ポリウレタンはイソシアネート化合物とポリオール化合物あるいはポリカルボン酸化合物類と反応させて合成されるTPEである。TPEは当時の新素材であり、その難燃化も重要な社会テーマだった。
先端材料の発泡化技術は、特許を読んでみてもうまくできるものではない。それなりの技術ノウハウが必要だった。しかし、ゴム会社にはすでにその材料の製品を生産していた部署があり、その現場にはノウハウが蓄積されていた。
アメリカ企業から導入された技術でポリウレタン発泡体が生産されていたので、この技術の習得をしている。技術習得しながら、ポリウレタンを変性するためのホスファゼン誘導体を設計し合成していた。
原材料の合成と技術習得を同時並行で進めたが、これは上司から命じられていたわけではない。工場の現場で技術を見学したときにやるべきことがすぐに理解できたからである。
この現場で技術をすぐに理解できる能力は、誰でも備えているわけではないことを当時理解していなかった。大学院までの3年間で育成された能力だった。それは、写真会社へ転職し、ゴム会社における12年間の反省をしていて気づいたことである。
生産現場では様々なノウハウが機能している様子を観察できる。この機能に着目し観察できるという能力は、実験をすることにより鍛えられる。ただし、何も考えずに実験していては能力を鍛えることができない。仮説の検証と機能の動作観察という二つの視点で実験を観察して能力を鍛えなければいけない。
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ポリウレタンに限らず有機高分子の主鎖にホスファゼンを導入する技術は、当時未開拓の領域だった。ゆえにホスファゼン変性ポリウレタン合成は、世界初の技術であり、また情報が無いので難易度も高い。
さらに原料となるホスファゼンは新素材として注目され始めた時代であり市販されていなかった。この理由から、技術の難易度よりもホスファゼンをどのように調達するのか企画検討会で問題にされた。
大学院修了後就職するまでの1か月間、ご指導いただいた先生のお手伝いを無償でしている。その先生と新年度の学生が使用予定のホスファゼンを大量合成し数kg精製した。
その仕事を終えても2週間ほど時間があったので、実験を行い新規のホスファゼン誘導体を4種と、そのうち1種の誘導体を使って新たな環鎖状型ホスファゼンの重合に成功した。これらはその後論文2報にまとめられたが、その御褒美として2kgほどホスファゼンを頂いた。
企画検討会でその話をしたところ課長からそれを使って研究するように命じられた。そして足らなくなったら大学からもらうように指示された。
しかし、ホスファゼン変性ポリウレタンの合成は、新入社員という立場で残業手当がつかない当方の毎日の努力により、大学から追加分をもらうことなく6か月後に工場試作まで成功することができた。そして始末書、となった話は以前この欄で紹介している。
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ゴム会社に入社して9カ月が経過した時に職場異動となった。10月1日に研究所へ配属されて担当していた1年間で実施予定だった新入社員テーマ樹脂補強ゴムを3か月で終了したからである。
1980年1月からのテーマを企画してほしいと新しく上司となった主任研究員(課長)から命じられた。高分子材料科学の分野では、耐熱高分子の研究の流れから1970年代高分子の難燃化研究が生まれている。
大学院の2年間は無機の講座に在籍していたので無機化合物が難燃剤として応用されていることを知っていた。また、単に情報として知っていただけでなく、研究も少し行っている。
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塗料として用いられているPVAの難燃化が難しい、といわれていたのでホスフォリルトリアミドのホルマリン付加体を合成し、難燃性のPVAに変性する研究を行い色材協会誌に発表している。
ゆえに課長の期待に応えることは朝飯前であった。新たに配属された部署の看板は高分子合成研究室であり、世界初の難燃性軟質ポリウレタンフォームを合成してほしい、と具体的なテーマを命じられた。
世界初の技術であることが重要だ、と念を押された。リン酸エステル系難燃剤の開発競争が始まっていたので、新たなリン系難燃剤のコンセプトが生まれたらすごい、と指導社員から言われた。
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新入社員のモラールアップのためのリップサービスと最初はとらえたが、ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの企画を提出したら、大変感謝された。高分子合成研究室という看板だったが、新入社員のアイデアをそのまま受け入れるレベルだった。
