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2018.09/11 プロセシング(3)

写真会社には生産技術センターと呼ばれるコーポレートのプロセシング研究グループがあり、当初そこのセンター長に混練プロセスの相談に行ったら、事業部で採用が決まっていないテーマでは話にならない、と簡単に見放された。

 

当方は電子写真事業部の生産技術センターに所属していたので、自分たちのテーマとして研究開発可能だった。しかし、混練の基盤技術など写真会社になかったから、コーポレート部門の研究所へ相談に行ったのだ。

 

結局、半年後に必ず生産立ち上げを行う約束で、当時の上司だった太っ腹のセンター長にお願いし8000万円の稟議をかけて頂く計画を立てた。

 

さらにセンター長は、事前に2000万円の中古の二軸混練機の購入まで決済をとってくださった。当方の退職前の花道の仕事と思ってくださったのかどうか存じ上げないが、全く初めての体験となる混練のプロセス開発でも当方を信じていただけたことがうれしかった。

 

この痩せてはいたが太っ腹のセンター長のおかげで、カオス混合プロセスラインは無事に立ち上がり、PPSに6ナイロンが相溶したコンパウンドの量産プロセスをアジャイル開発で実現できた。このプロセシング開発では、全員が素人だった。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.09/01 非晶質とガラス

非晶質であればすべてガラスと勘違いをしておられる方が多い。非晶質にはガラスにならない非晶質体が存在する。ガラスは非晶質でかつガラス転移点を持っていなければいけない。ガラス転移点を持っていない非晶質はガラスではないのだ。

 

この知識をよく理解しないで情報として頭に詰めていると、楽しい体験ができる。樹脂のガラス転移点(Tg)を知りたくてDSCという熱分析を行ったときに、Tgが現れなかったりすると新発見と勘違いする。

 

樹脂のDSC測定ではまれにTgが現れないことがある。しかし、これは、Tgに到達する直前で昇温にストップをかけてやると、きちんとTgが現れるようになり、何も新発見ではなくなる。

 

以前書いたように高分子の非晶質は必ずガラスになり、そのためTgを必ず持っている。だからDSC測定でTgが観察されなかったとしてもそれは新発見ではなく、運が悪く十分な緩和が起こっていなかったサンプルを測定しただけの話だ。

 

だから、先に述べたようにTg直前で昇温を止め、3分ほどホールドしてやるとTgが現れるようになる。このようなことは、学生時代に経験しておくべき事柄である。社会人になってDSC測定を行い、Tgが現れなくて新発見と騒いでいたら確実に笑われる。

 

このようにガラスは必ずTgを示すが、非晶質体にはアモルファスの金属酸化物のようにTgを示さない物質も存在する。このような非晶質体はガラスにならない。

カテゴリー : 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.08/15 プロセシング(2)

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を反応させて高純度SiCを合成するパイロッットプラントの開発では、化学工学の専門家は一人も携わらなかった。

 

外部の設備メーカーと協力しながら、異形プッシャー炉を開発し、これを特許出願している。この時、それぞれの会社の技術者は、電気工学と合成化学、無機材料化学、機械工学出身で、化学工学について学んだ人は一人もいなかった。

 

異形プッシャー炉のアイデアを提案したのは当方で、図面を書いたのは機械工学の専門家である。電気工学の専門家は、自動化のために必要なセンサー類の配置など当方と打ち合わせながら、その図面に書き入れていった。

 

このとき当方は、シーケンスについて学び、今でも電気回路図を読み取ることが可能である。自宅の電気配線など街の電気屋よりも読み取るのは早い。

 

豊川へ単身赴任しカオス混合プロセスのプラントをたった3ケ月で立ち上げているが、これはヤミで根津の中小企業と3ケ月中古機械を分解しながら勉強した成果である。

 

その中小企業も二軸混練機の自動化プロセスは初めての経験で土日喧々諤々の議論をしながら図面を書いていった。図面については当方が手書きで書いたものを機械工学が専門の電気担当が器用にシーケンスまでも書き入れていた。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.08/10 プロセシング(1)

