高分子材料の力学物性について問題となるのは破壊力学の形式知が完成していない点である。例えば引張強度のばらつきは、金属よりも大きい場合が多い。
金属の破壊について線形破壊力学でうまく説明できるが、高分子材料では破壊現象についてうまく説明できない場合が多い。それでも金属でよく用いられるフラクトグラフィーを適用すると破壊の起点を知ることができる。
その他、金属材料で実績のある方法を破壊現象について適用してみるとうまくあてはまるところがあったりする。ゆえに、時間温度換算則を用いてクリープ破壊を解析できそうに錯覚する。
温度領域に十分配慮して実験を行えば、マスターカーブを描くことができ、それなりに予測ができてしまう。実はこれが品質問題を引き起こす原因となる。
高分子材料のクリープ速度は金属のそれよりも密度の影響を受けやすい。それどころか高分子材料は射出成形条件のばらつきから密度が大きくばらつく。
仮にこのことを理解してマスターカーブについて密度依存性を確認したりする。このときどれだけの密度ばらつきを見込んで実験を行うのかという問題が存在する。
防湿庫に保管していたカメラの裏蓋フックの破壊は、カメラを静置したままだったので、クリープ破壊の可能性が高い。破面のフラクトグラフィーを行ってもそれを理解できた。
裏蓋を開けるためにスプリングがついているが、これにより一定応力がフックにかかりクリープ破壊に至った可能性が高いのだが、高分子材料の物性をよく理解しそれなりの実験を行えば品質問題を防げたはずである。
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最近話題となっているビッグデータの解析では、必ずしも科学的な解析とは言い難い例も出てきた。そのような例では、解析結果が普遍的真理とはならず、単なるその場限りの現象理解に終わる。
これを科学的ではないから、という理由で否定的に見ていると時代に乗り遅れるか、あるいは間違った情報を形式知としてしまうミスを犯したりする。せめて解析プロセスも含め経験知の一つ程度に考えるとよい。
すなわち、現代のデータ解析事例を眺めるときに、科学的に解析された結果なのか、単なるデータを整理し傾向を記述しただけの結果なのか、あるいは眉唾も含むその他の結果なのか、それを自ら検討する必要がある。
一方で、科学的ではないデータ解析あるいは手法の中には、技術開発にうまく取り込むと業務を効率化できる可能性もあるので、その手法がどのようなプロセスで行われているのか調べてみると面白い。
よく使われる手法として、多変量解析あるいはマハラビノスのTMがあるが、これは技術開発で集められた大量のデータから、未知の情報を絞り出すときに使える。高分子の難燃化技術セミナーで一例を示す。
15年以上前に歩留まりを10倍近く改善できた中間転写ベルトの技術開発では、それまでの開発で収集されたデータを解析し歩留まり向上のヒントを導き出している。CMCリサーチのセミナーで手法を詳しく説明する。
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科学の時代なので、仮説に基づき実験を行いデータを収集し、仮説との整合性をすなわち仮説が成立するのかどうか確認する。
これは義務教育の理科実験にはじまり大学を卒業するまで指導されてきた方法である。このコロナ禍の感染者報道を見て、データ解析手法には、この学校で習った方法以外にもいろいろあることに気がつかれたのではなかろうか。
すなわち、実験を行うことなく、現象を数値化しそれを解析する手法である。実は実験を行っていなくても現象を数値化するときに仮説を設定しているので、これも学校で習ってきた方法と変わらない。
現象からパターンを抽出する方法もこのように数値化が行われるので何らかの仮説が設定されたうえでの方法と言える。パターンを解析し意味不明であればパターンの数値化方法を変えて自分の意図する結果となるように試行錯誤を繰り返す人もいる。
試行錯誤を繰り返していながら、何か最初に仮説があったかのように説明するので、すごい眼力だと感心させられたりするが、昔ならばともかく今はコンピューターがあるので大したことではない。
科学の便利なところは、データを解析するときに仮説が正しければうまく推論を展開できて答えを出せる点である。データ解析は科学的に行えば誰でもデータが意味している範囲の真理に到達できる。
