当方の時代に大学4年までの授業のカリキュラムにおいて高分子の教科書は、高分子合成に関するものだけで、高分子物性については自分で学ぶ以外に接する機会は無かった。大学院でレオロジーに関する外部講師による特別講義が唯一の高分子物性論であり、その時は数ページの印刷物が大切な教科書だった。
高分子合成に関しては2種類のタイプの教科書があり、一つは純粋に高分子合成法についてだけ書かれており、他の一つは高分子物理に少し近づいた内容で高分子ブレンド系の話が出てくる。ただし物性論まで展開されていない。
日本人の著者によるこの本は、フローリーの高分子とポリマーの総説の良いとこどりをしたような教科書だった。予定外で大学院に進学した時に、心を入れ替え2年間必死に勉強しようと無機の講座に進学したにもかかわらず、高分子の勉強を独学していた。
ゆえに大学院までの6年間に購入した高分子の教科書は10冊を超えており、無機化学の教科書よりも多い。大学院で高分子の教科書を買いあさったのは、高分子を十分に理解できる教科書が無かったからだが、それは当方の頭の悪さだけが原因ではなく無機化学の教科書よりも体系的でなかったため、わかりにくい教科書が多かったためだと思いだされる。
無機化学は結晶と熱力学の体系で相分離現象まで合成から物性までうまくまとめられており理解が容易だったが、高分子の教科書ではその構造と物性について当時はまだわかっていないことが多かったため仕方がなかったかもしれない。
学部の授業も無機化学の先生は優秀にみえて、高分子の先生はどこか頼りなげな先生が多いように思われた。無機の講座に進んだ原因でもあるが、高分子の教科書をいろいろ集めて学んでみてもフローリーの教科書以外はわかりにくかったので、授業が分かりにくかったのはあながち講師の力量ばかりではなかったのかもしれない。
無機化学の講座で学びながらも就職先に選んだ会社はゴム会社で、面接官に何をやりたいか聞かれ返答に困り、「社長をやりたい」と応えている。この答えが良かったかどうか知らないが、採用されて研究所へ配属された。
そこで出会った指導社員は、今日まで含め当方にとって最も優れた高分子科学の先生である。たった3か月間だったが、毎朝9時から12時まで座学で午後は自由時間となった毎日の生活はゴム漬けであり、「指導社員から学んでも無駄知識となると言われた」ダッシュポットとバネのレオロジーはじめ高分子の構造と物性の当時最先端の知識を伝授された。
自由時間はバンバリーとロール、粘弾性装置、テンシロンを自由に使うことができ、学んだ知識をそこで確認することができた。1年のテーマをサービス残業の繰り返しにより3か月で仕上げることができたが、学んだ知識を展開してまとめた防振ゴム用樹脂補強ゴムの報告書は卒業研究のようなレポートとなった。指導社員からそこまで仕上げなくても良かった、というお褒めの言葉を頂いている。
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高分子のコンパウンド設計で難しいのは、どのような混練プロセスを用いるのか、という点である。量産を考慮した場合には、バンバリー+ロール、ニーダー、連続式多軸混練機の3種から装置を選択することになる。
配合により結果は異なるが、この順番で最適条件で運転されたときに得られるコンパウンド性能が低くなるという認識は大切である。すなわち高い性能のコンパウンドを得たいならば、ロール混練は必須となる。
PPS中間転写ベルト用コンパウンドの開発を担当した時に、二軸混練機ではなく最初にニーダーを使った理由は高性能のコンパウンドを開発したかったからだ。
本当はロール混練をしたかったのだが、PPSを混練できるオープンロールが無かったので、仕方なくニーダーを特殊な運転条件で使用している。
ニーダーを装置メーカーで借りて使用したので、自分で運転できなかったが、そのおかげでニーダーに対する標準的な考え方が常識として定着しており、ニーダーの運転条件を様々に変えるのは混練技術を知らない、と見なされることも知った。
ただ、ニーダーメーカーにとって当方は客にあたるので、装置メーカーの技術者は、ニーダー購入時に混練技術の指導をサービスとして行いますと言ってくれた。ところがこの時良い結果の得られたコンパウンドは、この技術者が推薦してくれた運転条件ではなく、当方の非常識な運転条件で混練したコンパウンドだった。
ニーダーの運転条件を変えると、まったく異なるコンパウンドができるという認識を持っていない技術者が多いのではないか。運転条件で変わるのは分散状態だけではない。高分子の高次構造まで影響が現れる。
