活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2017.07/21 科学の体系(1)

科学の世界観では、一つの真理は重要なことで、真理が一つゆえに科学の論理展開による推論が意味を持ってくる。しかし、現実の自然現象では、科学で明らかにされたはずの事象でも技術開発でそこで働く機能を用いるときには科学を疑う、あるいは科学の成果を忘れたほうがよい場合が存在する。

 

例えば、混合や分散の技術では、科学の体系通りには成立していない、あるいは科学のそれぞれの分野で微妙に体系が異なっている事象を扱う。

 

水に油を分散するときに、界面活性剤を用いることは常識である。そして界面活性剤は親水基と疎水基の構造を持ち、界面活性剤を水に分散すると水の中に疎水場を形成し、この中に油を包含することで安定に油を水中に分散することが可能となる。

 

界面活性剤の教科書を読むとこのような説明がなされている。さらに、親水基と疎水基を持つ分子でミセルを形成したり、臨界ミセル濃度(CMC)などの説明が続く。この臨界ミセル濃度については、その説明のためにグラフが使われ、ほぼ1%前後と理解できる。

 

実際にラテックスを合成するときには、このCMC近辺の量で界面活性剤が添加される。また、洗濯の時にはCMC以上の界面活性剤を添加しても汚れの落ち方は変わらない、という生活の知恵も存在する。

 

直感的に界面活性剤の体系は理解しやすいようにできている。しかし、この体系で考えていると新しい技術アイデアを見落としたりするから大変である。以前にも述べたが科学が新技術のアイデアが生まれるのを邪魔するのである。(続く)

 

(注)科学の体系に忠実に従い研究され否定証明された電気粘性流体の増粘問題を試行錯誤でたった一晩で解決した事例を以前紹介しているので、今回はダイナフローという特異な界面活性剤を用いて問題解決した事例を紹介する。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2017.07/20 科学が正解を出してくれない

昨日のレンズのように、趣味の世界あるいは人間の感性でその評価が決まる商品では、科学の真理が必ずしも正解とはならない。すなわち人間の営みとしての技術により正解を求めなければならない世界だ。

 

いまやレンズ設計はコンピューターシミュレーションで光学性能を造りこむことが可能と言われている。ゆえにタムロンやシグマ、トキナーなどのサードパーティーから安価で性能の優れた互換レンズが出てきている。

 

韓国製サムヤンは新参のレンズメーカーでそこそこの高性能であるが、最近の日本のサードパーティーメーカー製レンズのボケ味に特徴を持たせてきているレンズに比較すると明らかに商品性能は劣る。そしてカメラ関係の雑誌ではこのあたりの新製品に関する商品テストが格好の記事ネタになっている。

 

あこがれのカールツアイスレンズは、コシナーで製造されているので、日本はレンズ大国である。そしてこのカールツアイスレンズさえも科学の正解を採用していないいわゆる味のあるレンズと雑誌記事にある。

 

写真が二次元に描かれた絵に過ぎないのに立体的に見え、その絵に表現をもたらせるのに必要なレンズ性能の一つはボケであるが、これは科学的に正解を導き出すことができない、と言われている。

 

レンズは焦点が合ったときの性能で設計されるからだ。よく知られているように光の波長によりガラスの屈折は異なり、すべての色を一点で合焦させることは難しい。非球面レンズなどの技術が開発されている理由だが、この合焦させたときの性能でレンズを自由に設計することは、科学的にほぼ可能だ。

 

それにもかかわらず、カールツアイスも含めた日本のレンズメーカーの商品は合焦時の性能は最高であると同時に各社差別化され、個性豊かなレンズが販売されている。

 

焦点がぴったり合っていると思わせるカリカリの写りのためプロの報道カメラマンに好まれるニコン(注)が必ずしも科学的に正解のレンズを販売しているのではなく、ましてや世界最高のレンズと枕詞がつけられたりするカールツアイスレンズが価格通りの性能のレンズではないのだ。

 

カールツアイスレンズが高いのはあの値段でも購入する人がいるからだ。ペンタックスは昔からそのレンズ性能に特徴があり、ポートレートを撮影すると独特の写真が撮れる。気に入ればカールツアイスレンズなどばかばかしくて買えない。レンズは科学だけで正解を導き出せない世界の一例である。

 

(注)最近ニコンは独自コンセプトの技術でボケ味をふわふわトロトロで何とも言えない味わいのレンズを2本出してきた。その写りは、雑誌で作例を比較してもわかる個性である。ただしカールツアイス並みの値段でうんざりしている。

 

