高分子の誘電率や屈折率は、密度の影響を受ける。すなわち以前も書いたが、制御が難しい自由体積の量にも影響をうける。これがどの程度影響を受けるのかは、密度と誘電率とのグラフを作成して確認する以外にない。
面白いのが、有効数字三桁程度ではきれいに再現性の良いグラフとなるが、4桁になると難しくなってくる高分子も存在する。おそらく3桁でも制御するのが難しい高分子もあるかもしれないが、当方の経験では3桁程度は何とか制御できた。
これがフィラーが入ってくるとさらに難しくなってくる。また困るのは、コンパウンド段階の評価と成形体の評価がずれてくる場合である。それぞれのばらつき具合が同じであればよいが、その偏差そのものがロットごとにばらつくので管理にノウハウが必要になってくる。
中間転写ベルト用コンパウンドを子会社で立ち上げたときに、押出成形でできるベルトの抵抗をペレットの誘電率で管理する技術を開発した。この時は、直流で計測されるベルトの表面比抵抗との対応をペレット段階の電気抵抗で管理できるのか、が大きな問題となったのでインピーダンスを持ち出したのだ。
ただ、インピーダンスでは少し電気をかじったことがある人が、交流の抵抗と対応をみてもよいのか、といいだした。そこでペレットの誘電率を管理することにした。
誘電率とベルトの抵抗がどのような機構で相関するのか、という質問も出たが、実験データでこのような関係にあるから管理可能と説明している。なんでも科学的に説明しないと納得しない人が多いのは困る。
科学がいくら進歩しても、人間が自然界を完璧に管理できるわけではない。当方にとって大切なことは、ペレットの製造ばらつきをどのように検出して管理してゆくのか、という問題である。
この時の誘電率は空隙法で計測しているが、有効数字は二けたであった。たった有効数字二桁でベルトの抵抗管理ができた。これはパーコレーション転移の閾値近傍における管理だったので、カーボン量が1%もばらつくだけで、誘電率が3割ほど変化してくれたから管理パラメーターとして使用できた。
ただこの管理手法は、ペレットが狙ったとおりの高次構造で生産されていることが大前提になる。もし狙った高次構造と異なったら、おそらくペレットの誘電率とベルトの表面比抵抗とは異なる相関、あるいは無関係になるかもしれない心配があった。
そこで粘弾性手法を用いて高次構造の管理を行ったのだが、この粘弾性データが、ベルトの表面比抵抗の生産ばらつきと相関するという予期せぬ結果が得られたのはびっくりした。このことは後日またここで書きたい。今日はここまで。
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シリコーン類は、金属ケイ素を原料にしてジメチルシラン類を合成し、それらを原料にして様々な化合物が合成されている。SiC繊維の原料となるシランポリマーの主鎖はSiだがシリコーンポリマーの主鎖はらせん構造をとる柔軟なSiO結合だ。
だから、線状シリコーンポリマーはゴム弾性を示す。ややこしいのは架橋密度が上がり、ゴム弾性を示さない物質はシリコーンレジン(樹脂)と呼ばれていることだ。
C-C結合を主鎖に持つ一般の有機ポリマーの樹脂とはTgが室温より高い物質が樹脂と呼ばれているから、これはシリコーンゴムの架橋密度の高い物質と呼んだ方が分かりやすい。
しかし、エラストマーとしても用いられるポリエチレンが樹脂と呼ばれたりしているから、これらの物質を眺めると、樹脂とかレジンと言う呼称が室温において弾性を示すかどうかという視点がわかりやすいことに気づく。
ところが、熱可塑性エラストマー、TPEという物質が存在したりするので、この議論をますます難しくする。そもそも、レジンとエラストマーを同じ土俵で定義されていないのではないかと思えてくる。
技術者の間でもこの感覚が異なるから、高分子と言うものが難しく見えてくる。エラストマーと感じた物質をレジンと言われたりすると、当方は未だに不気味になる。
これは地下鉄の電車をどこから入れた、という三球照代の漫才ネタと同じではない。学会が整備しなければいけない言葉の問題だ。