連続式多軸混練機しか使用経験の無い人は、このあたりの知識が乏しい。混練機の軸を増やせば混練効率は上がるが、高分子の構造変性まで効果が表れるレベルに到達できるかどうかは疑問を持っている。
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高分子に他の高分子や添加剤を混ぜるときに、ニーダーが使われるときがある。技術者により、この表現は、ニーダーを使う、という人もいるかもしれないが、あくまでもニーダーは高分子を混練するための一つのプロセスであり、これだけではない。
ニーダーだけで混練技術を研究していると、ロール混練で到達できる混練レベルのコンパウンド性能を実現できないので、大切な現象を見落とすことになる。
そもそも、ニーダーがロール混練並みのレベルまで混練することができない、という事実を知らない人が多い。簡単な配合であれば、そのようなことを知らなくても不便はないが、高機能なコンパウンドを開発したいときにニーダーだけで開発していては、失敗することもあるので注意が必要である。
また、技術者の混練キャリアにより、ニーダーは充填率70%以上で用いるべきだ、という考え方の人もいる。充填率が低いと剪断力を大きくかけられないので混練効率が著しく低下するためだが、実は低い充填率であっても剪断力をかけることができるし、充填率も制御因子として使うと混練による高分子の変性技術の幅を広げることができる。
ロール混練のキャリアがあれば、このあたりの理解は容易であり、さらにニーダーの使い方もうまい。PPS/6ナイロン/カーボンの配合で、周方向の抵抗が安定したベルトを押し出すことに成功した時の最初に使用したのはニーダーだったが、特殊な運転条件で使用した。詳細は弊社に問い合わせていただきたい。
道具は使いようで光る、と言われているが、混練分野に関しては、混練機の制約から到達できるコンパウンド性能に限界があることを知るべきである。混練装置は単純な構造なのでそれを誤解している技術者は多い。
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表題は高分子発泡体を難燃化する技術開発を行っていた時の技術コンセプトである。始末書を書く原因となった世界初のホスファゼン変性軟質ポリウレタン発泡体の工場試作に成功した時に思いついたコンセプトである。
当初は、世界初の難燃化技術を開発するのが当方の使命だと言われ、オールコックによるホスファゼンを用いた高分子の難燃化研究が発表された時代に、ホスファゼンのジアミノ体を合成しイソシアネートと反応させれば、分子内にホスファゼンを導入することができ、オールコックの研究結果より優れた成果を出せるのではないかと期待して実験している。
期待通りの研究シーズを1週間ほどで出すことができたので、係長が課長と相談して半年後の工場試作を決めている。簡単な技術と誤解したのである。徹夜を繰り返して実験をしていたことを知っていても入社した若僧が1週間ほどで出せる成果など大したことはない、と考えたようだ。
モノの評価能力というものは、その人の知的能力に大きく依存する。世の中にはその能力が低くても自信にあふれている不思議な人がいる。そのような人は、とかく他人の成果を低く評価する傾向がある。
ただし、低く評価されたおかげで一人で仕事を進めることができ、自由に研究ができた。その結果、高分子を難燃化するときに、燃焼している高分子をどのように炭化促進したらよいのか、当時問題となっていたテーマのコンセプトをゆっくりと考えることができた。
ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の開発は、コンセプトに基づくものではなかったが、その研究開発過程でこの研究のコンセプトをじっくりと考えることができた。そして考えたのが表題である。
始末書にはもう少し人目を引くように(セクシーに)燃焼時の熱を利用してガラスを生成する難燃化技術というコンセプトを書いている。このコンセプトで天井材の開発まで行い、高純度SiCの発明までコンセプトは有効に機能した。
現象を見てどのようにコンセプトとしてまとめるのか、あるいは、すでに機能のイメージができているならば、それをどのような不偏化した技術として示すのか、科学にとらわれていると言葉が出てこない。
小泉元環境大臣のようにセクシーととっさに言葉を思いつけるように日ごろから訓練しておくとよい。技術開発とは人類の日々の営みの一つであり、コンセプトの準備も技術者の営みのとして捉えられる。
