昨日オリンピックの影響もあり、浜口親子を思い出し「気合いだ!」と叫べば新材料が簡単にできる誤解を与えるような表現になって後悔している。気合いだけで新材料はできないのである。
とかく材料開発は失敗と挫折の連続である。だから気合が必要なのだが、気合をいれれば必ずできるわけではないので、昨日の内容について補足を書く。
気合をいれても、頭が空っぽではレスリングさえできない。レスリングは喧嘩ではなくスポーツである。ルールの中で技を繰り出し、一瞬の攻めどころを見出して勝てるのである。だから、レスリングでもそれなりの頭脳がいる。
材料開発も同様で、形式知と経験知と言う明確な枠の中で技を繰り出し、新材料を創出するのである。レスリングが一瞬の攻めどころを攻めて勝てるように、材料開発では目の前の現象に暗黙知が刺激を受けたときに偶然できてしまうことがある。
セラミックスから高分子材料までありとあらゆる材料開発を経験してみると、実際に偶然できてしまった体験が重要であり、その感覚を忘れないように言葉として残しておき、これが後々の開発に大変役立っていることに気づく。
すなわち暗黙知を具体的な言葉に落とす習慣が重要である。STAP細胞ではハートマークの実験ノートが話題になったが、当方の実験メモには、わけのわからない妄想が幾つか言葉として表現されている。
下手な絵もいくつか残っているが、文章で残す努力をしてきた。樹脂補強ゴムの開発では、指導社員も飽きれていたが、検討候補の樹脂材料について10部づつ添加した配合処方30数種類を徹夜して一気に混練している。
理由は、日をまたぐと現象を眺めた感想の表現が変わる可能性があったからである。10部しか入っていない樹脂相がうまく海となった海島構造が目標とされたが、ナノオーダーの構造変化がロール混練プロセスでマクロな現象として観察できたのである。
本当に観察できていたかどうかは、翌日以降の電子顕微鏡写真との照合で確認している。昼食や夕食を抜いて続けて混練していると、微妙なマクロ変化の共通点が見えてきた。それが電子顕微鏡写真の結果と一致した時に暗黙知が経験知に変わる習慣だった。
これは食欲睡欲の二つの欲求を犠牲にして気合を入れて実験を行った成果であるが、得られた経験知をすぐに応用し、世界で初めての樹脂とゴムのポリマーアロイ防止ゴム配合処方を短期間に開発できた。ただし、短期間に開発できた要因はもう一つあるが、これは後日この欄で述べる。
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新材料を迅速に開発するにはどうしたらよいのか。幾つか体験事例を示す。詳細については弊社にご相談ください。
新入社員の時に、実用的な樹脂補強ゴム(TPE)の配合を3か月で開発している。その後この配合は、後工程で某自動車向けエンジンマウントとして実用化された。
ホスファゼン変性ポリウレタンフォームは、6か月で工場試作に成功している。そして始末書を書いているのでこの始末書は開発時間の証拠となると思う。
その始末書にホウ酸エステル変性ポリウレタンフォームの企画を書いている。そして5か月後には工場試作を行い、これはその後実用化されている。
フェノール樹脂天井材に至っては、いつできたのか明確ではない。某フェノール樹脂メーカーと共同開発するにあたり、発泡機を購入した。ところが、その発泡機を立ち上げる前に後工程が研究所へトラックで乗り付け、その発泡機を工場へもっていってしまった。研究開発期間をどのように捉えたらよいのか。
これをアジャイル開発と捉えれば説明がつくが、研究と開発が同時並行で進んでおり、研究所でとりあえずできた処方がすぐに市場に流れていった。
そして市場で問題が起きると品質規格を見直し、それを目標に処方開発を行っている。製品の品質規格の評価を研究段階でできたのでこのような開発スタイルとなったが、これはその後の良い経験となった。
高純度SiCの前駆体の基本処方は、フェノール樹脂天井材の開発で余ったフェノール樹脂を廃棄するために1日作業を行ったときに完成している。これが21世紀に日本化学会から賞を頂くことになった基盤技術である。
