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2012.11/19 高純度SiCの威力

フェノール樹脂とポリエチルシリケート、有機酸触媒の3成分によるリアクティブブレンドを用いた高純度SiC前駆体合成法の発明(1982年6月に実験に成功し1983年10月高純度SiC化に成功)でSiCウェハーができることは、すでにSiCの昇華法の技術が公開されていたので可能でした。当時最も注目したのは、エンジニアリングセラミックスに世界が注目するきっかけになったプロチャスカの実験結果です。

 

プロチャスカとは世界で初めてSiCの常圧焼結に成功した人物で、βSiCにボロンを0.2-0.6%、カーボンを2%-4%助剤として添加すると常圧焼結が可能となることを示しました。特許が公開されるや否やGEからαSiCについて同様の権利が出願され、1年半後に特許論争が起きました。結局両方成立しておりますが、重要なことは常圧で焼結できなかったSiCが、常圧でできるようになったことでした。

 

SiCについて当時の技術は、加圧しながら焼結するホットプレス法や反応焼結法で焼結することしかできませんでした。ホットプレスであれば、カーボンだけ、あるいはボロンだけ、その他遷移金属の一部などの助剤が見つかっており、焼結が可能でした。反応焼結では助剤を使用せず焼結できますので高純度カーボンを適量含む高純度SiCができれば、高純度シリコンを含浸させ半導体治工具ができました。住友金属とのJVをスタートさせた1990年ころは反応焼結で半導体治工具を製造することからはじめたぐらいですから技術として普及していました。

 

高純度SiCが初めて無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)で合成されたときに研究所所員がビックリしたことは2つあり、一つは高純度を示すその色と助剤の量がプロチャスカが発見した量の半分以下でも焼結できたことです。そして助剤が存在しなければ猪股理論どおり常圧焼結ができませんでした。

 

前駆体法による高純度SiC合成法の良いところは、高純度カーボンと高純度SiCの混合された状態を作り出すことができ、そのままホットプレスすれば半導体用ヒーターを作ることができたり、反応焼結体を製造する原料になったりすることです。高純度SiCの合成法は発明から30年以上たちますが、SiCパワー半導体の普及とともに注目されています。本技術で学位を取得しましたが、学位論文の別刷100冊は2年で無くなりました。問い合わせもあることから電子出版の無料公開も考えたいと思っています。

 

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カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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