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2012.10/24 iPS細胞発明における考えるプロセス

2012年10月21日の夜、たまたまテレビのスイッチをいれたところ、NHKの番組で、山中博士がiPS細胞を発明したプロセスについて、実験結果をまとめた資料とともに解説をしていました。この話題をもう一度取り上げてみます。

 

マウスやヒトの遺伝子の数は全部で約2万あるそうですが、研究を開始するときに、理化学研究所が2001年から無料提供を始めたマウスの遺伝子データベースを使い、そのうち、万能細胞の中でだけ働いているとみられる遺伝子を24個まで絞り込む作業を行ったそうです。興味深かったのは、この24個の遺伝子を候補として選び、まず1つ1つ遺伝子の機能を確認する実験を行い、何の変化も起きなかったが、選ばれた24個の遺伝子すべてをまとめて細胞に入れた思いつき実験を1水準同時に行い、その実験で変化が起きたので候補として選ばれた24個の遺伝子は正しかった、と判断されたそうです。

 

この実験結果の成功をヒントに、1個ずつ減らし、万能細胞ができなかったらそれが必須の遺伝子のはず、と狙いを定め、1ケ月ほど確認の実験を行い、4個の遺伝子を選ぶことに成功したとのこと。

 

この成功に至るプロセスで大切なことは、24個の遺伝子をまとめて細胞に入れた実験を行ったことである。この実験をこの段階で行うプロセスが科学的に正当性を持つためには、組み合わせた遺伝子の交互作用に負の作用が無く、いつでも特定の組み合わせで万能細胞ができる、という事実が科学的に証明されているときだけです。しかしこの実験を行った時に、iPS細胞が発明されていなかったわけですから、そのような事実が存在するはずもなく、それゆえ最初に注意深く1つ1つの遺伝子の機能を確認する実験を優先させたのです。

 

注意深く行った実験からは有益な情報が得られず、24個の遺伝子すべてを細胞に入れた大胆な実験で万能細胞の兆候が得られたのは、運が良かったからだと思います。もし遺伝子の交互作用に負の働きを示す組み合わせがあったなら、大胆な実験も失敗に終わったと思います。

 

この実験は科学的ではなく非科学的ですが、この成功の後のプロセスも非科学的プロセスで進められます。24個から1個ずつ取り除き、万能細胞ができなかったら、取り除いた1個は必須の遺伝子と判断する取り決めで実験を進めますが、この判断プロセスでは、取り除いた1個の遺伝子が独立に機能している場合と、交互作用が存在する時で、正の場合と負の場合を検討しなければいけないプロセスを省略しています。

 

実は24個の遺伝子から4個の組み合わせを選ぶ、という実験では、科学的に行った場合に10,626通りの実験を行う必要があります。10,626通りの実験で一つ一つ確認し、初めて科学的に検証された結果といえるはずです。それを不要な遺伝子を探すという科学的に証明されていない単純化された非科学的プロセスで効率をあげ成功に至っております。

 

さらに組み合わせが4個の遺伝子である、という事実も彼らの発明の前には無く、個数もわかっていなかったはずですが、非科学的なプロセスのおかげで、必須の遺伝子4個の組み合わせが簡単に選ばれてしまいます。

 

生化学分野は専門外なので邪推になりますが、科学的に追及していったならば、iPS細胞を作り出す遺伝子の組み合わせは、順列組合せの観点から他にもある可能性が残っているように思われます。24個の遺伝子を山中博士が選ばれた時点で遺伝子の働きを予測されていた、と考えると非科学的なプロセスでiPS細胞の発明を完成できたことを納得できます。彼らの考えるプロセスは、非科学的と言われるニュートンの行った思考実験により発明や発見の効率を上げる方法と同一だからです。

 

先日のテレビ番組を途中から見て一部不明点がありましたので調べてみましたら、あらためて非科学的考えるプロセスが、発明や発見を行うために重要なプロセスであると思いました。弊社の「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」や「問題は「結論」から考えろセミナー」では、ヒューマンプロセスに着目した問題解決法を公開しております。科学的に当たり前のことしか導かれないTRIZやUSITよりも易しい方法です。

 

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