さて、言葉の問題は漫才同様に結論が出にくいが、シリコーンレジンについて有機置換基の量が少なくなると可撓性が低くなり、硬度も高くなることが経験的にわかっている。すなわち、硬いシリコーンレジンを製造したいなら有機置換基を少なくすればよい。
また、有機置換基の芳香環の割合が増えると、可撓性が高くなり、柔らかいシリコーンレジンになる。すなわち置換基の量と芳香環の割合を制御しながら様々なシリコーンレジンが合成されている。
合成法は、有機ポリマーよりも簡単で分かりやすいが、ここに物性コントロールをするときの落とし穴がある。すなわち、可撓性が高く柔らかいシリコーンレジンを設計したつもりだが割れやすかったりする。
この問題の答えはここで書かない。ご興味のある方は弊社に相談して欲しい。本日の内容だけでも勘の良い人ならばすぐに理解できる。無機高分子研究会というのがあるが本来こうした問題をもっと多く議論してくれたなら面白いのだが。
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昨年台湾ITRIから講演依頼を受けてから、すでに3回シリコーンに関して講演を行った。ケイ素化合物の反応を初めて扱ったのは大学4年の時で、トリメチルシリルメチルグリニア試薬を合成し、ジケテンを開環する反応である。
グリニヤ試薬は極めて反応性が高いので-20℃以下に冷却してエーテル溶媒中で行う。少し危険な実験で、設備が整った実験室でなければ行えない反応である。大学院に進学後は、ケイ素ではなく3塩化リンを相手に合成実験を行ったが、こちらはやや反応がマイルドで室温で行えた。
さて、シリコーンを事業としている会社の大手は、何らかのケイ素源を持っている。例えばこの分野で日本最大の信越化学は、シリコーンウェハーもその事業の一つとしており、低コストでシリコーン類を製造可能なはずだが、シリコーン類は、他の高分子に比較し、高価である。
昔からシリコーンポリマーが高価格だったことは問題となっており、水ガラスから新たなシリコーンポリマーを合成する試みは古くからおこなわれてきた。40年ほど前、大阪工業試験場椎原先生は水ガラスからシリコーンポリマーの様なエラストマーを合成し、新聞発表され関係者を驚かせた。
しかし、その時の水ガラスエラストマーは、水を含んでいることで弾性体となっていたので、耐久性のないエラストマーだった。すなわち乾燥雰囲気化に長時間放置するとゲル化し、弾性を示さなくなった。しかしこの実験で多くの人が水ガラスの中のシロキサンがポリマーであることを十分理解することができた。
ゴム会社に入社後、この椎原先生の実験が気になって、水ガラスからケイ酸ポリマーを抽出する実験を行っている。THF-ジオキサン混合溶媒でケイ酸ポリマーを抽出したのだが、すばやく処理を行わないとゲルが沈殿し、扱いにくかった。
そこで、フェノール樹脂との複合化を行ったところ、電顕でシリカ粒子が観察されない有機無機ハイブリッドを製造することができた。ただ、Na不純物などが残っており、水ガラスを使用していては高純度化が難しい、と判断した。
そこでこの発明はTEOSとフェノール樹脂との反応に展開されてゆくのだが、今度はフェノール樹脂とTEOSとを均一に混合できない問題が生じた。ここから先はすでにこの欄で書いているので省略するが、いずれの話も特許出願されているが、現在の特許庁のデータベースでは、このころの特許を収録していないので調べることができない。
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単一組成のフィルムのインピーダンスを計測している限りにおいては面白い計測ではない。しかし、表面処理されたフィルムや成膜に失敗したフィルムなどを計測すると途端に面白いデータが得られ始める。
主に低周波領域で周波数分散に異常が観察されるようになる。ここでは書きたくないような面白い現象も観測されるが、その中でパーコレーションとの関係を示すデータについて経験談を書く。
酸化第二スズゾル(以下スズゾル)をPETフィルムにバインダーとともに塗布すると、パーコレーション転移の閾値以上の添加量で帯電防止層ができる。
