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2023.07/20 高分子と火災と評価技術(7)

LOIについて規格に準拠した方法でうまく測定できない場合に自分で工夫して条件を決めて測定するとよい。但し、求められたLOIについて規格外の方法で測定したことを記録しておくことが大切である。


燃焼試験では常に規格の扱いをどのように行ったのか記録しておかなければ、後日他の人がデータを見たときに悩むことになる。規格通りの測定においても燃焼挙動に変化が見られたらそれも記録しておくと経験知として利用できる。


また、各燃焼試験間で普遍的な相関を見出せないことはよく知られているが、LOIが21以上の性能にならないと合格しない規格として、UL94-V0試験がある。


ゆえにUL94-V0試験に合格しているならLOIは21以上という推定は正しいが、LOIが21以上ならばUL94-V0に合格する、という逆の命題は真ではない。ゆえにLOIとUL94-V0とは相関が無い。


このように各燃焼試験規格の間に相関が無い場合が多いが、これを知っておかないととんでもない技術を開発することになる。


例えば昔難燃二級という建築規格の燃焼試験があった。これは暗黙の合意として空気中で自己消火性を示す材料が求められた。すなわち、台所用天井材の規格とした場合に着火しても火が消えてくれる性能が求められた。


台所用の材料なのでLOIは21以上欲しい。しかし、燃焼試験中に試料が大変形し試験用の火源から離れた場合についてこの規格では判定方法が決まっていなかった。すなわちそのような場合に合格するかどうかは、燃焼試験後のサンプルの状態を目視観察する決まりになっていた。


この決まりでは、変形しても穴が貫通していなければ合格という判定が可能だった。ゆえに加熱されると餅のように膨らむ変形では、膨張してはじけなければ合格となった。


その結果、LOIが18-19程度の材料の天井材でも合格となる場合があって、そのような天井材が市場に出回り、火災が頻発する事態になった事件が1980年代初めに起きている。

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2023.07/12 高分子と火災と評価技術(2)

火災は高分子にとって急激に進行する酸化反応だ。非平衡反応の科学の形式知について完成していないので、一般の火災をモデル化して実験室で科学的に研究を進め、科学的に満足できる解答を出すことができない。


また、多くの火災は出火原因を特定することも経験知に頼っており、現象をモデル化することすら難しい。それで建築研究所は時々実際に家一軒丸ごと燃やしてデータを取得し、それを基に研究を進めている。


大変お金のかかる研究だが、出火して燃え広がるまで消火もせずに黙々とビデオカメラに収めることなど一般の火災でできないからだ。半世紀前に比較すると火災に関する建築規格も大きく改訂されている。


それでもまだ見直しが続けられているのは、火災が無くならないからだ。すなわち火災に関する建築基準について完成することはないのではないかと思っている。


火災に関する研究が進んだので、最近建てられている家は震災があっても燃えにくくなっている。ヘーベルハウスのように30年以上前から独自基準で燃えにくい家を目指している企業もあるが、少しでも他社より燃えにくいことを示すことがセールスポイントになるからである。


科学的には燃えにくい序列を表現しにくいが、建築基準があるのでそれ以上の燃えにくさを実現していることをアピールしやすい。建築途中を見ていたが、台所周りの火災に対する配慮には感心した。


かつて台所用天井材の開発を行った経験があるが、某ハウスメーカーの意向によりコストダウンを優先し、当方のアイデアが却下された経験がある。火災の危険性を考慮したならばコストよりも火災対策の優位性をPRした方がハウスメーカーにとってメリットがあるように思い提案したのだが残念である。


その時代の規格が、科学的に普遍なレベルであれば、このハウスメーカーの考え方でも許されるかもしれないが、火災に関する規格は厳しくなることはあっても見直しで緩くなることはない。少しでも燃えにくい家を目指すことはハウスメーカーの良心である。ヘーベルハウスは少し高価だが。

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2023.07/06 高分子の耐久性

ゴムや樹脂の耐久性について、誤った認識や研究は多い。例えば高分子の稀薄溶液中で酸化速度を調べた研究結果をもとに高分子の酸化速度は早いので、屋外暴露試験による物性劣化は酸化劣化のためである、と考察してしまうケースだ。


樹脂の屋外暴露試験を行ったときに樹脂には酸化劣化以外に結晶性樹脂では球晶の成長が起きたり、ボイドの成長が起きたりしている。そしていずれもが強度を劣化させる原因となる。


