2月から3月にかけて下記セミナーが開催される。今週金曜日のセミナーはシリコーンポリマーに関するセミナーで、昨年台湾で開催された一日セミナーの内容を見直し、LIMSの内容を補強している。
シリコーンについては、LIMSによるゴム以外にミラブルタイプのゴムがあるが、LIMSの市場が大きい。またシリコーンゴム以外にも界面活性剤やカップリング剤、光散乱樹脂にも利用されているシリコーン球などその種類や応用分野は多く、全体を俯瞰したセミナーが無いので企画している。
当方はシリコーン企業に勤務したことは無いが、シリコーン界面活性剤やシリコーンカップリング剤、シリコーン球、シリコーンオイル、シリコーンLIMS、ポリシランのSiC繊維など30年以上の実務で毎年様々なシリコーンを扱ってきた。
この当方の経験から見たシリコーン化学について経験知の公開やまとめを行いたいと考えている。弊社へ問い合わせていただければ手続き可能です。
記
1.よくわかるシリコーンの基礎から応用技術
日時 2019年2月8日(金)10時30分から16時30分
場所 亀戸文化センター
受講料 45,000円
2.開発手法を中心にした信頼性工学の基礎
日時 2019年3月5日 (火)10時30分から16時30分
場所 千代田プラットフォームスクエアー
受講料 50,000円
3.高分子の難燃化技術
日時 2019年3月29日
場所 大井町きゅりあん
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 電気/電子材料 高分子
pagetop
オーディオが趣味の50代以降の人ならば、このオーディオ評論家のお名前はご存じだろう。故人ではあるが、今でも信奉者のいるカリスマ評論家である。
オーディオは趣味ではないが、この評論家について学生時代から知っていた。胡散臭いオーディオ評論を書いていたからである。とにかくその文章からは、彼だけが正しくてメーカーの技術者はすべて間違っているような印象しか受けなかった。
1970年代にオーディオを事業としているメーカーはスピーカーについて独自理論を展開し、各メーカーの宣伝媒体で発表していた。彼は理論武装されたそれらの製品を自分の試作スピーカーと比較し、自分の開発したスピーカーが優れていることを示しながら悦に入った文章を書いていた。
彼の書いた評論をすべて読んだわけではないが、当方が読んだ評論はすべてそんな調子だった。だから胡散臭いと感じたのである。しかしゴム会社に入社し、この胡散臭い評論家よりも胡散臭い科学者ドクター中松を知り、長岡鉄男氏をまっとうな技術評論家と感じるに至った。
彼の傑作スピーカーと称されるスワンは、フルレンジスピーカーの一つの到達点の形かもしれない。点音源の理想と自然な低音の実現に成功している。
このスワンに至るまで試行錯誤で様々なスピーカーの箱を設計し、オーディオ雑誌で発表されていたが、その設計手法は評論を読む限り、科学的というよりも技術的スタイルだった。
残念ながら彼の製作したスピーカーをすべて聞いたことが無いが、彼の思想を追及している音工房Zという会社のスピーカーを視聴して彼が胡散臭い評論家というよりも実践主義の技術者だったという評価に変わった。
スピーカーという機械装置を科学的に完成することは難しいと思う。仮に音に関する科学的パラメーターを計測し、それらパラメーターを完璧な状態にしたとしても人の耳の形状は皆異なるし、音に対する嗜好も異なる。そのような状況の中で一つの真理を確立することは困難だろう。
B&Wは、一応それを実現したように評価されているが、一つのスピーカーがすべての音楽ソースに対して完璧な音を聴かせてくれるわけではない。やはり音楽ソースに対して得意不得意が自動車1台の価格と変わらないようなスピーカーでも存在する。
年をとり劣化した耳には、今年のONTOMO付録のスピーカーに音工房Zの2万円の箱を組み合わせた製品が今のところ人生で一番満足できたスピーカーに感じる。
アールクルーのギターを聴きながら故長岡鉄男氏を思い出したが、彼の評論は実験に裏打ちされた内容であり、彼自身スワンも含め自分の設計したスピーカーを一度は誉めつつも、すぐに否定し新たなスピーカーを開発し続けている。この故人の姿勢は、オーディオの世界が科学では解決できない問題を多数含んでいるかのように思わせる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
