中間転写ベルトの押出成形の現場でボーっと眺めていたら、突然工場内の騒音の音色が変わった。
この音色の変化に対して当方が敏感に対応できたのは、自宅で仕事をするときに、いつも音楽を聴きながら仕事をしていた習慣のおかげである。
金属音が中心の高域成分の多い工場内の騒音が、ボムボムという低域成分の多い音に変わった。イメージとして寺井尚子からロンカーターに変わったような感じだ。
この音の変化の原因は、一日の規定の生産本数を終了し、単軸押出機のシリンダー内に残ったコンパウンドを押し出したいために、押出速度を早めたからである。
PPSというポリマーは結晶化しやすいので、生産時の金属音はベルトが押出されて冷却後一本一本採取されるときや、押し出し後断裁されるときのほんの一瞬力がかかる時に出ている。
生産終了後は、一本一本丁寧に採取はしていないが、適当な長さになるとはさみで乱暴に切り取っている。すなわち、生産終了後のほうが本来金属音がうるさくなってもよいような状況だ。
本来騒々しくなってもよいような状況で、逆に金属音が無くなり落ち着いた音質に変化していた。現場の人たちはこの変化を日常の変化として慣れっこになっていたが、当方には大変不思議な変化に思われた。(明日に続く)
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先日小鯛の笹漬けの話を書いたら質問が届いた。質問の内容はマンペイさんの即席ラーメン以外に具体例はあるのか、という質問である。
当方の開発した技術は、ゴム会社で30年間事業が続いた高純度SiCの技術はじめ多くの技術は、試行錯誤による独創の成果である。思いつきと言ってもよいような技術もある。
非科学的な表題の技術も、当方の営みから生まれた思いつき技術の一つである。以前この欄で紹介しているが、この技術は、豊川へ単身赴任が決まり、単身赴任先の下見のため現場でボーと中間転写ベルトの押出成形を眺めていて思いついた技術である。
PPS中間転写ベルトという技術テーマは、写真会社が他の会社と統合されたときにお荷物テーマの一つだった。
このテーマに終止符を打つことを期待されて当方が前任者から技術リーダーを引き継ぐ役目として研究所から派遣された。
その状況は、このテーマが成功し生産が始まったときに、本来研究所で開発が終了していなければならなかった技術が完成していなかったために中間転写ベルトの生産に影響を与えていることからも明らかである。
すなわち、当方が開発に失敗しテーマが終了することを見込んで、研究所の担当者は中間転写ベルトに必要なある技術の開発テーマを中断していた。
しかし、当方が技術開発に成功したものだから、慌てて開発を再開したが、基盤技術が完成したと言われているのに納期に間に合わなかった。このあたりには**技術ゆえに悲哀あふれる笑い話があるが、他人の技術なのでここで書かない。
ところで、表題の技術は中間転写ベルトの現場観察で生まれているが、何故6年近く誰も技術アイデアを思いつくことができなかったのか。
それは非科学的な現象だったからだ。フローリー・ハギンズ理論という少し適当な、それでいて重要な理論が高分子の教科書に載っており、この理論で表題の技術は否定される。
当方がノーベル賞学者の理論に対して懐疑的に見ている理由については、以前この欄に書いているが、少なくとも実際の生産における非平衡状態においてはこの理論を適用するのは技術開発の障害となる。(明日に続く)
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高分子の燃焼試験機として自動酸素指数測定装置が販売されていた話を以前書いている。最近そのような装置が販売されているか知らないが、この装置は素人の願望を実現したような装置だった。
ポリウレタン発泡体のLOIは、この装置で測定できなかったが、発泡体をプレスし密度をあげた形状にすれば、この装置で測定可能となった。
このサンプルの状態で計測して、誤差が0.5程度の精度で自動計測できる機械だということを理解できた。ただし、この装置で同じサンプルを手動で計測すると、誤差は0.25程度であり、計測時間も20%程度短くなった。
すなわち、自動計測は精度を高めるため、と説明書に書いてあるが、そのため各種部品が一般の酸素指数測定装置よりも高精度の部品が使われ手動によりさらに精度を上げられたのだ。
するとこの装置の残るメリットは酸素指数法という評価技術を理解していない素人向けという点だけである。
研究開発部門でこのような装置を導入していることにびっくりしたが、せっかく手動計測できるように改良したのに自動測定で行え、と指示が出たことでさらに驚いた。
