昨日結晶化していない高分子材料について、ガラス相に2種類の構造が存在することを書いた。高分子に限らずあらゆる物質はそれが存在する雰囲気温度に相当するエネルギ-を持っている。
例えば、空気は主に酸素分子と窒素分子で構成されているが、それぞれの分子は観測される温度に相当するエネルギーで回転しながら飛び回っている。圧力を感じたりするのはそのためである。
高分子を昨日組み紐で例えたが、この紐1本1本も同様に蛇のようにくねくねと運動している。溶融状態の高分子はあたかもウナギを大量に詰めたバケツの中で観察される光景のようかもしれない。
その温度を下げてゆくと、引っ掛かっているところを外せなくて運動が止められるが、スカスカの部分では引っ掛かるところが無いので運動状態をとることが可能だ。実際にぴくぴくと運動している。
多数の組み紐をくちゃくちゃに手の中で揉み床に放り投げてできたときに密度の高いところとスカスカな低いところができる、という認識は重要である。実務で遭遇する品質問題の多くはこの構造を想像できるかどうかで対策の考え方が異なる。
金属やセラミックスなどの無機材料でできる非晶質構造は球を積み上げたような構造だから、その非晶質状態に高分子ほど大きな密度分布はできない。
無機材料の非晶質構造には2種類あり、ガラス転移点を持つ非晶質構造とガラス転移点を持たない非晶質構造である。これは組成により変化するが、前者はガラスと呼ばれる。すなわち無機材料ではガラスとなる組成とガラスができない非晶質構造の組成が存在する。
ガラスができない非晶質構造を溶融後にゆっくり冷却してゆくと結晶質構造が現れる。また、ガラス構造をとる無機材料でも少し組成がずれるとその構造から結晶を析出し、結晶構造とガラス構造に分離する。
無機材料では、ガラス構造をとる組成と結晶構造をとる組成がある、とおおざっぱに材料を捉えることができる。そして無機材料の機能は主に結晶構造が発現し、それが活用されている。
アモルファス金属という非晶質の機能性無機材料も存在するが、市場で活用されている機能は結晶由来の場合が多い。そしてガラス以外の非晶質無機材料は、急冷条件で製造されている特殊な材料である。
ゆえに無機材料では、結晶構造の機能がまず重要となってくるが、高分子材料の非晶質構造は皆ガラスであり、この構造の理解が重要であるにもかかわらず、形式知では無機材料と同様に結晶について研究が進み、高分子の結晶はラメラと呼ばれる分厚い板状の結晶子の集合体である球晶が基本という体系ができている。
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高分子材料を扱っていて困るのは、教科書が実務的に書かれていないことである。また、よくわかる高分子とか名づけられているものは、わかった気になるがそれで目の前の高分子材料に関わる問題を解けないじれったさがある。体系的ではないからである。
学生時代の高分子科学に関する授業は重合反応が中心だった。あとはフローリーの「高分子」を教科書として用いた高分子物理が大学院の授業として行われている。
これらの教科書に書かれたどのような重要な理論よりも、もし手近に複数の組み紐があればそれを手の中でよく揉み、放り投げて床に落ちてできた状態を観察して得られた知識の方が役に立つ。
そこには、密度の高そうな部分Aとスカスカで密度の低いところBとができている。そしてよく見ると密度の高い部分では、紐がうまく重なっているところがある。密度の低い部分では、紐が自由に動きそうなほどスカスカの部分B2ができている。
結晶化していない高分子材料はおそらく全体が非晶質(ガラス)となっているが、無機材料のガラスと異なり、構造としてこのような密度のばらつきができているに違いない。
ガラス相でもぐちゃぐちゃに他の紐とくっついている部分(Bに含まれるがB2以外)は、分子運動性が拘束されている。一方、スカスカでくねくねと動けそうな部分(B2)は、実際に分子運動が行われており、自由体積と呼ばれている。
結晶化していない高分子材料は1組成の高分子材料でもこのような2種類の構造が必ずできる。そしてそれらの構造の比率も一定ではない。そのため高分子材料の密度はばらつくのである。