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/19 レンズ

若いころの愛用のカメラはペンタックスMEとMEスーパーである。後者は10年近く使い続けた。ゴム会社に入社し結婚するまで使い続けたわけだが、結婚を機会にペンタックスSF-Xに買い替えた。ペンタックス初のボディー内自動焦点カメラだが重かった。

 

ペンタックスを使い続けた理由は、交換レンズの価格が安かったからである。また、安いだけでなく、写りも立体的でそこそこ性能が高かった。写真は三次元を二次元画像として記録するので、レンズにより立体感が決定される。

 

最近ボケ描写が注目され、各社からボケを特に美しくしたレンズの新製品が出てきたが、ペンタックスのレンズは昔からボケに特徴があった。今のような美しいボケというよりも階調の細かくなだらかなボケで、ややにじみもあった。これにより画像が立体的に見える。

 

ニコンのレンズのように、レンズ特性の数値がずば抜けてよいわけではなかったが、銀塩写真の時代には、十分な性能だった。ニコンとペンタックスの一眼レフカメラを使うようになって、このレンズの個性に興味を持つようになった。

 

ペンタックスの古いレンズには、とんでもないレンズが存在し、このレンズで撮影するとフィルターを付けなくてもなぜか光芒がきれいに映る。ただし、このレンズは絞り開放で用いるとやたらうるさいボケになり、明るいレンズであるにもかかわらず、絞り開放では使い物にならないレンズだ。

 

しかし3段ほど絞り、接近して撮影されたポートレート写真には、他のレンズでは味わえない独特の味が出てくる。さらに絞ると、あたかもニコンレンズのようなカリカリの描写になる。

 

どうしてこのようなレンズが開発されたのか知らないが、一応当時の高級レンズの一つスターレンズである。おそらく今のレンズ評価の視点ではできそこないの評価になるのかもしれないが、デジタル一眼レフにも取り付け、時々その画像を楽しんでいる。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/18 技術革新

当方の子供の頃はモノクロ写真が中心で、記念写真がカラー写真になったのは、中学生のころからである。いわゆるオリンピックをカラーで見ましょう、とTVのカラー化が進むとともに、銀塩写真もカラーフィルムが普及し始めた。

 

写真が趣味の父親が当方を被写体に写真をよくとっていたが、カラーフィルムは値段が高いために、カラーが普及しはじめても、小学生の頃の写真はすべてモノクロである。

 

カラーが中心になったのはコニカ一眼レフカメラが我が家のメインカメラになってからである。当時は、壁掛けテレビが夢のテレビとして語られることがあってもカラーフィルムが使われなくなることなど考えもしなかった。ゴム会社から転職したときもデジタル化が始まった時代であるが、カラーフィルムの情報量をみると、これが使われなくなる時代など退職後と思っていた。

 

しかし、あっけなくフィルムカメラの時代は終わり、いまやデジタルカメラの時代である。そのデジタルカメラも性能向上が著しく、一眼レフもミラーレスカメラに置き換わりそうな勢いである。コンデジのミッドレンジクラスまではカメラ付き携帯にとって代わられ、カメラ業界は大変な戦国時代となった。

 

いつかはニコン、と思いつつも、ニコンカメラは高かったので、学生時代に買ったカメラはペンタックスME。以来ずっとペンタックスを愛用してきたが、デジタルカメラの時代になり、最初に購入したデジイチはニコンD2H。ペンタックスのデジイチの完成度が低かったので思い切ってニコンへシステムを入れ替えるつもりだった。

 

しかし、ニコン独特のカリッとした写りに戸惑った。フィルムカメラのF100も同時に使用してみたが、フィルムもやはりカリッとした描写である。ポートレートはペンタックスレンズの描写を気に入っていたので、結局ペンタックスD10、D20、D7と買い続けることになり、技術革新の波の中で出費が嵩んだ。

 

今ソニーのミラーレス一眼が注目を集めている。ソニーのカメラ技術の半分は、旧ミノルタの技術陣である。旧ミノルタは自動焦点一眼レフのパイオニアである。また、その昔木陰で水着に着替えるCMがヒットしたように、ポートレート描写には、いわゆるボケ描写には定評のあるレンズの会社である。一眼レフカメラの首位が入れ替わるかもしれない。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/17 お化け

夏の風物詩の一つにお化けがある。未だお岩さんのようなお化けには遭遇したことはないが、信じられないお化けのような現象には多数出くわした経験があり、それに何度も助けられた。

 

