タグチメソッドを用いると実験工数を削減でき合理化できる、という誤解がある。KKDと一因子で実験を行い、ロバストの低い商品を市場に出し、クレームが来てから手直しを行う開発のほうが、初期の研究開発期間を短くできる。意図的にそのような開発をやっていると思われる商品も世の中には存在する。
ゆえに単純に開発工数の削減という視点でタグチメソッドを捉えるとがっかりするかもしれない。タグチメソッドの利点は、ロバストの高い品質を実現できる効率のよい開発法という特徴である。
市場で多くの実績があり、どのような因子がロバストに影響するのかノウハウがある場合には、タグチメソッドは面倒な開発手法に感じる。多くのノウハウがある場合には、タグチメソッドは不要かもしれない。
それでもなおタグチメソッドを使う理由は安心感である。同じ技術を新製品用に開発しているときに、タグチメソッドは退屈な実験になる。予想したとおりの最適条件が得られ、再現実験も問題なく終了し、技術が完成する。タグチメソッドがムダだったわけではない。類似結果が得られたことに安心すれば良い。
システム選択は技術者の責任で行われるが、非科学的に選ばれたシステムが正しいかどうかは実績を積み重ねて信頼性を上げてゆく以外に方法はない。もしそれが科学的に正しいと証明されたシステムでも市場のノイズをすべて実験室で確認することは不可能なので、やはり実績を積み重ねることが重要になってくる。
科学では、科学的に行われた実験でたった一つの真実でも示されたならば、それがゴールとして価値が高くなる。技術では、システムの機能が市場で安定して発揮された実績が積み重ねられて初めて価値が出てくる。
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基本機能の選択は技術者の責任で、その研究こそ重要だ、と田口先生は言われた。実は基本機能がわかっている状態は、機能の実現手段が明らかになっていることであり、そうでない場合には、基本機能のSN比を求めることができないので、タグチメソッドによる問題解決ができない。だから研究が必要になるのは当たり前だ。
機能の実現手段が不明の場合の問題解決をどのように行うのか。過去に科学的にこれを行う方法としてTRIZやUSITがもてはやされた時代があった。しかしTRIZやUSITは、科学的ではあるが、科学的ゆえに科学で解明されていない機能実現方法を導き出すことができない。科学的ロジックで進めるロジカルシンキングでも同様である。
科学的に解明されていない機能を「すべてを科学的に行い開発できる」というのは矛盾を含んでいると思う。しかしこの矛盾を理解できない人もいる。32年間の技術開発人生で何度も出会い、その度に非効率的な仕事をしなければいけなかった。またやりたくない否定証明を業務としてやらなければいけないときもあった。
科学的に解明されていない機能をもし使用したいならば、非科学的プロセスで問題解決し、技術を用いて機能を創り出すのが手っ取り早い。なぜなら多くの学者が科学的に取り組んできて解決できていない現象を、凡人に一朝一夕に解決できるはずがないからだ。
また、これまでの科学分野におけるイノベーションが科学的に導き出された成果ばかりではないことに気がつくと、非科学的プロセスの重要性を理解できる。「非科学的プロセス」を科学的に管理(注)し誰でも同様の成果が得られるようにできれば、それはイノベーションを起こしうる汎用的な問題解決法と思われる。
話がそれるが、タグチメソッドについて田口先生におそるおそるこのような考え方でタグチメソッドは非科学的ではないか、と質問したら、田口先生は穏やかにタグチメソッドを応用してゆく過程で非科学的なところが出てきても基本機能が正しければそれで良い、と言われていた。あくまでタグチメソッドでは基本機能が命なのである。
(注)これは矛盾を含んでいない。非科学的プロセスの節目を科学的手段でチェックすることはできる。そうすれば、真理は一つなので、通過点における判断の正しさを確認できる。全体のプロセスは非科学的でも成否が分かれるプロセスの分岐点を科学的に管理できれば、効率良くゴールにたどり着ける。iPS細胞のヤマナカファクターはこのようにして発見された。
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科学的に商品のスペックを記述し、それを用いて商品の品質管理を行う事が難しい場合がある。高分子の難燃性もその一つである。ゆえに高分子の難燃性という機能の品質管理では、それぞれの業界で推奨される方法、各種難燃性評価規格が決まっている。
