教科書に書かれている内容を否定するような実験結果を出そうと転職してから20年間考えていた。犬に人間かみついたらニュースになる、といった単純な動機である。
ポリオレフィンにポリスチレンを相溶させて透明な樹脂を開発した時には楽しかった。この話は以前書いた。錠と鍵の関係になるような組み合わせを狙って混練した結果である。
この成功で、フローリー・ハギンズ理論が怪しくなった。これによりχが大きくても相溶させる混練プロセスを開発する動機が強くなった。そして開発したのがカオス混合機である。
このカオス混合機を用いてPPSと6ナイロンを相溶させて急冷し透明なストランドを得た。このストランドを定年後も眺めていたら、ある日白くなっていた。すなわち相溶していた6ナイロンがTg以下でスピノーダル分解し、相分離したのだ。
Tg以下では分子運動が凍結されているはずだが、実際には部分自由体積と呼ばれる領域では、室温で盛んに高分子は分子運動を行っている。元気な子供を羽交い絞めにしてわきの下でもくすぐった時の様な状態をイメージしてほしい。
足をバタバタさせている状態が部分自由体積に存在する高分子の一部分である。少しかわいそうになって力を緩めるなら、子供はすぐに腕をほどいて逃げてゆく。まさにそのようなことが5年以上という長時間をかけて相溶したPPSと6ナイロンのストランドで起きたのだ。
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非晶質であればすべてガラスと勘違いをしておられる方が多い。非晶質にはガラスにならない非晶質体が存在する。ガラスは非晶質でかつガラス転移点を持っていなければいけない。ガラス転移点を持っていない非晶質はガラスではないのだ。
この知識をよく理解しないで情報として頭に詰めていると、楽しい体験ができる。樹脂のガラス転移点(Tg)を知りたくてDSCという熱分析を行ったときに、Tgが現れなかったりすると新発見と勘違いする。
樹脂のDSC測定ではまれにTgが現れないことがある。しかし、これは、Tgに到達する直前で昇温にストップをかけてやると、きちんとTgが現れるようになり、何も新発見ではなくなる。
以前書いたように高分子の非晶質は必ずガラスになり、そのためTgを必ず持っている。だからDSC測定でTgが観察されなかったとしてもそれは新発見ではなく、運が悪く十分な緩和が起こっていなかったサンプルを測定しただけの話だ。
だから、先に述べたようにTg直前で昇温を止め、3分ほどホールドしてやるとTgが現れるようになる。このようなことは、学生時代に経験しておくべき事柄である。社会人になってDSC測定を行い、Tgが現れなくて新発見と騒いでいたら確実に笑われる。
このようにガラスは必ずTgを示すが、非晶質体にはアモルファスの金属酸化物のようにTgを示さない物質も存在する。このような非晶質体はガラスにならない。
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26日日曜日の試聴会では、B&Wのスピーカーも音工房Zのスピーカーもツイーターは、高剛性タイプであり、前者は蒸着ダイヤモンド製で後者はマグネシウム合金製だった。
この二つのスピーカーを聴き比べた限り、音の分解能は同等に思われ、いずれのスピーカーも楽器の輪郭を明瞭に描いていた。ただ面白かったのは音楽ソースによりその聞こえ方が少し異なったのだ。
(この差は、前回の視聴会で用いられたB&Wの40万円前後と今回の100万円以上の同社のスピーカーとの差よりも大きい、と感じた。同世代のB&Wのスピーカーを同じ再生装置で比較試聴すると、価格の差を感じることができる。ゆえに前回のB&Wのスピーカーが良く聞こえたのは再生装置のセッティングの影響が出たのではないか。前回も今回も音工房Z社の同じスピーカーが比較対象に使われている。こうしたことを考えると高級スピーカーは、その使用環境の影響を大きく受けるロバストの低いスピーカーとなる。)
これはどちらが良い、悪いの差ではなく、頭の中に描かれる音のイメージの好みになってくると思われた。当方が聴いた限りではどちらのスピーカーでもよい、と感じたが、この比較試聴の後、5000円の雑誌の付録のスピーカーの音を聴かされてびっくりした。
スピーカーの箱は音工房Zの設計及び製作によるものだが、低音の量感こそ負けていたものの音の分解能に関しては、同等以上だった。