高純度SiCの開発では、無機材質研究所で納入されたばかりの新品の電気炉を使える幸運で必ず成功させようと意気込んだ。ところが研究所の先生にすべて運転条件を設定していただき実験を開始したところ、突然電気炉が暴走し瞬間的に温度が1800℃を超えた。慌てて緊急停止を押し、担当の先生に電話をかけた。

 

一方でサンプルがもったいないから手動で運転できないか考えた。プログラムコントローラーを見ると1600℃保持に入っていたので慌ててスイッチを入れたところ、うまくプログラム通り動き出した。

 

翌日サンプルを取り出したら、真っ黄色の高純度SiC微粉ができていて驚いた。電気炉の暴走原因は不明で単なるPIDの問題ではないか、とも言われたが現象を再現できない。一番不思議なのは、その時の温度パターンが微粉を作るためには一番良かったことだ。これは今でも不思議な現象と思っている。

 

もう一つ、電気粘性流体の開発を手伝っていた時に、傾斜組成の粉体を偶然開発できた話。詳細は省略するが、できたらいいね、と同僚と話していたら一回目の実験でベストの粉体ができた。電子顕微鏡で組織観察しても傾斜組成になっている。なによりも驚いたのは、その粉体を用いたら応答性がよく効果の大きい電気粘性流体ができたことだ。

 

その後、FDが壊れたのだが、こちらはお化けではなく明らかに人為的な出来事だった。お化けであってほしかった事件である。お化けはこの世に未練があって出てくるものだと教えられたが、人間の物事に対する執着心は、まったくないよりもあったほうが面白い人生になると思っている。ただし執着心を恨みに変えていてはみじめで、執着心を前向きに転化する努力が重要である。

 

当方は高純度SiC技術に対する執着心ゆえに写真会社で同様の一発を狙ってきた。しかし、その一発は全員から祝福されるような仕事を狙っていたが、これが結構難しい。すなわち組織で仕事を行うときに組織が必ずしもイノベーションを望んでいるとは限らないからだ。

 

しかし単身赴任して担当したPPS転写ベルトでは、少なくとも豊川周辺の事業所に勤務していた全員がその成功を願っていた。外部からコンパウンドを買って開発を進めていた仕事を商流の形式を維持したまま成功させたのだが、これは組織の都合で内製化できない状況だったからだ。

 

この仕事では子会社の敷地を借りてコンパウンド工場を立ち上げ、子会社からコンパウンドを購入する商流を作り上げた。おそらくそれまでコンパウンドを納入してきた会社にとって突然現れたお化けのようなライバルに見えたかもしれない。基盤技術があったとしてもコンパウンド工場が立ち上がるまでは一年以上かかる。ちなみに国内の大型の二軸混練機は発注から納入まで一年程度かかる。それが半年以下で工場がたちあがったのだ。

 

この仕事では、初期にお岩さんより凄いお化けが出た。統合したカメラ会社の倉庫にあった小型二軸混練機でコンパウンドを製造し、押出成形を行ったところ、ぶつぶつがいっぱいできたベルトが出てきた。実はこのお化けのようなベルトが最初に出てきてくれたおかげでコンパウンドが押出成形に与える影響を学ぶことができた。運がよかった。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2017.07/14 自動車の未来

自動車の未来について、二年前のモーターショーでは水素を燃料とする燃料電池車が本命のように展示されていた。しかし昨今の状況を見ていると燃料電池車が必ずしも本命ではなさそうだ。ただ電池というキーワードだけは確実で、すでにEUでは30年後にガソリンエンジン車を禁止すると言い出した国も現れている。

 

昨日未来を予測するのが難しいようなことを書いたが、電池というキーワードが確定しているので電池を動力のエネルギーとして用いるときに必ず必要な周辺機器に着目すればかなり確度の高い未来予測をすることができる。

 

自動車の安全運転とAIとの関係においてもやはり未来予測は易しいだろう。さらにレシプロエンジンが無くなれば車のデザインも大きく変わる。また動力がモーターになるので車の設計も変わる。

 

このように考えていくと、自動車の未来技術の概要を描くことができ、それをもとに今研究開発に力を入れなければいけない分野が見えてくる。そしてドラッカーが言っていたように今起きている変化を整理すれば具体的なテーマが見えてくる。

 

例えば高分子材料分野では、PPSというエンジニアリングプラスチックの市場が急成長している。例えば東レは韓国工場を稼働させ、中国のローカル企業のリニアタイプPPS合成工場も立ち上がった。

 