解析とか分析では科学のありがたみを必ず感じるはずである。それゆえ当方は時間さえ許されれば、すでに完了した仕事でもデータ解析を行って考察したりしている。
この時実際の生データは特に必要は無いのだ。グラフの形さえ再現できれば良い。もっともこのような結果を学会で発表しにくいが、Wパーコレーションという現象については、高分子学会無機高分子研究会で7年ほど前に発表させていただいた。
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弊社ホームページ新着情報にご案内しておりますが、テキストが出来上がりましたので見本としてテキストの一部を貼り付けました。
セミナー会社が主催する難燃化技術セミナーには20代からご招待いただき講演をしてきましたが、ポリウレタンの難燃化部分は、今回も昔発表した内容と同じです。科学でまとめられた実験結果は形式知として不変です。
20年ほど前からタグチメソッドの項目を加え、最近はマテリアルインフォマティクスも取り入れた内容で講演しております。
また、20年ほど前に高分子同友会で環境問題と高分子について開発部会で議論されましたが、今回の無料セミナーではこの辺りはご紹介程度の説明になっています。環境問題につきましてこの数年大きな変化がありました。
3年前に皮革の難燃化処方を開発しました時には、ノンハロゲンで技術を完成いたしましたが、プロセスもオイル分散を用いず、すべて水系の環境対応技術として完成しています。
水に不溶な物質を水に分散してコロイドとして仕上げるには、これまでオイル分散が唯一の方法だったのですが、最近新たな技術を開発し、ただいま特許の審査請求中です。詳細は弊社出願の特許をご覧ください。
高純度SiCの製造技術開発からカオス混合プロセス開発まで様々な技術開発を50年以上続けていますが、高分子の難燃化技術開発はライフワークのひとつになっています。
難燃化技術論文資料
セミナーテキストサンプル
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2月度に昨年末開催できなかった無料セミナーを幾つか開催予定で準備を進めています。高分子の難燃化技術につきましては、所定のフォームに申し込みをお願いいたしますが、他はメールにてお申し込み頂きたく。その時ダウンロード版テキストの要否も御記載ください。
下記に予定を示します。受講料は無料ですが、ダウンロード版テキストは有料です。
2月6日(日) 14時-16時 高分子のツボ
2月7-8日(月)9時30分ー12時30分 高分子の難燃化技術
2月20日(日) 13時30分-16時30分 混練技術
2月26日(土) 13時30分-16時30分 高分子の品質問題の解き方
2月27日(日) 13時30分-16時30分 高分子材料の帯電防止技術
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50年以上前耐熱性高分子についてアカデミアで活発な研究が行われた。無機高分子という言葉が登場したのもこの頃で、1978年に無機高分子若手研究会幹事として当方は活動している。
また、大学院の研究でPVAの難燃化について論文を執筆している。79年3月には卒業してから就職するまでの3週間に新規ホスファゼン誘導体の合成に成功し、これを用いて無機高分子を重合している。
一連の研究成果は就職後論文にまとめて発表した。ゴム会社に就職して一年後にポリウレタン発泡体の難燃化技術を担当し、ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の工場試作に成功し、始末書を書いている。
会社では始末書を書くような評価だったこともあり、1年後にはこの成果を高分子学会で上司の指示により発表している。また英文の論文にもまとめた。この時の始末書には、ポリウレタン発泡体の燃焼時にガラスを生成し難燃化する技術企画を提案している。
この企画は半年後工場試作に成功し商品化された。ちょうどそのころ市場でプラ発泡体の難燃性不足で火災が発生する社会問題が起きている。当時の難燃性の建築基準に不備があったためで、新たな評価技術策定のお手伝いをすることになった。
このお手伝いでは、プラ発泡体として高防火性が期待されたフェノール樹脂発泡体をゴム会社が供給している。この仕事は、家1件燃やす実験など難燃化技術について大変勉強になった。当方がまとめたフェノール樹脂発泡体の難燃性データも建築研究所から研究発表として報告された。
