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2013.02/04 弊社の問題解決法について<18>

問題を正しく設定できたと思われる場合でも、「問題」と「あるべき姿」や「現実」との整合性をチェックする作業は大切です。ただし、現実とあるべき姿や、そこから導かれた問題に対して分析的手法で整合性を吟味してはいけません。分析的思考方法については、情報工学において個人の資質に影響を受けることが問題になっています。問題解決法とは、問題解決の論理的な道筋を示すことが目的であり、問題の詳細な分析が目的ではありません。

 

本書で提案する問題解決法では、問題に対して分析的思考プロセスを使うことなく、あたかも刑事コロンボのようにひたすら「あるべき姿」から問題解決の道筋を追求します。それゆえ、あるべき姿の具体化が、本書の問題解決法では最も重要な作業となります。次に、「何が問題か」という作業では、あるべき姿と現実との乖離を検討し「問題」を設定していますから、問題とあるべき姿や現実とを改めてつきあわせる逆向きの作業が、問題設定の検証作業として重要になります。この作業は、三者の比較により進めます。

 

この整合性作業の進め方の一例として、「あるべき姿」、「問題」、「現実」の3列で構成された表を用いると簡便にできます。必要に応じて、あるべき姿と問題の間に「乖離の様子」という列を加えたものを使用すると、問題認識の確認もできるようになります。問題設定に慣れてくれば、ここまでの一連の作業を、この表だけで行うことも可能です。

 

余談ですが「何が問題か」を問い直す作業は、すでに着手し実行されている課題に対しても有効です。十分に吟味されずに実行されている課題が、本当に実行しなければならない課題であるとは限りません。

 

ドラッカーは著書「現代の経営」の中で「重要なことは答(問題解決案)を得ることではない。正しい問いを探すことである。」、「問題の定義と分類なくして事実を知ることはできない。」など、問題そのものをまず正しく把握することの重要性と、問題の分析ではなく、問題の定義と分類が問題解決のカギと説いています。十分に検証されていない問題から導き出された課題ならば中断して正しい問題の追及をあらためて行った方が問題解決の近道になります。

 

この「正しい問いを探すことである。」、すなわち「何が問題か」という金言と同じ意味の言葉を、筆者はタイヤ会社に就職した時に聞きました。新入社員の実習で、当時の技術担当常務(CTO)から、「君のプレゼンにある軽量化タイヤとは、どういうものか」と問われた言葉がそれで、今でも座右の銘として覚えています。

 

当時、オイルショックの影響で石油製品を扱う企業ではその対策に追われていました。タイヤ会社では低燃費対策と資源の消費削減の観点でタイヤ軽量化技術が、顧客創造のための急務の課題でした。多変量解析と有限要素法を駆使し目標スペックを満たす超軽量タイヤの試作に短期間で成功し自信を持って発表したのですが、CTOは、新入社員に向けて、まさに「何が問題か」という問いと同様の質問をされたのです。

 

タイヤという商品は、数値化されたスペックを満たしているだけでは目標品質を達成したとはいえず、信頼性を確保するためにスペックにできない長期の過酷なテストまで合格して初めて目標品質を達成した商品になることをCTOは新入社員に伝えたかったのです。CTOは、「最初に取り組むべき問題は、重量が軽いタイヤを作るということではなく、軽量化タイヤの信頼性設計とその評価をどのように行ったらよいか、というソフトウェアーの問題である。」、と説明されました。この体験談では、指導社員とその上司である管理職にタイヤを作る作業を中断し軽量化設計に関する評価技術開発を優先するようCTOは指示したのです。

 

このように「何が問題か」という問いは、問題解決法だけでなく、商品開発とはどのようなものか、ということを部下に教える時にも使える一言かもしれません。

                                              <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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