ところがこのPPSという材料は、結晶性樹脂で脆い材料だ。おまけに射出成型をすれば、ウェルドの問題が出やすい。また表面状態が悪い成形体になるなど問題が多い。このPPSの問題を解決でき、PPSの物性を損なわない添加剤は開発テーマになり、いくつかは特許が公開されているが、満足な添加剤が無い。最近弊社では従来にない画期的な添加剤を開発し、特許出願を行った。もしご興味のある方は問い合わせていただきたい。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/13 企業の基礎研究所

東レなど一部の大手メーカーは10年後の未来に向けて基礎研究部門で研究開発を行っている。しかし企業で基礎研究から事業を育てるには相当の体力がないと今の時代は難しいと思う。投資効率を考えると、アカデミアとの産学連携が好ましい。しかしどのようなテーマをアウトソーシングするのかが問題になる。

 

一方でドラッカーの提唱したオープンイノベーションも活発に行われているが、こちらは長期戦略の視点であまり活用されていない。どちらかと言えば今の技術開発に知恵が必要だから助けてください的な活用のされ方だ。

 

最近の話題で重要なのはAIの台頭で、20年後には今から想像もつかない仕事に40%の若者が就職している、とも言われるようになった。ドラッカーも誰も見たことが無い未来が始まる、とその遺作の中で述べているが、20年後の社会を予測するのは難しいと言える。

 

20年後が難しいのなら10年後は易しいのかというとこれまた昨今の変化を見ると20年後同様に難しそうだ。日本の政治の世界では来年さえも不透明になってきている。このような状況で企業の基礎研究部門の運営は相当難しく、かつてのようなマネジメントでは猫の目のように毎年組織改正をしなくてはいけない状態だと思う。

 

面白いことに、ドラッカーは誰も見たことのない未来が始まると言いながら、その未来を見通す方法をその著作の中で述べている。ドラッカーを高校生の頃から読み始めたが、その未来を見通す眼力には敬服している。40年以上前の著作に書かれていた知識労働者の時代になっているし、書籍のタイトルになっている各世代ごとに断絶の時代でもある。

 

すでに基礎研究部門の将来シナリオを描けている企業は当方に興味はないが、もし描くのに苦労しているところはぜひご相談ください。どのような未来像を描いたら良いのかご指南いたします。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/12 未来の事業を育てる

1980年代に起きたセラミックスフィーバーは、セラミックスとは無関係の企業も巻き込んだイノベーションとなった。ゴム会社では故服部社長がCIを導入し、社名からタイヤをはずし、非タイヤ部門を会社成長のけん引役とする方針を出し、その3本の柱として、1.電池、2.メカトロニクス、3.ファインセラミックスを育てる、と全社員に宣言した。

 

そして、世界初のポリマーリチウム二次電池が開発され、日本化学会技術賞を受賞している。メカトロニクスについては電気粘性流体の開発に力が入れられた。またゴムをアクチュエーターとして利用した軟体ロボットはつくばで開催された科学万博で展示された。

 

しかし電池事業は学会賞受賞後中断され、電気粘性流体もいつの間にか無くなった。ただし、高分子前駆体を用いた高純度SiC粉体合成技術を基盤としたファインセラミックス事業は30年以上たった今でも続いている。

 

実際にこの事業を企画し中心となって推進した経験から、異業種の事業を育てるときには経営の覚悟が重要だと思っている。経営陣のバックアップさえあれば苦しくても担当者は努力するものである。事業として立ち上がるまで様々な妨害があったが、誠実真摯に対応してきた。

 

このような新事業を立ち上げるときの苦労は企業の風土によっても変わる。例えばかつてダボハゼと言われた旭化成は住宅事業や半導体事業に進出し成功させた。そして今自動車事業に進出するかのような動きを見せている。

 

外から見る限り、この会社の事業の育成能力は一つのDNAとして伝承されているかのようである。一方ゴム会社も創業者の時代の成功体験があり、それが高純度SiCの事業成功の要因になっているのだが、残念なことに担当者にそのDNAが伝承されていないようだ。今後SiCのパワー半導体は、電気自動車の普及に牽引され成長産業の一つになるのだが、これの開発を日本化学会技術賞受賞後にやめてしまったのだ。もったいないことである。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/10 アイデアを出す一つのコツ(2)

開発テーマが暗礁に乗り上げ、それが自然現象に関わる問題の時、何故か科学的思考を働かせようと前向きの推論を展開する人が多い。この前向きの推論のどこが問題なのか。問題はいろいろあるが、一番大きな問題は、思考が発散する問題である。仮に結論を明確にして前向きに推論を展開したとしても多くの推論の可能性を考えることになる。

 

これが逆向きの推論になると結論に直結する推論だけを考えることになる。仮に結論に直結する現象がいくつかあったとしても、結論に直結する現象について、それぞれを結論として捉え、それに直結する現象を考えたりして展開してゆくと、どこかで最も良い道筋一つが見えてくる。

