フェノール樹脂は、フェノールとホルマリンが縮重合した樹脂であるが、大半が2段階以上のプロセスで製造されている。古くからその耐熱性は知られており、絶縁性が要求される分野で主に使われてきた。
その製造方法は、フェノールとホルマリンとの反応でオリゴマーを合成する。そしてこのオリゴマーを前駆体として重合と3次元化を進め、硬い耐熱性樹脂とする。
すなわち、大半のフェノール樹脂は、まず一次構造を決定する前駆体を合成し、その前駆体を反応させて熱硬化性樹脂として完成させる。
前駆体合成時に、アルカリ触媒を使用した場合には、レゾール樹脂と呼ばれ、熱硬化性樹脂とするときには、酸触媒が使用される。
また、前駆体合成時に酸触媒を使用した場合には、ノボラック樹脂と呼ばれ、熱硬化させるときにアルカリ触媒を使用する。
すなわち、フェノール樹脂にはレゾール樹脂とノボラック樹脂の2種類が存在するが、熱硬化樹脂となった時には、いずれもフェノールとホルマリン由来のメチレンとの縮重合した樹脂となる。
それなりの製造条件で合成すれば、空気中で変色しながら250℃(280℃と書いてある論文も存在)まで耐えられるので耐熱性高分子として古くから知られていた。
空気中の加熱により150℃前後から変色するのだが、これはキノンの生成が原因である。このキノンの生成具合が、フェノール樹脂により大きく異なる。1960年代の耐熱性高分子に関する研究論文にはこのあたりのことが詳しく書かれている。
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高分子の難燃化技術の開発を行っていると、時々冗談のような現象に遭遇する。その時、大笑いできれば精神衛生を健全に保てるが、科学で理解できると信じ、悩み続けると精神を病む場合もあるので注意を要する。
フェノール樹脂天井材の開発では、プロジェクトメンバーの一人が鬱で入院している。それにもかかわらず、メンバー補強の無いまま納期通りに完成することが求められた。
さらに残業時間の上限は、毎月20時間の制限付きである。当然この開発はサービス残業でこなすことになる。それだけではない。頭の固い上司の壁が、メンバーを苦しめた。
上司がマネジメントではなく、支配者として機能していた会社である。コーチングは1990年代から日本に導入されたが、マネジメント手法としての目標管理は、QC手法として日本で古くから実施されていた。
この目標管理のマネジメントを間違えると、最下層の担当者は地獄となる。管理者は、支配者となり、目標数値を達成できないのは部下の能力として評価を低くつけ、経営者に詫び許しを求めるようになる。
その結果、社内の有能な人物をアドバイザーとして招聘したり、コンサルタントを雇ったりする。すなわち、目標を達成できない原因がマネジメントにあるのではなく、周囲の能力にあると見せかけるのである。
すなわち、目標の基準の誤りや目標実現方法の誤解など管理者の責任を隠蔽化し、すべて部下の責任と見えるように、管理者がアクションを取り始めると現場は地獄になる。
ロバスト確保のために難燃剤を添加した配合を認めて欲しい、と上司に説明しても、難燃剤を使用しなくてもライバルは商品化している、と譲らない。
上司の意味するライバルは、フェノールとフォルマリンの反応から、すなわち原料開発から行っている企業であり、原材料の品質制御も可能な環境で技術開発を行っていた。その発泡体の価格は、高価であったが力学物性が天井材の目標を満たしていなかった。
防火性以外にフェノール樹脂の力学物性改良とコストダウンがゴム会社では解決すべき技術課題として設定されていた。難燃剤の添加はコストアップとなる場合が多いので、その観点で上司は反対している、と考えるようにしていた。
ここで、仮に無能な上司であっても、有能な上司と信じることがコツである。本当に有能ならば、ヒントに結び付くアドバイスなりできるはずであるが、そのようなことが無くても、「自分が上司ならばどのように部下を指導するのか訓練している」とでも捉えると良い。
上司の能力に対してその不満まで蓄積してくると、難しい難燃化技術の問題では精神を病む恐れが出てくる。部下の立場では、上司を選べないことをまず悟り、ストレスを少しでも和らげる努力をすべきである。