学生時代に化学工学の授業を受けたが、今思い出すとあの授業は何だったのか、という記憶である。講師の批判をしているのではない。授業の中身である。プラント工学と呼んでもよいような授業だった。

 

現在の応用化学関係のカリキュラムからは化学工学は無くなったという。化学工学科も無くなったようだ。この話を聞いたときに、そうだろうと納得した。

 

化学工学では、化学反応も少し扱っていた。この化学反応を扱っていることで化学工学の体裁が取れていたのかもしれない。とにかく授業を受けていて、やがてこの学問は無くなるという予感がしていた。

 

そもそも分子やその集合体、あるいは一般的には材料を使用できるようにするには、必ず何らかのプロセシングが必要になる。

 

その時、プロセシングを考えるのは、プロセシングの専門家、ということで化学工学分野が考え出されたのだろう。

 

ところが現実には、化学工学の専門家が活躍できたのは狭い分野だけで、多くのプロセシングは、応用化学や合成化学、その他の専攻の専門家により開発されているのではないか。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

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2018.05/25 プログラミング(18)

オブジェクト指向の言語で初めて学ぶのに何がよいのか、という問題に関して、C#を勧める、としてこの連載を書いてきた。

 

記憶が正しければ、型の話まで説明してきた。プログラミング言語の文法書は分厚いものが多い。C#の文法書もそれなりの分厚さで、まずその厚みに圧倒される。

 

しかし、ポイントを把握しておれば、本の厚みを恐れることは無い。前回まで続けて書いてきて、その後ほかの話題を書いていたためにしばらく忘れてしまっていた。

 

実は、C#について、オブジェクト指向の概念を理解したら、型のところまでを十分に勉強すると後が楽になる。構文についてはそれほど難しくない。

 

とにかく型というものがどのような種類があり、どのように定義されているのかをよく記憶しておくことだ。構文については自然と頭に入るが型についてはすぐに忘れたりする。

 

特にC#の言語以外を使っていた人は、C#特有の型を丁寧に記憶することだ。年をとるとこの記憶という作業が大変になる。仕事ではC#のこの説明のように対策をとっているが、少し甘えが気持ちにあると大変だ。

 

朝家を出るときに妻に言われた買い物をお昼に戻るときに忘れていることがたまにある。頼んだほうも忘れているから、昼食の準備を始めるまで思い出さない。

 

準備を始めてマヨネーズが無かった、ソースが無かった、となる。年をとってよかったと思うのは、このようなときに二人とも思い出さないから、あとで買ってこようとなって、夫婦円満に過ごすことになる。

 

このように忘れるリスクを常に考えているので、常用するパソコンのデスクトップは大変である。備忘録が、そこかしこに転がっている。アサイチの仕事の習慣は、この備忘録をごみ箱に捨てることから始まる。

 

さて、C#の型だが、プログラミングをしているときにエディターに便利な機能があるので忘れても大丈夫である。ただ、慣れるために一度はすべて記憶してみることをお勧めする。このすべてを体系立てて一度記憶する作業の効果は年を重ねるにつれ現れてくる。

 

知をどのように身に着けたらよいのか、知をどのように伝承したらよいのかという話になるが、このあたりもコンサルティング可能である。実際に当方の指導を受けたらアイデアが出るようになった、という感謝のメールをいただいている。

カテゴリー : 一般 連載

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2018.03/29 ブリードアウトの秘密(2)

ブリードアウトという現象は、高分子材料で成形体を製造する時に、耐久性や加工性向上のため添加した成分が成形体の表面に滲みだしてくる現象である。

 

少量であれば問題とならないが、べとべと感を感じるまで出てくると商品として使えなくなる場合もある。電子マッサージ器の電極パッドのように常時べとべとしていてほしい場合にはブリードアウトは大切な機能だが、多くの商品では気持ちの悪い手触り感となり敬遠される。

 

ブリードアウトという現象は、高分子材料に添加剤を用いる限りそれを0とすることはできない厄介な問題である。解決方法はブリードアウトしても手触り感が悪く感じない程度に工夫する以外に方法は無い。