ちなみにセクシーなる単語が公の場であのように使える単語であることをこの年で初めて知った。まだ未知のことは多いのでボケてはおれない。
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混練プロセスに関する考え方は、技術者により異なる。また、分配混合と分散混合の考え方で教科書が混練技術を説明している問題も存在する。その結果、認識さえも異なる。
技術者により認識が異なるので何が正しくて、何が間違っていると決めつけることなどできないはずだが、カオス混合技術が学会の技術賞審査で議論されたときにはひどかった。
10年前の出来事なので、詳しくは書かないが、およそ混練技術に対するこのような状況を無視されているような意見で、技術そのものを否定された。もちろんフローリー・ハギンズ理論に適合していないPPSと6ナイロンの相溶に関しては、低分子化されて相溶しているように見えただけだと決めつけられた。
樹脂技術者とゴム技術者の認識の違いが見解の違いを生み出した、と言ってしまえばそれまでだが、日本では仕事にならないと思い、中国でカオス混合技術に関してさらに磨きをかけた。日本の高分子技術者と中国人との違いは、新しい考え方を受け入れるかどうかである。新しくなくても良い結果が得られるならば、教科書と異なる考え方でも容易に受け入れてくれる。
さて、40年前のゴム会社の状況を書くと、今の日本の状況と似ていた。研究者の数だけ考え方が存在した。運が良かったのは、指導社員がレオロジーの専門家で、混練の神様と呼びたくなるような技術者だったことである。
彼の指導によれば、現場ではバンバリーとロールが混練プロセスで使用されているので、研究段階でもパイロットプラントを使い、同じプロセスで練るように、という考え方だった。研究所では手軽なニーダーでゴム配合を研究されている方が大半だった。
指導社員は、この会社でゴムの配合技術を研究したいならば、簡易的なニーダーを使わない覚悟が必要だ、とまで言われた。混練のプロセシングに関して厳しく指導されたが、未だにあの時の指導内容が正しいと思っている。なぜなら、中国で指導した樹脂開発について配合設計で失敗した経験がないからだ。
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高分子材料は誘電体のため電気をためやすい(蓄電)。ゆえに使用していて帯電に悩まされる。例えば、梱包材に使用されている発泡スチロールを廃棄するために細かく手で砕いていて体に白い粉がついて困った経験はないだろうか。
発泡スチロールは脆いので、無造作に細かく粉砕すると、帯電した切り子が多数発生しそれが体に付着する。手で払おうとしても、掃除機で吸い取ろうとしてもきれいにとることができない。
このような目に合うと、樹脂の帯電のパワーに改めて気がつくことになる。樹脂だけではない。乾燥した冬の季節では、人間の体も帯電する。乾燥肌でかゆくなったりするのも静電気の刺激が影響しているので保湿剤を塗って、体表面の抵抗を下げるとかゆみが止まる。
このような体験をすると、樹脂成形体では最表面だけ帯電防止されておればよい、という経験知が身につく。家電製品に使用されている樹脂では、帯電防止剤が添加されている樹脂もあれば、添加されていない樹脂もある。
梱包材として使用される発泡スチロールは低コストで供給したいのでポリスチレンに耐候剤を添加していない場合が多いが、家電製品はじめ耐久消費財に使用される樹脂には、耐久性を向上させるための各種添加剤が添加されている。
このような添加剤は、成形時に表面へブリードアウトしやすい。ブリードアウトの問題は以前書いているのでそちらを見ていただきたいが、表面にブリードアウトした添加剤が帯電防止に一役買っている。
ゆえに樹脂の配合設計を担当している人は、クレームでもない限り、帯電防止技術を深く考えていないようだ。もし市場で帯電による品質故障が発生した場合には、弊社へご相談ください。
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押出成形あるいはブロー成形にしか用いることができなかったPET樹脂を射出成形用に改質する方法はそれほど難しくない。動的粘度の温度分散をPCと同じように揃えてやるだけで良い。
ただし、そのようにして良好な射出成形体が得られる粘度曲線を示す樹脂に変性できたとしても、成形体の物性が問題となる。すなわち、靭性が低く割れやすかったり、結晶化せずゴムのようにふにゃふにゃな成形体しか得られないことがある。