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休日の2日間は、始末書に添付するホウ酸エステルの企画書作成のために費やされた。当初樹脂補強ゴムが新入社員テーマとして設定されたのだが、1年間の予定を3か月で仕上げている。ホスファゼン変性ポリウレタンフォームは6カ月で工場試作成功、そして始末書である。
上司はホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームを新入社員の研修テーマ発表会で発表すると言い出した。時間は3カ月しかない。ただし、最大の問題は加水分解しやすいホウ酸エステルの問題解決である。
当方は、この部下から見ればとんでもない上司が反面教師となり、ドラッカーを高校生から読み続けた経験知の検証が可能となった。また、ドラッカーを問題解決の書として見直すきっかけにもなった。
ドラッカーの言葉に「およそ優秀な人がしばしば成果をあげられない。その原因は間違った問題を正しく解くからである」という皮肉ではない名言がある。ところが、この上司は間違った問題に対して誤った解答をする。
だから、部下の誰もが上司の指示の間違いに気づき、慌てて正しい問題を探す。その結果、課員の多くが上司と衝突することになる。上司と衝突することにより、問題解決能力が向上する。ドラッカーが予期しなかったマネジメントスキルの事例を勉強している。
さて、ホウ酸エステルの加水分解性の問題をどのように解くのか。仮説を設定し実験を行うのは、科学の常とう手段だが、シミュレーションを行い、その結果をもとにモノを作る、すなわちシミュレーションで示された機能について動作を直接確認する技術の方法が存在する。
これは、ニュートンはじめ科学誕生以前から著名な人物が実践してきた方法である。現代ならばアジャイル開発につながる方法でもある。また、弊社ではこれらの方法についてセミナーを提供しているが、義務教育から大学教育までで決して教えられることの無いスキル(注)である。
このスキルを活用して業務を遂行した。まず、学生時代使用していた無機結晶模型の部品で、ホウ酸エステルの分子モデルを組み立てた。様々なジオールでモデルを組み立てていたら、ホウ素原子の孤立電子対の電子空乏層が見えてきた。
もし、ここに配位する分子構造ならば加水分解が安定化するかもしれない、と考えて、Nメチルジエタノールアミンとホウ酸とのエステルを組み立てたところ、NがBに配位し、かご状構造で安定化することが模型で示された。
企画書には、新規化合物となる、その絵を描いている。工場の片隅に反応窯を置き、合成後そのままポリウレタンの合成プロセスに送れば、エステル化反応で生成する水を除去する必要もない、画期的アイデアだった。
ジエタノールアミン類とホウ酸とでホウ酸エステルを合成し、副生する水はポリウレタンの発泡体として使用、燃焼時にはホウ酸エステルとリン酸エステルが反応し、ボロンフォスフェートとなり、ホスファゼン並みの難燃性が得られる、と実験結果を検討もせず(注)、まとめられた企画書を始末書代わりとして、上司に提出している。
ここで、上司は、企画書ではなく、始末書としての表紙を作成するように指示してきたので、従っている。その後表紙だけが人事部に送られたことを後日人事部の同期から知らされた。
さて、企画書には実験で仮説を検証せず、分子モデルでシミュレーションされた結果をまとめただけだが、アジャイル開発をおこなったところうまく機能したので、当時始末書のことなど忘れてしまった。
上司も大はしゃぎで、次から次へと企画書に書かれた実験を指示してくる。1か月後には、新入社員研究発表として体裁の整うデータが得られた(この時弊社の研究開発必勝法で説明している戦略図と戦術図を使用していたので、上司には当方の業務が全て可視化されていた。それが自分の首を絞めていった。セミナーでは上司の人格を考えて使用するような注意をしていないが—)。
IRにより、ホウ酸エステルとリン酸エステルが反応してボロンホスフェートを生成していることもモニターされ、さらにリン原子含有率を基準にした単相関係数は、ホスファゼンのそれと等しい値になった。
趣味で始めたデータサイエンスの勉強を試してみたいと思い、難燃化に機能する主要原子であるPとB、ClのLOIに対する寄与率を調べてみた。
科学的な分析データとして、B単独使用ではLOIへの寄与がほとんど無いことが示されていた。また、燃焼時の炎の中に、リン酸エステル単独で観察されるオルソリン酸がホウ酸エステルとの併用で観察されないことも示されていた。
また、燃焼途中や燃焼終了後のチャーにボロンホスフェートをIRで検出できていた。これらから多変量解析を行えば、BとPの寄与率が高くなり、Clの寄与が低くなると想像された。
科学的に研究せよ、とは上司の決め台詞だったが、ロジックを示した戦略図と戦術図のおかげで、その進め方が非科学的だったとしても、理解できなかったのだ。科学的に、が口癖の科学者もどきには科学という哲学がどのようなものであるのか、理解していない人物(注2)が多い。