基本機能が防火性にあり、そのロバスト確保は技術開発として当たり前であるが、科学こそ命の研究所では、難燃剤無添加でも目標を達成できる場合があれば、そこを目指せとなる。ロバストという言葉は死語であった。
ただし、レゾール樹脂を外部から購入するサプライチェーンの条件で、フェノール樹脂の高次構造を自由に設計し、ロバスト確保と高防火性を目指す開発は困難だった。
当時市販されていたレゾール樹脂は、ポットライフが短いだけでなく、品質のばらつきが大きかった。その問題を解決できない以上目標達成は困難だった(原材料メーカーとは共同開発契約が結ばれ、原材料の品質はそのメーカーの力量という条件で開発が進められていた。不幸なことにこのメーカーの力量が低かった。)。
すなわち外部からレゾール樹脂を購入し開発を進めるというサプライチェーンでは、ロバスト確保のために購入したレゾール樹脂に難燃剤を添加する以外の技術手段が無かった。
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高分子の難燃化技術で困るのは、開発過程で疑心暗鬼となるトランスサイエンス特有の問題である。例えば、耐熱性高分子として知られているフェノール樹脂は、その分子構造から空気中で自己消火性を示すように思える。
ところが、プロセス条件を制御して、空気中で面白いほど燃えるフェノール樹脂を製造することもできれば、マッチの火で着火さえも難しいフェノール樹脂も創り出すことができる。
すなわち、難燃性に高分子の高次構造が関わっているため、プロセスでその難燃性が大きく変化する。高分子の高次構造がその難燃性に影響していることをご存知ない方は多い。フェノール樹脂天井材の開発において、難燃剤を添加した配合をプレゼンテーションしたら、馬鹿にされた経験がある。
したり顔で高分子の難燃化機構の説明を聞かされ、それゆえ耐熱高分子の大半は自己消火性のはずだ、と説明してきた。科学的に推論を進めればそのような言い方もできるかもしれない。
そのとき、小便小僧の代わりを少女ができたか、と逆に質問して会場が大笑いとなったことがある。今ならば問題発言かもしれないが、当時は意味不明の発言として大笑いとなった。
何でも科学で説明できると考えている人には、意味不明の命題をぶつけると面白い。一緒に笑いだす人もおれば、突然怒り出す人もいる。
後者は、冗談を理解しない人であるが、科学で現象をすべて説明できる、と盲信している人も技術のプレゼンテーションの場で冗談を言っていることに気がついていない。
今ならトランスサイエンスという言葉も常識となったので、すべての現象を科学で説明できる、と信じている人は少なくなったかもしれないが、40年以上前の日本は、アメリカでトランスサイエンスが話題とされてもセレンディピティーだけ輸入するような時代だった。臭いものに蓋をしたのだ。
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材料の寿命というパラメーターは、扱いとその意味が難しい。機能が壊れた時を通常商品の寿命としているが、基本機能が大丈夫でも外観に問題が出てくれば、それを寿命と呼ぶ場合もある。
材料の破壊強度の寿命に限定して考えると、セラミックスは最も寿命が長く感じたりする。2000年前の磁気でも100円ショップの茶碗程度の強度が出る。
鉄は、強度を測れなくてぼろぼろになっているかもしれない。皮革は、ぱりぱりとなっており、強度測定を行おうとしてもその形状へ切り出すのが難しいだろう。
高分子材料では、その寿命を考えるときに酸化が大きな問題として捉えられ、酸化速度の研究が多く行われた。最近では物理劣化という考え方も出てきて、プロセシングとの関係を誤った考え方で説明している研究もある。
高分子再生材の活用が求められているので、市場でどのように高分子劣化が進行してゆくのか、再度その研究が見直されるようになった。
すなわち、高分子の寿命は単純に酸化劣化だけで進行しているわけではないことに皆気がつき始めた。かつて研究発表された酸化速度で劣化しているのであれば、海洋ゴミの主役として高分子材料が注目されることもなかっただろう。
法隆寺の五重の塔を見れば、電化製品の寿命以上に高分子材料の寿命の長いことに直感的に気がつく。また、当時各種添加剤など無かった時代なので、老化防止剤の見直しも進むだろう。
