チタン酸バリウムというセラミックスは強誘電体として知られている。ところがこの微粒子をポーリングしてポリウレタンと複合化しても、10vol%前後ではそれほど複合体の誘電率は上がらない。
面白いのはポリウレタンのソフトセグメントの活性化エンタルピーが下がり、誘電緩和が早く起きるようになる。
これは、よくわからない現象であるが、1ミクロンほどの粒子でも一次構造のブラウン運動に影響することを示している。
誘電緩和速度が速くなるということは、誘電損失に有利となり、この観点の特許が出ている。
5Gで求められているのは、低誘電率化とtanΔの低減であるが、伝送損失に関しては、誘電率は平方根で影響するが、誘電正接は1次の項で影響する。
ゆえに材料設計にあたり、誘電正接だけでも下げてやろうという時にこの不思議な現象を応用することができる。
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高分子の誘電率を分子設計で制御するときに、科学的で有名なClausius–Mossottiの式がある。光学では屈折率に置き換えた、ローレンツ・ローレンツ式として知られている。
この制約から、誘電率を高分子の誘電率を上げるときにも下げるときにも制約を受けることになるのだが、上げる方についてはペロブスカイトでも混ぜてやれば高分子単体で実現できない領域まで上げることが可能となる。
しかし、2.5より下げる場合には結構むつかしい。これは、セラミックスでも難しく、low k 物質が2000年前後に話題となった。
この時にはシリコーン系の発泡体で実用化されているのだが、高分子でも空隙を入れて低誘電率化する以外に科学的には方法がない。
しかし、周波数領域を限定してやれば方法がありそうにも思われる。どのようなアイデアがあるかは、火曜日のセミナーでお話しするので弊社にお問い合わせください。
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材料の誘電率制御について、これまでHighkからLowk材料への流れが20世紀末から21世紀にかけて起きている。
当時は特に高分子材料に限定されていなくて、シリカの空隙材料が注目された。そして層間絶縁膜として実用化された。
今、高分子の低誘電率化が技術ニーズとして注目されている。そして低誘電率ポリイミドが開発されたりしている。
高分子の高誘電率化では、フッ化ビニリデンの類で実用的な材料が商品化されたが、低誘電率化については、誘電率が3前後の材料が限度で、誘電率2以下となると空隙材料以外では実現が難しい。
ところが、負の誘電率が21世紀になって真剣に議論されるようになり、数年前から特許も出始めている。
負の誘電率については、当方も帯電防止剤の開発や中間転写ベルトの開発で実際に測定してびっくりしている。アカデミアの先生にご相談したら「キワモノ」的だ、とのアドバイスがあったので、インピーダンスに絶対値をつけて発表した。
負の誘電率の「偶然」開発体験から、高分子の低誘電率化の可能性を高める技術になるのではないかとの予感をしている。詳しくは来週火曜日に開催される技術情報会のセミナーで説明するのでご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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始末書をまとめているときに、ホウ酸エステルを合成し、それをポリウレタンの変性材として使用する実験を行ってみた。
ホウ酸エステルを持ち出したのは「温故知新」という行動である。始末書でごたごたしているときに新しいアイデアを考えているゆとりなど無い。
当時は高分子技術において難燃化技術の関心が高まっていた時代であり、古代の難燃化技術について書かれたコラム記事が研究室の隅に放置されていた。
この状態は誰かがそれをすでに検討してダメだったことを示している。すぐに検討された人に尋ねたら、ホウ素系の化合物には高い難燃効果は無いという実験結果だったらしい。
幸運だった。ダメな実験結果から予見される、ダメな実験をやらなくても済んだからである。「温故知新」とは、過去を振り返りそのまま実行することではなく、「新しいコンセプトの下で過去の知見を見直すこと」なのだ。
古きをたずねて、古い技術をそのまま見ていても、古いだけである。新しきを知るためには、過去と異なる視点を持たなければならない。過去と異なる視点とは新しいコンセプトで見つめなおすことである。
すぐにホウ酸エステルが過去に難燃剤として検討されていないことに気がついた。ホウ酸エステルに着眼したのは、無機アルコキシドからガラスを合成する研究が当時の花形テーマだったからで、当方の独創というよりも、情報として周囲にあふれていたからである。
当時の先端の情報をもとに古い現象を見なおした。この段階で、まだ、新しいコンセプトは生まれていない。
自己評価するときに、無能かどうかという能力の捉え方の方が努力目標を設定した時に実現可能性が高くなる、と思っている。
とかく有能であらんとすると高い目標設定をしがちであるが、無能ではないかと自己を見つめるときに、無能にならないように努力する行動を起こすことができる。
ホウ酸エステルについて難燃剤としての検討が過去にされていなかったので、複雑に考えることなく、まずそれを合成することにした。ここで大学4年の時に有機金属合成化学の研究室で学んだ経験が生きた。
配位子という視点で、エステル化反応にジエタノールアミンを用いたのである。未経験者ならばホウ酸エステルの合成にグリセリンとかを選んでエステル化の研究として行うかもしれない。