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マスクが日常となったようにコロナ禍で世の中が大きく変わり、時間の感覚までおかしくなった。つい3年ほど前の出来事でもかなり以前の事件のような錯覚になる。
昔の話として社名を書くのを控えるが、ある材料メーカーの社長が、品質管理部門でデータの捏造があったと謝罪している様子がTVで放映された。
その後WEBニュースで全容が報じられたが、捏造と言っても品質管理を全くやっていなかったわけではなく、仕様書に書かれた測定データを少し書き直していただけだったようだ。
書き直したので捏造となるが、担当者の立場で、それなりの闇の手続きを踏んでいたようだ。すなわち研究開発段階では特採として使用でき、問題が無かった測定データだったので、それを見栄えよく修正した、すなわち捏造した。
面白いのは、このような社長の謝罪の後、トヨタは成形体の品質データを管理しており、この材料メーカーの材料の影響は見られず問題なし、といち早く声明を出している。このトヨタに続いて他の自動車メーカーも雪崩のごとく問題なしの声となった。
真相は不明で、これは推測となるが、******ので材料メーカー社長は謝罪に踏み切ったのではないか、と思いたくなる。*******部分は本欄で書きにくいが、今大手はQMSを導入しているので、捏造のようなことがあればこのように社長が頭を下げる事態になる。18日のセミナーでは、このようなことを起こさないためのヒントも解説する。
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高分子材料の破壊について、それを科学で理解することが難しい、と言う話を昨日書いた。早速質問が来た。弊社はワイブル統計の計算プログラムを現在無料公開しているのでそれを使ってみてはどうか、と回答している。
実務で困る問題の一つに、研究開発過程で高分子材料の破壊寿命を予測し材料設計したにもかかわらず、量産を始めたとたんに不良品の山となった、と言う初期故障の問題がある。
これを一山いくらで扱ってはいけない。この初期故障の情報を注意深く解析する必要がある。18日のセミナーでは事例で説明するが、コンサルティングテーマとなるような課題である。また、時には忖度が重要な武器となるアカデミアの先生でも解決が難しい問題でもある。
技術者にとっては、課題の一つとなっており、現場の状況に応じて粛々とアクションを展開してゆくことになる。このような問題を科学者に質問すると大変である。いつ課題に展開されるのか不明なだけでなく、逆に「なぜ」と質問を投げかけられる。
研究開発過程でうまくいっていたデータを見せて相談するので、多くの場合にアカデミアの先生にとっては不思議な現象と見えるのが初期故障である。
だから、品質故障という問題がどのように発生しているのか実務経験が無いと隘路にはまる場合もある。初期故障の問題は工程管理で対応可能などと書いてある品質管理の実務書もあったりするが、高分子材料に関わる初期故障については実務書に書かれていない原因が潜んでいたりする。
ここでは書けない話である。18日のセミナーではオフレコ前提でご説明する。高分子材料の初期故障はややいかがわしい問題も含んでくる場合がある。例えば数年前材料メーカーのデータ捏造問題で社長が謝罪したにも関わらず大騒動になっていない事例が存在する。
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金属やセラミックス、高分子材料のすべてを扱った経験(注)から、高分子材料の破壊を理解するためには高分子に関する先端の知識が無いと難しいと思っている。その原因は、金属やセラミックスに関してその材料として使用されるときの構造がほぼ明らかとなっており、また形式知について20世紀末にほぼ固まったからである。
しかし、高分子材料について材料として使われている時の構造は、今まだ研究が行われている段階で、先端知識を有する企業では、高分子材料を階層的に捉える考え方で材料設計が行われている。
昔は材料力学と言う学問の中で高分子材料も一緒に扱われていたが、金属やセラミックスと高分子材料が大きく異なるので、という段階でその進歩は止まっている。