pagetop
40年以上前空前のオーディオブームが起きている。トリオ、パイオニア、オンキョー、ビクターなどオーディオ専業メーカー以外に家電メーカーのすべてがローディーやオットー、オーレックス、ダイヤトーン、パナソニックなどの独自ブランドを立ち上げていた時代である。
その後ブラウン管TVの高画質化大画面化ブームでAVの時代になり、デジタル化の波の中でオーディオメーカーが淘汰されていった。テープデッキで有名だったアカイやアンプで有名だったサンスイのような倒産したメーカーもあればパイオニアとオンキョーのように経営統合したメーカーもある。
また、日本で誕生しながら海外だけで展開しているローテルのようなメーカーもある。アイワはソニーの傘下に入った。カートリッジメーカーのオーディオテクニカは細々と事業を行っている。残念ながら当方の記憶にあるのは大衆オーディオメーカーだけで高級オーディオメーカーの動向は知らない。
団塊の世代を中心にまたブームが起きるのか、と言われて数年間その兆候があるが、面白いのは海外のスピーカー専業メーカーの躍進と国内自作サポートメーカーの勃興である。スピーカーパーツだけの販売もインターネットでは行われている。
しかし、奇妙なのはオーディオ雑誌で、旧態依然とした編集で生きている化石のように書店に並んでいる。どうもAVとの統合とは別の流れとしてオーディオという趣味が細々と昔のまま続いているようだ。
オーディオ業界を横目で見ながらジャズやブルース、ウェスタンフォークが好きで長年聞いてきた。デジタルの時代になりテープやレコードが邪魔で捨てようと思ったがレコードのジャケットには未練があったので捨てきれず、テープだけ音をデジタルで保存しメディアをすべて廃棄した。
デジタル化はオーディオの世界にイノベーションをもたらしたが、不思議なことにスピーカーの技術は昔のままである。平面スピーカーも登場したりしたが主流にはなっていない。
KRIの講演会に招待されたときに、パナソニックの執行役員の講演を聴いた。パナソニックでは新しい再生技術を開発しているとのこと。音場の再生に注力した大学発のアメリカのベンチャー企業ボーズがそれほどオーディオマニアに支持されなかったがパナソニックの試みはイノベーションを起こせるのか?
アカデミアの成果で個性的なスピーカー開発を行っているボーズがそれほど成功していないオーディオスピーカーの発展史を見ると、オーディオの世界は未だに科学的と言えない技術が重視されている分野のように感じる。
その結果、オーディオ雑誌に載っている評論家の機器評価を見ると、値段の高い機器が高評価を得る傾向にある。また、B&Wのスピーカーに至っては値段が高くなるほど聴感上の違いを利用してよいスピーカーに思えるように商品設計している(注)。
要するに良い音を聴くためには高級オーディオを買わなければいけない、という誤解で現在のオーディオマーケットは形成されている。スピーカー自作メーカーの勃興はそのような事情を背景にしているが、けしからんことにパナソニックはマーケットの状況から富裕層のデバイス開発を目指しているという。
オーディオ分野は、お金ではなく感性の世界のように思うので、高級オーディオを目指すのではなく誰でも気軽に良い音楽を楽しめるようにすることがあるべきイノベーションの姿である。戦略として高級オーディオで成果を出してから、という考え方を理解できないわけではないが、本当に技術があるならばお金ではなく戦略として感性を切り口に誰でも良い音を楽しめるオーディオを目指して技術開発をすべきである。ちなみにパナソニックのオーディオ分野の執行役員はピアニストでCDを数枚発表している。
(注)自作サポートメーカーの音工房Zの視聴会では、B&Wの高級スピーカーと自作品との比較視聴を行っている。そこでびっくりしたのは5000円の雑誌の付録のスピーカーが100万円前後のスピーカーと変わらない音楽を聞かせてくれた。低域にやや物足りなさを感じるがサブウーファーを併用すれば解決する。オーディオは価格でその価値が決まらない世界である。自作すれば20万円前後となる市販パーツを使った一本100万円を超える価格のスピーカーもあるので購入時には注意をしたい。視聴をすれば弊社のコンサルティング料がいかに良心的価格か、と感じる商品である。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