すなわち開発が終了し、大量のゴミとなったフェノール樹脂を廃棄するときに、ラテン方格を使い、実験計画法もどきの実験を行いながらフェノール樹脂を硬化させて、社内の焼却場で焼却処理できる状態にした。
だから研究予算をかけずに前駆体の処方は完成している。この前駆体を焼成してSiC化する条件は、たまたま昇進試験に落ちたために無機材質研究所で1週間自由に実験できるチャンスがおとずれ、その3日間で高純度SiCができている。
ゆえにゴム会社としては、高純度SiCのプロセス開発が開発費0でできたことになる。これが30年続き、当方が65歳になった時に(株)MARUWAへ事業譲渡されている。ちなみにこのシナリオは昇進試験に落ちたときの答案の内容に近い展開である。但し昇進試験の答案では、10年後に別会社とするシナリオになっていた。
横道にそれたが、無機材質研究所で高純度SiCができるや否や先行投資2億4千万円と研究棟建設が決まっている。研究棟が完成してから1か月後には10kg/日の連続焼成炉が稼働し壊れている。原因はプッシャー炉の設計が悪かったため、プッシャーの棒が折れやすかったからだ。
この折れやすいプッシャーの棒以外に、幾つかのドラマが生まれている。プラントが稼働し二回目の昇進試験を受験し合格しているのだが、答案の内容は1回目と同じである。
これ以外にサラリーマンとして誠実に生きる努力がどれほどつらいことなのか学ぶドラマを経験するのだが、忖度の道ではなくドラッカーの誠実真摯を目指した。その結果転職を選ぶことになったので気分は複雑である。
写真学会から賞を頂いているシリカゾルをミセルとして用いたラテックス重合は、当方のコーチングスキルにより瞬間芸的に合成条件が見つかっている。これは、弊社研究開発必勝法の事例として用いている。
まだまだあるが、退職前のカオス混合プラントは開発開始から生産立ち上げまで3か月である。6ナイロンが相溶したPPSベルトに至ってはシリカゾルをミセルに用いたラテックス同様に瞬間芸でシーズを見出している。そしてカオス混合プラントができるや否やそれが実証された。
退職を1年延ばし、2011年3月11日を退職日に設定して開発したPETボトルのリサイクル樹脂は、内装材用は2011年の新製品に搭載されたが、外装材は2年後である。これは10年前なのでここに書きにくい内容だ。
最後に30年前の話になるが転職の原因になった電気粘性流体の耐久性問題解決では、一晩の実験である。添加剤無添加のゴムを開発せよと言われて、明らかに不可能なゴム開発をしたくない一心で一晩で問題解決できる界面活性剤を見出している。
この界面活性剤とやはり当方の開発した傾斜機能粉体で電気粘性流体は実用化されているが、界面活性剤で電気粘性流体の耐久性問題を解決できない、という否定証明は、博士や修士の研究者が1年かけて行っている。
材料開発と言うものは、否定証明をやってしまうと永遠にできなくなる。笑われるかもしれないが、「気合いだ!」と叫びながら明るく開発できることを考えながらやったほうがよいかもしれない。そうすると、失敗してもくじけないのである。うまくできない時に科学で完璧に否定証明を行うには時間がかかる。そんなことを実行するぐらいなら潔く開発を中止したほうが良いが、その前に弊社へご相談してください。
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一軸押出機や二軸混練機は連続式混練機として使用される。着色目的で顔料程度の分散ならば一軸押出機でも構わないが、フィラーの分散やポリマーブレンドになると二軸混練機を使用しなければいけない。また二軸混練機でも十分な目的を達成できない場合がある。
この技術において難しいのは、「不適切な使用」をしているかどうかが分かりにくい点である。「不適切な使用」という表現にした理由は、100点満点の使用条件を当方でも出せないからである。