世の中すべて科学で厳密に構築されている、あるいは世界を科学一色で記述できると信じている人は、このあたりの状況を理解できない。そもそも科学が生まれる以前にも技術の進歩があった事を知らない人が多い。科学の歴史よりも技術の発展の歴史のほうが比べものにならないくらい長いのである。それぞれの問題解決プロセスは www.miragiken.com で一例を示して説明している。
高分子の難燃化は技術で行うので、高分子の難燃化技術という言葉をよく聞くが、高分子の難燃化科学とか高分子の難燃化の科学とはあまり言わない。せいぜい「難燃化への科学的アプローチ」という言葉を使うのが21世紀の今日でも精一杯の状況である。アプローチはできても科学的な唯一の真理としての万能な方法の開発は困難である。
科学は真理を追究し、技術は機能を追究する、という弊社の考え方では、高分子の難燃化を技術として解くときに、「システムの機能」をコンセプトにして技術開発の目標を設定する。
このときよく用いるコンセプトには、「炭化促進型の難燃化」と「溶融型による難燃化」である。前者は狭義にはイントメッセント系の難燃化技術であるが、この両者で基本機能の扱いは異なる。
詳細はコンサルティング内容になるので、個別に問い合わせて頂きたい。また、今月号の雑誌「ポリファイル」に掲載された当方の論文で、このあたりのことを少し説明している。
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高分子の難燃化を行うに当たりシステムが複雑である、と昨日述べたが、その時のシステムの考え方について弊社のお問い合わせからメールで質問を頂いた。質問者及び質問内容の詳細は省略するが、要点は高分子の難燃化を行うに当たり、その基本機能の考え方である。
高分子の燃焼は急激な酸化反応で進行するので、それを唯一の真理として記述することは難しい。すなわち科学的に100%解析することは困難だろう。しかし、燃焼という現象の部分的な情報については科学的に解明されている。
例えば分子の酸化で過酸化物が生じ、ラジカルが生成することなどは40年以上前に論文発表されている。そして燃焼がラジカル反応で進む「らしい」ことも30年前には科学的に確定している。
ただ、一般の火災現象を科学で100%記述することに成功していない。科学の世界で火災については現在でも「群盲像をなでる」状態である。コーンカロリメーターが火災現象を再現するのに便利な評価装置であり、建築関係でも活用されているが、それでもまだ不十分である。
火災という現象が科学的に100%解明されていない状態で、科学的に高分子を難燃化する技術を開発できるか、というと難しい。しかし、現場では技術でこれを解決し商品開発しなければならない。
技術で高分子を難燃化するとは、高分子を燃えにくくする機能あるいは燃焼しても継続燃焼が難しく火が消える機能、着火しにくくする機能などを付与すれば良い。用途によっては、いずれか一つの機能があれば火災を防ぐことが可能になる場合もある。(明日に続く)
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技術者がどうしても複合システムを扱わなければならない場合がある。すなわち唯一の基本機能を持ったシステムを切り出して実験ができない場合である。例えば高分子を難燃化しようとする時に、その燃焼を防ぐ難燃化システムを唯一の基本機能で捉えようとすると実験が難しくなる。
なぜなら燃焼とは急激な酸化反応であり、未だ科学的に未解明な領域が残っているからである。分子システムの酸化速度論については、科学的に解明されているが、このシステムだけを切り出して、わざわざタグチメソッドを適用しようという技術者はいないはずだ(注)。
それが重要な事だと分かっていても当方はやりたくない。それができたとしても商品開発がうまくゆかないことが見えているからだ。もし時間が十分にあり経済的にも許されるならばやってみたい気持ちもあるが、日々の商品開発ではそのようなシステムを絶対に取り上げない。
こんな議論を故田口先生としたわけだが、先生は穏やかに複合システムとして切り出しても商品に大きな影響を与えるシステムが存在するはずで、その基本機能を代表して使えば良い、と失礼だが当方も考えられるようなことをおっしゃった。この時改めてタグチメソッドの理解が進んだ。