ちなみに、新入社員の時に樹脂補強ゴムの開発を行った時、耐久試験では、寿命に関わる添加剤を抜いて実験を行っている。詳細はお問い合わせください。
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有機高分子材料(以下高分子)は、無機材料と比較し、密度ばらつきが大きい。無機材料でも空隙や欠陥が密度ばらつきを生み出すので、この表現は誤解を生むが、「空隙や欠陥が無い場合にも」と一言加えると、誤解も無くなるかもしれない。
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但し、高分子の自由体積を空隙や欠陥と見なさない、という前提になるが。ややこしいのは、どこからが空隙で、どのサイズ以下が自由体積なのか、という区別が難しい場合がある。
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そのような議論を避けるために、「空隙や欠陥の無い状態で、高分子の非晶質相の密度ばらつきは、無機材料の非晶質相のそれに比較して大きい」と、やや面倒な言い方をすれば上げ足をとられないかもしれない。
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それでは、高分子の結晶は、無機材料と比較してその密度ばらつきは同じなのかというと、これも少しばらつきが大きい。
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石丸構文に出てくるような捻くれたツッコミを警戒していると、このような問題の議論は難しくなる。しかし、高分子について考えるときに、実は密度以外の特性でもおおざっぱなとらえ方をしないと、現象から新たなアイデアを生み出すことができない。
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例えば、弾性率は密度に依存する。ゆえに密度ばらつきは弾性率が関わる、引張強度や曲げ強度、衝撃強度のばらつきを生み出す。誘電率も同様に密度の影響を受けるので、屈折率などもばらつく原因となる。
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そもそも高分子の密度は、自由体積の量を制御できないのでばらつく。そこへ成形時に空隙や欠陥が入ることが避けられないので、さらに大きくばらつくことになる。
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射出成形体と延伸により製造されるフィルムとの密度ばらつきの比較をすると、後者は少し小さいので空隙や欠陥の存在で生じる影響を見積もることができる。そのような見方をしても、高分子の密度ばらつきは、無機材料のそれより大きい。
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何を言いたいのか、書いていて不安になってきたが、形式知ですべて論じることができない分野では、このような不安はつきものである。
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勇気をもって結論を言えば、高分子は無機材料に比較して密度ばらつきが大きいが、それには自由体積の影響がある。また、空隙や欠陥は、無機材料よりも入りやすく、さらにそのばらつきを大きくする原因となりうる。
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2022年に法律が施行され、高分子材料の再生利用が活発化している。当方は2010年にコニカミノルタでPETボトルのリサイクル樹脂を2種類開発するために2011年3月11日を最終出社日に指定して再生樹脂開発を成功させた。
そして2011年の新製品に搭載され、この功績で2012年に社長賞を受賞したとかで元部下が大量のPETボトルを記念品として贈ってくれた。
コンサル業務を依頼された企業にお礼としてそれを配り、今は最後の1本をセミナーで自慢しているのだが、コニカミノルタは今や再生樹脂使用のトップランナーとなっている。一方当方は退職日に帰宅難民となり、せっかくの記念日が大変な思い出として残っている。