おそらく小音量で聴いたならばその差は無くなるのではないかと思われ、高価なスピーカーが良いだろうと漫然と考えていたので冷や汗が出てきた。
小口径スピーカー1発から出てくるその新鮮で繊細な音は、明らかに比較試聴した二つのスピーカーとは異次元の音だった。すなわち少しまろやかで耳に気持ち良かった。
オーディオ用のスピーカー選択で難しいところは、高いスピーカーを購入すればそれで満足できるわけでもなく、長時間聴いて疲れず満足できなければいけない。
高級スピーカーでも長時間聴いていると何か疲労感の出てくるスピーカーもある(この点でJBLのスピーカーは優れている、と思う。今時の音ではないが、長時間聴いていても疲れない。ナンクリの表現はこの点を理解できるとバブル時代の物欲小説として鑑賞できる。)。長時間何か他のことをしながら音楽を聴くならばBOSEの安いスピーカーで十分である。
日曜日大きな収穫として100万円以上のスピーカーでも完璧ではないということを比較試聴でわかったことだ。
音楽をオーディオで再生するときに、まず録音した時のマイクの品質の問題があるはずだ。次に得られた音源を販売用に加工するときのエンジニアの技量が影響する。また、ミキサーの性能も影響する。
そして再生装置最後の出口のスピーカーの性能差となるが、音のソースにおいて既に問題を抱えているので、出力だけ完璧にしても演奏者の楽器から出ている音そのものを聴けるわけでもない。
昔はエレキギターとアコースティックギターの差がわからないようなスピーカーもあったが、最近そのようなスピーカーを聴いたことが無い。
この考え方に立てば、音楽を聴いて自分が満足できるスピーカーなら何でもよいことになる。このようなことを書いたらオーディオマニアの人に怒られるかもしれない。
実際に、仕事をやりながら一人でジャズを聴いていると、その音の分解能が低かろうが無関係である。キーボードをたたく手にうまくビートが合えば気持ちよく仕事が進む。
(注)40年前のオーディオブームでは、再生装置も含めその技術革新の様子がよく分かったが、それは同じ音源でも全く別物に聴こえる様な技術差があったからだ。今販売されている装置では、楽器の音を聴き間違えることはない。数年前、題名のない音楽会でバイオリンの名器の聴き比べをやっていたが、その差が視聴者に伝わるぐらいの性能が現在のオーディオ装置の性能である。もう十分な性能と思っている。
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昨日の続きだが、高級スピーカーと呼ばれるものには、かつて何となくクリスタルで話題になったJBLがあるが、最近は人気が無い。
このJBLスピーカーの特徴は大口径のウーファーとホーンスピーカーで音楽を壮大に聞かせる。しかし、デジタル化により、アンプの出力向上やSN比の向上により、高能率のスピーカーよりも繊細な音表現が好まれるようになった。
B&Wのスピーカーはまさにそこを狙ったスピーカーで能率は低いが音の分解能は高い。昔はソフトドームスピーカーをはじめとして、高域を駆動するスピーカーの材料は絹など軟らかい材料が用いられていた。
本来は高剛性で高周波数領域で内部損失の大きな材料がよいのだろうけれど、これは材料物性として二律背反となる。最近はアルミニウムやマグネシウムを用いてそのような材料加工ができるようになった。
B&Wは、アルミニウムやマグネシウム製の高剛性材料をツイーターに用いて成功した会社である。この会社の高級品はダイヤモンドを蒸着したツイーターが使われているが、蒸着ダイヤモンドは単結晶よりも少し弾性が落ちる。
今では分解能が高いと言われているスピーカーの多くは金属製のツイーターを用いている。ダイヤモンドでなくても聴感上変わらないのでわざわざダイヤモンドを使用しているのは、いかにも、という印象を受ける。
日本にはダイヤトーンというブランドが昔あったが、ダイヤモンドではなくボロンを使用したツイーターを過去に開発している。ボロンも硬い材料だ。ツイーターは硬い材料が良いのだけれど材料の固有振動数の問題で昔は柔らかい材料しか使えなかった。
ダイヤモンドを使用していないダイヤトーンよりも有名ではないが、日本を代表するスピーカーメーカーの一つフォステクスは、金属製の振動板を用いたウーハーやスコーカーを用いた高級スピーカーを販売しており、高級スピーカーメーカーの仲間入りをした。