高分子の難燃化では、LOIを基本機能とする実験計画も可能であるし、燃焼速度や燃焼時間を基本機能とする実験計画も可能である。そしてそれぞれの基本機能は複合システムである難燃化システムをどのように技術者が見つめているかに影響される。
その結果できあがる難燃化システムが左右される。新技術が生まれる可能性も同様に影響をうける。このようなケースは難燃化技術以外にもあり、問題の取り上げ方、問題解決のプロセスが重要になってくる。弊社の問題解決法ではこのような場合にどうしたらよいかも示している。www.miragiken.com の書き出しは、問題解決法の比較で始めている。
(注)これは科学者の仕事である。技術者はこの仕事ができなくても、低分子の酸化挙動から頭の中で現象をシミュレートしなければいけない。
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基本機能を商品の唯一のもの、と考えている間は、タグチメソッドを自由に取り扱うことができない。換言すれば、タグチメソッドを科学として捉えているとタグチメソッドを正しく理解できない、あるいは肩すかしを食らう。
生前の田口先生と喧々諤々の議論ができて幸せだった。故田口先生は婉曲的に基本機能は商品にいくつも存在している、あるいは商品のシステムの考え方の数だけ基本機能が存在する、と言われていた。
ところが、教科書の記述や講演では「基本機能はシステムに一つ」というものだから、これが誤解の原因になっていた。商品はいくつものシステムの集合体である場合が多い。実験室では、開発ターゲットとなる商品の一つのシステムを切り出し、切り出されたシステムの基本機能を用いてタグチメソッドを適用する。
商品からシステムを切り出すときの考え方は幾つも存在するはずだ。技術者は商品を設計するときに幾つかのシステムに分割するが、そのとき技術者の考え方でシステムは変わる。ある特定の商品で定まったシステムなど存在しないのだ。
新商品を企画するときに、既存の商品のシステムを見直すだけでも全く異なる商品が生まれることを経験するとこのあたりのことが理解できる。そしてその時発明が生まれる。システムがいつも固定化されている、と考えている技術者は二流である。商品のシステムを見つめ直す作業は重要であり、技術者の訓練になる。
商品を構成するシステムの捉え方は、極端な表現をすればそれを見つめる技術者の数だけ存在する。だからシステムの基本機能は一つ、といっても商品の基本機能は一つとはならないのだ。また商品の捉え方でシステムが変わるならば、商品の基本機能の数も変わることになる。これが重要なポイントである。
教科書にここまで書いて欲しいが、タグチメソッドを科学として捉えていると、こんな事を書けないのである。故田口先生はタグチメソッドの体系を科学的に説明されていたが、あくまでも「メソッド」であることを強調されていた。商品から技術者が切り出したシステムから論理を展開されているのである。
もし技術者が複合システムを取り扱っている場合には、それこそ基本機能はいくつか存在することになる。故田口先生は基本機能が唯一存在するシステムを事例にタグチメソッドを説明しているのであって、技術者が複合システムにタグチメソッドを適用した場合で議論を展開していないのである。
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商品の品質が安定している、とはユーザーの使用環境で商品の機能が安定に発揮されている場合を言う。そのような商品の開発の現場で、タグチメソッドという問題解決プロセスは一度体得すると、すぐに商品開発をすることができるので便利である。ただし、それは基本機能や、誤差因子、制御因子を理解している場合である。
誤差因子や制御因子は現場を調査すればわかるが、基本機能は研究活動が必要で、故田口先生もそれを推奨していた。また、商品の基本機能の考え方の難しさは、品質工学会の初期の会報において竹トンボの事例を用いて説明している。一読すると面白い記事であることが分かる。故田口先生は技術者の責任と述べただけでこの世を去り、この竹トンボの正解は示されていない。
実はタグチメソッドで難しいところは基本機能として何を取り上げるかという点である。ここを乗り越えることができればタグチメソッドは体育会系のノリの技術開発を可能とする便利な方法である。