この中間の靭性とそこそこの弾性を備えた射出成形体が得られるようなコンパウンドを設計するには高度な配合技術を要求される。
すでに特許出願されている技術は、皆それを公開しているので、アカデミアで研究用に射出成形する場合にはそちらを見れば容易となる。また、いくつかの特許が年金の支払いが無いために死んでおり、それを事業に活用することができる。
当方は山形大学の発明による剪断混練技術を活用した配合を参考にしたが、特許に従ってコンパウンドを製造してもその成形体は弾性率が低く、実用性が無かった。また成形条件を変更すると、弾性率を上げることができるが、靭性が下がる問題が発生した。
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そこで、タグチメソッドよりも迅速にできるデータ駆動の手法で配合設計を行い、新たな処方を見出した。その処方では、弾性率や靭性が目標を満たしただけでなく、難燃剤を添加しなくてもUL94ーV2に合格する難燃性コンパウンドができた。
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機能は材料の構造因子を媒介変数として発現している、とイメージして現象を眺めるのが材料開発のツボである。これ以上は、弊社に問い合わせていただきたいが、機能から組成を直接想像しようとしたり、その逆に組成と機能を直接結びつけるような体系を創ろうとするのは、怪しい科学の姿勢である。
材料において組成と同様にプロセシングは機能発現に重要な役割をする。プロセシングは重要であるが、何故かアカデミアであまり研究に積極的ではない。
材料科学の視点でプロセシングが重視されない理由として、科学として取扱いが難しいためと思われる。難しいから重視しないというのは、研究者の姿勢としていかがなものかと思うが、機能にとって組成は必要十分条件ではないから機能から組成を決めることはできないが組成が決まれば機能が決まる、という詭弁だけは使わないでいただきたい。
もしそのような詭弁を使っている科学者がいたなら、弊社が教育指導する必要があるかもしれない。弊社が教育指導している材料科学の内容と異なるからである。間違いを標準にされると弊社が困る。
特定の組成でどのようなプロセシングを経過しても特定の構造1種類しか形成しない場合に限り、組成から機能が決まる、と言えるが、それが保証されていない時には、組成が決まったからと言って特定の機能が決まるわけではない。
例えばジルコニアでは、組成が決まっても高靭性という機能が決まるわけではない。それなりのプロセシングを行わない限り、高靭性ジルコニアを製造することはできない。
PPS/6ナイロン/カーボンの組成をバンバリーで混練する場合には、さらに複雑で、バンバリーの操作方法で発現する機能は変化する。すなわち、プロセス機器を決めてもその操作手順が変われば構造が変化して機能が変わるのである。
具体的に説明すると、高性能な混練機を購入しても、そこで発生する剪断流動や伸長流動を理解していなければ、コンパウンドの構造制御などできない。剪断流動や伸長流動を制御しているのは、スクリューセグメントだけではない。
組成を決めて、ハードウェアーを揃えたのにそれでも目的とする機能のコンパウンドができないケースでは、弊社にご相談ください。科学ではアイデアを出せません。技術的手法でアイデアを見つけ、見つかったアイデアに対して科学的研究を行わなければいけません。
高分子材料では設備を購入してもプロセシングのソフトウェアーが無ければ、機能発現が難しいケースが存在する。セラミックスから高分子材料まで研究した経験があるのでそれを当方は、この欄でアドバイスしている。
弊社では技術指導をしているが、材料科学に潜むいくつかのこのような誤解も指摘している。その過程で困るのは、アカデミアで材料科学について詭弁を使われる先生がおられることだ。詭弁だけならよいが、当方の研究論文を勝手に当方の名前を末尾にして論文を書いてしまうような先生もいた。
これを科学者と技術者の人間性の違いと言いたくはないが、当方のFDを壊した人間は、企業の優秀な科学者だった。このような経験から研究分野にも誠実さは重要である、と言いたい。材料技術では誠実に開発を行わない時には、市場の顧客を失い持続的な開発が難しくなる。