また、屋外暴露試験後の樹脂の赤外吸収スペクトルを調べても溶液中の酸化試験データから期待されるほどの酸化による赤外吸収ピークが観察されないことに驚いたりする。


バルクの樹脂ではてんぷら油の自動酸化のような現象が起きているはずだが、それが表面だけだったりして疑問点がいろいろと出てくる。実は、ゴムや樹脂の耐久劣化問題は未だにトランスサイエンスと捉えた方が良い。


高分子単体でこのような状態なので、FRPになってくるとさらに複雑であることを容易に想像できるのだが、タイタン号のような事故が起きている。


FRP製のタイタン号で初めて深海に潜る行為を冒険と呼ぶことができても、繰り返し使用したタイタン号で潜る行為は冒険というよりも無謀である。繰り返し使用した場合の劣化がどの程度なのか不明だからである。


オール金属製ならば、劣化程度の評価が可能だが、FRPの劣化評価技術は科学的な検証ができていない。すなわち非破壊検査ができない材料なのでリスクの予想が不可能なのだ。

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2023.06/12 高分子材料とデータサイエンス

高分子材料の物性は金属材料やセラミックスよりもばらつきが大きい。セラミックスの力学物性は高分子材料と同じ程度にばらつくこともあるが、電気電子物性についてセラミックスは極めて安定している。


有機ELが実用化されたが、無機材料のLEDに比較してその寿命は短い。しかし、電流駆動という特徴と生産性の高さから有機ELがディスプレー材料として選ばれている。


高分子材料を機能性材料として実用化する時にはその1次構造を設計する必要がある。しかし、成形されたときに非晶質相が多く、その構造の特性ばらつきが機能性に少なからず影響を与える。


高分子の非晶質構造に存在する自由体積あるいは部分自由体積と呼ばれる構造を製造プロセスで制御することが難しい。


あるポリオレフィン樹脂をバンバリータイプの小型混練機でいろいろと条件を変えて混練し、その量のばらつき変化を調べたことがあるが3倍近くばらついたのでびっくりした。


自由体積の量が変化すれば、密度が大きく影響を受け変化する。密度の影響を受ける機能性は、その結果大きくばらつくことになる。


ゆえに高分子材料の物性についてインターネットから収集されたデータで物性予測を行おうとする時に問題となるのは、プロセス情報の公開が少ない点である。


良く知られているように、高分子材料の物性は成形体が製造されたプロセスに大きく依存する。金属やセラミックスも同様であるが、高分子材料の場合にコンパウンディングの履歴も引きずるので大変である。マテリアルズインフォマティクスを行う時にこの点に注意する必要がある。

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2023.05/24 データサイエンスを学ぼう

2017年頃におきたデータサイエンスの講座設置ブームにはびっくりした。社会人になった時の情報工学科設立ブームの再来かと勘違いした。


データサイエンスは当方の学生時代からコンピュータ科学とよばれていた。また、数理モデルで現象をとらえる方法は戦前から学問としてあった。当方は戦後生まれだがパーコレーションの数理モデルは1950年頃から研究が始まっている。


コロナ禍で8割おじさんが有名になったが、クラスター理論の数理モデルは古くからある研究成果だ。大学ではこのようなことを専門として学ぶ機会は無かったが、アカデミアよりもアカデミックな研究所へ配属されて3か月の集中講義をマンツーマンで受講している。


指導社員が数理モデルの研究者だったのでそのような幸運に恵まれたのだが、データサイエンスを身に着けると技術開発は加速度的に早くなる体験をしている。


例えば、1年間の計画で防振ゴム用樹脂補強ゴムの開発を行うのが新入社員のテーマだったが、3か月間のデータサイエンスの講義のおかげでたった3か月で研究が完成した。


その後担当した、原料がまだ市販されていなかったホスファゼン変性ポリウレタンフォームの開発は工場試作まで6カ月間で実現している。ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームは、6カ月で技術移管だった。


半導体用高純度SiCの事業化では、研究開始から5日間で2億4千万円の先行投資を導き出すまでの成果を出している。いずれも20代の元気の良いころの武勇伝だ。


50を過ぎてからは、PPS半導体無端ベルト用のコンパウンド工場を半年後に稼働させ、一流コンパウンドメーカーが5年以上かけても実現できなかった高性能のカオス混合コンパウンドを半年で実用化した。


