自動車業界でソフトウェア定義車両のことをSDVというらしい。HVからEVへ、そして今トレンドがSDVというニュースが多い。車に関心のある人ならばHVをハイブリッド車、EVを電気自動車と理解できるだろうが、それでもSDVからすぐにソフトウェア定義車両と思い浮かんだ人は業界人である。
AVは何か。自動運転車とまだ認知されていないが、オーディオとヴィジュアル機器の略であることはよく知られている。その手の趣味の人はアダルトビデオをすぐに思い浮かべるのかもしれない。
すると、SDVを見たときにSODの誤植と誤解する人もいるだろう。とにかくSDVはまだ広く認知されていない。CASEを初めて聞いた時にも意味が分からず勉強し、すぐにセミナー講師として招聘されている。
業界人よりも早くその可能性をまとめることができた故であるが、SDVに対しては何をいまさら、の感がある。自動車の発展史はSDVという見方ができるのだ。
また、そのような視点に立つと、自動車の不易流行が見えてくる。SDVで機械屋のトヨタは大丈夫か、という論調の記事があったが、大丈夫である。最近のトヨタ車の開発トレンドを見てそれに気がつかない人は業界人ではない。
プリウスのデザインに驚いていてはいけない。クラウンがいつの間にか、「いつかクラウンに」ではなく、「お好きなクラウンに」に変貌している。
このトヨタの車開発の変貌ぶりにその未来のトヨタを描けない人は勉強した方が良い。技術の日産は、日産自動車をうまく表現した言葉で、ゴーンが去ってからの車開発は、技術の日産の面目躍如の車が発表されている。
しかし、それは今車が向かう未来ではないのだ。技術の日産が危ない、と当方は感じている。日産自動車に妙薬は***である。***に関心のあるかたは問い合わせていただきたい。
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工場の不良には、外観からそれを見分けられる外観不良と外観から検査で見つけられない内部不良とがある。外観不良は外観検査で全数取り除くことが可能だが、内部不良は抜き取り検査となるので一部市場でクレーム問題を引き起こす。
これを最小限にする技術が品質管理技術(QC)である。日本はこの技術が高いことで知られ、戦後の成長はQCが支えた、と言われるほどだった。QC大国日本という言葉もあった。
しかし、バブル崩壊後、とりわけこの20年QC大国というのが恥ずかしい事件が多発している。最近では、昨年騒がれたホンダ車の燃料ポンプの問題がある。
低密度品のエンペラーが原因であることを部品メーカーが発表したが、密度管理は樹脂機能部品では常識である。そのための自動ラインを備えている工場もある。
すなわち、密度という内部不良を重量で全数管理しているのだ。全数管理なので内部不良でも市場に出てゆく不良率を低くすることが可能だ。
薬や食品でも不純物管理を正常品のシグナルを基に全数管理に近い体制とすることができる。例えば今騒がれている紅麹問題では、一部のロットだけの問題であることが明らかにされた。
すなわち、正常ロットのクロマトグラフィーを基準に異常ピークの検出を抜き取り検査で行えば、コストをかけず全数検査に近い品質管理体制とすることができた。
品質管理技術の基本が忘れられたようなトラブルがこの20年起きている。戦後のQCは戦前から技術者として活躍してきた人の遺産である。これが団塊の世代から我々の世代にうまく伝承されていない可能性がある。
心当たりのある企業は弊社にご相談ください。最高の品質で社会に貢献する企業で学んだ品質管理技術と故田口玄一先生から3年間直接ご指導いただいた体験を基にQC大国日本のQCを伝承いたします。
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データサイエンスは、データに潜む情報を取りだすための科学である。ゆえに、データに潜む情報を取りだす手法を論理的に明らかにするところが科学の方法である。
ところが、そのデータが何者であるかは科学的に明らかにしてくれない。正確には、データが何者であるかは、科学的にシルエットを描き出してくれるが、あくまでもそれはシルエットまでである。
すなわち、シルエットが科学的に真であるかどうかをデータサイエンスは保証してくれない。せいぜい確率的に何%の信頼度であるのか示してくれる程度で、ヤマカンよりあてになる程度だ。
例えば、マッハはニュートンの思考実験による研究成果を科学的成果と認めていない。最近の事例では、あみだくじ方式で見出されたヤマナカファクターも唯一の方法と未だ科学的に言えない。
換言すれば、ヤマナカファクター以外の方法が存在する可能性は残っている。これらは、データサイエンスの事例ではないが、データサイエンスによる成果が科学的成果ではない、という意味はこれらの科学的ではないということと同じである。