ここは、スピーカーユニットを部品として販売しており、スピーカーの自作ユーザーには無くてはならないメーカーだ。最近B&Wの技術者が立ち上げた台湾のマークオーディオは、金属製の振動板を得意とするパーツメーカーの一つだ。
金属単体の振動板ではないが、金属をウーハー材料として最初に用いたのは日立LoDで、1970年代にアルミ箔とパルプのサンドイッチ構造の振動板を開発している。
パルプとサンドイッチにして材料そのものが振動するのを防いでいるが、硬い材料と柔らかい材料を複合化する手法が防振材料として使われるようになった時代である。
老舗のオンキョーは、金属とパルプのハイブリッド振動板をツイーターに用いたブックシェルフスピーカーを同社のハイエンド製品としている。
なお、最近話題のセルロースナノファイバーを最初に実用化したのはオンキョーで、ウーハーの素材に味の素の菌セルロースをスコーカーとかウーハーにかなり以前から使用している。
このハイエンドスピーカーは日本を代表する名器だと思うが、1台17万円と良心的な価格である。最近発売された同社のハイエンドホーンスピーカーよりも音楽を雄大に聞かせてくれる(明日に続く)。
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昨日音工房Zで開催されたスピーカーの試聴会に参加した。そこで面白い体験をした。B&Wの1台100万円を越えるスピーカーの音と雑誌の付録の5000円前後のスピーカーの聴き比べである。
実は前回同社の試聴会では、同じくB&Wのスピーカーとの聴き比べだったが、そこで用いられたのは、一世代古いB&Wの1台40万円前後のスピーカーだった。
まずB&Wのスピーカーについて簡単に説明を加えると、古いタイプはおそらく805ダイヤモンドで、新しい100万円を越えるスピーカーはWEBで調べたところ802ダイヤモンドだった。
いずれもツイーターは侍のちょんまげのごとく外部に搭載されており、振動板はダイヤモンドが蒸着されたタイプで極めて剛性が高い。
前回と今回では同じようなツイーターであり、その他の構成が異なるスピーカーと最初に比較し聴いたのは、同社のZ800-FW168HRSという2台1セット398000円スピーカーである。
前回と今回、このスピーカと異なるB&W社のスピーカーと比較したのだが、当方の試聴感では、40万円前後のB&W>100万円前後のB&W=Z800-FW168HRSとなった。
B&W社のスピーカーが古くて安い方が良くなる、というのは、ややおかしい感じがするが、これは当方の耳がおかしいのか、このクラスのスピーカーになるとアンプとの相性やスピーカーのエージングの影響、その他の影響などを受けているのか不明である。
しかし、昨日の結果は、その性能がほぼ同等に感じられた。すなわちその聴感上の差がわからなかった、という表現が正しいのかもしれない。また音工房Zの視聴会の目的もそこにあったのかもしれない。(明日に続く)
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22日のセミナーは好評だったようで、参加者からメールをいくつか頂いた。参加人数も多かったが、翌日の反響の大きさも久しぶりだ。
ブリードアウトについては多くの方が困っているのだろう。これだけ科学技術が進歩していても簡単な現象で製品の品質が損なわれる。1980年代に科学では現象解明ができていてもその対策が現場に展開されていないためだが、その原因は技術者にある。
当方のセミナーでは、科学よりも現場の技術に力点を置いて説明している。だからといって科学を無視しているわけではない。先日でもブリードアウトの現象について科学的に解明している論文を回覧している。
この論文については、参加者から問い合わせがあれば無償サービスでpdfファイルとして送っているが、昨日のセミナーの参加者以外でも何らかの形式でサービスしたいと考えている。
この論文を読んで理解を深めたとしても当方のセミナーの実戦的な内容の価値に影響がないからだが、世の中には科学で現象を解明できてもノウハウを知らないと製品技術としてそれを生かせない事例が多い。
このブリードアウトという現象については、科学的には、高分子の溶解度と拡散速度で現象を説明することになるのだが、この説明によればブリードアウトは必ず起きる現象、という解しか得られない。さあ、どうする?