2010年頃は環境対応樹脂と言えばポリ乳酸をはじめとしたバイオプラがその主役だったが、今では再生樹脂がバイオプラ並みの主役となっている。ところがバイオプラは新たな生産が可能だが、再生樹脂は、限りある廃材から製造するので高騰している。
このような状況で政府は再生資源の有効利用を促進するために、新たな立法を計画しており、その法律では再生材の使用が義務化されるという。高分子材料に限って言えば、これは大変なことなのだ。
リサイクル業者は少し前までサーマルリサイクルを前提としていた。それを再生材とするためには、混練機の導入が必要となる。リサイクル業者が有価物として販売するのはコストアップとなる。
その他諸々の問題が出てくるはずである。もし再生材に関して何か困っていることがあれば、弊社に御相談いただきたい。いつでもWEB会議で対応いたします。
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高分子の難燃化技術は、火災という非平衡の現象を扱うので、トランスサイエンスの分野である。その内容についてAIに尋ねると、それなりの回答を出してくれる。すなわち、情報は大量に世の中に存在する。
しかし、AIにたずねると失望するが、体系だった知識が意外と存在しない。かつて中部大学武田先生は名古屋大学教授時代に科学的なアプローチでこの分野に挑み、経済的な難燃化手法としてハロゲン化合物と三酸化アンチモンとの組み合わせ系を提案されている。
これは、これで、科学的な一つの答えであるが、製品設計にあたり、ノンハロゲンが仕様に入ってきたときにこの答えでは適合しない。
「それでは、どうしたらよいのか」と悩まれた方は弊社のセミナーを受講してください。トランスサイエンスの視点で分かり易く解説いたします。お問い合わせはセミナーのサイトからお願いします。受講生一人でも対応いたします。
セミナー内容には、今年3月に開催された日本化学会春季年会発表内容も含みます。また、ご希望によりタグチメソッドのPythonプログラムも無料で差し上げます。
生成系AIの登場で知のあり方が変わってきました。情報を知に変換し、新たなアイデアを創出できる能力が求められています。弊社のセミナーはこのような視点で提供しています。受講希望者は、お問い合わせください。
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かつてかぐや姫の時代に耐熱性衣のアイデアがあり、かぐや姫は結婚を迫る皇子にそれをねだった。耐熱性高分子はそれくらい歴史があるのだが、1970年代に難燃性高分子の研究が活発になり、リン酸エステル系難燃剤の開発競争が起きている。
その後1980年末に、臭素系難燃剤の開発競争が起きているので、高分子の難燃化技術は、20世紀末の30年間にほぼ完成したと言える。
1970年代には、怪しげな大学の先生がおかしなことを言いだしたので、難燃性のない天井材が難燃性天井材としてヒットし、その後台所を中心とした火事が増加する事案が社会問題となり簡易耐火試験が生まれている。
この試験法の作成にあたり、ヘルメットと安全靴を持って出張した話をこの活動報告に書いている。しかし、この怪しい先生の事案はある種の科学コメディーでもあるが、ここでは関係者を傷つけるのであまり詳しく書けない。
アカデミアでそれなりの研究成果を出されたのは武田邦彦先生だろう。この先生はご自分の研究成果をWEB上に公開されているのでご覧になっていただきたい。
この先生によると経済的な難燃化システムはハロゲン系難燃剤+三酸化アンチモンの組み合わせシステムだという。これは、実務者から見ると微妙な評価となる。
もっと安い方法でUL94-V2を通過できるシステムを設計することができるからである。ちなみに当方が開発したPETボトルのリサイクル材を使用した樹脂では、難燃剤を用いなくてもUL94-V2を無事通過する。
しかもノンハロゲンである。ペットボトルリサイクル材以外のプラ廃材を20wt%含有しているので100%廃材リサイクルの環境対応樹脂である。
開発当時廃材のPETは70円/kgであり、これを80%含有した樹脂だったので、最も経済的な環境対応難燃性樹脂として複写機内装材にすぐに採用されている。