面白いのは、厚みが1μmもない帯電防止層の表面比抵抗が10の10乗から11乗程度の高抵抗であってもタバコの灰付着テストに合格する。このとき、スズゾルの体積分率とインピーダンスの変化の関係を整理すると面白い。ここであまり書きたくないが、すでに国際会議等で発表した内容もあるのでそれについて説明する。
インピーダンスの絶対値の周波数依存性データで低周波領域に異常分散が現れ、それがスズゾルの体積分率と相関する動きをするのだ。すなわち、インピーダンスの絶対値を用いるとパーコレーション転移の閾値を容易に検出できる。
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負の誘電率の材料が透明ならば負の屈折率となるはずだ。また、中間転写ベルトの開発で見つけた現象から、高分子の変性で負の屈折率という機能を実現できる可能性がある。
今から30年ほど前の写真会社へ転職したての頃に福井大学工学部で客員教授を拝命したが、そのときパーコレーション転移とインピーダンスの低周波数領域における異常分散について研究している。
その時に評価したサンプルにも負の誘電率を示すものが見つかったが、研究対象から外している。研究の目的がたばこの廃付着テストに関する研究だったためである。
さかのぼること40年前の1980年代にSiCウィスカーを2000℃以上に加熱しカーボンナノチューブを合成している。ただこの時はカーボンナノチューブを合成するのが目的ではなくSiCウィスカーの線膨張率を測定するためだった。
研究目的とはずれた珍現象や新現象はこのように研究目的と異なる場合に除外される。ノーベル賞でも取る目的ならば鵜の目鷹の目で新現象を追い求めるが、技術者が欲しいのは新しい機能である。
今ある目的のためにこの負の誘電率という機能に着目し趣味の研究を開始したが、つまらない結果しか出ていない。いざその目的で制御して現象を起こそうとすると難しい。久しぶりに眠れない日が続くが、年齢を考えると無理もできない。
若い時ならば過重労働を厭わず、無茶な仕事を行っていたが、今は眠くなったら寝る、という生活である。これが老いだと自覚したのだが、昔でもつまらない会議の時には居眠りをしていたので、あながち老いのせいにはできないかもしれない、と若い時の業務姿勢を反省している。
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今年はトヨタのベア非公開が話題になり、自動車産業は100年に1度の大変革期と言われている。衆知のように自動車エンジンがモーターに切り替わる未来が具体的に見えてきたからだ。そこで昨日書いたようにトヨタはHV特許無償提供という思い切った戦略をとった。
EVでは、複雑なエンジンを組み上げる技術力が無くても自動車を製造できるので、多くの異種産業からの参入が今後予想される。それだけではない。
ガソリンスタンドも今の様な大規模のスタンドは不要になる可能性があり、それこそセブンイレブンなどのコンビニの駐車場でも充電スタンドを設置可能で、自動車会社よりもガソリン業界はもっと深刻である。
この10年ソーラーパネルを設置する家庭が増えたが、休耕田を利用した発電事業が再度見直される可能性もあり、自動車産業以外の周辺のビジネスチャンスが広がっている。
当方が生きている間にガソリンエンジンの車が無くなる可能性も出てきて、今誰も気がついていない新規事業ネタを考えるのは楽しいことである。
最近のモーターショーでは、自動車がインターネットとつながることがテーマとなり、自動運転までその中に取り込まれていった。これらの動きは、ガソリンのいらない車でも状況は変わらないが、充電ステーションの問題は、充電規格にとどまらず、考えなければいけない課題が多い。
例えば10台の車へ一度にガソリンを給油するときにガソリンスタンド外への影響は無いが、一か所で10台同時に充電した場合には、どのようになるのか。また、確実に今よりも必要な電力は増える。現在の発電設備で間に合うのかどうか深刻な問題である。