(注)中国で指導してきた経験からカオス混合でもブリードアウトが改善されることが分かった。すなわちブリードアウトの原因については、配合やコンパウンディングの段階まで考えなければいけない。
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昨日ブリードアウトの講演会で、ブリードアウトに関する最近の研究のベースになっている論文を回覧したところ、講師のところまで戻ってこなかった。参加者が多かったのでどなたか回覧途中で持ち帰られたようだが、全員に回覧されなかったのは残念である。
もし、参加者でこの回覧物を見ることができなかった人は弊社へ問い合わせていただきたい。不心得な参加者のために不利にならないよう対応させていただきます。
さて、昨日の講演会でも説明したが、ブリードアウトという現象は、高分子中における物質の溶解度と拡散速度から説明できる。
科学の視点でこれは正しいが、実務レベルではこの説明に満足していると痛い目にあうことを実例を交えながら昨日説明した。すなわち市場で起きるブリードアウトという現象は科学論文に書かれているようなきれいな話ではないのだ。
例えば、低分子の液体への溶解度は温度が上がれば溶解度は一般に上がるが、高分子溶液では温度上昇とともに溶解度が下がる現象を通常経験する。射出成型で金型が汚れるのは、高温度で溶解度が下がり添加剤がブリードアウトしやすくなるからだ。
また、混練プロセスもブリードアウト現象に影響を与える。すなわち、同じ配合処方でも、混練プロセスにばらつきがあれば、ブリードアウトしやすいコンパウンドができる。
フィーダーに異常が無くてもブリードアウトしやすいロットができる可能性があり、その対策も昨日示した。このような問題でここまで説明しているセミナーは他に例がないと思う。当方の中国における指導経験の成果である。
担当した時間内に用意した資料を説明できない、と思ったので、帯電防止剤の説明を数枚飛ばして説明したら20分ほど逆に時間が余ってしまった。
休憩時間も飛ばして質問時間を余らせるようにしたのだが、少し時間配分を間違えた。長時間のセミナーではたまにこのようなミスをするが、そのようなときには飛ばしたところに戻り説明をすることにしている。しかし昨日は帯に短し、という時間だった。
ところで10分余らせるところを20分余ったので多数の質問が来るかと思っていたら3件ほどでがっかりした。この手のセミナーでどのような質問が来るのかは予想されたので参考資料を多数用意していたのだが、当てが外れた。
セミナー終了後講師控室で休憩していたら2件ほど質問が来た。ブリードアウトの問題は他の企業の方の前では質問しにくい問題のようだ。今朝すでに一件昨日の参加者からメールが届いていた。質問時間を考慮して余裕を作るために帯電防止剤の事例を飛ばしたことを反省している。
次回の機会では、今回の聴講者が質問をしにくいテーマである、という反省をもとに少し構成を変えて講演を行おうと考えている。単純なブリードアウト問題は少なくなり、少し技術に関わる問題へと変化してきたようだ。
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ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を反応させて高純度SiCを合成するパイロッットプラントの開発では、化学工学の専門家は一人も携わらなかった。
外部の設備メーカーと協力しながら、異形プッシャー炉を開発し、これを特許出願している。この時、それぞれの会社の技術者は、電気工学と合成化学、無機材料化学、機械工学出身で、化学工学について学んだ人は一人もいなかった。