ニュートン力学はマッハが科学的ではないと言っても、高校の授業で習うのはニュートン力学である。あみだくじ方式によるヤマナカファクターも科学の成果として認められている。
イムレラカトシュは、否定証明だけが唯一の厳密な科学の方法であるが、科学と非科学の境界は時代により変化すると述べている。
1991年に当方はゴム会社から写真会社へ転職しているが、その原因は否定証明で科学的に真とされた「電気粘性流体の耐久性問題は界面活性剤で解けない」という仮説について、耐久性のある電気粘性流体をデータサイエンスによる成果で実現したからである。
当方の方法は非科学的と非難されただけでなく、すでにここに書いているがその後の業務の妨害も受けたので当方含め3人が転職している。
少なくとも1990年代まで日本ではデータサイエンスによる成果は非科学的とされた。また、タグチメソッドも日本で生まれながら、1980年代にアメリカで普及後日本に再輸入されて普及した経緯がある。
当方は1980年代のデータサイエンスを用いた難燃化技術成果について、深層学習で解きなおした成果とともにこの3月20日に日本化学会で発表している。この成果についてはセミナーでも公開してゆこうと思っている。
データサイエンスを導入した技術開発の手法をまとめ、すでにこの10年それを活用したセミナーを行ってきたので、企業内研修の教材として提供可能です。お問い合わせください。
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実務では日々問題解決を仕事としている。もし日々の実務が定型業務ばかりの人は、給与が上がらないはずである。今時定型業務だけの人に高給を支払う企業があったならすごいことだと思う。
問題解決を日々行うためには、問題を設定しなければいけない。すなわち、ドラッカーの名言「何が問題か」、「それが事業の何になるのか」日々問いながら仕事をしなければいけない。
実はこれが問題を解くよりも大変なことだと理解しているだろうか。ドラッカーは「正しい問題」を見いだせれば、問題解決の80%は解決できた、と述べている。
そのくらい正しい問題を設定することが難しいのである。正しい問題を設定したところ、自分がこの会社を辞めた方が良い、という結論になる場合もあるかもしれない。
人材の流動化が日本は乏しいので、とよく言われる。バブル崩壊後の実務書の多くは会社にしがみつくことを奨励していた。会社にしがみつき、何も問題解決しない社員が増えた会社はどうなるか、考えていただきたい。
誰もが正しい問題を探しながら実務に取り組んだ時、企業は著しく成長するだろう、とドラッカーは述べている。「誰もが」ということが難しい、とドラッカーも承知していたのだろう。
さて、正しい問題を設定し、問題を解くときに科学的に解いて答えが出ればよいが、トランスサイエンスが叫ばれる時代には、科学的に解いてみても答えを出せない時がある。そのような時、弊社のセミナーの存在を思い出していただきたい。
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ダイハツや豊田自動織機で起きたトヨタグループの不正に対して、日本製鉄などの経営者が現場力の低下を指摘している。すなわち、かつての日本のような現場力が無くなった、というのである。
その原因として若い人がすぐにやめる問題を指摘し、徹底した標準化でITを利用してゆかないと現場が回らない、と述べている。ただし、トヨタグループの不正について公開された情報を読む限り、現場力の低下だけでは説明のつかない不正が起きている。
すなわち、テスト評価を行うのに決められたソフトを使わず他のソフトを使ったり、他の試験法で手を抜いたりしているのだ。これは力量が落ちたというよりも「合理化」の知恵を使っている、とみるべきだろう。
当方から見ると、科学の知識を使って同等の成果をあげようとした不正ではないかと捉えている。評価に失敗したりしてデータを捏造するのではなく、等価と思われる他の試験を巧妙に使い時間短縮を行っていた。
その結果、正規のテストを行うよりも短時間で信頼性のあるものを市場に出していた。ネットには正規の試験に合格した商品よりも安全性の高い商品ができていた、などという報告が流れている。
どのような目的でこのような情報を流しているのか知らないが、この情報を流した人は、不正の本質をご存知ないだろう。決められたテストを決められた通り実行しなければ信頼性を確保できないというロジックを科学にかぶれた人の中には軽蔑する人もいる。
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2月末及び3月上旬に下記WEBセミナーを開催します。開催時間は10時から16時で12時から13時はお昼休みとなります。なおテキストは電子ブック形式で配布いたします。
1.高分子の劣化と寿命予測、トラブル対策
