式から理解しようとするとスタウファーの教科書を1冊読む必要があるが、弊社のセミナーのモデルならば、直感的にパーコレーションという現象を理解できる。
この直感で理解できる点が重要で、その結果パーコレーションが絡む問題についてヒューリスティックな解のアイデアが浮かんだりする。
PPS/6ナイロン/カーボンコンパウンドで押出成形されたベルトの歩留まり改良アイデアは、現場でボーっと作業を見学しているときに浮かんできた。
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パーコレーションのセミナーでは、一部の手順についてはクラスで記述し、残りの部分はメソッドと手続き言語として記述したプログラムを配布している。
この理由は、Pythonという言語の手軽さに慣れていただくためである。パーコレーションのシミュレーションは、導電性粒子の分散位置を決めるクラスと抵抗を計算するクラスの二つで構成される。
後者のクラスについてメソッドで大半を記述している。このシミュレーションプログラムを二つのクラスで記述すると、繰り返しのシミュレーションを簡単に記述できるようになる。
そして繰り返した後に平均をとることも簡単にできる。簡単にできるが、最初は難しく感じるので、動作が保証されたプログラムを使いながらいろいろ変更してプログラミングの練習をするのである。
まず、プログラミング環境も含め慣れることが大切である。プログラミングが難しいのは、英会話とか大阪弁や名古屋弁を練習する方法とは少し異なる。
コンピューター「言語」といわれるが、言語ではないのだ。言語ならば、いいかげんな表現でも通じる。年をとった夫婦の会話は「あれ」「それ」で済んでしまうが、コンピューターにいくら慣れ親しんでもそこまでならないのだ。
このどうにもならない感覚を身に着けるまで多少時間がかかる。プログラミングが初めての場合には1か月ぐらいかかるかもしれないが、何かかじったことがあれば、1週間程度で身につく。
そしてこれが身に着くと他のコンピューター言語について1日マニュアルを読んでおればすぐにコーディングできるようになる。予約語がたった33語のPythonならば半日である。
プログラミングスキルについては独学が可能だが、セミナーでは身に着けるツボを指導している。WEBで公開されている無料の初級編とは異なり、直接実務で生かせるレベルを指導している。セミナー受講後は配布されたプログラムで宿題をこなしながら慣れるのである。
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先月から今月にかけてPythonを使用したパーコレーション転移のシミュレーションプログラムを題材にセミナーを開催している。
エンジン部分のみ配布して、そのプログラムをいろいろ作り直して、Pythonに慣れていただくという指導方法である。
これは当方がC言語のプログラミングスキルを習得した方法である。すなわち雑誌に載っていたプログラムをいろいろ変更を加えながらポインターや構造体に慣れていった。
プログラミング教育が既に始まったが、プログラミングスキルの向上には、その考え方も含め慣れが重要である。頭で考えてもスキルは身につかない。
さて、そのエンジン部分に、値を対数に変換してグラフ描画するプログラムを加えたいときにどうするのか。対数関数を利用するには、mathライブラリーを用いるので、import mathあるいはfrom math import *文を書く必要がある。
前者では、math.log(x,y)とする必要があり、後者ではlog(x,y)と記述できることは、セミナーで解説した。またグラフモジュールにについてもimport matplotlib.pyplot as pltとインポートすることを忘れずに行う。
エンジン部分には、対数変換のために4行(注)ほど書き加えた後、下記のようにグラフ部分を書き加えるだけである。#部分は説明文だが、付け加えるコード部分はたったの5行である。
このようにPythonを習得するとエクセルよりも簡単に描画が可能となる。パーコレーションのシミュレーションを複数回行い、その平均をとりたい場合も、配列を使うと簡単である。
しかし、計算結果を残しておきたいことも考慮して、セミナーではCSVファイルへの保存方法を解説している。下記プログラミングが不慣れであれば、ファイル保存した後、エクセルでデータ整理すればよい。
やや面倒かもしれないが、Pythonに慣れるまで、すべてのプロセスをPython で行うのではなく、部分的にエクセルを組み合わせて練習すると、そのうちエクセルを使わなくなるかもしれない。
result_volume = [ ]
result_volt = [ ]
result_volume.append(v_flaction)
result_volt.append(log(v_res,10))
plt.title("v_flaction vs v_res")