 

前向きの推論と逆向きの推論の最も大きな違いは、この最も良い一つの道筋を素早く見つけられるかどうかである。日々の自分の思考がもし前向きの推論で行われてきたとしたら、その過去に事例について逆向きに考えてみるとよい。一筋の道を面白いほど見通せることに気がつくはずだ。

 

この逆向きの推論を行うときに問題となるのは目の前の現象について結論となる部分の表現方法である。すなわち「答え」を考えなければいけいない。都合がよいことに目標管理で決められた目標はその答えになる。面白いのは目標管理で明示したゴールから目の前の現象を眺めたときに、科学的には重要に見えていた現象が、取るに足らない現象に見えたりすることである。

 

そのような現象では今真剣に悩む必要はなく開発が終わってからゆっくり悩めばよい。そうすると不思議なことにアイデアが湧いてくる。なぜなら商品開発の過程で気になっている現象を注意深く見るようになるからである。理解はできていないが商品がうまく完成したときに改めて難解な現象を眺めると、不思議と解がわかりそうに思えてくる。この「わかりそうに」という部分が大切で、そのように感じたとき新たなアイデアが浮かぶ。開発を終えてから研究を行うとよい理由である。

 

答えが見えない問題ほど難しい問題はない。しかし、難解な現象に始めて遭遇したときにアイデアが無くて解決できなくても商品の中でその現象を眺めているとそこはかとなくうっすらと見えてくるものがある。そこで改めて答えを考えてみると不思議なことにうまく答えを設定できる。

 

科学では、答えを推論で求めなければいけないが、技術では機能がロバストの高い状態で動作していることなので、答えをあらかじめ決めることができる。答えを決めて問題を解くというと違和感を感じるかもしれないが、答えが分かった問題は必ず解があるという安心感を持てる。この安心感はアイデアを出すために重要である。

カテゴリー : 一般

pagetop

2017.07/09 アイデアを出す一つのコツ(1)

高校数学で学ぶ証明問題の解答に必要条件と十分条件で論理を明示的に展開しないと×になる問題がある。実は「=」が必要十分な関係を示しているので,数学や算数の問題は必要十分関係を議論している。ゆえに推論に向きがあることを高校を卒業した人ならば誰でも知っているはずなのだが、卒業すると忘れてしまうようだ。

 

それは日常の思考や科学で現象を考えるときに無意識に必要条件から考える癖が身についているためと思われる。いわゆる科学で脳みそが習慣ずけられた結果である。ただしこの前向きで推論を進める癖は簡単に矯正できる。ただ現象の結果から考えれば良いだけだからだ。すなわち現象の結果や結論を明確にして逆向きに推論を進める習慣をつける。

 

この逆向きに推論を進める方法は、アイデアを出すコツでもある。また、単に論理問題を解く時だけでなく、人生の問題を考えるときにもこの方法は有効であるが、人生についてはとりあえずここでは扱わず、日々の開発で生じる問題について考えてみる。

 

今は目標管理が一般に行われているので日々の仕事のゴールは明確なはずだ。新しい開発課題を担当したときに、その目標を明確に記述する作業を日常行う。しかし何故か日常遭遇する問題について、まずその答えを明確にするという作業を行わない。写真会社で問題を前にして困っている担当者にまず答えを考えてみよ、と言ったら、それが分からないから困っているんです、としたり顔でいう。

 

それでは、君の今期のゴールは何か、と尋ねると答えは返ってくる。そのゴールと現在の目の前の問題とを関係させて考えればおのずと答えは明らかだろう、というと、これは今期の目標と関係ない現象です、と平然と答えてくる。さらにこの担当者とやりとりが進むわけだが、目の前で起きている現象の科学的答えを知ることが仕事だと勘違いしている。

 

会社の開発テーマでは、そこで扱う自然現象について科学的な真理を求める作業よりも商品化できるかどうかが最も重要なはずだが、それを忘れているケースが多い。仮に科学的真理が何も明らかになっていなくても商品化が成功している例は多い。

 

PPS/6ナイロン系中間転写ベルトの商品化では、その相溶が起きた結果どうなるかと考えず、カーボンの分散を安定化させるためには6ナイロンがPPSに相溶していなくてはいけない、と、それが完成した姿から物事を考えていた。そしてそれが実現され中間転写ベルトを商品化できたのだが、なに一つ科学的真理は明らかになっていなかった。

 

 

 

 

 

カテゴリー : 一般

pagetop