(注)有機合成ルートを設計する手法に、アメリカの科学者コーリーが考案した「逆合成」という考え方がある。これは、高校の学習参考書「チャート式数学」にも書かれている名言だが、「結論からお迎え」というコンセプトと同じである。すなわち問題を考えるときに、まずその結論から考えるのだ。ドラッカー流にいえば「あるべき姿」を具体化するのである。ドラッカーの書にはこれが随所に出てくる。ゆえにドラッカーが難解に見えたりする。
ドラッカーが難解に見えるのは、前向きの推論による帰納法で問題解決するのが科学的と学校教育で教えられたからである。学校教育では、前向きの推論がスタンダードだが、ドラッカーの書ではあるべき姿を考えながら読む必要がある。
学校教育だけではない。科学とともに誕生したシャーロック・ホームズもワトソンとベーカー街221Bにある事務所で前向きの推論を展開する。この探偵が難解な事件でも解決するので、前向きの推論が正しいと誤解している人が多い。40年ほど前に刑事コロンボは逆向きの推論で事件解決を行うスタイルを示した。おそらく同じ事件をホームズとコロンボにその解決を競わせたなら、コロンボが勝つに違いない。
ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームでは、仮説も検証せずにいきなりジエタノールアミンとホウ酸と反応させたホウ酸エステルを合成し、それを用いて難燃性ポリウレタンフォームを合成している。発泡体なので反応バランスを調節する必要があるが、難燃性の機能だけ確認するのであれば、シート化してLOIを測定すればよい。リン酸エステル系難燃剤であるCR509の添加量依存性を求めたら驚くべきことに、ホウ酸エステルが2%存在しただけでCR509の添加量を半減できることがわかった。
(注2)この上司は馬鹿ではない。「上司を説得する怖い怖い戦略」を考案するきっかけとなった出来事がある。40年以上前の話であるが、この上司が横断歩道で一時停止せず老婆をはねたそうだ。この事件は、隠蔽化されたのだが、同時に酒の席で「本部長の口説き方」として話題になっている。会社内というのは隠蔽化されてもどこからか漏れるものである。さて、その口説き方は、「本部長から言われた宿題を考えて運転していたら事故を起こしました」という方法である。責任感のある本部長は自分への責任回避のため隠蔽化したのである。上司に報告者と同じ結論を共有してもらいたい時には、その内容を説明するときに、それを否定するとリスクが生まれることを優先して説明すると理解されやすい。会社は組織で動く。本来は会社のリスクを優先すべきだが、役割からくる責任を優先して考える管理者は多い。だから、ドラッカーは誠実な人をリーダーとすべき、と言っている。日本はバブル崩壊後世界で一人負け状態である。経営者は管理職が誠実であるかどうか見直してはいかがか。誠実な人物は、まず会社のリスクを考える。換言すれば、担当している仕事の成果をまず考える。仕事にしがみつくような組織人は誠実ではないのだ。
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40年以上前の始末書の思い出をもう少し思い出しながら書いてみる。本来なら暗い思い出だが、ホウ酸エステル変性ウレタンフォームの発明アイデアが生まれた楽しい(?)思い出でもある。
部下から見ればとんでもない上司だが、ゴム会社でそれなりに出世されているので、日本のサラリーマンとして優秀な人だったのだろう。
始末書を書く理由を当初理解できなかったが、上司は市販されていない材料の使用を責めていた。そこで市販されていたなら世界初は難しいでしょう、と尋ねてみた。最近ホスファゼン事業をやめた大塚化学がその誘導体をようやく開発し始めた頃の話である。
当方は大学院を修了後上京前の約3週間、無機材料ではなく有機合成化学の視点でホスファゼンの研究を行い、ショートコミュニケーションを発表している。その時に学生の研究のためにバケツの中で原料を大量合成し、その日当代わりとして指導教官から数kgほど頂いていた。この卒業記念品を用いてイソシアネート基と反応しうるジアミノテトラフェノキシホスファゼンをゴム会社の研究所で合成したのである。
上司にはそれは報告し許可されていた。状況を上司は知っていても始末書を書く書かないで揉めていたのだが、上司がもっと簡単に合成できる新規無機化合物は無いか、と突然言い出した。
その場の勢いで、ホウ酸エステルならお釜一個あれば簡単に合成できる、と答たことを今でも後悔している。この時、ホウ酸エステルが加水分解しやすく扱いにくいことを瞬間的に脳裏を横切ったが、上司から、何故それを最初に選ばずホスファゼンを選んだのだ、とすぐに責められた。
サラリーマンは円満な人柄が出世すると言われている。この上司は恐らく上から見れば従順な人柄かもしれないが、部下に対して陰湿であり、イジメるツボを心得ていた。