このようにデータサイエンスを自由自在に使えると開発業務はスピードアップする。これは数年前から流行が始まったモデルベース開発でも言われていることだ。ご興味のあるかたは40年の開発経験がある弊社へご相談ください。

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2023.05/17 パーコレーション

パーコレーションの数理モデルについては、1950年代から数学者たちに議論されてきた。すなわちこの分野のクラスター理論は60年以上の歴史がある。


コロナウィルスの感染シミュレーションもこの分野の成果であるが、おおもとはカリフォルニアで発生した森林火災の問題と言われている。


パーコレーションの閾値についてはn次元まで求められており、数理モデルとしては研究しつくされた感が強い。40年ほど前に出版されたスタウファーの教科書には、歴史も含め詳しい解説がまとめられている。


しかし、材料屋がこの教科書を読むと現象を具体的に把握しにくい。グラフで示されているので現象の振る舞いを納得はできるのだが、もう少し直感的なモデルは無いのか40年ほど前に教科書を読みながら考えた。


10x10x10のブロックを絶縁体高分子とみなし、この一部を導電性のブロックで置き換えてゆくモデルを考案し、プログラミングして動かしてみたところ、パーコレーションの振る舞いを再現できた。


非科学的なモデルではあるが、このモデルの考察で幾つか技術開発成果を出している。それをセミナーで公開しているので、一度このホームページのセミナー欄を見ていただきたい。


大型コンピューターの時代には、コンピューターを湯水のように使うことができなかったが、今はコンピューターを用いるコストがほとんどかからなくなった。


ゆえに、難しい方程式を解くことが要求される問題でも、コンピューターで直感的なモデルのプログラムを動作させて解くことができるようになった。これもDX進展の恩恵だろう。

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2023.05/04 問題解決法

20世紀には、ロジカルシンキングやTRIZなどが流行ったが、TRIZやUSITは今や忘れられようとしている。理由は簡単で、科学の思考法をオブジェクト指向に似せた手順で示しただけの、当たり前の答えを導く方法だからである。


トランスサイエンス時代の問題解決法では、非科学的方法でアイデアを導くことが可能な問題解決法が求められている。弊社ではそのニーズに応えるために問題解決法のセミナーを提供している。


その中の一つにデータサイエンスによる問題解決法がある。タグチメソッド(TM)もデータサイエンスの1手法であるが、そのほかに多変量解析や機械学習の手法などがある。


多数存在するデータサイエンスの手法について、問題解決を目的に使用する時のコツを伝授するだけでなく、データサイエンスで実務の問題を解くときの注意点を経験知として提供している。

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2023.04/27 例題

データサイエンスを用いて問題解決した事例を例題として一つ紹介する。

組み立てメーカーとコンパウンドメーカーとが、再生材を用いて難燃性コンパウンド(UL94-5Vb合格)を共同開発していた。

組み立てメーカーは、製品の一部機能Aの仕様についてノウハウを理由にコンパウンドメーカーへ開示していなかった。その代わり、コンパウンドの成形体物性について機能Aと関わるシャルピー衝撃試験値X1、引張強度X2、引張弾性率X3、引張伸びX4、曲強度X5を仕様としてコンパウンドメーカーに伝えていた。

すなわち、コンパウンドメーカーは、組み立てメーカーとX1,X2,X3,X4,X5をすり合わせ、コンパウンドの品質管理をしなければいけない。研究開発が終了し、量産試作を始めたところ、コンパウンドメーカーの品質管理のために測定した各ロットの計測値は、仕様を満たしていた。

しかし、組み立てメーカーから合格をもらえたのは、20ロット中2ロットであった。組み立てメーカ-からは、機能Aに関わる独自評価結果に合格したのは2ロットだけ、と結果を告げられただけである。

組み立てメーカーからは、研究開発ステージではないという理由で組み立てメーカーが測定したX1,X2,X3,X4,X5についてデータをもらうことができなかった(注)。

コンパウンドメーカーは、20ロットのX1,X2,X3,X4,X5の値と、合格したロットの情報から、工程の対策を考えなければいけなかった。さて、どのようにこの問題を解くのか。

当方はこの相談を受け30分後には、データサイエンスを用いて解析し回答を相談者へ送っている。それに基づき相談者は対策を行い、1か月後に生産試作を再開して、その後のロットで合格を得ることができた。