このようなキャリアで、20代から高分子難燃化技術セミナーでは講師として招聘され、製品のPRもできたので上司からその役割を期待された。思い返せば40年近くこの分野で活動していたことになる。
難燃化技術開発を推進しながら、世の中のセラミクスフィーバーに遅れまいと、半導体を夢見て高純度SiCの事業企画を立案している。この企画は、紆余曲折を経て立案から2年後無機材質研究所におけるたった1週間以内の実験で花開いた。
この体験をもとに研究開発必勝法をまとめ当時の上司に提案したが、その上司はご病気でお亡くなりになったためにマネジメントにその理想を活かすことができなかった。
起業後は研究開発必勝法により、難燃化技術の依頼についてはLEDのソケット開発はじめ皮革の難燃化で実績を出し、有効性を確認してきた。LEDのソケットの難燃化は従来技術類似の手法で技術を完成しているが、皮革の難燃化については新手法を開発しており、現在特許審査申請中(ご希望の方には開発経費の実費でお譲りします。ご相談ください。)である。
難燃化技術論文資料
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ゴム会社ではゴムとセラミックス材料を、写真会社では高付加価値写真フィルムと複合プリンター、レンズ材料の開発などを担当した。写真会社では高分子材料の品質問題が起きるとその解決が仕事となったが、多くが材料起因だった。
例えば、PPS中間転写ベルトではコンパウンドの改良が唯一の策でありながら、間違った問題を設定していたために解へたどり着けない状況があった。
日本では材料メーカーと製品組み立てメーカーに分かれているケースが大半で、さらにこれが細分化されて第二次産業が構成されている。
そのため高分子材料を採用した製品において品質問題が起きたときに、問題の設定を誤って問題解決できなかったり、問題そのものが見えなくなったりするケースが発生する。
最悪なのは、間違った問題を正しく解いて、隘路にハマる場合である。15年ほど前に担当した中間転写ベルトの開発を前任者から交代して担当した時には、まさにこのような状況で当方自ら中古機を集めてコンパウンド工場を手作りに近い形で立ち上げなければいけないような状況となった。
このとき、うまく新製品立ち上げまでに間に合ったので周囲に感謝されたが、開発資源が乏しかったために大変だった。このような思い出から、高分子が採用された製品、「高分子製品に関わる品質問題の解き方セミナー」を現在企画中である。
ご興味のあるかたは問いあわせていただきたい。なおその時開催日(日曜日から土曜日まで、あるいは平日、休日)の希望を書いて頂きたく。もし、希望者が数名以上集まれば、2月に3時間の無料セミナーとして実施したい。
ただし、参加条件として高分子の基礎程度の知識があることとしたい。もし高分子の基礎に自信が無い方は、2月に開講予定となっている「高分子の基礎無料セミナー」に参加していただきたく。
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2月20日13時30分から3時間混練技術について無料WEBセミナーを行います。メール(info<>kensyu323.com <>を@に変更してください)にてお申し込み頂きたく。
1.2月20日無料WEBセミナー混練技術参加希望
2.テキスト購入希望の有無
3.書籍購入希望の有無
メールには上記を御記載ください。なお、テキスト(ダウンロード版)は、5000円です。書籍と同時購入の場合には、6000円、書籍だけ購入の場合には4800円(消費税及び送料サービス)となります。
なお、書籍購入希望者は、書籍送付先をお知らせください。なお、見積書や請求書の発行も必要な場合には、申込時にその旨御記載ください。
本企画は、通常1日コースで行っている内容を3時間に短縮したもので、混練の形式知である分配混合と分散混合の説明は最小限にしております。高分子のコンパウンドの品質問題でお困りの方は、是非ご参加ください。
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来月2月7日と8日に高分子の難燃化技術について、無料WEBセミナーを企画しましたので、高分子の難燃化技術に関する知識が必要な方は、ご専門に関わらずこの機会をご利用ください。