pagetop
カオス混合機の見積もりのため、昔福井大学客員教授を務めた時期に、大学院で学んでいた中国人学生の勤務する金型メーカーにお願いしてみた。
詳細見積もりを見て驚いたのは、日本と変わらない加工費となっている部品と日本よりも安い価格に見積もられている部品とが存在したことだ。
いろいろ調べてみると、旋盤ですべて加工できる製品は、日本と同じ価格のレベルか、あるいは構造が単純な場合に若干日本が安い。
NC工作機械を使用する製品では、日本よりもかなり安い。カオス混合機は設計形状を工夫し旋盤で全て加工できる場合には価格差は出ないが、特殊なカオス混合機はNC工作機械でなければ加工できないので、その価格差から金型加工における中国と日本の事情を知ることができた。
中国のこの金型メーカーは、日本の某電機メーカーも活用している中国でもトップの金型メーカーで、作業者は皆若く、NC工作機械も先端設備が入っている。
知人の説明では、弊社の紹介であれば、成形加工用樹脂金型も特別安価に提供できるという。
もし、射出成形メーカーで金型のコストダウンを考えられている方は一度お問い合わせください。この中国の金型メーカーをご紹介させていただきます。
カテゴリー : 一般 宣伝 電気/電子材料 高分子
pagetop
自然界の現象から機能を取り出し、その機能の繰り返し再現性を確認してロバストを高める効率的方法の一つがタグチメソッドである。タグチメソッドではシステムの基本機能のロバストを改善できる制御因子を見出し、その基本機能の制御因子を最適化してシステムのロバストを改善する。
ここでいつも問題になるのがシステムの基本機能である。自動車であれば、その基本機能は、「止まるシステム」と「曲がるシステム」、「走るシステム」となる。今は乗り心地の悪い車は売れないから、ここに「乗り心地システム」も加わる。
自動車を商品として捉えたときに、そのほかの機能も考える必要があり、自動車というシステムが複数のサブシステムで組み立てられていることに気がつく。そして、このサブシステムを考えたり、それぞれのシステムについて基本機能が何かを考えるのが故田口先生が考えられた技術者の研究スタイルである。
転職してすぐに田口先生のご講演を直接拝聴する機会があった。そのときすでにタグチメソッドを導入されていた企業の方がしたり顔で基本機能を最適化したが、うまくゆかなかった、何故か、と質問された。このような質問に対して田口先生はひるむことなく一刀両断に、それは基本機能が間違っている、と応えられてそれ以上その質問を取りあおうとされなかった。
聴衆はその迫力に圧倒されたが、田口先生のこの迫力は一方で誤解を生んだ。システムにはたった一つの基本機能があり、その基本機能を最適化すればすべての商品品質項目のロバストが高くなる、とは田口先生がよく言われた言葉だが、これがタグチメソッドを難解なものとした。
設立初期に発行された品質工学フォーラムの雑誌に竹とんぼのシステムについて基本機能を考え、それを最適化してもうまくゆかなかった事例が載っており、その落ちが「だから基本機能は難しい」となっていた。タグチメソッドを推進されていた人たちも教条主義的にこのようなことを書いていたので難解さをますます加速した。
さてこの記事はどこがおかしいのか。小生は当時編集者に問い合わせたが、執筆者に問い合わせてくれ、となった。そこで執筆者に問い合わせたが、執筆者は複数の座談会のまとめだから、となり、あほらしいからそれ以上追及するのをやめた。
この裏話をいまここに書くのは、もう二十年以上前の話だから差支えが無いと判断し、正しい田口先生の考えを伝えたいからである。当時の教条主義的な、またこのメソッドについてある意味宗教のような指導をされた田口先生の取り巻きの功罪を指摘するためではない。
竹とんぼでもそのシステムは自動車同様に複数存在するのでたった一つのシステムで考えた基本機能の最適化で、とてもそれだけでよく飛ぶ竹とんぼになるとは思えない。竹とんぼは単純な形状であるが、自動車のように自力で動いているシステムだけでできているわけではないのだ。
飛び立つ瞬間に飛ぶ力を取得するシステムやそのエネルギーを元に回転して飛んでいるときに外力から受ける力をいなすシステム、そのエネルギーで自分自身を飛ばすシステムなど、プロペラ一枚の単純な竹トンボについて、まずそれを構成するサブシステムの解明が必要になる。そして解明されたそれぞれのシステムについて一つ一つ基本機能を考えなければいけない。
