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2012.10/15 ファインセラミックスフィーバー

ファインセラミックスフィーバーは、1980年代に旧通産省(現在の経産省)が中心になって推進した「ムーンライト計画」という国家プロジェクトがきっかけとなり起きた材料革命です。このイノベーションは世界中を巻き込みながら、やがて高分子材料も加わりナノテクノロジー開発の動きへとつながりました。1979年にエズラ・F・ヴォーゲル著「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が発表されていますから、このフィーバーは、まさに世界中の注目と期待を集めた日本発の材料技術イノベーションと思っています。

 

ムーンライト計画の目標は、セラミックス断熱エンジンの開発でしたが、1960年代の小ブームで技術開発されたセラミックス圧電素子やICパッケージの成功も加わり、セラミックスとは無関係の1000社以上のメーカーまでも巻き込み、まさにフィーバーと呼ぶにふさわしい状況となりました。このフィーバーの間にセラミックス断熱エンジンの事業化を見ることはありませんでしたが、ゴム会社で半導体用高純度SiCのプラントが稼働するなど、セラミックス事業とは無関係だった企業に新しい事業を育成する波及効果はありました。

 

無謀なプロジェクトであった、あるいは予算を削って2番をめざしていたら税金の無駄遣いにならなかった、という反省もあるでしょうが、このイノベーションが、目標未達にもかかわらず、長期的に見れば大きな成果をあげたことは、現在の材料科学や産業への影響、例えば自動車の技術一つ取り上げましても歴史的に検証できるのではないかと思っています。

 

セラミックス断熱エンジンという目標が無謀である、との意見は、プロジェクトの企画当初よりあったようです。そもそもお茶碗に使用される材料技術で過酷な動的部品を設計する発想自体が無茶苦茶、という意見も当時聞きました。しかし、いすゞ自動車の開発したセラミックス断熱エンジンは、アスカに搭載され公道を走ることに成功しております。トヨタ自動車はガスタービンと電気モーターを組み合わせたハイブリッドシステムをモーターショーで発表しています。このハイブリッドシステムは、ガソリン以外の燃料を使用でき、エネルギー効率を40%まで高めることが可能なので、実現しましたらバットマンカーのような車のイメージで電気自動車よりも面白い技術になるのではないかと思っています。

 

この小型ガスタービンの開発は、現在でも続けられており、20世末には、タービン入り口温度1350℃、熱効率は42.1%、1200℃1000時間以上の連続運転というレベルまで到達(1)しました。ムーンライト計画は失敗に終わりましたが、その目標は10年以上経って何とか21世紀になる直前に達成されています。1番をめざす技術者の執念の成果です。

 

バブルがはじけ、このような国家プロジェクトに対する批判も起き、さらに民主党政権になり、技術開発は2番に甘んじても予算を削減しようという思想も出てきて、未来が暗い時代になっています。ファインセラミックスフィーバーが単なるお祭り騒ぎでは無く、材料技術や産業界へ大きな影響を残した事実を冷静に評価しますと、今このフィーバーと同じようなお祭り騒ぎ、例えば創エネルギー大国日本を目標とするような夢のような企画を経済産業省が中心となり推進されたなら明るい未来が開けるのではないでしょうか。エネルギー大国をめざせる研究の芽は、すでに日本で幾つか生まれていますので一大フィーバーになるのではないでしょうか。ただし、めざすのは1番です。iPS細胞以外に地味ながら燻し銀のような研究が日本で育ちつつあります。

 

<参考文献>

(1)特集「300kw級セラミックガスタービンを支えた部材開発」、セラミックス(日本セラミックス協会誌),12月号,1999年

カテゴリー : 一般

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