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2012.11/07 ゴムと樹脂の混練技術の差異

高分子は実用化に際し、化粧品とか薬品とか特殊な分野を除き何らかの添加材を混合して用いる。ゴムならば最低限でも架橋剤(加硫剤とも言う)を添加しなければゴム弾性を示さない。高分子を合成時に添加剤を添加する場合もあるが稀であり、大部分は混練プロセスで添加剤を混合する。この時ゴムと樹脂ではプロセスが異なる。

 

前者は、バンバリー工程とロール混練をバッチプロセスで行う。後者は二軸混練機あるいは単軸混練機による連続プロセスである。バッチプロセスはコストが高いがゴムの場合に連続プロセスを用いることはできず、必ずバンバリーとロールを用いて混練する。昔は材料をフィードすることができないのでゴム練では二軸混練機を用いることができない、と言われたが、二軸混練機へゴムをフィードする機械も特許出願されているので、材料のフィードの問題は解決できている。一番大きな理由は物性を創り込めないため、と思われる。

 

これは実際にゴムの混練を経験するとすぐに実感できる。ゴムの物性は混練操作に大きな影響を受ける。パフォーマンスの高いゴムを創るには、それなりの手間暇がかかる。バンバリーは5分前後の工程時間だが、ロール混練は5分から10分、さらには30分もかける場合がある。二軸混練機の場合にはフィードしてから樹脂がでてくるまでの時間は5分程度なのでロール混練は効率が悪いのかというとそうではない。

 

樹脂をゴムと同様のプロセスで混練してみると、二軸混練プロセスとは異なった組成物となる。フィラーなど高分子への分散が物性へ大きな影響を与える場合には、それは物性の差となって観察されるが、低分子の分散の場合には、力学物性に差が現れない。しかし、高次構造を比較すると違いがあり、高次構造の影響を受けやすい粘弾性特性にはその違いを見ることができる。

 

早い話が力学物性に大差が無ければ経済性の優れた連続プロセスで行いたいが、ゴムでは力学物性に大きな差が現れるので、昔ながらのバッチプロセスを行っている、というのがゴムと樹脂でプロセスが異なる理由であろう。ゴムでは加硫剤の分散状態が物性に大きく影響を与えるので連続プロセスを用いることができないのであろう。

 

この20年普及してきたTPEは、ほとんどが連続プロセスで混練されている。またシリコーンLIMSもスタティックミキサーによる連続プロセスである。これは常識となりつつあるが落とし穴があることを忘れてはいけない。例えばシリコーンLIMSの場合、低分子を分散する場合に最適化された連続プロセスとバッチプロセスでは加硫後のゴム物性に大きな差は見られない(注)が、フィラーを添加した場合には両者に差が現れる。またバッチプロセスのほうがばらつきが少なくなる、などのアドバンテージがある。

 

高分子の混練が難しいのは、経済性という尺度を用いると材料ごとに最適な混練プロセスがある、という問題である。経済性という尺度をとれば、バッチプロセスが最も良いプロセスになると思う。なぜならオープンロールのプロセス条件の範囲は二軸混練機に比較し幅広いので、材料のパフォーマンスを最大にできる混練条件を探すことができる。カオス混合装置を発明した時にも比較に用いたのはロール混練である。

 

(注)シリコーンLIMSの場合に分散状態の物性に与える影響評価が難しい。理由は、加硫条件が分散状態で変化するためである。最適分散された材料を最適加硫条件で加硫した時だけよい物性が現れる。またばらつきも小さくなる。

 

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カテゴリー : 高分子

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