一方で、電気自動車の普及は、ニュースになっているほど早く進まない、という見方も存在する。また、トヨタのように進んでほしくない、とあからさまに表明しているメーカーも存在する。
ゆえに、当方はどちらかと言えば、一般に言われている電気自動車の普及スピードに対して懐疑的な見方をしている。
確かに化石燃料の消費は抑制しなければいけないが、火力発電が未だ主流の時代であれば、HV車が現実的である。だからと言ってHVが主流になるとは考えにくい。
燃料電池という可能性も考えられ、中国では燃料電池車に対する関心が急速に高まっている。恐らく今世紀は自動車のエネルギーが多様化する時代となるのではないか。
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連続体モデルの理論解析からプラス電荷とマイナス電荷のズレ(分極)が単一方向にそろっている状態であれば負の誘電率が出現するといわれているが、この場合に分極ドメイン構造のほうが安定なので負の誘電率発現が抑制されるという。
ところがこの解析結果で分極ドメイン構造が生じなければ、あるいは何らかの理由で分極ドメインが不安定になったなら、負の誘電率が現れることになる。
例えば、導電体や半導体のドメインが生じた場合には電子の拡散速度というものは早いので負の誘電率が現れる可能性がある。
実用化されているPPS製中間転写ベルトの誘電率を測定すると正であったが、実用化過程で得られたベルトの中には負の誘電率を示すものが存在した。
用いている導電性カーボンはすべて同じロットの製品であり、異なるのはマトリックスの配合だけである。すなわちPPSへ添加されたポリマーの種類や混練条件で負の誘電率を示すベルトが得られたことを示している。
誘電率が正のパラメーターであることは電磁気学の教科書に書かれているが、計測でこのような負の誘電率が現れる現象については、現代のホットな話題の一つだ。
負の誘電率が存在すれば、負の屈折率も可能性があり、世間では光学分野の関心が高いようだ。永らく屈折率を正として扱い、光学の体系が作られてきたが、その再構築を迫る現象のためだからだ。
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昨日この話題を書こうとカレンダーを見たらエイプリルフールなのでやめた。新元号の発表はエイプリルフールと関係なく行われているが、誰もエイプリルフールだと騒がない。
すでにスーパーコンピュータにより強誘電体薄膜が負の誘電率を示すことが、最近シミュレートされている。
誘電率は正のパラメーターとなるのが普通であるが、30年ほど前に電気粘性流体の開発を担当した時に負の誘電率が測定されてびっくりした経験がある。
導電性微粒子にシリカの超微粒子を傾斜組成で分布させて表面から内部にかけて10の11乗Ωから10の4乗Ωまで体積固有抵抗の値を変位させた粒子や、
超微粒子の粘土鉱物の層間にグラファイトを挿入し、それを分散した微粒子、すなわちあたかもナノオーダーのコンデンサーが分散したような微粒子を合成して測定した時である。
誘電率は正だから測定法がおかしいのだろう、と周囲の研究者に笑われたのでそのままにしていた。しかし、転職した会社で中間転写ベルトの開発を行っていた時に、また負の誘電率と遭遇することになった。
世間でもメタマテリアルで誘電率が負になる、ということで2000年以降指数関数的にそのような論文が増加しているのでおどろかず、じっくりと頭の中で温めてきた。
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高分子の混練は、混練機で発生するエネルギーを高分子が受け取り発生する剪断流動と伸長流動により進行する。
ここでよく知られた伸長粘度は剪断粘度の3倍と言う法則(Trouton則)があるが、実際の高分子の混練ではこの法則が成立しない。
その原因は伸長流動に弾性項も含まれるためだが、これはゴムひもを引っ張ってみれば簡単に体感できる。
ゴムひもは加硫されている高分子だから、それは違うだろう、などという細かいことは考えず、少し引っ張るだけでも伸長流動が単純に粘度だけでは説明がつかないことに気がつく。