以前アカデミアの先生がマテリアルインフォマティクスのセミナーで40年以上前の線形破壊力学の話をしていたのでびっくりした。ご専門は数学だったのでツッコミを入れることをやめたが、アカデミアでもその程度と理解しておくことは大切である。
ちなみにどのようなツッコミを言いたかったのかのべると、その程度の結果は40年前に結論が出ている、というコメントである。この先生が40年前の話をしても皆知らないと思って話をしたのか、先生自身が40年前の研究についてご存じなかったのか知らないが、いずれにしても研究者として失格である。
材料力学で高分子材料も金属やセラミックスと同様に扱われていた時に、レオロジーという学問ではダッシュポットとバネのモデルで高分子の物性は議論されていた。しかし、この考え方ではクリープを説明できないということで20世紀末に新たな形式知の体系づくりが始まっている。
レオロジーでは土井先生はじめ高分子物理の造詣が深い先生方が育っておられたので学問のイノベーションが進んだが、材料の破壊は科学で扱いにくかったという事情もあり、アカデミアの研究者が少なかった問題がある。
ところで、高分子材料の破壊する直前までの過程はレオロジーの形式知が重要となってくるが、その形式知がまだ研究途上である。次に金属やセラミックスの破壊過程において、線形破壊力学という学問の形式知は重要であるが、この形式知の体系で高分子材料の破壊をすべて説明できないのだ。
これは脆性破壊と延性破壊が組み合わさっている、とその理由が説明されているが、それほど単純な問題ではない。例えば破壊過程で結晶化が進む場合だってあるのだ。
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高分子材料の破壊について完璧な形式知が存在しなくても実務では材料設計をしなければいけない。しかし、技術を理解しておれば科学で不明な領域があっても「技術で」対応可能である。18日のセミナーでは技術の講演を行う。
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(注)学位はセラミックスから高分子まで扱った内容で、これは、国立T大で学位をくださると言われたが当時無機高分子で実績を出していた中部大学に変更したおかげで完成できた論文である。T大で学位取得を辞退した理由は以前説明している。
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最近高分子科学の分野であまり流行っていないが、線形破壊力学という学問分野がある。グリフィス理論や応力拡大係数などガラスやセラミックス分野では一定の評価を得ている。
セラミックスを勉強するときに数学の苦手な材料技術者がつまずく壁のような学問である。当方は数学やプログラミングは趣味のようなものだったので苦労しなかった。
1980年前後には高分子材料分野でもこの理論やパラメーターの応用がなされたが、芳しい結果が得られなかったようだ。しかし、ゴム会社の研究所では声高にこれらの理論を振り回し、理論に合わせてデータを取得していた研究者がいた。
ガラスやセラミックスに比較して、高分子材料は室温においてクリープ速度が速い。これも一因となり引張試験や曲弾性率測定では、破壊に至るまで引張速度の影響なども出る。
高分子科学としては少し怪しく見えるグリフィス理論や応力拡大係数ではあるが、この視点で高分子材料の破壊を眺めるのは有益である。
ガラスやセラミックス分野では科学的に耐えたこれらの理論やパラメーターだから高分子材料でうまく合わない理由は高分子材料の破壊に至る過程において高分子特有の問題があると理解できて、高分子と言うものをイメージしやすい(注)。
言い換えると、線形破壊力学の視点で高分子材料を眺めると、金属やセラミックスと異なる高分子の構造的特徴を「なんとなく」理解できる。「なんとなく高分子」という小説でも書いてみたくなる。
例えば横軸に弾性率をとり、縦軸を応力拡大係数とすると、セラミックスから金蔵、高分子まで反比例のグラフのようにきれいにサンプルの点が並ぶ。これは材料技術者の経験知として有名な事実である。