この解答は、データサイエンスを用いた問題解決法セミナーの中で詳しく解説する。ご興味のあるかたは、弊社へお問い合わせください。

(注)共同開発における組立てメーカーとコンパウンドメーカーとの関係は様々である。例えば、この例と異なり組み立てメーカーがコンパウンドメーカーへすべて情報を開示して共同開発を進めるとどうなるか。当方が退職前に担当した中間転写ベルトでは、共同開発においてコンパウンドメーカーに技術蓄積がなされ、組み立てメーカーがコンパウンドメーカーの指示で仕事を進めるような状態になっていた。ここまで書くと当時の担当者からおしかりを受けるのかもしれないが、少なくとも組み立てメーカーのリーダーが、コンパウンドメーカーへコンパウンドの設計見直しをお願いしても素人は黙っとれ、といわれたのである。赴任して間もない管理職がアドバイスできない状態だった。結局、当方は、部下の課長に権限を委譲し、1名若手技術者を中途採用するとともに現場で余剰人員だった職人を1名加えたプロジェクトで、新たなコンパウンド設計のため3か月でコンパウンド工場を立ち上げなければいけなかった。ゆえに、組み立てメーカーがノウハウと称して共同開発において一部機密を開示しない事情をよく理解できる。材料開発を伴う共同開発において、組み立てメーカーが情報管理をしない場合には技術はすべて材料メーカーに流れるのである。ちなみに3か月という短期間で立ち上げたにもかかわらず、カオス混合技術を導入したコンパウンド工場で生産されたコンパウンド(材料メーカーが供給していた原材料と配合組成はすべて同一で、コンパウンドのプロセシングだけが異なる)で無事中間転写ベルトの量産が可能となった。素人でも一流の技術を提供できる問題解決法が弊社の商品です。これはドラッカーの名言であるが、「しばしば優秀な人が成果を出せないのは、間違った問題を正しく解いているからだ」。素人でも正しい問題を正しく解けば成果が出るのだ。これは弊社の問題解決法の基本姿勢である。

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2023.04/26 データサイエンスは難しくない

データサイエンスを問題解決の手法としてとらえた時に、それを使いこなすのは容易である。また、一部のプログラミングでさえ10年前に比較すれば、容易になった。


後者はPythonで無料のライブラリーが豊富に公開されているためだが、前者は、例えば多変量解析のプログラム完成品を無料で利用できるようになったからである。


10年以上前にはプログラム開発から行わなければいけなかったが、弊社でも主成分分析と重回帰分析のプログラムを公開しているように、無料の解析環境が整っている。


ゆえに、データをポンと入力し結果を解析するだけである。結果の解析でも解析のコツを学べば誰でもすぐにできるようになる。


弊社のセミナーで公開しているノウハウを学べば、データサイエンスが必要な9割の問題で利用できると思う。残り1割は自分でモデル化してプログラムを作る必要があるかもしれないが、その時のコツも披露している。


ただ、Pythonのプログラムを自由自在に、となると、当方が講師を勤める5月開催の技術情報協会Python入門セミナーを受講する必要があるが、すでにPythonをかじった経験があれば、このゴールデンウィークのセミナーだけで大丈夫かもしれない。


ゴールデンウィークをデータサイエンスのリスキリングに費やすのは、DX時代に生き残りたい技術者として選択肢の一つ。頭を休め栄養補給するために弊社へお問い合わせください。

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2023.04/23 大阪弁護士会新会長に三木氏

昨日表題のニュースが報じられた。三木秀夫弁護士は、あの理研STAP細胞事件において小保方氏の弁護人を務められた方である。


就任後のインタビューで当然のごとくSTAP細胞の存在を問う質問が出たそうだ。回答は弁護人を務めただけあって、その存在を信じている、と答えている。


理研STAP細胞事件では、優秀な研究者笹井氏が研究所で自殺している。その遺書には、マスコミなどの不当なバッシングに疲れ切った、と言うようなことが書かれていたという。そして、小保方氏には、STAP細胞を再現してくれるようにお願いの一言まであったという。


この事件では、自殺の場所などから組織の問題を原因とする指摘も当時あったが、組織とマスコミとの板挟みになっていたことは、容易に想像がつく。ところが、自殺に追い込んだ組織の責任者は沈黙したままだった。


さて、三木氏がどのような弁護士なのか、あるいはその人柄について、マスコミが時折報告している記事から想像がつく。その記事には、小保方氏が今ささやかながら幸せな生活(注)を送っている、と書かれている。