そもそも連続式混練機そのものが不完全なプロセスであることが知られていない。完全な混練プロセスがあるのかと言うと、どのような状態を100点満点の混練とするのかも明確ではない。
中間転写ベルト用コンパウンドを3か月で0から仕上げるにあたり、最初に行った仕事は、コンパウンドの混練状態の目標設定である。ベルトを押し出してみて、ベルトの周方向抵抗がばらつかないようなコンパウンドがゴールとなるわけだが、これをコンパウンド段階でどのように品質規格として設定するのか難しい問題だった。
二つの指標を設定して品質規格としたのだが、最初の一か月は大変だった。カオス混合装置がうまく機能するようになって安定化してきた。ただし、これはタグチメソッドの成果であり、二軸混練機本体がどのように改善されたのかは不明だった。
ただ制御因子から、いくつかの機能が推定され、コンパウンド工場が立ち上がった後にゆっくりと研究を行った。二つの設定した指標も適切な指標であり、特に一つはSN比で表示したのだが、二つの指標の間に相関性が認められ、結局SN比の指標だけで1年ほど品質管理を行い、安定化したのでこれも取り払っている。
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高分子製品で比較的品質問題が多いのはブリードアウトと呼ばれる現象である。高分子材料には、成形性を改善したり、難燃性を付与したり、耐久性を上げたりする必要から必ず何か添加剤が数%以上添加されている。
その添加剤が表面に染み出してきて(ブリードアウトして)品質問題を起こす。このブリードアウトと言う現象は、高分子材料では必ず発生している。すなわちブリードアウトが生じても品質問題となっていない場合がある。
実は高分子製品を設計するときに、ブリードアウトを100%防止しようとすると製品設計などできない。ブリードアウトしてもそれが品質問題とならないような設計ならば可能である。
また、積極的に高分子のブリードアウトを利用している分野もある。例えばタイヤは、常にワックスが表面にブリードアウトしている状態になっており、その黒く美しい(?)外観を保っている。外観の美しさだけでなく紫外線によるゴムの劣化防止にも役立っている。
50年以上前のタイヤでは、時々粉を吹いているようなタイヤが存在した。ワックスが表面にブリードアウトして結晶化したために白い粉を吹いたような状態になっていた。
これは、品質問題となり、その改良が求められたが、その時ブリードアウトしない目標を設定できなかった。なぜなら、全くブリードアウトしないタイヤでは、ゴムの劣化が早まったからである。
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小学生か中学生の頃にアルミ缶のリサイクルについて夏休みの自由研究で取り上げた。まだ、鉄缶が主流で、アルミは電気代の塊と言われていた時代である。
アルミの地金はボーキサイトから取り出すときに大量の電気を消費するので、鉄の2-3倍の価格だった。ただ比重が軽いという理由で、軽薄短小(高度経済成長の時代の市場ニーズを表す合言葉)ブームのけん引役だった。
主に自動車エンジンに使われて自動車を軽量化するのに役立っていた。カンズメについても鉄缶をアルミ缶とすることで軽量化できるので、一部の鉄缶がアルミ缶に置き換わりつつある時代だった。
ただコストが高い材料なので、鉄缶の置き換えには疑問符がついていた。そこで当方はリサイクルの視点でアルミ缶置き換えの優位性を夏休みの宿題として取り上げた。
小学校にあがる前、まだ近所に戦争で壊れた建築物が残っていて、そこに住み着いていたおじいさんは鉄缶を拾い集めて生活をしていた。この記憶は鮮烈で今でも思い出され、戦後10年以上経っても名古屋大空襲から完全な復興ができていなかったことを示している。
この時子供は街にあふれた鉄缶を遊び道具にしていた。今の時代のように残飯がついて捨てられていた鉄缶は無かった。ごみの鉄缶でもきれいだった。食料が大切にされた時代である。