このような人物にゴム会社ではよく遭遇したが、うまくいなして12年間務めることができた。このときなぜ上司の術中にはまり、上司のストレス解消の餌食になるような議論となったのか、反省している。
毎日1時間生産性の無い議論が数日続いていたので、当方も精神的に疲れ、ホウ酸エステルの企画提案と言う形で始末書を書きます、と週末に回答してしまった。
始末書の議論を横道にそらすために、ああだこうだとホスファゼンの難燃化メカニズムの特徴を説明してみたりしても、すぐに話は始末書に戻される。始末書を書くと言わない限り、解放されないと悟ったので企画書添付という条件付き提案をしたのである。
ホウ酸エステルとリン酸エステルとが燃焼時の熱でボロンフォスフェートを生成し、ホスファゼンと同等の難燃効果を発揮する技術はこうして生まれたのだが、マネジメントが人を成して成果を出す意味ならば、この上司は極めて高いマネジメント能力を持っていたことになる。
しかし、連日呼び出され始末書を書けと上司から責められるのは地獄だった。同期の友人は、新入社員の2年間は、試用期間と同じで責任が無く残業代もつかない、ということで新入社員に始末書を書かせようとしているのだから、出しとけばいいのではないか、と言っていたが、上司から工場試作を指示され、連日ホスファゼン誘導体の合成を行うために深夜まで働いていた、その報酬が始末書か、とアドバイスに対して答えている。高分子の難燃化技術の思い出では、この始末書問題がホウ酸エステル変性ポリウレタン技術のアイデアを生み出したので、一生忘れられない思い出となっている。ホスファゼン変性ポリウレタンフォームでは特許を書いても発明者の末席となり、工場試作の打ち合わせ資料には名前すら書いてもらえなかった。もし、成果となっていたなら上司の成果となったのだろうが、これが次工程の部署からクレームがつき、始末書を書くような仕事となった。おかげで学会誌に投稿する論文では、執筆者筆頭を主張しても一言新入社員だろ、と言われた程度だった。サラリーマン研究者のスタートがこのような状況で、まさか12年後他社とのJV立ち上げ後転職するような事件に巻き込まれるとは想像していなかった。
ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームが実用化された後、高分子材料から高純度セラミックスの合成研究の企画を提出するのだが却下されている。そしてフェノール樹脂発泡体の天井材実用化後、無機材研に留学し、それを実証するのだが、12年間イバラの道だった。しかし、退職後も事業が続く技術を生み出す夢を実現しようと努力した楽しさもあり、会社を辞めようと思ったことは無い。
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倉庫には、様々な燃焼試験装置がホコリをかぶっていた。指導社員の説明では、新しい装置が発表されると上司である主任研究員がすぐに購入指示を出していたからだそうだ。
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研究所では評価技術の研究に重点が置かれていた。現象を把握するために現象の分析・解析技術は重要である。燃焼という現象解析のためにその評価装置をすべて揃える、という考え方もこの観点では正しいのかもしれない。
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しかし、アラパホメーターは新品同様だった。指導社員の説明では、アラパホメーターの測定原理が燃焼時に発生する煤を濾紙に吸着させる方法なので、精度の高い煙評価ができないとのこと。
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例えば、塩ビと三酸化アンチモンの組み合わせによる難燃性ウレタンフォームでは、難燃性能を変えて合成されたサンプルのどれを測定しても差異が明確に現れなかった。それで、使い物にならないと判断されて倉庫入りとなったそうだ。
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この説明を聞き、ホスファゼンが低発煙であると書かれた論文を読んだ時の上司の顔が浮かんだので、すぐにこの装置を使用した実験結果を報告した(指導社員の指示でもあった)。
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案の定上司のツボにはまり、アラパホメーターを購入してからの経緯を説明されるとともに部下が使い物にならないと判断したのは間違いだった、とまで愚痴ってきた。
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この時、まさかホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作に成功した後に始末書を当方に求めてくるとは夢にも想像しなかったが、このアラパホメーターの発言から自己責任能力の乏しい人と理解すべきだった。
