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2012.09/14 樹脂補強ゴム(3)

加硫ゴムのプロセスは、通常バッチプロセスが基本になっています。すなわち混練から成形体まで完全自動化が難しい材料です。混練は、バンバリーとロール練りが基本です。ニーダーだけで練りを済ませる場合もあるようですが、機能を創りこんだ高度なゴムは、ニーダーだけでは不可能です。

 

1979年に防振ゴム用に開発された樹脂補強ゴムは、ニーダーだけで混練し、コンパウンドを製造することもできましたが、バンバリーとロールを組み合わせて最適化したプロセスで製造されたコンパウンドと比較しますと、防振ゴムの評価において性能に大きな差が出ました。

 

引張強度と耐久寿命は、一般のゴム処方でもプロセスの差異が出ますが、損失係数の周波数依存性まで差のあるデータが得られたことにびっくりしました。すなわち、混練プロセスが変わると、別のコンパウンドができている、と表現すべき結果です。驚くべきことに分析しても差異はありません。組成は当然ですが、電子顕微鏡で観察したゴムの高次構造まで一緒です。しかし、性能が大きく異なるのです。今は分析技術が進歩しましたので、この差がどこから由来するのか解析できているのかもしれませんが、そのような情報をまだ目にしていません。

 

麺類、例えばうどんについて産地で味が異なるのは、組成だけでなくプロセス依存性が大きいのではないかと思っています。素麺は、三輪素麺が、うどんは讃岐うどんが味一番、とよく言われますが、加硫ゴムはブリヂストン製がコストパフォーマンス一番かもしれません。少なくとも新入社員時代に工程における品質管理の厳しさを見ていて、そのように感じました。

 

ゴム産業は3K職場でローテク、と言われますが、そこで製造されているゴムには、進歩した公知の高分子技術を駆使しても解明できていない世界があります。実際にゴム加工を体験し、痛い目に遭ってみて初めて、科学との小さな接点が垣間見えたりします。加硫ゴムは、分子1本のレベルからメソフェーズ、さらにはもっと大きな領域までの構造が複雑に絡み合って物性が創られてゆく材料と思っています。また、加硫ゴムの成形体を手がけている多くのメーカーが、コンパウンドから成形体まですべてのプロセスを自社で行っている理由もここにあるのかもしれません。プロセス内で創りこまれた機能はブラックボックス化されます。

 

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カテゴリー : 高分子

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