有機金属化学を1年間学んだ経験があり、当時の研究室の諸先輩の顔を思い出し、無能と笑われないために、迷わずジエタノールアミンとホウ酸の組み合わせを実験している。
そして合成された化合物とリン酸エステルとを組み合わせて加熱する実験を行い、ボロンホスフェートを簡単に合成できることを見出している。
この実験結果は、ホウ酸エステルとリン酸エステルをポリウレタンに添加しておけば、燃焼時の熱で容易に反応してボロンホスフェートができることを示している。
あとはボロンホスフェートの難燃効果を調べれば、新しい難燃化システムの完成である。
たった2日間の実験で、「燃焼時の熱でガラスを生成し、高分子を難燃化する」というコンセプトが生まれた。
新しいコンセプトは、温故知新と学生時代に厳しいがレベルの高い研究室で学んだ知的財産と、実験という体力勝負をいとわない愚直さで生み出された。
学会で発表した時の懇親会で多くの先生が褒めてくださったが、能力というよりも始末書騒動から始まった業務に対する姿勢の変化が大きいと思った。
新しい発明を行うには、コンセプトが重要となるが、汗を流すことをいとわない心がけで、コンセプトを見出したならば、すぐにそれを具体化する行動を起こす必要がある。
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研究開発におけるコンセプトの重要性について、始末書でもめているときに気がついた。ところが、マネージャーが無責任であることはマネジメントにおいて重要な要素の一つかもしれない、と一瞬誤解したことがきっかけである。
この誤解は、有能で責任感のあるマネージャーがそのようにふるまったときに部下のマネジメントとして成功するかもしれないが、本当に無責任な上司のもとでは、その後の災難も予見して部下は行動しなければいけない、という過剰な行動原理まで身に着けることになる。
この体験は、退職前の中間転写ベルトの開発にいたるまで役立っているが、担当者の立場では残酷な結果を生み出す恐れもあり、好ましくない行動原理と思っている。
企業において、多くの場合に部下は上司を選べないので、健全な組織運営のためには、部下の立場でもリスクマネジメントが重要となってくる。
それは、上司の顔色を窺ったり、忖度という気の使い方ではなく、部下と上司の関係においてどのような役割を担当者は果たすべきなのかという発想に基づくものであり、その推進過程では、自分が社長になったつもりでリスクを予見し、上司に「謙虚にかつ果敢に」提案を行う行動が重要となる。
ちなみにドラッカーが言うところのマネジメントの定義とは、人をなして成果を出すことであり、幸運にも頼りないマネージャーを前にした場合にスタッフはこの組織のリスク回避のためにマネージャーを助け自分が頑張らなくては、とモラールアップにつなげなければいけない。
健全なこのような発想ができる様になれば、企業において発生する悲劇を少なくできると思っている。
注意しなければいけないのは、本当に頼りない人を前にしたときに、その人に代わって自分が組織のマネジメントまでも行うつもり(あくまでも「つもり」である。実際のマネジメントは上司を通じて実現する)で仕事を請け負わないと、成果に関わらず、さらなる倍返しの災難が襲う。
新入社員ではあったが、工場試作を成功させても始末書を命じられたので、行動の反省として高校時代から読み続けてきたドラッカーの名言の数々を思い出し、コンセプトの明確化の重要性にたどり着いた。
すなわち、始末書を書く事態になっているのは、研究の目的と意味が十分に周囲へ伝わらず、経済性だけの議論になったためであり、問題となったホスファゼンの研究が、研究所として事業を見据えた明確なコンセプトに基づくもので、この試作の成功により、新たな基盤技術が作られることを始末書に書く必要がある、と気がついたのだ。
今思い出してみても、この始末書騒動は自己の成長のために大変役立った。研究として成功したにもかかわらず、新入社員2年間は下がらない規程になっていた給与が100円下がっていたりしてサラリーマンの苦い思い出となっているが、企業の研究開発というものを社会人1年目で真剣に考えるための貴重なきっかけとなった。
また、この時の経験から、無機材研留学時、正解を書いたにもかかわらず昇進試験に落ちた時、迷わず高純度SiCの合成実験を是が非でも成功させる決断をしている。
体力という自己の強みを生かした過重労働により5日間という短期間で実験を成功させて、給与明細書の数値が大きく変化しただけでなく、社長から2億4千万円の先行投資まで得ている。
この高純度SiCの発明まで当時の業務スタイルにおいて共通している上位のコンセプトは、無機高分子を用いたプロセシングの工夫であり、このコンセプトは学位論文の骨子となった。始末書騒動は、30年ゴム会社で続いた異色の事業ともつながっていた。
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軟質ポリウレタン発泡体難燃化技術のテーマを担当した時に世界初の難燃化技術を提案してほしいと言われた。そこで当時注目されていた新素材ホスファゼンを難燃剤として応用する技術を企画した。
特に明確なコンセプトがあったわけでなく、世界初=当時の先端技術の応用研究=ホスファゼンという単純な連想ゲームである。
工場試作まで成功したが始末書を書かされた話をこの欄で書いている。市販されていない材料を自分で合成して研究テーマを成功させた。ところが、事業性が無い、ということで社内の問題になった。