これが難しい作業なのであり、基本機能が決まってから、そのロバストを上げるためのタグチメソッドは難解ではないのだ。田口先生はこのあたりを、基本機能を考えるのは技術者の責任と明確に述べており、タグチメソッドと切り離されていた。
田口先生は多数の分野で活躍された経験から、当方がご指導いただいたときには、システムの具体的な話は技術者が考えた内容をそのまま受け入れるスタイルになっていた。そして基本機能を追求される問いを技術者に対してされていた。
当方は、この時、システムのとらえ方をサブシステムまで分解して考えなければいけないんではないかと質問したら、それは当たり前だ、と笑われた。先生は当方の無能を笑われたが、実はタグチメソッドの初学者が難しいのは、この「システム」という概念である。
QCではシステムをサブシステムに分解する方法を教えているが、田口先生はそれを知っている前提で話をされていたのだ。ここを理解できると基本機能が最適化されたときに商品品質のロバストが向上するという説明に納得できる。
また、プロペラ一枚の単純な構造の竹とんぼでも複数のシステムに分解しそれぞれの基本機能を最適化しない限り、ロバストを上げることができない。基本機能が難しいということを伝えようとした品質工学フォーラムの記事は、それを書いた人たちが、技術というものをよく理解していなかったため、おかしな内容になったと思われる。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子に微粒子を分散したときに微粒子のクラスター(凝集、つながり)が生成する。クラスターの生成確率は添加量により変化する。微粒子が真球であれば25vol%を過ぎたあたりから生成し、30vol%を過ぎるとクラスターの生成が激しく変化するようになる。
そして50vol%を過ぎたあたりから安定するようになる。これがパーコレーションという現象で、微粒子が導電性粒子であれば、30vol%を過ぎたあたりで急激に高分子材料の抵抗が下がる、すなわち電圧をかければ電気が流れるようになる。
電気が沁みだしてきたような現象なので、コーヒーを抽出する現象(コーヒー抽出機はパーコレーターと呼ばれている)と似ているのでパーコレーションと名付けられた。
このパーコレーション転移という現象は、粒子と高分子との相互作用が無ければ、例えばコンピューターでシミュレーションを行えば確率過程で進行する。すなわち真球の微粒子を高分子へ分散したときには30vol%前後から50vol%前後の領域で物性が大きくばらつくようになる。
数学者の間では1950年代にすでに議論されていた。この時はカリフォルニアの山火事の考察からだった、と言われている。すなわち山火事において木々のつながりがあるとそのつながりに沿って火が走るので、その現象解析にパーコレーションという概念が用いられその性質が議論された。
高分子材料の世界では、1990年前後までパーコレーションの概念は知られておらず、混合則で物性変化が議論されていた。パーコレーションを高分子材料の世界に持ち込んだのはゴム会社が初めての可能性がある。
事務機用の帯電ローラの開発でパーコレーション転移の概念が混合則に代わって用いられるようになった。また電気粘性流体ではまさにクラスター生成でレオロジーが大きく変化する機能を用いていた。
現在パーコレーション転移シミュレーションプログラムを作りながら学ぶPython入門PRセミナーの受講者を募集中です。
PRセミナーについてはこちら【無料】
本セミナーについてはこちら【有料】
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
カラーレーザープリンターやカラー複写機の高級機には、中間転写ベルトという部品が使われている。中間転写ベルトを使わず直接紙に転写する直接転写方式もあるが少し画質が落ちるので高級機には使用されていない。このベルトは帯電しやすく放電しやすいように10の10乗から10の9乗Ωcmの体積固有抵抗となるように設計されている。
ベルトはこの抵抗の範囲で均一に製造できないと画質が悪くなるので、ポリイミド(PI)にカーボンを分散し溶媒キャスト製膜されたベルトを使用している。面白いのはカーボンが球状のクラスターを形成し、それが島状に分散した高次構造となっていたことだ。