竹トンボの記事を読んで頂くと分かるが、基本機能が一つの真理として存在しているのではなく、それを技術者の責任としている点でタグチメソッドはヒューマンプロセスの問題解決法だと思う。
1990年頃初めて故田口先生のご講演を拝聴した時に、会場から基本機能に関するしたり顔の質問がでた。質問は基本機能を直接扱った内容ではなく、最適条件で製造したところうまく最適化されていなかった、という内容だった。田口先生は、その質問に対し一言「基本機能が間違っている」と切り捨てられた。鮮やかだった。
ところが質問者はひるまず「それでは何を測定すれば良いのか」と半ば腹立ち気味に追加質問していたが、それに対しても、「それは技術者であるあなたの責任だ」と、ばっさり一刀両断だった。
当初サクラかと思っていたが、質問者の顔は赤くなり、明らかに腹を立てている様子が伝わってきた。故田口先生のコンサルティングでは、基本機能を技術者の責任で考えることが前提になっている。そしてそれはコーチングで進められた。
ただ、このやりとりでタグチメソッドの重要な点をすぐに理解できたので、優れた質疑応答と思った。長年タグチメソッドを使用してきたが、基本機能さえ間違えなければ、最適条件をうまく選択することが可能な便利な方法と思っている。
注意点として、どのような基本機能を用いるかは技術者のノウハウであり、この点を明確に書いてある参考書を見たことが無い。直接田口先生から御指導頂いたが、頑固に見えるご指導だが、奥に柔軟な姿勢を持っておられた。基本機能は一つでは無いのである。
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電気抵抗R0の材料を開発したいときに、まずV=RIという式を思いつく。安定な材料であれば、電流を変化させたときに電圧は電流に相関して変化する。そして集められたデータについて横軸を電流、縦軸を電圧にしたグラフにプロットしてその様になっているのか確認する。
たいていは0を通るほぼ一直線のグラフが得られるが、材料には非オーミックな領域があるので相関係数は1にならない。材料の問題と測定者のスキルも含めた測定環境の問題も影響する。これらは制御因子や誤差因子の影響を受けている、などと言われる。
実験者がコントロールできない場合は誤差因子と呼ばれ、制御可能な場合には制御因子と呼ばれる。但し誤差因子は制御できないが、最悪状態や最良の状態は予想がつくのでその状態に誤差因子を設定し、誤差が管理された条件における実験は可能である。例えば、氷点下の乾燥した室内や高温多湿な室内は、開発したい電気抵抗の用途からどの程度が最悪あるいは最良になるのか情報があるはずだ。
予想がつく誤差因子をならべ、用途から考えた最良と最悪の条件を書き上げる。そして最良の条件と最悪の条件をそれぞれ組み合わせた二組みの条件で誤差を管理した実験を行いV=RIのグラフを書いてみる。
大きく異なるグラフが得られるはずである。材料や抵抗を製造するプロセス因子を変えて,同じように誤差因子の最良条件と最悪条件で実験を行いV=RIのグラフを書いてみると最初の実験と異なるばらつきでグラフが得られる。
さらに制御可能な因子を変化させて、誤差因子の最良条件と最悪条件でデータを集め、誤差因子の最良条件で得られたグラフと最悪条件の時のグラフとの差異が最も小さくなる制御因子の組を見いだすのがタグチメソッドの実験方法である。
すなわちV=RIという基本機能について、管理された2組以上の誤差条件で、電流を変化させた動的な実験を行い、制御因子を2-3水準変化させて、この動的な実験における基本機能のばらつきを小さくする制御因子の組を見いだす、という手順がタグチメソッドである。
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タグチメソッドは、科学的プロセスとして習ったが、目標仮説を設定して実施する「まずやってみよう」精神のヒューマンプロセスだと思っている。田口先生は機能の選択は技術者の責任といい、タグチメソッドのプロセスから切り離している。タグチメソッドはあくまでも機能の改善方法を効率良く見つけるための問題解決プロセスである。
基本機能の選択は、ドラッカーの「何が問題か」という問いに相当する。基本機能がわかり誤差因子と制御因子を割り付け、まず実験をやってみる。ここで目標仮説は基本機能のSN比を改善できる制御因子の組とその条件が見つかる、ということだ。