このグラフ面で高分子複合材料を眺めると、複合材料の開発方向が、弾性率と応力拡大係数を上げることという材料に求められる特性が見えてくる。
(注)ポリウレタン発泡体の開発もセラミックスを勉強してきた当方には面白い体験だった。この時発泡体をプレスしてシート化し諸物性を評価していたら笑われた。意味が無い、と言うのだ。グリフィスの理論で問題となる欠陥よりもはるかにおおきなセル構造の発泡体と圧縮シートを評価しても解析が難しいことは分かっていた。しかし、シート化して測定されたデータには配合因子の特徴がきれいに現れた。発泡体のデータでは、配合因子の効果をうまく議論できなかった。アカデミアよりもアカデミックな研究所ではあったが、現象を眺める姿勢には多くの疑問となる思い出が残っている。
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5Gはじめ情報通信分野でPPSの売り上げが世界的に伸びている。当方も5年ほど前に米国で問題となった通信会社向けにコンパウンド開発を中国で指導した経験がある。
その時、射出成型用添加剤としてPH01という新材料を開発している。この添加剤をPPSに添加すると流動性が著しく向上して0.5mm以下の薄肉射出成型が可能となる。
これはPPSの結晶化も抑制した効果もあり、割れにくくなったからである。さらに200℃で熱処理しても強度低下しない。この温度で24時間保持すると無添加のPPSと同様の強度低下を起こすことから、結晶化を抑制していると推定している。
おもしろいのは、このPH01を架橋タイプのPPSへ添加してやると繊維を引くことができた点である。これは某大学で繊維化装置を借りて実験して得た結果である。大学教授もその結果に驚かれていた。
もっと驚くべき結果は、この添加剤は一般の可塑剤と同じような効果がありそうな物性データが出ているにもかかわらず、この架橋タイプPPSが繊維化できたという結果以外にTgを下げない点も驚くべき結果である。
すなわち、高分子に可塑剤を添加すると可塑化効果により緩和速度の指標となるTgは添加量とともに低下する。しかし、この添加剤はそのような挙動を示さない。
この原因は、電子顕微鏡観察で明らかとなったのだが、ご興味のあるかたは弊社へ問い合わせていただきたい。弊社ではこの添加剤の特許に関してこれから審査請求をするところだが、事業として生かせる企業に特許を売却したいと考えている。日本でそのような企業が現れなければ、海外企業への売却も考慮中である。
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50年ほど前に耐熱性高分子の研究が盛んに行われた。そして一次構造の耐熱性への寄与について結論のようなものが出されている。ここで「ような」と書いたのは、一部研究者により見解が異なる点があるからだ。
そもそも耐熱性高分子と言っても空気中における耐熱性なのか、非酸化雰囲気における耐熱性なのかにより視点が変わる。空気中の耐熱性であれば耐酸化性を考慮しなければならず、不飽和構造は酸化されやすいので非酸化性雰囲気で耐熱性が高いと判定されても空気中では耐熱性の順位がさがる。
ゆえに耐熱性高分子と簡単に表現してもどのような高分子を耐熱性高分子と呼ぶのかは、「耐熱性」の条件により変わってくる。簡単に耐熱性高分子について論じることができない。
さらに一般使用の状況を考えたときに、ガラス転移点(Tg)が耐熱性の指標となる場合もある。例えば高分子構造材料では、Tg以上で緩和速度が上がるので、Tgの高い樹脂が選ばれたりする。
食洗器で洗浄可能なプラ容器かどうかはこのTgで決められている場合がある。すなわちTgが70℃以下の材料でできた容器を食洗器で洗浄すると変形する。但し、Tgが70℃以下でも一部架橋構造の導入された樹脂であれば変形しにくい。
この架橋構造も食洗器レベルであれば、結晶構造がその役目をできる。ただしこの時には結晶の融点が高く結晶化温度が十分に低い必要がある。
耐熱性高分子の開発は40年ほど前まで盛んに行われたが、以上の問題もあり研究は下火になっていった。また、当時の研究成果でも耐熱性=燃えにくさと一般化できないことも分かり、燃えにくい高分子の研究は難燃剤の開発へ中心が移動した。