もし、この鉄缶がアルミ缶だったなら、子供たちは遊び道具ではなくお小遣いの足しにするために拾っていたただろうと思う。鉄缶はごみとして拾っても1円にもならなかったが、当時アルミ缶は一缶2円-5円前後で売買されていた。
重量ではなかったのだ。そのため、鉄缶はごみとして転がっていたが、アルミ缶は落ちていたら皆が拾ったので普及量も少ないこともあり、ごみとして見かけたことが無かった。そこで夏休みの自由研究として思いついたのだ。
リサイクルは、東京オリンピック頃まで生活の一部だったように思う。古新聞や古雑誌は高値で売買されていた。古くなった金属製品も廃品回収業者が集めに来た。業者の中に金属をかじって材質を確認している光景もあったが、よく見かける金メダルをかじったりする行為も本物かどうか確かめるその名残かもしれない。
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20年以上前までPETの射出成形体について世間の関心は低かったが、この20年ほどの間に良好な射出成形体を得るための技術に関する特許出願が多くなった。
先日100円ショップでPETの射出成形による透明コップを見つけてびっくりした。10年以上前のデータで恐縮するが、2004年頃まで廃PETボトルは無料もしくはお金が付いて取引されていた。2006年以降から有料となり2010年頃には30-40円前後でごみが取引されるようになった。
環境対応樹脂としてPETボトルのリサイクル材が注目され、ニーズが拡大したためだ。当方は2010年にPETボトルリサイクル樹脂の開発をするために早期退職日を2011年3月11日に設定してえらい目に遭ったが、その後の特許状況を見ると廃PETボトルの射出成型技術に関心が集まっているようだ。
PETは、結晶化速度が遅く、結晶化するときには一気に結晶化が進行するので射出成形しにくい樹脂といわれて、押出成形によるフィルムやベルトかブロー成型によるボトル以外では利用されていなかった。
はるか昔はエンプラの一つだったが価格が下がり、一気に世の中にPETボトルが溢れるようになった。しかし、このPETボトルのゴミはしばらく用途もなく、低価格で取引されてきたのだが、今は環境対応樹脂というプレミアがついてバージン材(150-200円/kg)よりも高い樹脂が存在するという。
当方が射出成型用樹脂を開発した時には、ペレット化された状態で70円/kg前後で入手できたのだが、もうこのような低価格では入手できないようだ。おそらくPETボトルのリサイクル業者はかなり潤っているはずだ。
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繊維補強により靭性が向上し、同時に繊維の高い弾性率の効果が生かされるので、うまく設計できれば複合材料は高強度材料となり、構造部材に最適である。
写真会社で超迅速現像処理を可能とする高靭性ゼラチンバインダーを開発している。今はほとんど目にすることのない銀塩写真フィルムでは現像処理が必要で、これを短時間で行うためには、高速搬送と急速乾燥プロセスに耐えうるゼラチンでなければならい。
こんにゃくゼリーを喉に詰まらせる老人が問題となり、こんにゃくゼリーが割れにくいと思われているが、これは多糖類と水との複合材料で高靭性の材料である。写真用ゼラチンは、動物の骨に含まれるコラーゲンから抽出されたアミノ酸の直鎖状ポリマーで疎水部分もあり、そのゲルは脆い。すなわち、靭性が低い。
このゼラチンの脆さを改善するためにラテックスを添加してゲル化させる技術が開発された。しかし、ラテックスを添加するとゲルが柔らかくなり、傷がつきやすくなるので、これを硬くするためにシリカゾルを併用する技術が古くから使われていた。