 

添加剤を用いる代わりに、その機能を高分子材料の一次構造にグラフとした化合物で代用する、という技術や、添加剤のブリードアウトを遅らせるために高分子材料を化学修飾する方法は、良い方法だがコストがかかる。前者は一応ブリードアウトを0にできるが、いつも使える方法ではない。

 

高分子材料が広く普及してから今日まで、ブリードアウトは困った品質問題としてその対策が検討されてきたが、いまだに解決できていないのが現状である。

 

単相だったPPS/6ナイロンが2相に分離した話を紹介した。この現象で面白いのは、6ナイロンがブリードアウトしていてもよいはずだが、白濁したストランドの表面を触ってみてもべとべとしていない。

 

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2018.03/27 ブリードアウトの秘密(1)

23日の内容に驚かれたアカデミアの方は何人いらっしゃるだろうか。科学的ではないばかげた信頼のない情報とかたずけられた人は、イノベーションを起こせるような研究はできない。

 

特殊な混練プロセスでPPSと6ナイロンが相溶し、透明になったのは事実で、その時のストランドには分析しても結晶らしきものは見当たらなかった。今手元にある白いストランドについては分析をしていないが、おそらくそこにはPPSの結晶と6ナイロン相が観察されるだろう。

 

分析して科学論文にし発表するだけの価値のある内容と思っているが、面倒なのでそれをしない。ただ多少は貢献の意欲があるのでこの欄に紹介している。しかし、当方もまだコンサルタントとして仕事をしたいので、すべての情報を書かない。

 

この欄では知らリズム(昔の流行語チラリズムのパクリ)で世間に興味を持っていただけるような内容を紹介しているが、特許になるぎりぎりのところに関するキモの情報を書いていない。

 

PPSと6ナイロンの相溶については10年以上前に特許出願し、特許として成立しているので書いているが、脆いPPSがしなやかな材料になっていた。

 

このフローリー・ハギンズ理論に反する実験結果は、ブリードアウトとも関係している。しかし、そのすべてをここで書くつもりはないが、まだ知られていないぎりぎりのアウトラインの輪郭を明日から書いてみたい。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2018.03/17 高分子の構造と物性との相関(2)

高分子の構造と物性との相関を考えるときにセラミックスと比較して難しい点は、非晶質相の物性への影響である。セラミックスでは、これが単純だ。例えばガラスならば非晶質の均一固体である。

 

ペロブスカイトの焼き物であれば、非晶質相が粒界に存在するがその影響は力学物性に効くかもしれないが、ペロブスカイトの結晶で現れる機能性に対して大きな影響は無いので結晶構造と機能性との関係を論じればよい。

 

SiC焼結体の熱膨張を40年近く前に研究したが、α-SiCでは結晶軸方向で線膨張率が異なっていたが、焼結体の線膨張ではちょうどその平均が観察され、大変理解しやすかった。

 

しかし、高分子材料における構造と物性との相関はセラミックスほど単純ではない。単純ではないが、経験知があれば、強相関ソフトマテリアルとみなした材料設計が可能となる。

 

このコンセプトで写真会社退職間際の半年間に難燃剤を使用せず、PETが80%以上含まれている樹脂でUL94-V2合格レベルの構造体として使用可能な靭性の高い樹脂を開発した。

 

この開発では事前にOCTAであたりをつけた素材が選ばれ、PET以外の5種類のそれぞれ機能が異なる高分子が検討された。強相関ソフトマテリアルというコンセプトで材料開発を行ったのだが、3ケ月ほどで目標の材料組成を見出すことができた。

 

この技術開発は、一応OCTAで材料設計してあたりをつけた処方の成功事例と言えるかもしれないが、残念ながらOCTAを使わなくても退職後この仕事を見直して考案した弊社が提唱する簡便法でも同様の結果が得られることが分かった。

 