これを熱可塑性樹脂を用いて押出成形で製造するとPIの溶媒キャスト製膜のような構造を簡単に造ることができず、パーコレーション転移と格闘することになる。パーコレーション転移の性質をよく知っていると、なぜPIでうまくゆくのか考えるが、わからないとボーっと長期間格闘することになる。
10年以上前にある人から仕事を引き継いだ時に、6年検討してきたのでよろしく頼む、と言われたが製品化まで半年しかない状態だった。酸化スズゾルを用いた帯電防止層の開発でパーコレーション転移について十分に研究していたので、前任者の仕事の進め方、すなわち外部から購入していたコンパウンドではゴールにたどり着けないことはすぐにわかった。
コンパウンドの段階でPIと同じ高次構造になっていなければ、押出成形でPIと同じ高次構造のベルトを製造することは不可能だが、某R社のコンパウンドは無茶苦茶な構造になっていた。およそ構造制御されたコンパウンドとは言えない状態だった。それでもコンパウンドメーカーの技術者は、最良だという。いろいろ議論して分かったことは、彼が混練の教科書でよく勉強していたことだった。
当時の(今でもそうだが)混練の教科書にパーコレーションの問題など全然扱っていない。高分子に粉末を分散した場合にはそのクラスター形成は必ず問題になるはずだが、分配混合と分散混合でお茶を濁しているような状態だ。このような教科書をいくら読んでもカーボンを分散した半導体高分子をロバスト高く設計できない。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
高分子の熱分析について連載で書いている。あるパーティーで分析機器メーカーの営業担当から熱分析装置が売れなくなった話を聞いたり、10年以上前にTMAを購入しようと、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂から生成された炭素材料をもちいて高純度SiCが生成する速度論解析のため超高速熱天秤の開発を依頼したメーカーに電話したところ、熱分析機器は取り扱っていないと言われてショックをうけたりした体験からである。
また、ある成形メーカーのご相談を伺ったときに熱分析装置を一台も持っていないと聞いたのでDSCぐらい持っていたほうが良い、とアドバイスし、一番安い装置を導入していただいた。ご相談内容に応えるためにも必要だったからである。成形問題の原因がコンパウンドにあるときにDSC一台あればそれを検出できる。
すなわちコンパウンドの品質管理にDSCを用いるのである。10℃/minの昇温速度で溶融温度(Tm)以上まで測定したデータがあればとりあえず、そのデータに関わるエラーを検出できる。Tm以上まで昇温しそこから降温したデータがあれば検出できるエラーも増える。さらに降温時にTcの直前で温度をホールドし結晶化ピークの現れる時間変化を追跡すれば結晶化速度に影響を与えている因子のエラーが分かる。
このエラーは、大きい時には昇温時のデータだけでも日々検査として行っておれば見出すことができる。例えば某R社から納入されたPPSと6ナイロン、カーボンのコンパウンドではTcのエンタルピーの変化がロットごとにあった。
またピーク位置が変わったりしたこともあった。Tgは6ナイロンとPPSのそれぞれが観察され、大きな変化が無かったが稀にPPSのTgのエンタルピーが小さくなることも観察された。
これらのことから、高温度におけるPPSと6ナイロンの相溶の可能性を疑った。実際にはR社の二軸混練機の温度がPPSのTm近辺に設定されて運転されており、これがばらつくことから生じていた現象である。
当方からカオス混合の提案をする前に過去に納入されたコンパウンドについてDSC測定を行い、コンパウンドの品質管理の問題を指摘している。しかしD社同様にR社もコンパウンドの品質問題について指摘された事項を受け入れてくれず、結局現場監査を行うことになった。
案の定、二軸混練機の温度はPPSのTmに設定されており10℃前後でばらついていた(注)。非相溶系でUCSTの相図になる系ではTm以上で相溶する場合がある。PPSと6ナイロンの相溶現象がばらつきとして起きていた可能性があり、それが過去ロットのDSC測定におけるTgやTcのエンタルピー変化となって表れたのである。