ところが、ゼラチンへシリカゾルを添加した時に、その一部の凝集体ができることが避けられない(シリカゾル表面の界面二重層が不安定となる)。この結果生成した凝集体が破壊の起点となって靭性を低下させる。ゆえにせっかくラテックスを添加し靭性を向上させても、硬度を上げるために添加したシリカゾルの影響で思うように靭性を上げることができず、割れにくく傷がつきにくいゼラチンバインダーを製造するために現場のノウハウが大きく影響した。
そこで、シリカゾルの超微粒子をコアにしてラテックスを重合するコアシェルラテックス技術が開発され、この技術のおかげで、従来よりも脆くなく傷がつきにくいゼラチンバインダーを開発できた。
しかし、この新技術で開発されたゼラチンバインダーの力学物性を計測してみると、靭性は上がったが、硬度は添加されたシリカゾルの量に相当する値がえられていない。
そこで、シリカゾルをミセルとして用いたラテックス重合技術を開発して、それをゼラチンに添加したところ、このゼラチンよりもさらに硬く脆くないゼラチン薄膜を開発できた。その結果、コアシェルラテックスを添加したゼラチンバインダーを用いた写真フィルムよりも現像処理時間を短くすることが可能となった。
このゼラチン薄膜の話は、以前この欄で紹介しているが、超微粒子との複合化で高分子の靭性が改善された事例である。このゼラチン薄膜について電子顕微鏡でシリカゾルの凝集体を探しても、それが全く含まれていない驚くべき結果だった。
また、この結果と過去の技術によるゼラチンとの比較を行い、どの程度の凝集粒子がゼラチンの靭性を低下させているのかも明らかとなった。なお、この技術は写真学会ゼラチン賞を受賞している。
シリカゾルをミセルに用いたラテックス重合技術は世界初であり、商品化されて5年後にゾルをミセルにするアイデアの論文が科学雑誌に紹介されるような先端技術であったにもかかわらず、高分子学会技術賞に落選している。
この時審査員としておられたアカデミアの先生は新しい技術ではない、と否定されていたが、とんでもないことである。発言の重みを考えていただきたい。面白いのは学会賞の審査基準を読むと選考において間違いがあっても間違いではないという言い訳が書いてある。
アカデミアの先生は何が真実であるかを正しく見極めるの仕事だ、と昨日書いた背景でもある。STAP細胞の騒動で一流大学の学位審査の状況が明るみに出たが、大学はまず知の砦である信用を社会から取り戻さなければいけない。
大学の批判は、当方の学会賞や学位の事例以外に子供が人質になる可能性があり、なかなか社会が声を上げられないが、現在のアカデミアの状況は学術会議も含め社会感覚からのずれが大きいことを指摘しておく。
工業製品で欠陥品を社会に送り出すと品質問題として社会から批判を浴びる。未熟な科学者を博士として社会へ送りだしても品質問題として取り上げない状況に胡坐を書いてはいけない。
博士課程まで出ると就職口が少なくなると言われるが、この原因が品質問題であることに気がつかれていない。これはそれを指摘することがタブー視されているからだ。
修士卒、学部卒、高専卒、高卒、中卒と学歴があり、初年度の給与は、この順に低くなるが、5年以上勤務すると民間会社ではすでに給与における学歴差が小さいか無くなっている。ちなみに亡父は明治生まれの小卒だが仏壇には内閣府から頂いた、当方がどれだけ今後努力しても届かない位記が備えられている。
高卒で10年企業で実務を経験した人材と博士卒と比較した時に、どちらが企業で歓迎されるかは、あえて書かないが、これは社会と大学の齟齬ではない。情報化社会ではどこでも誰でも知を入手できる時代である。すなわち、企業における形式知と経験知の蓄積の結果である。この問題に関心のあるかたはお問い合わせください。
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強度が弾性率と靭性をパラメーターとする関数、という経験知を3回に分けて紹介した。これは、セラミックスや金属、高分子すべての材料開発を経験してたどり着いた経験知である。また、当方以外にこのような経験知を身に着けている技術者は多い。