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2月から3月にかけて下記セミナーが開催される。今週金曜日のセミナーはシリコーンポリマーに関するセミナーで、昨年台湾で開催された一日セミナーの内容を見直し、LIMSの内容を補強している。
シリコーンについては、LIMSによるゴム以外にミラブルタイプのゴムがあるが、LIMSの市場が大きい。またシリコーンゴム以外にも界面活性剤やカップリング剤、光散乱樹脂にも利用されているシリコーン球などその種類や応用分野は多く、全体を俯瞰したセミナーが無いので企画している。
当方はシリコーン企業に勤務したことは無いが、シリコーン界面活性剤やシリコーンカップリング剤、シリコーン球、シリコーンオイル、シリコーンLIMS、ポリシランのSiC繊維など30年以上の実務で毎年様々なシリコーンを扱ってきた。
この当方の経験から見たシリコーン化学について経験知の公開やまとめを行いたいと考えている。弊社へ問い合わせていただければ手続き可能です。
記
1.よくわかるシリコーンの基礎から応用技術
日時 2019年2月8日(金)10時30分から16時30分
場所 亀戸文化センター
受講料 45,000円
2.開発手法を中心にした信頼性工学の基礎
日時 2019年3月5日 (火)10時30分から16時30分
場所 千代田プラットフォームスクエアー
受講料 50,000円
3.高分子の難燃化技術
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
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オーディオが趣味の50代以降の人ならば、このオーディオ評論家のお名前はご存じだろう。故人ではあるが、今でも信奉者のいるカリスマ評論家である。
オーディオは趣味ではないが、この評論家について学生時代から知っていた。胡散臭いオーディオ評論を書いていたからである。とにかくその文章からは、彼だけが正しくてメーカーの技術者はすべて間違っているような印象しか受けなかった。
1970年代にオーディオを事業としているメーカーはスピーカーについて独自理論を展開し、各メーカーの宣伝媒体で発表していた。彼は理論武装されたそれらの製品を自分の試作スピーカーと比較し、自分の開発したスピーカーが優れていることを示しながら悦に入った文章を書いていた。
彼の書いた評論をすべて読んだわけではないが、当方が読んだ評論はすべてそんな調子だった。だから胡散臭いと感じたのである。しかしゴム会社に入社し、この胡散臭い評論家よりも胡散臭い科学者ドクター中松を知り、長岡鉄男氏をまっとうな技術評論家と感じるに至った。
彼の傑作スピーカーと称されるスワンは、フルレンジスピーカーの一つの到達点の形かもしれない。点音源の理想と自然な低音の実現に成功している。
このスワンに至るまで試行錯誤で様々なスピーカーの箱を設計し、オーディオ雑誌で発表されていたが、その設計手法は評論を読む限り、科学的というよりも技術的スタイルだった。
残念ながら彼の製作したスピーカーをすべて聞いたことが無いが、彼の思想を追及している音工房Zという会社のスピーカーを視聴して彼が胡散臭い評論家というよりも実践主義の技術者だったという評価に変わった。
スピーカーという機械装置を科学的に完成することは難しいと思う。仮に音に関する科学的パラメーターを計測し、それらパラメーターを完璧な状態にしたとしても人の耳の形状は皆異なるし、音に対する嗜好も異なる。そのような状況の中で一つの真理を確立することは困難だろう。
B&Wは、一応それを実現したように評価されているが、一つのスピーカーがすべての音楽ソースに対して完璧な音を聴かせてくれるわけではない。やはり音楽ソースに対して得意不得意が自動車1台の価格と変わらないようなスピーカーでも存在する。
年をとり劣化した耳には、今年のONTOMO付録のスピーカーに音工房Zの2万円の箱を組み合わせた製品が今のところ人生で一番満足できたスピーカーに感じる。
アールクルーのギターを聴きながら故長岡鉄男氏を思い出したが、彼の評論は実験に裏打ちされた内容であり、彼自身スワンも含め自分の設計したスピーカーを一度は誉めつつも、すぐに否定し新たなスピーカーを開発し続けている。この故人の姿勢は、オーディオの世界が科学では解決できない問題を多数含んでいるかのように思わせる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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40年以上前空前のオーディオブームが起きている。トリオ、パイオニア、オンキョー、ビクターなどオーディオ専業メーカー以外に家電メーカーのすべてがローディーやオットー、オーレックス、ダイヤトーン、パナソニックなどの独自ブランドを立ち上げていた時代である。