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反応型ホスファゼン変性ポリウレタンフォームは、工場試作に成功するまでは研究所で評判が良かった。ゆえに新入社員の2年間は残業代がつかないルールであっても進んで残業を行い、企画段階からたった6カ月という短期間で工場試作を成功させている(指導社員の説明では異例とのこと)。
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この工場試作サンプルについても、すぐにアラパホメーターで無煙難燃化技術であることを確認しろと指示が出た。学会発表するから実験の様子も写真に撮るように、と工場試作に成功後、次から次と仕事を命じてきたが、ある日その指示が始末書を書けとなった。
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これは、実話である。新入社員の当方は始末書の意味が不明だった。上司は市販されていない材料を使用した責任を取れという。企画時に世界初の化合物のため新規に合成する必要があり、と明確に説明していた。
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また、上司は実験中に、無機の講座出身なのに有機合成もできるのか、と褒めていた。その時、世の中に無い新素材、何でも合成したい、といったところ、上司へのアピールを軽蔑するような発言を返してきた。
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本来なら、このような上司にアピールする冗談に対してモラールアップする言葉で返すのがマネージメントスキルとして重要なはずだが、逆にモラールダウンするような言葉が返ってきたのである。
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そばで聞いていた指導社員は、ネクラな上司だから、と言っていたが、この言葉に対し難燃化研究は燃えるようなファイトで仕事をしてはいけないことを指導しているのでは、と意味不明な冗談を返したような記憶が今でも残っている。
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暗い上司の部下として、明るさだけで頑張っていた新入社員時代の思い出である。技術開発には前向きの明るさが重要である、と心掛けている。ゆえに、わけのわからない始末書に対して、ホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画提案を添えて提出している。
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始末書の書き方については、上司から新入社員の説明不足を詫びるだけでよい、と言われたが、真実と異なっているので、「人に聞けない書類の書き方」という本を購入して研究している。
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その本にも始末書というものは謝罪の心が伝わるように簡単明瞭に書くのが良い、とされている。しかし、当方はこの年に至っても何故上司は新入社員に始末書を求めてきたのか不思議に思っているぐらいなので、当時はこの出来事を全く理解できていなかったと思っている。
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高校生の時に父親に勧められて「断絶の時代」を読んだ。ドラッカーとの出会いだが、大学に残らず企業へ就職したのも知識労働者としてドラッカーの書を理解したい、という思いからである。
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ゴム会社は当時すでに日本を代表するタイヤ会社になっていた。そのような企業ならば、という思いもあったのだが、この始末書事件は喜劇でもある。
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当方の配合設計の考え方は、技術者としてスタートした時の指導社員から強く影響を受けている。彼が、混練の神様のようなレオロジストで関数電卓を使いシミュレーションを行うような人だったから、化学系の配合屋と少し異なる。
まずプロセス条件から考えてゆく。具体的に言えば、プロセスから生じる制約条件を考慮して配合設計を行う。タグチメソッドでは制御因子の水準を幅広く設定するとよい、と指導されるが、プロセスの制約を考えず制御因子を決めるのは愚かである。
ところで、プロセスの制約から配合因子が影響を受けるケースではどうするか。このときプロセスにおける配合因子の挙動をチェックできる指標を入れた実験を必ず一水準入れる。プロセスの制約からその配合因子をあきらめるような配合設計を行わない。