2月7日は高分子難燃化技術の概論について評価技術を中心に、高分子の基礎事項とともに解説いたします。ただし、限られた時間内ですので、高分子の知識につきましてその体系のすべてを解説できません。
ゆえに前日の日曜日の午後、高分子のツボに関して体系的に解説する無料WEBセミナーも準備いたしました。詳細は昨日までの活動報告を参照してください。
高分子の難燃化技術の無料WEBセミナーにつきましては申し込みサイトを準備いたしました。ただし、高分子のツボに関しては、特別なコーナーを設けずメールにより参加申し込みを受け付けております。
メールには「高分子のツボ無料WEBセミナー参加希望」と「テキスト購入希望、あるいはテキスト不要、のいずれか」をご記入の上、申し込んでいただきたく。また、無料セミナーについてご希望を書いていただくのは大歓迎です。
高分子のツボは、体系的に説明が難しい高分子材料について、経験知から知識を整理しましたので、実務で遭遇する問題を考えるのに役立つ内容になっています。
当方は無機材料と有機材料の両方を専門的に研究した経験があり、その経験から高分子の難しさは、その分類さえ決まっていないところに原因があると思っています。この視点で高分子のツボをまとめ上げています。
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住友金属工業(現在の日本製鉄)との高純度SiC半導体治工具のJVが計画されたころ、電気粘性流体開発プロジェクトのお手伝いを命じられた。命じられたが、電気粘性流体について業務説明も無ければ、研究論文の一切を読む必要は無い、という乱暴な扱いだった。
当時世間でいうところの係長職にあったのでそれなりの扱いをしてほしかったが、当時のゴム会社の研究所のスタッフにはそのような命令をする人が多かった。また、科学の研究者は、自説を押し通すためにそのような性格でなければリーダーが務まらないのかもしれない。
スタップ細胞の騒動をまとめた「あの日」を読んでも、そこに登場する人々は技術者から見ると不思議な人が多い。情報も何ももらえず、仕事を命じられる立場は、下僕と等しいのである。さて、そのような乱暴な扱いで命じられたテーマは「加硫剤も含め添加剤が何も入っていないゴム開発」だった。
当時すでに日本一になっていたゴム会社で非科学的なこのようなテーマを命じてきたのである。セラミッックスの研究を担当していた当方にこのようなテーマが巡ってきたのは、当時の研究所でゴム開発の経験があったのは当方だけだったからだ。
多少なりともゴムに詳しかった当方は1週間だけ時間をもらい、電気粘性流体の耐久性問題や電気粘性効果を安定にできる粉体などをアジャイル開発した。電気粘性流体がどのようなものかは詳しく知らなかったが、社内のプレゼンテーションで公開された情報程度は頭に残っていた。
その頭に残っていた情報程度で、ヒューリスティックな解を見出すことは簡単だった。換言すると情報が少なかったので材料合成のために考えなければいけない問題が絞られたのかもしれない。
驚くべきことに、データ駆動による一晩の実験で電気粘性流体の耐久性問題を解決できて、その後ほんの少しの実験で電気粘性効果を高める粉体を創造することができた。
この技術開発において、5年の歳月がかけられ研究所で蓄積された科学の成果を全く使っていない。セラミックスの研究で身に着けた経験知と暗黙知により創造された新技術を用いて、難問が解決され、世の中に存在しない傾斜機能粉体が生み出されている。
同僚に情報を出さない、という信じられない扱いのおかげで、電気粘性効果に関する科学の形式知が乏しい状況となったので、経験知と暗黙知をフル活用する必要が生じた。そこで使われたのは演繹論理である。
ただし欠落した知を補う必要から創造が行われる。そこでは非科学的あるいは未解明な科学的現象に潜む知などが混在し、推論が展開される。演繹論理では科学の一部であるが、その展開は非科学的だった。
マッハ力学史において、ニュートンの力学は非科学的成果に位置づけられている。その理由は、当方が電気粘性流体で展開したような推論だったからである。当方はマッハ力学史を読んでいたので、ニュートンの論理展開を学び電気粘性流体のアジャイル開発ができたのである。
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