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フェノール樹脂は耐熱性高分子として、合成樹脂の登場初期から活用されてきた。それゆえ燃えにくいだろうと誤解されている人も多い。
燃えやすさ燃えにくさの指標として極限酸素指数(LOI)がある。LOIは酸素と窒素の混合空気中の酸素濃度を指数として表現した数値で、21より大きい材料は燃えにくく、21より小さい材料は空気中で燃え続ける。
ちなみに、21という値は、空気の組成をLOIで表現した時の数値である。この数値でフェノール樹脂の燃えやすさを表現すると、製造条件によりLOIが19から38以上まで大きくばらつく。
すなわち、耐火性が高いと思われているフェノール樹脂も、製造条件が悪ければ空気中で燃えてしまう材料となる。ただし適切な製造条件が選ばれ管理された状態で製造されたフェノール樹脂ならば大変燃えにくい樹脂となる。
フェノール樹脂には酸触媒で硬化させて樹脂を製造するレゾール型フェノール樹脂とアルカリ触媒で硬化させるノボラック型フェノール樹脂の2種類存在する。いずれの樹脂も触媒量と製造条件が不適切であれば空気中で燃えやすいフェノール樹脂となる。
この燃えやすいフェノール樹脂と燃えにくいフェノール樹脂の差異は、三次元化した割合の違いで現れることが50年近く前にパルスNMRと熱分析を組み合わせて明らかにすることができた。
すなわち、一次構造が線状に長く伸びているような部分が多いフェノール樹脂は、燃えやすく、一次構造が分岐し網目を形成するように伸び、自由体積と呼ばれる部分が少ないフェノール樹脂は燃えにくいことが明らかとなった。
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身の回りのゴムや樹脂は、高分子だけで作られているケースは稀である。また、高分子は分子量分布を持っているのでそれ自身が多成分系であり、分子量が1000未満のオリゴマーが可塑剤の働きをしている場合も存在する。
ゴムや樹脂は、加工性や使用される条件に合わせるために耐久性を上げる必要から各種添加剤が使用される。そのために配合設計技術が重要になってくる。
コンパウンド開発や部材開発を行っている企業では、伝統的な配合設計技術が存在している。当方が写真会社へ転職した時にも塗布液の設計方法についてノウハウが存在した。
しかし、その設計方法が今の時代にも合理性を発揮しているとは言い難い例もあるので、環境問題解決が必須となった現代において見直しをするには良い機会ではないかと思う。
20年以上前のことなので問題ないと思うが、塗布液の配合設計において必須の添加剤が存在した事例を紹介したい。その添加剤は塗布された後に無害となるが、化合物単体では環境適合性がない素材だった。
当方はこの化合物の使用を禁止したいと思ったが、担当者から不可能と言われた。PETの表面処理には必須の素材だという。確かにその化合物の構造から機能性を十分に理解でき、コーティング用には不可欠との説明を理解できた。
それでも、当方が心配したのはその化合物が使用禁止となった時に新たな技術開発をしていては遅い、と言う問題である。環境問題とは、企業にとって突然死を宣告するような事態を招く問題である。
伝承されていたその化合物の機能性について異なる視点で見直し、新たなコンセプトの技術を担当者に提案してみたが採用されなかったので、自ら実験を行いその有効性を確認した。
この新たなコンセプトを実用化するために現場の説得も必要となり時間がかかったが、伝統的な配合設計技術を新たなコンセプトの設計技術に転換することに成功した。しかし、10年近くかかった。
配合設計技術は長い間伝承されてきても時代の進歩に合わせて見直す必要がある。しかし、その刷新には時間がかかる。一因として市場の問題を恐れる保守的な考え方があるが、今はロバストを検証できるタグチメソッドという方法がある。当方の新たなコンセプトもタグチメソッドを使用し実用化されたが、ロバストは従来技術よりも高かった。
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