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高分子材料のシミュレーションの有効性がどの程度あるのか、例えば組成から機能をシミュレートできるのか、という問いに対して、一般の人の期待に応えるのは現在のところ難しい、というのが正直な回答である。
まず、組成から機能を科学的に決められる、という考え方に問題があるにもかかわらず、それがシミュレートできて、特定の組成で少し実験するだけで機能性コンパウンドを実用化できたなら、それは素晴らしいことである。
今の科学でそこまでできるという人は、ほとんど詐欺師と捉えてよいが、ここでは、シミュレーションに費やされた時間について少し書いてみる。
シミュレーションに1年もかけて、そのシミュレーション結果を利用したところ、1か月程度の実験で新しいコンパウンドができました、ならまだ許される。しかし、シミュレーション結果を利用しても材料開発に1年かかったらどうだろうか。
当方は、79年10月1日にゴム会社の研究所へ配属されて、樹脂補強ゴムの開発を担当している。そして当時としては世界初の防振ゴム用の加硫ゴムと樹脂からなるTPEを開発(特開昭56-122846)しているが、そこに要した期間は3か月である。
これは、指導社員が防振ゴムのシミュレーションをダッシュポットとバネによる粘弾性モデルでシミュレーションを完成していたたおかげで、3か月程度の短期間に実用配合が見つかった事例だが、もし午前中の座学の時間と休日も実験に振り向けられたなら開発期間は1か月まで短縮できたと思う。
しかし、それでも当時の指導社員は、シミュレーションで現象の説明はできるが、配合まで見出すのは困難だ、と言われていた。さらに、ダッシュポットとバネのモデルによる粘弾性論自体が21世紀には無くなっているだろうとも予測されていた。
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製品開発において品質評価技術は重要である。多数の部材の組み合わせで部品が完成するが、部品の品質評価技術は製品の品質を保証するものでなければいけない。
同様に部材の品質評価技術は、部品の品質を保証できるように開発される。当たり前のことを書いているが、この評価技術の開発が難しく、その結果なれ合いの品質基準となることがある。
例えば部材と呼ぶべきコンパウンドが、単にペレット形状だけの品質規格になっていたり、ひどい場合には開封して、ばらけていることが品質規格になっていたりする。
もちろんそれで製品品質を保証できれば何も問題とならないのだが、それほど市場は甘くない。わけのわからない品質問題と言うものが起きたりする。
これは、品質規格というものが、科学的に正しく決められていないからである。例えば、科学の時代では科学的ではないと言った瞬間に袋叩きにあうので、科学の香りをつけて規格を決めるような場合である。
しかし、川上に行けば行くほど科学の香りをつけるのが難しくなってゆく。材料開発者であれば、科学の香りをつけるインチキにリスクが高いことに皆気がついている。よく知っているが、化学分析の手間や設備コストの問題があるため、リスクに目をつぶり、適当な実験を進めたりする。
例えばペレット形状を何水準か変動させて、部品の不良率をペレット形状が決定しているように見える実験を行い、品質規格を作り上げる。無いよりましな品質規格である。
このようなことをすると、市場でわけのわからない品質問題が起きたときに訳が分からなくなるのだが、それでも品質規格が科学的に決められている前提で品質判定したりする。
製品開発者には信じられないかもしれないが、コンパウンドの品質規格がどのように決められているのか、一度チェックしてみるとよい。
押出成形で半導体ベルトを開発した経験がある。このテーマで前任者は外部からコンパウンドを購入して開発していた。ところが、半導体ベルト用コンパウンドであるにもかかわらず、ペレット形状とMFRだけの品質規格だった。ベルト抵抗を保証する規格が無かったのだ。
しかたがないので、コンパウンド工場を立ち上げた。この時、ペレット形状以外に電気特性に関するスペックと混練状態に関わるパラメーターをスペックに加え、コンパウンドの生産を開始した。
徹底したコンパウンドの品質管理によりベルトの周方向の抵抗が安定したベルトを安定に生産できた。成形安定性は、前任者の記録で最も悪い時に比較して、歩留まりが7倍に跳ね上がっている。ただし、中古機を買いそろえて3か月で立ち上げた混練プラントだが、品質保証用の設備は新品を購入している。
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