plt.xlabel("体積分率",fontname="MS Gothic")
plt.ylabel("抵抗",fontname="MS Gothic")
plt.plot(result_volume,result_volt)
plt.show()
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ゴム会社では、アカデミアよりもアカデミックな研究所に配属されたが、幸運だったのは、最初の指導社員が技術と科学のバランス感覚に優れ、化学を学びたいという意欲に燃えた物理学者だったことだ。
指導社員は研究熱心なだけでなく、勉強も欠かさず習慣としていた人で、その姿勢は当方の技術者人生のモデルであり目標となった。
日本では技術者が成果を出しても高く評価しないどころか昇進を遅らせる会社もあるので注意する必要がある。さらに人の成果を盗む人も企業にはおり、盗むだけでなく妨害を行うことも黙認する企業もある。
会社というのは一つの社会なので善人もおれば悪人もいる。ただ人間社会には法律があり、それを遵守できるよう警察や裁判所があるのだが、会社にはこれらの機能は無く、被害者が泣き寝入りすることになる。
不幸な結果として自殺者が出て初めて社会問題として取り上げられる事態になるので、会社の中で悪人と仕事をしなければいけなくなった時に厄介である。
当方がこの欄でFDを壊された体験談を書くのは、自殺に至るような状況で当方は生きる道を選び転職していることを同様の問題で悩んでいる人に知らせたいからだ。
事件及びその後のおぞましい出来事については証拠を今でも保管しているので、企業における不幸な体験としていつか書籍にしたいと思っている。逃げたわけではない。ただし、このような内容の書籍は、社会的影響が大きいので安直に執筆できない。
科学だけでなく人間としての成長も重要である。STAP細胞事件について書かれた「あの日」を読んだが、事実と思われてもその事実が歪んで読者に伝わってしまう表現である。この原因は、組織活動について知識が乏しい著者の手によるものと推定している。
すなわち組織活動の視点で、業務姿勢その他に疑問がわく表現が多い。当方が自分のFD事件の体験記を書くときには、組織の問題も含め、科学と技術の視点からも事件を眺めたいと考えている。
例えば、犯人はデータサイエンスで電気粘性流体の耐久性問題を解決した当方の実験結果を非難している。それだけではない。
退職するときに参考のために見せてもらった耐久性問題の彼らによる報告書では完璧な否定証明が展開されていた。科学的に完璧な否定証明が成された現象に対して、データサイエンスで解決策を導いた当方の仕事の仕方が間違っているとまで言われたのである。
データサイエンスのセミナーでは、MZ80Kが出力しLOTUS123で徹夜でまとめた当時のデータをそのまま使って説明している。自宅で会社のデータ整理を要求するなど過重労働前提の指示が当然だった時代である。
少し話がそれたが、配合設計もこの脱線した話に近い。知識の量やモノの見方、人生体験も含めその技術に反映される。配合設計を簡単だと少しでも感じた人がいたら、それは誤った判断だと指摘しておきたい。
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わかりやすく表現すると、技術者の数と同じくらい配合設計の考え方があると思っていただきたい。配合設計ではコンセプトが重要であり、そのコンセプトは技術者の経験知に影響を受ける。
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配合設計をデータサイエンスで行い、Pythonで機械学習させながら実験を行う。実験結果の整理は、適切なグラフがいくつか提示されて考察する技術者の姿は、DXの進む時代の常識となるのか。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
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WINDOWS環境で、ただ計算あるいはシミュレーションの目的でプログラミングするにはPythonは極めて手軽であり、すでにエクセル並みに普及しているという。
30年前Pythonが発表されてから2003年と2017年ごろにPythonの普及状態をチェックしたが、このスピードはDXの驚異現象といえる。
高純度SiCを開発した時の進歩よりも格段に速い。それでは今の技術者のニーズは、と思いを巡らせるとPythonでプログラミングする時のユーザーインターフェースの作成に思いが至る。
MS-DOS時代ならばともかく、WINDOWS環境でソフトウェアを使い慣れるとUIを工夫したくなる。途端にPythonの開発環境が貧弱に見えてくる。
UIの作成にはPythonよりもC#あるいはVisualBASICが便利である。また、これらの言語では、Pythonを呼び出すメソッドも用意されている。