田口先生の著書を読むと、SN比の求め方から制御因子の寄与や誤差についてまで科学的に説明されている。タグチメソッドは統計ではない、と田口先生は生前の講義の中で説明されていたが、確率ではなくSN比を導入した時点でもはや統計ではなくなっている。しかし、その説明は統計学に似ている。田口先生のタグチメソッドを説明した初期の著書と先生が書かれた統計の教科書を比べるとよく似ている。
タグチメソッドを習い始めたころ思い出したのは新入社員時代のタイヤ軽量化の技術研修だった。タイヤの設計知識が無くてもQC7つ道具さえ知っておれば、なんとか問題解決できた。タグチメソッドでは科学知識が無くてもその手順さえ知っておれば誰でも機能の改善ができる。ただし基本機能を選び間違えると失敗する。タグチメソッドの難しいところは基本機能の選択のプロセスであり、それ以外は手順通り実験を行うことで容易に機能の改善ができるので、優れたヒューマンプロセスといえる。
さらに基本機能と制御因子、そして実験を行うための誤差因子、必要に応じて調整因子を伝承すれば、技術の伝承になる。ただしこれは科学の伝承ではない。あくまでも技術の伝承で、もし伝承された人が不思議に思ったならば、基本機能の研究を行う必要が出てくる。また故田口先生もシステムにおける基本機能の研究は奨励していた。
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理化学研究所は14日、STAP細胞の論文不正問題の舞台となった発生・再生科学総合研究センター(神戸市)を21日付で「多細胞システム形成研究セン ター」に再編し、筆頭著者の小保方晴子・研究ユニットリーダーを理研本部のSTAP細胞検証実験チームの研究員とすると発表した。
この発表から想像するとおそらくSTAP細胞の再現実験の進捗は芳しくないのだろう。WEBにはSTAP細胞騒動について様々な情報が流れており、中にはその分野の専門家でなければ入手できない情報を易しく解説している記事もある。凄い時代だ。
それらの記事を総合して判断すると、小保方氏のSTAP細胞の実験結果そのものがとんでもない勘違いだった可能性がある。すなわち細胞の初期化が不完全で死滅しそうな細胞をSTAP細胞と取り違えた、というのだ。
バカンティー教授についても、細胞の初期化の分野においてその力量に疑問を投げかける記事があった。ネイチャーなどの科学論文では何度も投稿し失敗したが、それを笹井さんが共著者として加わり投稿に成功する。そしてSTAP細胞の騒動が始まっている。
笹井さんに近い方の発言として、小保方氏の論文は火星人の論文だった、とネイチャー投稿前の笹井さんが語っていた、という衝撃記事もあった。某週刊紙に書かれた疑惑の関係の記事は大間違いで、笹井さんが惚れたのはSTAP細胞だった。また笹井さんの当時の研究所運営ビジョンを伺わせる記事もあった。
週刊紙の記事内容は恐らくとんでもない筋違いの記事だろうが、一部のWEBの記事は十分に信用に耐えうる内容である。すなわちSTAP細胞の騒動は力量の極めて低い偽博士(博士論文はW大学で再審査となったので現段階では博士ではない)が一発を狙って引き起こした事件で、科学的真理ではなく研究者の情熱に一流の研究者が騙されたために騒動が大きくなった事件として一般に報じられている。
当方は半導体用高純度SiCの開発でその技術と心中するぐらいの勢いで事業化を行っていたので彼女の気持ちはよく分かる。ただ当方はいつでも自分の情熱に巻き込まれた方々を気遣っていた。そしてその努力が自分の責任である、と事業化を推進しながら思っていた。
しかし、FDを同僚研究者にいたずらされ、自分の努力について大いに悩んだ。そして被害者ではあったが、ドラッカーの誠実と真摯という言葉を尊重し研究開発人生そのものをリセットする道を選択した。
事業は住友金属工業(当時)とのJVとして立ち上がり始めたときであった。学位は国立T大でまとめ上げ、取得間近であった。獲得したセラミックスの知識もすてて、写真会社へ転職して人生は大きく変わったが、ゴム会社で当方の情熱で始まったSiCの事業は現在まで30年近く続いており、当方は写真会社を定年退職しセラミックスから高分子まで、さらに技術から芸術まで幅広くコンサルティング活動を行っている。改めてドラッカーの誠実と真摯という言葉をSTAP騒動で思い出した。情熱を傾けて一つの仕事に打ち込むのは美しいが、その美しさで周囲を惹きつけたときの行動で、誠実と真摯さの有無が分かれる。
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