小保方氏まで自殺に追い込むような悲劇を防ぐことができたのだから、判断力と指導力の優れた方だろう。理研が否定証明を行ったSTAP細胞の存在を信じていると、当方でさえこの欄で書きにくい非科学的な内容にもかかわらず、堂々と答えられている。


一連の当事者の苦しみについて、当方は、2億4千万円の先行投資を受けてスタートした高純度SiC事業が5年近く立ち上がらず、類似の体験をしたので理解できる。


マスコミと組織の板挟みではないにしても、身内であるはずの組織から生存すら否定される扱いを受けることがどれだけ苦しいことか、実際に味わったものでなければ理解できないと思う。理研でも当方が経験したような事件が起きていたかもしれない。


社長方針だった、電池、メカトロニクス、ファインセラミックスの3本の柱のうち、ちょうど世界初のLi二次電池事業が立ち上がったころ、そのリーダーが、SiCの事業テーマも管理するから二次電池事業を拡大するため、ファインセラミックスの研究棟を明け渡すように命令されている。


しかし、高純度SiCの事業成長をヒーターや切削チップのサンプルを作って見せて研究棟の存続必要性を訴えたりしていたら、日本化学会化学技術賞を受賞後、この事業をすぐにリーダーはたたんでしまった。さらに、研究を推進していた責任者の一人は受賞を勲章にして某社へ転職している。


学会の受賞が目当て、ともとれる行動だが、売り上げが予想よりも少なく事業に対する風当たりが研究所内で強まっていったことが大きい。当方もセラミックス電極開発や電解質用ホスファゼン難燃剤開発を提案したりしたが、検討すらされていない。


ホスファゼン難燃剤については、その後電気粘性流体用オイルとして自ら研究開発し特許出願を行っているが、この成功でLi二次電池用難燃剤として改めて研究開発が再開されている。


事業撤退により電池のテーマが縮小化された後、当方は一人で高純度SiCの事業化テーマを何とか建て直そうと無機材質研究所との共同研究プロジェクトを立ち上げている。このプロジェクトの後、住友金属工業小島氏と出会い、JVの準備を進めることになる。


しかし、ゴム会社の研究所で一人で活動する当方が針の筵状態であることは変わりなかった。ファインセラミックス棟以外に置いてあった実験設備は、小型電気炉も含め他の管理職の印で当方へ相談なく強制的に廃棄されたりもしている。


努力が実り住友金属工業とのJVについて社長印を頂くことができ、JVが立ち上がった時に、U本部長からI本部長へ交代し、さらに過激な事件が起きるようになって、JVの業務そのものを推進できなくなるような状況へ追い込まれてゆく。


例えば、電気粘性流体の耐久性問題を解決するため、加硫剤も添加剤も何も入っていないゴムを当方一人で開発しろと言う無茶な指示である。アメリカのタイヤ会社立て直しに研究員が動員され、気がつけば研究所で混練技術はじめゴム材料に詳しい研究者は小生一人になっていたそうだ。


会議前になるとFDを壊されたりする業務妨害まで受けて追い詰められた小生は結局転職している。転職後八重洲本社でとんでもない事件が起きたように当方が自殺を選ばなかった理由は、転職後も一年近くJVのフォローをするように頼まれたからである。


これは、手紙が証拠として残っているが、今から考えるとそれはふざけた内容であり、またそれにもかかわらず、誠実に技術の伝承をした当方は、大変なお人よしでもあった。弁護士会会長の話で思い出さなくてもよい話を思い出した。


(注)マスコミが報じるような幸せな状態であってほしいが、著書を読む限り心の深い傷は癒されていないと思う。STAP細胞の否定証明だけでなく、卒業された大学の仕打ちなど、彼女に対する周囲の対応をみると、それらを研究者が当然負うべき責任の結果とするには疑問の余地が大きい。例えば学位剥奪の問題について、彼女にその力量が無かった、とすれば、力量の無い人間に割烹着まで着せリーダーへ祭り上げた理研の責任を問わなければいけない。また、コピペの問題を取り上げるならば、それを見抜けなかった教官、あるいはコピペを防ぐ対策をとらなかった大学の責任は、彼女の力量と無関係である。彼女の学位審査よりも10年以上前にその対策をとっていた中部大学が存在しているので大学の教育組織としての責任が大きいことがわかる。

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