この時アナコンダ環境でインストールされたPythonでは少し工夫が必要となる。なぜなら仮想環境で動作させなければいけないからだが、これがPFAからダウンロードしインストールしたPythonならばC#で容易にPythonを呼び出せる。
Pythonをマスターしたら、次はC#をマスターしたい。Pythonを呼び出すことはVBでもできるが、VBよりもC#の方が言語の設計が洗練されている。また、VBでできることはC#に類似のクラスが用意されているのでC#でもできる。
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ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの研究は学位論文に掲載されている。ここでは燃焼時の熱で、ホウ酸エステルとリン酸エステルが反応してボロンホスフェートの得られることが示されている。
学位論文なので科学的な分析結果を用いて掲載しているが、それ以外に重回帰分析結果もそえて解説している。今ならば、偏回帰係数の考察からでも科学論文として成立する時代かもしれない。
ホウ酸エステルは難燃効果が小さい。LOIが18.5の軟質ポリウレタンフォームを19に改善する程度なので、ほとんど機能効果が無い、と言っても良いかもしれない。
ところがリン酸エステルと組み合わせると、LOIに対してリン原子と同等の寄与率までその機能効果は上昇する。これは、単相関では明らかにできず、重回帰分析で得られる偏回帰係数の考察を行い初めて明らかとなる。
このことから、燃焼時にホウ酸エステルが積極的にリン原子に働きかけて難燃効果を発揮していることを理解できる。ゴム会社の研究所ではこのような考察では馬鹿にされたので、熱分析装置やIRなどを駆使して燃焼時の現象を動的に解析している。
そして燃焼時にボロンホスフェートが生成すること、またそれによりリン酸エステルからオルソリン酸となって揮発するリン単位が無くなることなどが実証された。
アカデミアよりもアカデミックな研究所だったので多変量解析の結果には誰も関心を示さなかったが、この燃焼時における動的解析結果には高い評価をしていただけた。
しかし、これらの研究がたった6か月間で行われていること、工場試作まで成功し実用化されていることなどが分からなければ、データサイエンスのありがたみが見えてこないと思う。
科学の研究アイデアを練る時にも現象についてデータサイエンスによる理解は時間短縮のために必要である。ああだこうだ、と議論を重ねるのも必要だが、時として電気粘性流体の耐久性問題で経験したように群盲像をなでるようなことになりかねない。
しかしデータサイエンスで科学的に現象のデータを整理して得られた考察は、十分に科学的だと信じてきた。科学と非科学の境界が動き、ようやくそれが許される時代になった。
禁教令のあった江戸時代の隠れキリシタンのような気分でいたゴム会社の研究員時代を懐かしく思い出した。このような仕事のやり方を進めていたらFDを壊されるなど実害が顕著になったので写真会社へ転職している。
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「配合と物性の関係」についてご質問を頂いた。しかし、詳細は別途ご相談させていただきたい。なぜなら当方のコンサルティング内容にかかわるからである。
マテリアルインフォマティクス(MI)でAIを設計する時にもこのあたりの知見は重要であり、無料で話せる内容は限られる。
中国ナノポリスの研究所ではカオス混合装置が稼働している。ここで退職後カオス混合装置の効果を検討してきたのだが、当初考えていなかった現象も起きているので勉強になった。
早い話が、混練技術についてはまだまだ開発の余地があるということだ。特に二軸混練機の取り扱いについては注意が必要で、現在市販されているどのような二軸混練機を使用しても当方の発明したカオス混合装置が取り付けられていなければ、到達できないレベルが存在するということが分かった。
当方の執筆した混練の本にも少しそのようなことを書いているが、8年間実験してきてデータが蓄積された結果の結論である。
もちろんカオス混合装置が取り付けられていても、二軸混練機の混練条件が悪ければ、カオス混合装置内で十分な混練効果が得られないこともある。だからカオス混合装置が万能とは言わないが、カオス混合装置が取り付けられた二軸混練機では、取り付ける前より混練が進むのは確実である。
さて、配合と物性が1:1に対応していないことを先日紹介している。これは、配合成分の一次構造よりも高分子の高次構造のほうが物性への寄与率が高いためである。
また、配合と力学物性が1:1で対応しても電気特性が対応しないこともありうる。例えば、電子機器にPPS材料の適用が多くなったが、カオス混合の有無で配合と力学物性が1:1で対応するが、配合が同一でも電気特性が異なるPPSコンパウンドが存在する。