弾性率について科学では物質固有の値があるという前提であるが、靭性については、未だに議論されているパラメーターである。かつてK1cという応力拡大係数が話題になった。金属やセラミックスでは、弾性率よりもばらつきが大きいが、欠陥との相関が認められ、形式知として検討されていた。
ちなみに靭性値は弾性率と欠陥サイズ、欠陥の存在確率で決定されるらしい、というところまでたどり着いた。しかし、これでは科学の形式知にはならない。
それでも、サンプルの強度試験サンプルの厚みが薄くなると、強度があがる現象、すなわち厚みが薄くなると破壊しにくくなる現象をうまく説明できた。
ただ、高分子材料では、この靭性値のばらつきが、金属やセラミックスよりも極端に大きく、その原因を科学的に説明できなかった過去がある。ゆえに未だ形式知とはなっていないが、経験知としては使用可能なので、シャルピー衝撃試験やアイゾット衝撃試験として、採用されている。
靭性値は形式知ではないが、最初に述べたように、材料の強度を説明するために必要なパラメーターである。ゆえにJISやISOでその計測方法やサンプルの作成方法などが細かく規定され、測定することが推奨されている。
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昨年7月からレジ袋有料化となり、1年経った。折り畳み式の買い物袋が必須の時代になったのだが、どうしてもレジ袋が欲しい時がある。海洋ゴミの問題を考慮するとこのような場合でも我慢しなければいけないのだが、便利さに負けてポリエチ袋を購入してしまう。
この時けしからんのは、店によって価格が様々で、単なるポリエチレン袋を10円で売りつけるところもある。ポリ乳酸の袋ならば我慢できるが、紙袋含めこのようなエコ対策袋でも通常5円である。
コロナ禍前は夜だけ営業していた焼き鳥屋があるが、コロナ禍となり、早い段階からテイクアウトをやっていた。最も、コロナ禍前でも焼き鳥だけのテイクアウト販売があったのだが、店に入る必要があった。
それが店頭に机を並べて店に入る手間を省くとともに、昼間も営業するようになった。商材も焼き鳥だけでなく、夜営業時の酒のつまみをすべて並べるようになった。お弁当迄販売している。
ところが大半はプラ容器、それも密閉性の悪いプラ容器なので汁が漏れる。しばらくして焼き鳥については、タレをかけずにタレ袋が添付されるようになった。おそらくお客からクレームでもあったのだろう。
しかし、油状の汁がわずかながら漏れるので、ポリエチ袋を購入することになる。この袋の値段が10円なのだ。それもサイズは1種類しかないので、二つ三つ焼き鳥のパックを購入するとレジ袋代だけでも2-30円となり、時には消費税よりも高くなる。
もっとも海洋ゴミを考慮して自前の袋に入れ、汚れれば洗濯すればよいだけである。頭では理解できていても便利さに慣れてしまっているので高いと思いつつレジ袋を購入している。
焼き鳥屋ではこのような調子だが、魚屋で刺身などを購入するときには、サービスでレジ袋代を値引きされても魚に気を遣って保冷袋を用意している矛盾した生活である。
環境問題は待ったなしだが、企業の環境対策でもこのような矛盾が生まれる可能性をトヨタ社長は指摘しており、カーボンニュートラルで世界の潮流は電動化一色でも、日本国内の電力事情からエンジンを残すという。
トヨタは水素エネルギーにも力を入れており、社長の強いリーダーシップで環境問題と真摯に取り組んでいる。環境問題は、ファッションの時代が終わり、解決の実績を出していかなければいけない時代となった。無料でもレジ袋を使わない習慣を徹底したい。
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クラシックファンは、形式知を重んじる科学のような楽しみ方で音楽を聴いているようだが、クラシックファンから見ると野卑な音楽に聴こえる分野(例えばポップスやロック、ジャズその他演歌など)の音楽ファンは、ノリがよければそれでよい、という気楽な楽しみ方で音楽を聞いている、と思う。