この段階で、さらに細かい突っ込みを言いたくなる人は、この先を読んでいただく必要はない。
なぜなら科学の難しい話をするつもりはなく、現象をうまく捉えるコツをお話しするのが目的だから。
世の中にはいろいろな人がいる。教科書に書かれていることは絶対に正しくて、それに反したことをいう人を無知と決めつけるような人から、最初から教科書など信用せず、経験こそ命、といった職人肌の人までさまざまである。
これは、知識に対する認識の違いから来ていると当方は考えているが、ある現象に対峙したときにこの認識の違いが大きく影響するから技術開発において問題となる。
剪断流動と伸長流動について、前者の理解についてはそれほど認識の違いでばらつかないが、後者については弾性項の存在を意識するかどうかで混練で引き起こされる現象から機能を拾い上げる能力に差ができる。
すなわち、現代でも科学で十分に説明しきれていない分野について、過去の形式知の延長線上で現象をとらえようとする姿勢と、過去の形式知を批判的にとらえ、目の前の現象との比較に努力する姿勢では、発明や発見の機会に大きな差が出る。
手元のゴムを引っ張るという作業においてもそこに現れる現象に過去の形式知と異なる知を見出せるかどうかは、その作業に対する姿勢で決まる。
その姿勢に対して、過去の形式知を振り回して批判ばかりするような人には、遭遇した現象から新たな機能を拾い出せない。これについてはドラッカーも「頭の良い人ほど成果を出せない」とばっさり切り捨てている。
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本日は、高分子の難燃化セミナーを品川区大井町きゅりあんで行います。ところがセミナーの前にショッキングなニュースが飛び込んできまして、あせりました。このショッキングなニュースとは、大塚化学がホスファゼンの国内販売を中止する予定というメールである。
大塚化学は、ホスファゼンが無機高分子として注目されていた1980年代初めから事業を行ってきた企業である。おそらく会社のホームページでも詳細発表があると思われるので、この件はここまで。
高分子の難燃化技術においてホスファゼンは臭素系難燃剤よりも環境負荷が小さく重要な素材である。しかし、価格が高いので、1980年代に多くの会社が参入したにもかかわらず、現在国内で事業を展開しているのは3社だけである。
当方はホスファゼンについては、大塚化学が研究開発をスタートする以前から大学で研究をしていたその道の専門家の一人であるが、ゴム会社でこの化合物で変性した難燃性軟質ポリウレタンを開発して始末書を書いた実績がある。
始末書の原因は、試作がうまくいったために上司が川下部隊へ喜んで報告したためだ。当時ホスファゼンが市販されていなかったために、それが大問題となった。
市販されていなかったホスファゼンを当方は自分で合成し、上司もそれを見ていたはずであるが、企画提案から試作成功までが4ケ月という短期間だったために、当方が合成していたことなど忘れてしまったようだ。
もっとも当方はホスファゼン変性軟質ポリウレタンフォームという魅力的な発明のために昼夜実験を行い、ほとんど徹夜状態で工場試作まで持ち込んだのだが、工場試作を決定したのは上司である。
しかし、なぜか試作を行った責任が新入社員にある、ということで、当方は最初で最後の始末書を書くことになった。ただ、この始末書では普通に書いては面白くないので、ホウ酸エステル変性軟質ポリウレタンフォームの提案を始末書で行っている。
面白いのは、ホウ酸エステルも市販されていない化合物だったのだが、ただホウ酸とジエタノールアミンをかき混ぜているだけでできる、ということで企画が採用された。
矛盾を感じつつもこの仕事も一生懸命過重労働で半年もかけずに試作を成功させて、そして実用化された。ちょうどそのころ大塚化学よりホスファゼン開発のニュース発表があった。
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