特に絶縁耐圧が大きく異なるので面白い。これは以前当方のセミナーでもナノポリスにおける成果としてデータを紹介しているが、カオス混合を行うと耐トラッキング性能が100V以上向上する。この向上効果は二軸混練機にも依存する。
なぜ二軸混練機に依存することが分かったのかは想像していただきたいが、カオス混合装置を取り付けなければ耐トラッキング特性が品質規格のボーダーラインとなるが(射出成形体の歩留まりに影響する)カオス混合装置を取り付けると品質が向上するので、射出成形体の歩留まりが上がる。本日はこれ以上書かない。
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ホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームの工場試作に成功した時に高分子の難燃性を支配している因子について配合データと難燃性データから多変量解析を用いてい整理している。
その時に、残渣分析結果からホスファゼンが他のリン系化合物と異なる難燃化挙動をとっていることがあぶりだされた。
これは重回帰分析の結果だが、そこで実際にポリウレタンフォームの燃焼後の残渣を分析したところ、ホスファゼンで変性されたポリウレタンフォームの燃焼後の残渣だけにリン成分が見出された。
さらに驚くべき結果はP=N骨格が残っていたのだ。他のリン系難燃剤でリンが0.2%以上残っているサンプルを見出すことができなかった。0.2%という数値は分析限界から得られた数値なので、燃焼後にリン成分が残っていないと考えてもよさそうだ、という結論を当時出している。
このようなことは単相関のグラフからでも導くことが可能だが、他の難燃性の機能を付与する成分とどの程度異なるのかは、多変量解析では一発で得られるので、問題を考えるときにアイデアに結びつきやすい。
この時すぐに燃焼時に無機高分子を生成するリン化合物で難燃化機能を設計すればホスファゼン同様の高い難燃効果が得られる、というアイデアまでたどり着いている。
そして、ホウ酸エステルとリン酸エステルとを組み合わせて燃焼時の熱でガラスを生成して高分子を難燃化する手法のアイデアを企画としてまとめている。
この企画の実験では、動的に燃焼状態を観察するための工夫をいろいろ行い、一般のリン酸エステル系難燃剤では燃焼時にオルソリン酸が生成して系外へリン単位が揮発している現象が「科学的に」見出されている。
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材料の配合とそれにより製造された成形体の機能が1:1に対応していると誤解している技術者や研究者は多い。
国家プロジェクトの紹介をしているホームページにもこの誤解による説明が書かれたりしており、日本の将来の科学技術を心配する声が最近聞かれたりしているが、すでにそれが始まっていることに気づかされる。
国民の税金が使われているようなプロジェクトの説明でこのような誤解を見つけると税金の無駄使いと感じるのは当方だけだろうか。
さて、配合とそれにより作られた成形体の物性とが1:1に対応していない事例は、無機材料でも有機材料でも存在し、その原因は、プロセスの寄与を無視できないからだ。
この理由ゆえに、マテリアルインフォマティクス(MI)を行う時に注意を要する。深層学習では各ニューロンとの間で重みづけを行いデータマイニングを繰り返すことでこの値が変化してゆく。
プロセス因子の全く入っていないデータで学習させられたAIでは、学習のたびにいつまでも重みづけが変化することも予想される。
プロセス要因は配合因子よりも小さいからそのようなことは起きない、という意見を聞いてさらに材料科学の現状を心配になった。プロセス要因が配合因子より大きいのか小さいのかはいまだ不明であり、高分子材料については全く無視できない。
無機材料と有機材料の両者を研究してきて高分子材料研究の難しさは、このプロセス要因により現象が大きく変動するためとさえ感じている。
例えば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合では、プロセスが異なると全く異なる高次構造のコンパウンドが得られる。そしてこれらのコンパウンドで押出成形をおこなうと力学物性も電気物性も異なる半導体ベルトが得られる。
PET/PEN/その他の高分子という配合でも同様にプロセス因子が変動すると異なる高次構造となり、その成形体の力学物性は配合が同一でも変化する。
すなわち、高分子材料の成形体の物性は、配合因子だけで決まらず、プロセス因子の影響を受ける。これは、その材料の成形体の高次構造と物性との相関が強く表れるためで、高次構造は配合因子とプロセス因子の両方の影響を受け、その寄与率あるいは重みはよくわかっていない場合が多い。
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