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2012.09/26 ガラスを生成して樹脂を難燃化(4)

新規開発された硼酸エステルには、バイプロダクトの水が含まれていましたが、水を取り除きますと粘度が上がり固体に近くなり、取り扱いに不便です。ポリウレタンの合成には、イソシアネート(この時にはTDI80を使用)とポリエーテルポリオール(この時にはPPG3000を使用)を用いますので、PPG3000にバイプロダクトの水も含めて分散し用いました。水は発泡剤としてバイプロダクトで含まれる量より多く添加しますので、発泡剤の添加量を調整し、バイプロダクトの問題を解決いたしました。

 

リン酸エステル系難燃剤として揮発しやすいTCPPを用いて、硼酸エステル変性ポリウレタンフォーム(発泡体)を何種類も合成しました。難燃性の評価を行ったところ、TCPPの添加量が0%の時に硼酸エステルの添加量を20%程度添加しても難燃性が上がらず(LOIで19程度)、硼酸エステルそのものは、ポリウレタンに対する難燃性能が低いことが分かりました。しかし硼酸エステルを3%程度添加し、TCPPを5%程度添加しましたら、空気中で自己消化性を示しました。この系において硼酸エステル0%の時に、TCPPは30%以上添加しないと自己消化性を示しません。同じレベルを達成するためにホスファゼンでも10%前後添加しなければなりません。驚くべき結果です。さらに燃えかすの分析を行いましたところ、添加したTCPPの60%に相当するリンが燃えかすの中にボロンホスフェートの構造で含まれていました。

 

すなわち、高温度で安定なガラス類似物質を燃焼時に生成させてリンを固定化し、ホスファゼン同等の高い難燃システムを開発することができたのです。ボロンホスフェートの生成機構を確認するために、200℃以上で100℃ステップで温度を上げ、状態観察を行いましたところ、400℃で黒光りしている薄膜が生成しました。化学分析しましたところリンの量が多いアモルファスのボロンホスフェートが生成しておりました。すなわち、硼酸エステル変性ポリウレタンフォームにリン酸エステル系難燃剤を添加しますと、燃焼時にオルソリン酸が揮発するのを抑制するため、難燃剤の添加量を減らすことができ、低コスト高防火性能の難燃システムを開発できることが分かりました。

 

硼酸エステルの合成は、2成分の化合物をただ100℃程度で撹拌するだけですから、内製でコストダウンも見込めました。この硼酸エステル変性ポリウレタンフォームは、他の物性にも優れたところが有り、低コスト高機能ポリウレタンフォームとして販売されました。始末書を書いたホスファゼンの問題にくじけることなくリベンジができたことは、技術者として大きな自信になりました。また、サラリーマンは始末書程度でへこむ必要のないことも学びました。多少居心地は悪くなっても、会社に貢献することを忘れなければ、チャンスがくるという人生訓を体得いたしました。

 

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カテゴリー : 高分子

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