R社の技術者は優秀だったが、高分子の相溶現象における相図の知識は乏しかった。フローリーハギンズ理論やLCST、UCSTという言葉を知っていてもそれらが日々の現象としてどのように表れるのか考えた経験がないからだ。
これは大学における高分子の授業にも問題がある。高分子物理について完成された学問のごとく教えている現状ではこのような技術者になってしまう。高分子物理について理解されていない形式知の多いことを教えていただきたい。また高分子技術者はボーっと生きていてはいけない。最近は複雑なポリマーアロイを扱わなければいけない時代である。
(注)実際には設定された温度を中心にPID制御され5℃以内の変動におさえられるのだが、吸熱あるいは発熱の相変化が起きている場合には、PID制御で追いつかない場合がある。そうすると設定温度よりも10℃以上外れることがある。DSCデータでエラーが検出された場合にコンパウンダーの現場監査は重要だ。その時のコツは混練機の設定温度や樹脂圧のチェックである。特に設定温度はシリンダーごとに設定されているので、指示温度の変動を15分ほど見ておればどのくらいの温度変動があるのかわかる。PID制御が正しく設定されておればまったく指示温度が変動しない場合もある。これが5℃以上変動していたらアウトだ。しかしこのような場合でもコンパウンダーは素人は黙っとれ、というかもしれない。10℃程度の変動はタマにあるとしたり顔でいうのだ。ここで議論してはいけない。したり顔の相手をおだててどのような場合か、とか日々それがどのゾーンで起きるのかなどの情報を聞き出すのだ。日々問題があっても本人がエラーとして気がついていない情報をいくつか教えてくれる。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop
おひとりさまでも、と始めた弊社のセミナーが好評のため、公募することになりました。基本的な取り決めは以下。
1.時間:13時30分から開始
2.参加者上限 6名
3.料金と講義時間:参加者1名の場合に2万円1時間のセミナー。参加者が一名増えるごとに1時間増加、最大4時間とします。質問時間は、人数に関わらず30分。
4.セミナー内容:参加者のご希望にお答えします。基本ルールとして1ケ月以上前に申し込み。内容や参加者は機密事項。
例:高分子の難燃化技術、高分子の混練技術、ブリードアウト、高分子のツボ(専門外の人に便利な内容です)、信頼性工学etc
5.場所:弊社事務所
詳細は弊社へお問い合わせください。なお、本件は弊社のサービスプログラムです。
カテゴリー : 一般 学会講習会情報 宣伝 電気/電子材料 高分子
pagetop
電池というデバイスはシステム商品である。だからその信頼性予測にはワイブル分布を用いるのが好ましい。これを理解されている方はどれだけいらっしゃるのか分からないが、Li二次電池に関わるトラブルが多い。10年ほど前に購入したMACの二次電池は、何度交換しても3年ほどで膨れてくる。
10年も同じPCを使う時代ではないかもしれないが、普段の仕事ではWindowsの走るPCを使っており、MACは、プログラムのテスト用である。MACはユニックス系のOSなので、プログラム言語やツールを無償で入手できる便利さがある。
PCでシステム(プログラム)開発をしようと思ったらMACやLINUXは大変低コストでできる。Windows環境におけるコストの高さが目立つが、今日は電池のシステムについて書く。
ボーイング社のLi二次電池の事故は記憶に新しいが、あれはアクシデントではなくインシデントだという。航空機業界に詳しい友人が指摘してくれたが、航空機業界ではアクシデントとインシデントを厳密に分けるのだそうだ。
Li二次電池のインシデントについては、当時たくさんあったという。ただインシデントだったので表に出ていないものもあるという。怖い話である。航空機の電池については、多数の予備バッテリーが積載されているので、一フライトで電池の二つや三つに異常があっても問題ないという。
航空機業界では電池というものが信頼性の低いデバイスであるという認識が定着しているようだ。たしか10年以上前は、Li二次電池を3個程度カバンに入れていても問題とならなかったが、今はLi二次電池だけ複数カバンに入れていると荷物検査に引っかかる。それだけLi二次電池の信頼性が低く見られているわけだ。
カテゴリー : 電気/電子材料 高分子
pagetop