開催日:2月28日(水)、3月6日(水)、3月15日(金)(3日間同一内容です)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
なお、3月にはゴムタイムズ社で、4月には技術情報協会で類似セミナーが開催されます。
高分子の破壊に関しGriffithの理論から体系的に説明します。セラミックスの破壊研究の経験を活かした説明で、高分子の破壊について分かりやすく説明します。また、アーレニウスプロットで推定された寿命よりも短時間で量産試作段階に壊れた部品を事例に、信頼性工学や品質工学さらにはフロントローディングの手法など解説する実践的内容です。
2.高分子の難燃化技術
開催日:2月26日(月)、3月1日(金)、3月11日(月)(3日間同一内容です)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
ゴム会社に入社した時が開発競争が始まった時代で、それ以来セミナー講師を40年以上やってきました定番のサービスセミナーです。歴史と体系を学ぶことに注力しています。詳細はこちらをご覧ください。
3.Pythonで学ぶタグチメソッド(プログラムサービス)
開催日:2月27日(火)、3月5日(火)、3月8日(金)、3月12日(火)(4日間同一内容ですが、参加者の希望により内容を変更可能)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
Pythonの簡単な説明も行いますが、受講者の希望により、説明時間を増減可能です。タグチメソッドにつきましては、SN比計算プログラムを配布しますので面倒な計算の理解に必要な負担を軽減できます。メソッドとその思想を理解することに注力したセミナーです。
4.パーコレーションで学ぶPython(プログラムサービス)
開催日:2月29日(木)、3月7日(木)、3月14日(木)(3日間同一内容)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
シミュレーションをどのように開発業務に活用したのか、実際の開発事例で説明します。すなわち単なるPython入門ではなく、Pythonを身に着ける動機づけも目指しています。開発事例は2例あり、いずれもトランスサイエンスの事例。一つは否定証明をシミュレーションでひっくり返し、日本化学工業協会から賞を頂いた事例で、他の一つはフローリーハギンズ理論をひっくり返す技術をシミュレーションで確認した事例です。手軽にプログラミングできるPythonのマルチパラダイムの世界を実感していただきます。詳細はこちらをご覧ください。
5.科学で解決できない問題を解くトランスサイエンス時代の問題解決法
開催日:3月13日(水)
費用:
テキスト代込参加費用:3万円(税込)
別途質問枠オプション付:5万円(税込)
日曜日を希望されますと、本セミナーに関しては特別サービスがございます。お問い合わせください。
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2月度に下記予定でWEBセミナーを予定しております。1社で2名以上参加の場合には割引もございますので、ご相談ください。また、下記セミナーにつきまして、3月以降企業でご希望の日程で開催することも可能ですのでお問い合わせください。
<開講時間>10:00ー16:00(12:00から1時間休憩)
<高分子の劣化と寿命予測、トラブル対策>
開催日:2月10日、17日
参加費:30,000円(税込み)/1名
<高分子の難燃化技術>
開催日:2月6日、13日、20日
参加費:10,000円(税込み)/1名
<Pythonで学ぶタグチメソッド>
開催日:2月9日、16日
参加費:30,000円(税込み)/1名
<パーコレーションで学ぶPython>
開催日:2月14日、21日
参加費:30,000円(税込み)/1名
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来月2月14日と21日に下記セミナーを行います。時間帯は10:00-16:00です。途中昼休みが入ります。
技術開発において、現象を科学の方法でとらえることが20世紀に重要視されたが、21世紀となってもすべての現象を形式知で記述できるわけではない。そこでAIとビッグデータを活用し、回帰や予測、分類による特徴抽出を行おうという研究、マテリアルズインフォマティクスが2010年代に盛んになり、2017年にはアカデミアでデータサイエンスの講座設置ブームが起きている。
ところで現象を数理モデルで把握し問題解決を図る方法は、厳密な意味で科学の方法ではない。例えば、レオロジーの問題をダッシュポットとバネのモデルで解こうとする研究が1980年まで活発に研究されたが、この方法では緩和現象を説明できなかったので学会で議論されなくなった。