管理職がテーマとして認めて推進したわけだから、管理職が責任を取るべきなのに、新入社員がやりたいと主張したので新入社員の責任ということになり始末書を書かされたのである。
半年もかけない開発期間で過重労働をして工場試作を成功に導いても始末書である。もちろん新入社員二年間は残業代が出ないのでタダ働きである。
パワハラが問題となる今時にこのような入社間もない社員の扱いを信じてもらえないかもしれないが、事実であり証拠も思い出として残している。
始末書の内容でもめたのだが、新規合成されたホスファゼンでイントメッセント系(当時このような概念は無かった。イギリスの学会誌にも掲載されている)の難燃化システムという世界初の成果を経済的に実現するために、「燃焼時の熱でガラスを生成させ難燃化する」コンセプトを管理職に提案し、それを始末書に書いた。
始末書か企画書かわからないような書類だったが、管理職が喜んで経営陣に提出している。そして半年後には工場試作を成功させよ、と想像される業務量から労災につながるような過重労働を命じてきた。
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下記予定で、試験的にWEBで無料セミナーを開催します。受講希望者はお申し込みください。なお各講座6名と人数制限を設けていますので、先着順とさせていただきます。また、テキストは有料(5000円)で、7月16日までにお振込みください。但しテキストの購入は必須ではありません。
1.7月17日(金)9時30分から11時30分
「高分子の混練技術概論」
講師の著書(定価4800円)がテキストです。
2.7月17日(金)13時30分から15時30分
「高分子の難燃化を事例にマテリアルインフォマティクス概論」
ただいま作成中です。
3.7月18日(土)13時30分から15時30分
「高分子の混練技術概論」
講師の著書(定価4800円)がテキストです。
以上
今回のセミナー参加者募集は終了しました。
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ウトラッキーにより20世紀末伸長流動装置が開発された。二軸混練機の先に取り付けて使用する仕様になっていたが、生産用として普及していない。
原因はその装置の構造にあり、押出量を増やそうとすると装置が大きくなり、実用的ではなくなるからだ。
この装置はその名前の如く、コンパウンドの伸長流動を促し、ナノオーダーレベルで高次構造の設計が可能だ。
伸長流動装置の発明から10年ほどしてカオス混合装置が開発された。これもウトラッキーの装置同様に二軸混練機の先に取り付ける仕様となっている。
ウトラッキーの装置と異なるのは、伸長流動と剪断流動を発生させる仕組みの段数が2-3段しかないので量産用の装置を設計しても伸長流動装置ほど巨大化しない。
この装置は当方が2005年に発明し、それから15年間半導体ベルト用コンパウンドの量産に使用されているが、パッシブな構造のため故障0の生産用として優れた装置だ。
中国ではこのコピー品が勝手に普及し始めたが、国内の生産用はまだ2社だけである。
テスト機用も当初高価だったため、見積書を提出しても販売に結びつかなかったが、加工賃の安い中国の金型メーカーを見つけたので一気に見積価格を下げることができた。
条件は付くが、仕様さえ合えばテスト機用のTダイよりも安価である。ご興味のあるかたは弊社へお問い合わせください。
もし中国のコンパウンドメーカーに市場を奪われた国内のコンパウンドメーカーがあれば、サービスしたいと思っている。
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産業革命以降の技術開発を支えたのは科学であることを否定する人はいない。ただし、科学の方法が登場する以前から技術開発は行われており、それゆえ論理学をベースにしたパラダイムでその開発スピードが加速された、と科学の役割を捉えることができる。
このパラダイムについては、名探偵ホームズが愛読された時代が示すようにすぐに一般にも受け入れられ現代は科学全盛の時代である。
一方40年前に登場した刑事コロンボでは事件解決にホームズとは異なるパラダイムが存在することを示しただけでなく、物語の最初に犯人と事件の情報を視聴者にすべて示すという手法で、ホームズとは異なる事件解決のプロセスを楽しませてくれた。
実は、マテリアルズインフォマティクスは、この刑事コロンボの登場と同様に捉えると理解しやすい。
すなわちホームズはベーカー街221Bで仮説を設定して事件に臨むスタイルを特徴としたが、コロンボは泥臭く情報を集めて事件を解決した。
マテリアルズインフォマティクスによる材料設計では材料データベース(情報)が問題解決の最初に位置し、その後のデータ処理に雀の巣のような頭(コロンボは癖毛)ではなくコンピュータを用いるのだ。
その用い方も従来の仮説を検証するといったパラダイムと異なり、シミュレーションで機能を確認するというパラダイムとなっている。
3月31日開催のセミナーでは、マテリアルインフォマティクスを実務に導入するにあたり、簡便に利用できる多変量解析やタグチメソッドの概略を「わかりやすく」説明するとともに、それらを用いて材料設計を行ってきた演者の事例を中心にマテリアルズインフォマティクスにより開発効率が加速される実感を伝授する。
無機材料から有機材料まで実用化した経験から幾つかの事例を選び、材料技術者以外の方にも参考になるセミナーを目指す。詳しくはお問い合わせください。
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