例えばどれを聞いても同じようなコード進行に聴こえてしまう演歌でも、詩の内容に入っていけるかどうかが、すなわち詩の世界にノレれば十分にその歌を楽しむことができる。
石川さゆりの天城越えのような非日常の世界に松本清張を知らなくても入ることができるのは歌唱力によるところが大きいと思っている。無理やり詩の世界に引きずり込まれるような歌唱力がある。35年前聞いたときには歌いだしの流し目をみただけでその世界感に落ちた。とても20代に思えない演歌の歌唱力だった。
ジャズではノリをグル-ブ感と言ったりするが、昔は年寄りでもノリやすかったスイングが主流だったが、今はスピードアップし、その速度についていけずノレない曲も出てきた。リーリトナーが限界である。
これより早くなると息切れしたりする。だからアップテンポのロックは雑音以外の何物でもない。ロックならばシカゴやボンジョビまでである。年寄りは無理をしてこのような音楽を聴くより、クラシックを聴いて眠りに入ったほうが良いのかもしれない。
渡辺貞夫のファンが多いのは、昔のスイングからフュージョンまでリズムの幅が広いだけでなく、メロディーラインの美しさもあり、クラシックファンでも聴きたくなる曲があるからだろう。童謡のような懐かしいメロディーもある。多くの曲がノリ易いテンポである。
当方の好きな音楽をここで論じるつもりは無くて、ノリという感覚の重要性伝えたかった。最近マテリアルインフォマティクスという分野がにぎわっているが、あれをAIでやってしまうのは面白くなくて、人間の頭で大量のデータにうまくノル方法を伝授したい。
その方法とは、多変量解析を用いて手動でデータを操作しながら解析を進めるのだ。但しデータの捏造をするのではない。例えば主成分分析を用いた場合ならば、第一主成分と第二主成分における分布を見る以外に、他の象限のデータにおける分布の眺めるのである。
ここでノリが大切で、思いつくまま主成分の軸を変えながらデータの動きを見るのだ。データ群の変化にうまくノルことができると思わぬ発見がある(悩んでいた問題にヒューリスティックな解が得られる)。
30年以上前、電気粘性流体の耐久性改良問題を主成分分析で解決したが、当時はPC9801程度の能力のコンピュータでもうまくノルことができて、一晩で結論を出すことができた。
逆にうまくノレナイ時でもノレナイ理由を考えてゆくと、それなりの発見がある。PPSの金属音が心地よく鳴り響く中間転写ベルトの押出成形の現場を事例に説明する。現場には、そのシーンだけでなく音にも多数の情報が含まれている。
それまでキンキンと高音の心地よくない音にもかかわらずリズミカルに流れてノッていたのに、突然バスドラムの不規則なリズムが鳴りだした。それは、まったく不規則でうまくノレない。この瞬間にカオス混合のアイデアが閃いている。
科学では論理が重要であるが、日々の営みの中で進められる技術開発では、このようなノリも重要である。うまくリズムにノレないならば、それはそれで新たな機能の発見につながったりするので、現場と生データを大切に扱いたい。
勘で研究開発をやるな、と昔よく言われたが、今でもヤマカンはあまりあてにならないが、「感覚」は技術開発で重要である。すなわち暗黙知の部分だからである。情報にうまくノリながらそこから新たなデータを見出すのは暗黙知が刺激されるからである。
多変量解析は、それまでの積み上げられたデータにより経験知や形式知まで刺激できる。アカデミアでマテリアルインフォマティクスが流行りだしたのは、偏った科学の見方で現象に潜む新しさを見つけにくくなったからである。
若手将棋指しがコンピュータ将棋に熱中するのをヒントにAIを使いだしたのかもしれないが、まだ人間の頭でも技術の視点に立てば新しい機能を自然現象の中に見出すことができる。ボケていない。若手研究者には到底追いつけない経験知と暗黙知が年寄りには備わっている。
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