その後ブラウン管TVの高画質化大画面化ブームでAVの時代になり、デジタル化の波の中でオーディオメーカーが淘汰されていった。テープデッキで有名だったアカイやアンプで有名だったサンスイのような倒産したメーカーもあればパイオニアとオンキョーのように経営統合したメーカーもある。
また、日本で誕生しながら海外だけで展開しているローテルのようなメーカーもある。アイワはソニーの傘下に入った。カートリッジメーカーのオーディオテクニカは細々と事業を行っている。残念ながら当方の記憶にあるのは大衆オーディオメーカーだけで高級オーディオメーカーの動向は知らない。
団塊の世代を中心にまたブームが起きるのか、と言われて数年間その兆候があるが、面白いのは海外のスピーカー専業メーカーの躍進と国内自作サポートメーカーの勃興である。スピーカーパーツだけの販売もインターネットでは行われている。
しかし、奇妙なのはオーディオ雑誌で、旧態依然とした編集で生きている化石のように書店に並んでいる。どうもAVとの統合とは別の流れとしてオーディオという趣味が細々と昔のまま続いているようだ。
オーディオ業界を横目で見ながらジャズやブルース、ウェスタンフォークが好きで長年聞いてきた。デジタルの時代になりテープやレコードが邪魔で捨てようと思ったがレコードのジャケットには未練があったので捨てきれず、テープだけ音をデジタルで保存しメディアをすべて廃棄した。
デジタル化はオーディオの世界にイノベーションをもたらしたが、不思議なことにスピーカーの技術は昔のままである。平面スピーカーも登場したりしたが主流にはなっていない。
KRIの講演会に招待されたときに、パナソニックの執行役員の講演を聴いた。パナソニックでは新しい再生技術を開発しているとのこと。音場の再生に注力した大学発のアメリカのベンチャー企業ボーズがそれほどオーディオマニアに支持されなかったがパナソニックの試みはイノベーションを起こせるのか?
アカデミアの成果で個性的なスピーカー開発を行っているボーズがそれほど成功していないオーディオスピーカーの発展史を見ると、オーディオの世界は未だに科学的と言えない技術が重視されている分野のように感じる。
その結果、オーディオ雑誌に載っている評論家の機器評価を見ると、値段の高い機器が高評価を得る傾向にある。また、B&Wのスピーカーに至っては値段が高くなるほど聴感上の違いを利用してよいスピーカーに思えるように商品設計している(注)。
要するに良い音を聴くためには高級オーディオを買わなければいけない、という誤解で現在のオーディオマーケットは形成されている。スピーカー自作メーカーの勃興はそのような事情を背景にしているが、けしからんことにパナソニックはマーケットの状況から富裕層のデバイス開発を目指しているという。
オーディオ分野は、お金ではなく感性の世界のように思うので、高級オーディオを目指すのではなく誰でも気軽に良い音楽を楽しめるようにすることがあるべきイノベーションの姿である。戦略として高級オーディオで成果を出してから、という考え方を理解できないわけではないが、本当に技術があるならばお金ではなく戦略として感性を切り口に誰でも良い音を楽しめるオーディオを目指して技術開発をすべきである。ちなみにパナソニックのオーディオ分野の執行役員はピアニストでCDを数枚発表している。
(注)自作サポートメーカーの音工房Zの視聴会では、B&Wの高級スピーカーと自作品との比較視聴を行っている。そこでびっくりしたのは5000円の雑誌の付録のスピーカーが100万円前後のスピーカーと変わらない音楽を聞かせてくれた。低域にやや物足りなさを感じるがサブウーファーを併用すれば解決する。オーディオは価格でその価値が決まらない世界である。自作すれば20万円前後となる市販パーツを使った一本100万円を超える価格のスピーカーもあるので購入時には注意をしたい。視聴をすれば弊社のコンサルティング料がいかに良心的価格か、と感じる商品である。
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カオス混合機の見積もりのため、昔福井大学客員教授を務めた時期に、大学院で学んでいた中国人学生の勤務する金型メーカーにお願いしてみた。
詳細見積もりを見て驚いたのは、日本と変わらない加工費となっている部品と日本よりも安い価格に見積もられている部品とが存在したことだ。
いろいろ調べてみると、旋盤ですべて加工できる製品は、日本と同じ価格のレベルか、あるいは構造が単純な場合に若干日本が安い。
NC工作機械を使用する製品では、日本よりもかなり安い。カオス混合機は設計形状を工夫し旋盤で全て加工できる場合には価格差は出ないが、特殊なカオス混合機はNC工作機械でなければ加工できないので、その価格差から金型加工における中国と日本の事情を知ることができた。