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今更取り上げる必要はない話題だが、テスラの株価下落はじめ様々な関連事象が報じられるようになった。面白いのはコロナ禍の時にトヨタの全方位戦略が批判され、株価にも影響が出たにも関わらず、ここにきてトヨタの全方位戦略が見直され、株価が上がり始めた。
当方は高分子の環境問題セミナーやCASEのセミナーで、トヨタとホンダの全く異なる戦略、すなわちホンダは、時代背景からエンジンを捨てて極端なEVシフト戦略を打ち出しているが、トヨタはエンジンを残す、すなわちHVに注力する戦略を解説し、時流に逆らうトヨタに軍配が上がると主張してきた。
そして、日産のe-powerのコストダウンが進み、日産が国内で2位に浮上するという予測シナリオを講義している。実は自動車の開発戦略として、今日産が極めて効率の良いビジネス展開を世界で行っている。
先日部品会社に無理なCDを強いる問題が報じられたが、そのようなことをしなくても国内市場に関しては、トヨタやホンダよりも利益率の高いビジネスを展開できているはずである。
かつての日産の自動車ラインアップに対して現在の品ぞろえはマツダと比較しても寂しいが、これは国内だけで、今や日産はグローバルカンパニーなので世界市場におけるラインアップを評価する必要がある。
日産と言えばリーフやアリアがEV車として知られているが、国内において軽のジャンルのサクラが好調で、世界でEV車販売の失速が伝えられる中、日産のEV車に関しては順調である。リーフがモデルチェンジ前で売り上げが落ちているが、国内で新車が出れば持ち直すはずである。
すなわち、EV車の販売がここにきて伸び悩むどころか急ブレーキがかかっているのは一時的であり、5年後には、またEV車の販売量は増加に転じると思われる。その時のEV車は今よりも進化し、家電量販店までもが扱っている時代になっているかもしれない。すでにヤマダ電機がEV車の販売を発表したがーーー
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高分子材料を難燃化する時に問題となるのは、難燃剤の添加により、他の力学物性が低下することである。この問題をどのように克服したらよいのか。
力学物性と難燃剤の添加量との関係をグラフ化すると力学物性が低下するが、その時に線形性をもって低下する場合とそうでない場合がある。
少量の添加で1割以上急激に低下後緩やかな減少を示すグラフとなる場合が多いのではないか。これが難燃化しようとするプラスチックの可塑剤としても用いられている難燃剤であると、少量の添加で急激な低下ではなく緩やかな低下となる。
この二つのグラフが得られると、力学物性の低下を最小限にしてプラスチックを難燃化するアイデアへとつながる。すなわち難燃剤を組み合わせて用いるアイデアである。
もし難燃化しようとしているプラスチックに芳香環を持った化合物が分散しやすいならば、芳香環を有するポリマーとブレンドして難燃剤を添加するアイデアを思いつくが、これが意外と期待された結果とならない場合がある。
期待された結果とならないが、何となくよさそうな結果が出たりすると大変である。それなりの考え方をもって検討しないと開発の無限ループに落ちる。
特許を調べていただければわかるが、プラスチックを難燃化しようとしたときに考えられるアイデアについては、ほとんど公開されている。
そしてよさそうな特許の実施例を実験してみて、大した結果とならないことがあるとペテントとして処理したりするが、ちょっと待った!である。特許出願にもお金がかかるのでインチキ特許とは限らない。隠れたノウハウが存在する可能性がある。
難燃剤と力学物性の問題に限らず、二律背反問題では、科学的なアプローチが誤った判断へと導くことがある。それを防ぐためには、タグチメソッドは一つの良い方法であるが、この手法は科学と非科学の境界に位置する手法である。
なぜなら、あるシステムで成立した条件が他のシステムでは成立しないことがあるからで、故田口先生は、「システム選択は技術者の責任」と言われていた。
最初に問いを投げかけた一つの答えは、タグチメソッドで開発を行う、であるが、それ以外にもデータサイエンスによる様々な手法を使って最適化する、という考え方もある。詳細は弊社へお問い合わせください。
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