異形プッシャー炉のアイデアを提案したのは当方で、図面を書いたのは機械工学の専門家である。電気工学の専門家は、自動化のために必要なセンサー類の配置など当方と打ち合わせながら、その図面に書き入れていった。
このとき当方は、シーケンスについて学び、今でも電気回路図を読み取ることが可能である。自宅の電気配線など街の電気屋よりも読み取るのは早い。
豊川へ単身赴任しカオス混合プロセスのプラントをたった3ケ月で立ち上げているが、これはヤミで根津の中小企業と3ケ月中古機械を分解しながら勉強した成果である。
その中小企業も二軸混練機の自動化プロセスは初めての経験で土日喧々諤々の議論をしながら図面を書いていった。図面については当方が手書きで書いたものを機械工学が専門の電気担当が器用にシーケンスまでも書き入れていた。
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学生時代に化学工学の授業を受けたが、今思い出すとあの授業は何だったのか、という記憶である。講師の批判をしているのではない。授業の中身である。プラント工学と呼んでもよいような授業だった。
現在の応用化学関係のカリキュラムからは化学工学は無くなったという。化学工学科も無くなったようだ。この話を聞いたときに、そうだろうと納得した。
化学工学では、化学反応も少し扱っていた。この化学反応を扱っていることで化学工学の体裁が取れていたのかもしれない。とにかく授業を受けていて、やがてこの学問は無くなるという予感がしていた。
そもそも分子やその集合体、あるいは一般的には材料を使用できるようにするには、必ず何らかのプロセシングが必要になる。
その時、プロセシングを考えるのは、プロセシングの専門家、ということで化学工学分野が考え出されたのだろう。
ところが現実には、化学工学の専門家が活躍できたのは狭い分野だけで、多くのプロセシングは、応用化学や合成化学、その他の専攻の専門家により開発されているのではないか。
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表題の特許は、ITOが登場した時に小西六工業から出願された酸化スズゾルを写真フィルムの帯電防止層に用いた発明に関する特許である。
面白いのは、この特許1件を出願後小西六工業からは関係する特許が10年以上出願されない状態が続く。その期間に、ライバル会社富士フィルムやイースタマンコダックから金属酸化物系透明導電材料を用いた発明が怒涛の如く出願される。
富士フィルムの特許は、表題の特許は非晶質だから導電性が悪いので結晶性の酸化スズこそフィルムの帯電防止層に適している、という発明がしばらく出願されるが、ある時から一切その言葉だけでなく表題の特許までも先行技術文献として紹介されなくなる。
イースタマンコダックは、酸化スズゾルよりも五酸化バナジウムのほうが繊維状であり導電性もよいので帯電防止剤として優れている、という論調の特許が出されているが、こちらもある時から表題の特許が特許文献から姿を消す。
1992年に透明金属酸化物に関する発明を調査したときには表題の特許はその痕跡すら調査で集めた文献に見つからなかった。
表題の特許を見つけたきっかけは、特許の証拠探しである。酸化スズゾルを用いた帯電防止層を発明したのだが、ライバル特許の山の前で立ち往生したのだ。
実用化するためには、証拠を探し、その技術が他社の特許を侵害しない安全圏にあることを証明しなければならない。古いライバル特許をさかのぼること30年分調査することになった。
その古い特許1件にたまたま表題の特許の紹介がなされていた。虎ノ門まで出向き、見つけたときには、出願人を見てびっくりした。
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