中国のこの金型メーカーは、日本の某電機メーカーも活用している中国でもトップの金型メーカーで、作業者は皆若く、NC工作機械も先端設備が入っている。
知人の説明では、弊社の紹介であれば、成形加工用樹脂金型も特別安価に提供できるという。
もし、射出成形メーカーで金型のコストダウンを考えられている方は一度お問い合わせください。この中国の金型メーカーをご紹介させていただきます。
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自然界の現象から機能を取り出し、その機能の繰り返し再現性を確認してロバストを高める効率的方法の一つがタグチメソッドである。タグチメソッドではシステムの基本機能のロバストを改善できる制御因子を見出し、その基本機能の制御因子を最適化してシステムのロバストを改善する。
ここでいつも問題になるのがシステムの基本機能である。自動車であれば、その基本機能は、「止まるシステム」と「曲がるシステム」、「走るシステム」となる。今は乗り心地の悪い車は売れないから、ここに「乗り心地システム」も加わる。
自動車を商品として捉えたときに、そのほかの機能も考える必要があり、自動車というシステムが複数のサブシステムで組み立てられていることに気がつく。そして、このサブシステムを考えたり、それぞれのシステムについて基本機能が何かを考えるのが故田口先生が考えられた技術者の研究スタイルである。
転職してすぐに田口先生のご講演を直接拝聴する機会があった。そのときすでにタグチメソッドを導入されていた企業の方がしたり顔で基本機能を最適化したが、うまくゆかなかった、何故か、と質問された。このような質問に対して田口先生はひるむことなく一刀両断に、それは基本機能が間違っている、と応えられてそれ以上その質問を取りあおうとされなかった。
聴衆はその迫力に圧倒されたが、田口先生のこの迫力は一方で誤解を生んだ。システムにはたった一つの基本機能があり、その基本機能を最適化すればすべての商品品質項目のロバストが高くなる、とは田口先生がよく言われた言葉だが、これがタグチメソッドを難解なものとした。
設立初期に発行された品質工学フォーラムの雑誌に竹とんぼのシステムについて基本機能を考え、それを最適化してもうまくゆかなかった事例が載っており、その落ちが「だから基本機能は難しい」となっていた。タグチメソッドを推進されていた人たちも教条主義的にこのようなことを書いていたので難解さをますます加速した。
さてこの記事はどこがおかしいのか。小生は当時編集者に問い合わせたが、執筆者に問い合わせてくれ、となった。そこで執筆者に問い合わせたが、執筆者は複数の座談会のまとめだから、となり、あほらしいからそれ以上追及するのをやめた。
この裏話をいまここに書くのは、もう二十年以上前の話だから差支えが無いと判断し、正しい田口先生の考えを伝えたいからである。当時の教条主義的な、またこのメソッドについてある意味宗教のような指導をされた田口先生の取り巻きの功罪を指摘するためではない。
竹とんぼでもそのシステムは自動車同様に複数存在するのでたった一つのシステムで考えた基本機能の最適化で、とてもそれだけでよく飛ぶ竹とんぼになるとは思えない。竹とんぼは単純な形状であるが、自動車のように自力で動いているシステムだけでできているわけではないのだ。
飛び立つ瞬間に飛ぶ力を取得するシステムやそのエネルギーを元に回転して飛んでいるときに外力から受ける力をいなすシステム、そのエネルギーで自分自身を飛ばすシステムなど、プロペラ一枚の単純な竹トンボについて、まずそれを構成するサブシステムの解明が必要になる。そして解明されたそれぞれのシステムについて一つ一つ基本機能を考えなければいけない。
これが難しい作業なのであり、基本機能が決まってから、そのロバストを上げるためのタグチメソッドは難解ではないのだ。田口先生はこのあたりを、基本機能を考えるのは技術者の責任と明確に述べており、タグチメソッドと切り離されていた。
田口先生は多数の分野で活躍された経験から、当方がご指導いただいたときには、システムの具体的な話は技術者が考えた内容をそのまま受け入れるスタイルになっていた。そして基本機能を追求される問いを技術者に対してされていた。
当方は、この時、システムのとらえ方をサブシステムまで分解して考えなければいけないんではないかと質問したら、それは当たり前だ、と笑われた。先生は当方の無能を笑われたが、実はタグチメソッドの初学者が難しいのは、この「システム」という概念である。
QCではシステムをサブシステムに分解する方法を教えているが、田口先生はそれを知っている前提で話をされていたのだ。ここを理解できると基本機能が最適化されたときに商品品質のロバストが向上するという説明に納得できる。