こうすることにより、配合系の特徴が明確になる。データサイエンスにありがたみを感じるのは、公開されている多量のデータから自分が設計している配合系の特徴が明らかになった時である。
配合設計をいつでも新しいコンセプトで行っているとは限らない。従来の配合系を参考に設計したり、習慣に従い、比例計算だけを行いボーっと配合設計している場合もある。
アカデミアよりもアカデミックな研究所で見かけたゴム配合設計者の中には、グラフを書くためだけに配合設計している人がいたが、これはボーっと何も考えずに配合設計している人と変わらない。
ゴム配合の物性に与える影響を知っているならば、グラフを想像する前に考えなければいけないことがある。それは、ブリードアウトの問題、あるいは、物質の分散状態と拡散の問題である。
配合したい物質の機能に着目することは重要だが、その副作用を見落としてはいけない。副作用がある時にはその副作用を抑制する方法も配合設計時に考え、システム設計しなければいけない。
いろいろ考えてうまくコンセプトをまとめられない時がある。そのようなときは、データ駆動の実験を行いながら考える。例えば高純度SiC前駆体の配合設計やPETボトル再生材を80%含む樹脂はじめどこから考えたらよいのか難しい問題の成果は、50年近く前からデータ駆動の実験で成果を出している。
現在データサイエンスによる問題解決のオンラインセミナーの参加者を募集しています。
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ゴム会社では、アカデミアよりもアカデミックな研究所に配属されたが、幸運だったのは、最初の指導社員が技術と科学のバランス感覚に優れ、化学を学びたいという意欲に燃えた物理学者だったことだ。
指導社員は研究熱心なだけでなく、勉強も欠かさず習慣としていた人で、その姿勢は当方の技術者人生のモデルであり目標となった。
日本では技術者が成果を出しても高く評価しないどころか昇進を遅らせる会社もあるので注意する必要がある。さらに人の成果を盗む人も企業にはおり、盗むだけでなく妨害を行うことも黙認する企業もある。
会社というのは一つの社会なので善人もおれば悪人もいる。ただ人間社会には法律があり、それを遵守できるよう警察や裁判所があるのだが、会社にはこれらの機能は無く、被害者が泣き寝入りすることになる。
不幸な結果として自殺者が出て初めて社会問題として取り上げられる事態になるので、会社の中で悪人と仕事をしなければいけなくなった時に厄介である。
当方がこの欄でFDを壊された体験談を書くのは、自殺に至るような状況で当方は生きる道を選び転職していることを同様の問題で悩んでいる人に知らせたいからだ。
事件及びその後のおぞましい出来事については証拠を今でも保管しているので、企業における不幸な体験としていつか書籍にしたいと思っている。逃げたわけではない。ただし、このような内容の書籍は、社会的影響が大きいので安直に執筆できない。
科学だけでなく人間としての成長も重要である。STAP細胞事件について書かれた「あの日」を読んだが、事実と思われてもその事実が歪んで読者に伝わってしまう表現である。この原因は、組織活動について知識が乏しい著者の手によるものと推定している。
すなわち組織活動の視点で、業務姿勢その他に疑問がわく表現が多い。当方が自分のFD事件の体験記を書くときには、組織の問題も含め、科学と技術の視点からも事件を眺めたいと考えている。
例えば、犯人はデータサイエンスで電気粘性流体の耐久性問題を解決した当方の実験結果を非難している。それだけではない。
退職するときに参考のために見せてもらった耐久性問題の彼らによる報告書では完璧な否定証明が展開されていた。科学的に完璧な否定証明が成された現象に対して、データサイエンスで解決策を導いた当方の仕事の仕方が間違っているとまで言われたのである。
データサイエンスのセミナーでは、MZ80Kが出力しLOTUS123で徹夜でまとめた当時のデータをそのまま使って説明している。自宅で会社のデータ整理を要求するなど過重労働前提の指示が当然だった時代である。
少し話がそれたが、配合設計もこの脱線した話に近い。知識の量やモノの見方、人生体験も含めその技術に反映される。配合設計を簡単だと少しでも感じた人がいたら、それは誤った判断だと指摘しておきたい。
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わかりやすく表現すると、技術者の数と同じくらい配合設計の考え方があると思っていただきたい。配合設計ではコンセプトが重要であり、そのコンセプトは技術者の経験知に影響を受ける。
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配合設計をデータサイエンスで行い、Pythonで機械学習させながら実験を行う。実験結果の整理は、適切なグラフがいくつか提示されて考察する技術者の姿は、DXの進む時代の常識となるのか。