しかし、非科学的であっても現象の振る舞いを何らかの数理モデルを用いて考察する方法は、科学で未解明な現象に潜む問題についてモデルベースで対策方法の予測ができ、技術開発スピードを加速させる。
本セミナーでは、絶縁体高分子に導電性微粒子を分散した時に生じるパーコレーション転移を取り上げ、その閾値における大きなばらつき現象を独自のモデル化によるプログラムでシミュレーションを行い、配合設計における問題を解決した事例を紹介する。そしてこのモデルで用いたプログラミング過程を解説し、データサイエンス分野で今後も主流となるプログラミング言語Pythonの学習を行う。
プログラミング言語の学び方として、すでに開発されたプログラムを基にスキルを身に着ける方法は、実戦的であるとともに効率が良い。
また、導電性薄膜のインピーダンスが低周波領域で異常分散する現象について、同様に数理モデルによる解析を行い、パーコレーションと関係していることが示され、新しい帯電防止層の評価技術を開発した事例も紹介する。この評価技術は非科学的であるにもかかわらず、開発成果のロバストを示すパラメータとなった。この事例からモデルベース開発手法について理解でき、コンピューターによる問題解決でPythonの活用法を学べる。
なお、本セミナーで使用するプログラムのエンジン部分について参加者には事前に無料配布し、今後もデータサイエンスにおける中心的言語と位置付けられたPythonの初歩を解説する。
<費用>
テキスト及びプログラミングコード付参加費用:3万円(税込)
別途質問専用枠オプション付:5万円(税込)
<目次>
1.シミュレーションによる問題解決事例
1.1.シミュレーションの役割
1.2.パーコレーション転移
1.3.事例:酸化スズゾルを用いた帯電防止層
A.何が問題だったのか
B.シミュレーションで分かったこと
C.数値シミュレーションとコンピューターモデル実験
1.4.事例:半導体無端ベルトの押出成形
A.科学と技術
B.Wパーコレーション転移制御
2.プログラミング言語概論
2.1.コンピューターの仕組みとプログラミング言語
2.2.プログラミング言語の歴史
2.3.オブジェクト指向の考え方
2.4.Python概論
3.パーコレーション転移シミュレーションプログラム作成
3.1.変数と組み込み型
3.2.条件分岐とループ
3.3.関数
3.4.ファイル処理
3.5.クラスとオブジェクト指向開発
3.6.まとめ:パーコレーション転移シミュレーションプログラム
4.まとめ:Pythonによるプログラミング
お申込みを希望される方は下記フォームから希望する日付を入力してください。
送信時に不具合等が起きる場合はinfo@kensyu323.comまでご連絡ください。
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NHK朝ドラ「ブギウギ」は、音楽の力をうまく描いている。このブギウギだが、WIKIPEDIAには1950年代のロックンロールというような解説(注)がなされている。
しかし、ラングストーン・ヒューストーン著「ジャズの本」によれば、ピアノで演奏されるラグタイムの一種で、それに力強い低音がリズムを刻む音楽として解説されている。
さらに、1930年頃タップダンスの踊り手パイン・トップ・スミスにより有名になった、とダンスとの関係についても書かれている。すなわち、ブギウギとはブルースのピアノ版ラグタイムに属する音楽であり、ロックンロールというよりもジャズとして誕生した音楽である。
なぜこのようなことを取り上げたのか。科学の世界でも歴史が曖昧な事象に関して誤解が定説となる場合があるからである。例えば科学という言葉そのものも科学を述べる人により、意味の曖昧さが含まれてくる。
当方が科学を述べる場合には、論理学の誕生とともに成立したとするマッハの説をよりどころにしている。そのマッハによれば、高校で学習するニュートン力学は非科学的学問、だそうだ。
このマッハの考え方は、彼の著「マッハ力学史」に展開されているのだが、科学と非科学については、厳密に意識すべきトランスサイエンスの時代になったので、彼の見解は重要である。
要するに、にわか科学評論家による科学と非科学が混同して語られる科学論をまともに信じていると、トランスサイエンスなど意識せず、何でも科学で解決できてしまうと誤解する。
トランスサイエンスという言葉でもすでに誤解が生まれているが、これは1980年代に雑誌「サイエンス」に登場し生まれた言葉である。ただし、これが日本に伝わってきたときにセラミックスフィーバーが吹き荒れ、セレンディピティーのみ単独の言葉として日本で流行している。
すなわち、トランスサイエンスをセレンディピティーで何とか乗り越えようという意味で使われていたところ、セレンディピティーだけ日本に伝わり、トランスサイエンスが置き忘れられた。
黒人のブルースからジャズとロックが生まれているのだが、ブギウギは最初にジャズの世界で演奏されていることは、朝ドラでも作曲家羽鳥氏がセリフの中に取り入れている。科学とは何か、正しくその成り立ちから理解したい。