また、プロペラ一枚の単純な構造の竹とんぼでも複数のシステムに分解しそれぞれの基本機能を最適化しない限り、ロバストを上げることができない。基本機能が難しいということを伝えようとした品質工学フォーラムの記事は、それを書いた人たちが、技術というものをよく理解していなかったため、おかしな内容になったと思われる。
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高分子に微粒子を分散したときに微粒子のクラスター(凝集、つながり)が生成する。クラスターの生成確率は添加量により変化する。微粒子が真球であれば25vol%を過ぎたあたりから生成し、30vol%を過ぎるとクラスターの生成が激しく変化するようになる。
そして50vol%を過ぎたあたりから安定するようになる。これがパーコレーションという現象で、微粒子が導電性粒子であれば、30vol%を過ぎたあたりで急激に高分子材料の抵抗が下がる、すなわち電圧をかければ電気が流れるようになる。
電気が沁みだしてきたような現象なので、コーヒーを抽出する現象(コーヒー抽出機はパーコレーターと呼ばれている)と似ているのでパーコレーションと名付けられた。
このパーコレーション転移という現象は、粒子と高分子との相互作用が無ければ、例えばコンピューターでシミュレーションを行えば確率過程で進行する。すなわち真球の微粒子を高分子へ分散したときには30vol%前後から50vol%前後の領域で物性が大きくばらつくようになる。
数学者の間では1950年代にすでに議論されていた。この時はカリフォルニアの山火事の考察からだった、と言われている。すなわち山火事において木々のつながりがあるとそのつながりに沿って火が走るので、その現象解析にパーコレーションという概念が用いられその性質が議論された。
高分子材料の世界では、1990年前後までパーコレーションの概念は知られておらず、混合則で物性変化が議論されていた。パーコレーションを高分子材料の世界に持ち込んだのはゴム会社が初めての可能性がある。
事務機用の帯電ローラの開発でパーコレーション転移の概念が混合則に代わって用いられるようになった。また電気粘性流体ではまさにクラスター生成でレオロジーが大きく変化する機能を用いていた。
現在パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
PRセミナーについてはこちら【無料】
本セミナーについてはこちら【有料】
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カラーレーザープリンターやカラー複写機の高級機には、中間転写ベルトという部品が使われている。中間転写ベルトを使わず直接紙に転写する直接転写方式もあるが少し画質が落ちるので高級機には使用されていない。このベルトは帯電しやすく放電しやすいように10の10乗から10の9乗Ωcmの体積固有抵抗となるように設計されている。
ベルトはこの抵抗の範囲で均一に製造できないと画質が悪くなるので、ポリイミド(PI)にカーボンを分散し溶媒キャスト製膜されたベルトを使用している。面白いのはカーボンが球状のクラスターを形成し、それが島状に分散した高次構造となっていたことだ。
これを熱可塑性樹脂を用いて押出成形で製造するとPIの溶媒キャスト製膜のような構造を簡単に造ることができず、パーコレーション転移と格闘することになる。パーコレーション転移の性質をよく知っていると、なぜPIでうまくゆくのか考えるが、わからないとボーっと長期間格闘することになる。
10年以上前にある人から仕事を引き継いだ時に、6年検討してきたのでよろしく頼む、と言われたが製品化まで半年しかない状態だった。酸化スズゾルを用いた帯電防止層の開発でパーコレーション転移について十分に研究していたので、前任者の仕事の進め方、すなわち外部から購入していたコンパウンドではゴールにたどり着けないことはすぐにわかった。
コンパウンドの段階でPIと同じ高次構造になっていなければ、押出成形でPIと同じ高次構造のベルトを製造することは不可能だが、某R社のコンパウンドは無茶苦茶な構造になっていた。およそ構造制御されたコンパウンドとは言えない状態だった。それでもコンパウンドメーカーの技術者は、最良だという。いろいろ議論して分かったことは、彼が混練の教科書でよく勉強していたことだった。
当時の(今でもそうだが)混練の教科書にパーコレーションの問題など全然扱っていない。高分子に粉末を分散した場合にはそのクラスター形成は必ず問題になるはずだが、分配混合と分散混合でお茶を濁しているような状態だ。このような教科書をいくら読んでもカーボンを分散した半導体高分子をロバスト高く設計できない。
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