シミュレーションのおかげでできたかどうかよりも、この材料の面白い点は、カオス混合を行うと射出成型性も良好な樹脂となるが、通常の二軸混練機だけの混練では射出成型性が不良の材料となることだ。

 

すなわち混練プロセス依存性の高い材料となった。このような材料は、その技術をブラックボックス化しやすい。また、プロセス発明でありながら、特許に抵触しているかどうかの検出も容易である。

カテゴリー : 連載 高分子

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2018.03/16 カオス混合装置の発明(8)

難燃性ポリウレタン発泡体や、フェノール樹脂断熱天井材、そして高純度SiCの前駆体高分子までリアクティブブレンドを用いて開発して、高剪断と高速回転による分散が分子レベルまでの混合を可能にすることを学んだ。

 

このリアクティブブレンドで何がどのように変化し均一になってゆくのかは、用いた原材料の配合から推定できた。ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂断熱天井材では均一なセルを実現するために界面活性剤が必要だった。

 

しかし、高純度SiCの前駆体高分子では、反応を進行させるための触媒だけを添加すればよく、非相溶系の組み合わせでリアクティブブレンドにおける分子レベルの混合を検討するには適したモデルだった。

 

フェノール樹脂とポリエチルシリケートのχは大きいので、そのまま攪拌しても均一にならない。酸触媒が存在すると反応が進行し、攪拌している溶液が透明になってくる。しかし、どのような酸触媒でも分子レベルの均一化を実現できるのかというとそうではない。

 

また、その他の条件も同様で、混合条件だけでなく、組み合わせるフェノール樹脂や酸触媒により、リアクティブブレンドで得られる物質の均一性は影響を受けた。

 

これは、無機微粒子の混合と比較した時に高分子の混合における特徴を示している。また、低分子の溶媒を用いた分散ではSP値が用いられ、その値で推定されるおおよその分散状態と実際は大きな差異は生じない。しかし、高分子のブレンドではSP値から期待される均一性は、経験では50%程度しか再現されない。

 

また、高分子ではSP値よりもχを用いたほうがよいとされるが、このχについてフローリーハギンズ式から推定される結果とスピノーダル分解速度とは相関しない。このような状況なので、実際の混合プロセスにおける現象は、それを実施してみないとわからないというのが現実である。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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2018.03/14 ドラッカーの遺言(11)

9日、佐川宣寿国税庁長官が辞任した。森友問題に関連した国会対応に丁寧さを欠き審議の混乱を招いた点や、行政文書の管理状況について様々な指摘、さらには今回取りざたされている文書の提出時の担当局長だったことの3つの責任を感じて辞職を申し出たという。

 

さて、この問題は、森友側へ破格の安値で土地売却を行ったことから始まっている。その後「忖度の連鎖」で、最後はこの改ざんという不正、担当者の自殺まで起きた。

 

現在のところ、まだわからないことが多いが、ドラッカーの組織論の観点で、これまでニュースで報じられた事実をもとに、財務省という組織を眺めると、腐った組織と言わざるを得ない。

 

まず、「組織の優劣は、平凡な人間をして非凡なことをなさしめるか否かにある」、とドラッカーは述べている。

 

しかし、財務省には高偏差値の優秀な人材が集まっているにもかかわらず、森友問題では、「安倍」を「安部」と書類に書いていたりする凡ミスをはじめとして、常識では考えられない業務状況である。

 

また、「組織の目的は、均衡と調和ではなく、人のエネルギーの解放と動員にある」とドラッカーの著書には書かれているが、エネルギーの解放どころか、「忖度」という束縛が働く内向きの高エネルギー状態で、とても国民のために成果の出る仕事をしているとは思えない。

 

はたして、財務省は現在のままの組織でよいのだろうか。そのマネジメントも含め、国民は森友問題の推移を見ながら検証しなければいけないと思う。

 

佐川長官の辞任がやや早すぎるのではないか。もし彼が本当に責任を感じているならば、自らの処遇を国民にゆだねるべきだろう。公務員のリーダーとはそのような覚悟があってこそ高給が保証されているのだ。

 

 

 

カテゴリー : 一般 連載

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