(注)「ブギウギは、スウィングの一種で、ピアノでブルースを演奏する際の一形態でもある。」とWIKIPEDIAの最初にはあるが、「ジャズの本」に従えば、「一形態でもある。」ではなく「一形態である。」とすべきである。
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ダイハツの不正問題について、奥平社長は「現時点で事故や問題が発生したという情報はない。自分としては、今まで通り安心して乗っていただければ」と答えているそうだ。
これは様々な視点から問題を含んだ発言だが、おそらく、合格可能性が100%でありノルマとなっている試験を行わず手抜きをしただけ、という誤った”自負がある”のだろう。
ニュースには、OEMの開発負荷が大きかった、すなわち短納期で開発しなければいけなかったことが原因で、不正は長期にわたることが報じられている。
こうした不正が日常的に行われていたダイハツは、ある意味従業員にとっては楽しい会社だったのかもしれない。高純度SiCの開発や中間転写ベルトの開発経験から、そのような会社の風土を想像できる。
そして奥平社長まで「手抜きせず試験を行っていても合格したはずの車だから安心してください」というとんでもない発言をしているのだ。もし、当方が奥平社長の立場だったなら、あのような発言はできない。
さて、20年近く前の話となるが、中間転写ベルトの開発では、半年後に製品を出さなければいけない状況でコンパウンド工場の立ち上げを提案し成功させている。
コンパウンド工場の立ち上げメンバーは、計画外の業務だったので新たに外部から1名中途採用で技術者を調達し、当方含め3名で行っている。当方も実務作業をしなければいけなかったので、部下の課長にすべて権限を委譲しての業務である。
ヒト、モノ、カネは短期間で目途が立ったが、QMSのルールが難問として残った。すなわち、STAGE-GATE法に近い運営だったので、企画提案から所定のステップを踏み、製品化の承認を役員会で得なければいけないのだ。
しかし、舅小姑の溢れた風土であり、手抜きをできる環境ではなかった。幸い品質管理部門も含め関係部署の協力が得られたが、それでも3か月で工場を立ち上げなければいけない。すなわち半年後と言っても遅くとも2か月前には工場が稼働していなければいけないのだ。
ここは、弊社の研究開発必勝法を使い、1か月で立ち上げられる目途が立っている。予定では4か月で生産に入る計画だったが、デザインレビューで2回ほど審議やり直しとなり、ぎりぎり製品化に間に合わせている。
審議などやり直しても新たなデータを出せるわけでもないのに、書類の完璧さを求めて容赦なしである。結局予備実験データも含めすべての実験データを出し尽くしてデザインレビューを乗り切っている。
ただし捏造ではない。おそらくダイハツの場合には試験すら行っていなかったのだろう。当方は雑ではあったが、すべて社内の認証で必要とされる実験データは手を抜かず集めている。
最も時間のかかる社外の認証試験には、中古混練機の設置が終わるや否や試作されたコンパウンドで製品を組み立て依頼している。工場の壁はじめ休憩室など完成していない段階である。ラインの稼働を最優先にしたのだ。
サラリーマンとして評価もされなければ自ら担当者となって推進しなければいけないバカな提案(注)をしたことで、皆の注目を集めたプロジェクトだった。さらに見える化運動の真っ最中だったので、身内は大変厳しかった。
特に権限を委譲した課長の一人が、当方を部下のように扱ったので悲しかった。しかし、関係部署の部長は皆優しかったので、これが救いだった。
(注)今だから明かせるが、最大の功労者は暗黙知の段階だったカオス混合プラントに対して承認してくださったEセンター長かもしれない。工場建設とアイデアの具体化作業がコンカレントに進められた。これは外部からコンパウンドを購入していたので可能となった仕事である。某大手コンパウンドメーカーが当方のアイデアを受け入れず、勝手に工場でも建てて生産してもよいと言ってくれたのだ。不可能だと思われての発言だが、当方の研究開発必勝法をご存知なかった。その結果このコンパウンドメーカーは顧客を失うことになった。ゴム会社の新入社員の時から考え続けたカオス混合機の実用化チャンスが退職前にできたのは技術者として幸運なことだった。それでは、最初の提案企画書をどのように作成したのか。それはここでは明かせないが、捏造ではない。ダイハツとは異なり、企画書に掲載したデータは、シミュレーションデータからその検証データまですべて不眠不休の実験を行い出した実データである。ただし、演繹的に構築された企画書である。難解な企画書に押印されたセンター長に感謝している。
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