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「配合と物性の関係」についてご質問を頂いた。しかし、詳細は別途ご相談させていただきたい。なぜなら当方のコンサルティング内容にかかわるからである。
マテリアルインフォマティクス(MI)でAIを設計する時にもこのあたりの知見は重要であり、無料で話せる内容は限られる。
中国ナノポリスの研究所ではカオス混合装置が稼働している。ここで退職後カオス混合装置の効果を検討してきたのだが、当初考えていなかった現象も起きているので勉強になった。
早い話が、混練技術についてはまだまだ開発の余地があるということだ。特に二軸混練機の取り扱いについては注意が必要で、現在市販されているどのような二軸混練機を使用しても当方の発明したカオス混合装置が取り付けられていなければ、到達できないレベルが存在するということが分かった。
当方の執筆した混練の本にも少しそのようなことを書いているが、8年間実験してきてデータが蓄積された結果の結論である。
もちろんカオス混合装置が取り付けられていても、二軸混練機の混練条件が悪ければ、カオス混合装置内で十分な混練効果が得られないこともある。だからカオス混合装置が万能とは言わないが、カオス混合装置が取り付けられた二軸混練機では、取り付ける前より混練が進むのは確実である。
さて、配合と物性が1:1に対応していないことを先日紹介している。これは、配合成分の一次構造よりも高分子の高次構造のほうが物性への寄与率が高いためである。
また、配合と力学物性が1:1で対応しても電気特性が対応しないこともありうる。例えば、電子機器にPPS材料の適用が多くなったが、カオス混合の有無で配合と力学物性が1:1で対応するが、配合が同一でも電気特性が異なるPPSコンパウンドが存在する。
特に絶縁耐圧が大きく異なるので面白い。これは以前当方のセミナーでもナノポリスにおける成果としてデータを紹介しているが、カオス混合を行うと耐トラッキング性能が100V以上向上する。この向上効果は二軸混練機にも依存する。
なぜ二軸混練機に依存することが分かったのかは想像していただきたいが、カオス混合装置を取り付けなければ耐トラッキング特性が品質規格のボーダーラインとなるが(射出成形体の歩留まりに影響する)カオス混合装置を取り付けると品質が向上するので、射出成形体の歩留まりが上がる。本日はこれ以上書かない。
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データサイエンスにより界面活性剤の候補が絞られ、ゴムからブリードアウトした物質で増粘し機能を失った電気粘性流体を一晩で復活できた。
しかし、その手法は科学的ではない、という。科学的ではないことを当方も承知していたが、それを理由に検討しないというのは、問題解決の手段を狭める、と主張した。
当時アカデミックな研究を唯一の方法として推奨していた研究所は、科学的であることにこだわる硬直した研究者の集団だった。当方は、さらにヒューリスティックな解を示し、このアイデアを用いると現在検討中の電気粘性流体の性能を向上させることが可能、とこの議論の中で答えている。
そして、粒子構造が表面から内部にかけて抵抗が減少している傾斜機能粉体やコンデンサー状のナノ粒子が分散した粒子、ナノ粒子が分散した不均一粒子の3種の粒子を製造し、それらの性能を評価した。
驚くべきことに、それら3種の微粒子から製造された電気粘性流体は、当時世界最高の電気粘性効果を示した。短時間で得られたこの成果で周囲はびっくりして、科学的には怪しいがデータサイエンスで見出された界面活性剤で耐久性問題を解決しようという流れになった。
同時に会議前になると異常な事件が起きるようになった。データサイエンスを用いた問題解決法が非科学的とされた時代の出来事である。
科学と非科学との境界は時代により変化するとイムレラカトシュはその著書の中で指摘しているが、科学という哲学がどのようなものであるのか、あるいは人類が科学誕生以前から営んできた技術的思考による問題解決法を非科学的として封じることの愚かさにようやく日本人は気がついたのかもしれない。
日本人は、ようやくデータサイエンスの重要性に気がつき、義務教育にプログラミング教育を遅ればせながら取り入れた。そしてAIの実現にまっしぐらである。
おそらく、その次に来るのはAIに対する反省だろう。人間の進化の歴史を見るとこのような時代が到来することが予想される。
データサイエンスとAIを直接結び付けると、それを反省する時代が来ると予想されるならば、データサイエンスを人間の頭で結び付ければよいだけである。これが今データサイエンスにおける最先端の方法論だ。それは当方が転職してまでも改良し続けてきた方法論である。
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