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2012.12/19 PETの射出成形

樹脂と各種成形との関係について教科書を調べてみても明確な説明がされていない。成形技術分野は主にハードウェアーの説明がほとんどである。特許を調べてみると様々な条件が記載されている。中には同じ条件であるにもかかわらず表現が異なるために成立している特許もある。

 

PETは射出成形しにくい樹脂で、主に押出成形やブロー成形用に使用されてきた。ある教科書では、射出成形できない、とまで明確に書かれている。PETの押出成形を20年近く前に体験したが、Tダイから出てくる樹脂を見て射出成形できないと直感した。粘度変化が激しいのである。また、この粘度が低くなるおかげでフィルム成形しやすい樹脂という言い方もできます。

 

特許にもPETに添加剤をブレンドし、温度に対する粘度変化を緩やかにする技術が出願されている。ただPETの射出成形の難しさは、粘度の温度変化を調整しただけではだめで、もともと遅い結晶化速度を制御しない限り、表面のきれいな成形体が得られない。すなわち添加剤の中には結晶化速度を速める化合物も有り、その結果粘度調整ができているのだが、これが実際の射出成形では結晶化しすぎて表面のなめらかさが阻害されたりする。

 

PETは結晶化速度が遅いのでブロー成形やフィルム成形に向いているのだが、結晶化しにくいわけではない。結晶化度の低いフィルムを延伸すればすぐに結晶化する。PETの射出成形を可能にするためには、結晶化速度を速めながら結晶化度が上がらないようにして粘度調整する必要がある。まったく結晶化しないように変性し粘度を上げるのも射出成形性を改善できる方法でそのような技術も存在するが、この場合には弾性率が低く柔らかい成形体となる。故にフィラーを添加して弾性率を上げなければ実用性の無い樹脂となる。フィラーを添加せず樹脂だけで弾性率の高い射出成形体を製造する技術の難易度は高い。

 

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カテゴリー : 高分子

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