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2013.02/05 弊社の問題解決法について<19>

ところで問題の定義はできましたが、課題はまだ定義されていません。問題と課題の意味について、日常ではその区別が曖昧ですが、本書で使用する時には厳密に区別します。3.11の東日本大震災を話題に問題と課題の違いについて考えてみます。

 

東日本大震災は未曾有の規模であっただけでなく、福島原発の事故やその後の政府の対応のまずさなどが様々な問題を引き起こしました。次々と問題の連鎖が続く中、明確な課題である仮設住宅の設置や瓦礫撤去作業などが少しずつ進捗する様子をテレビは映し出しています。今テレビで放映されている仮設住宅建設や瓦礫撤去などを進めるのは、おそらく異論はないでしょう。現実の瓦礫の山を目にした誰もが、その作業の結果を具体的に予想することができ、作業完了後の姿について国民の理解が容易に得られる課題だからです。

 

すなわち、津波被害で発生した瓦礫の山をどうするのかという問題について、課題の一つは、生活環境を取り戻すために瓦礫撤去作業を進めることであり、この課題の迅速な実行に異論を唱える人はいません。しかし、他の課題について状況を調べてみますと、撤去して集められた瓦礫の処分やその費用を捻出することなど、解決の見通しがついていない課題もいくつかあります。ゆえに、生活環境を取り戻すことができても、瓦礫の山の問題が解決するわけではなく、他の課題もすべて解決されて初めて瓦礫の山の問題を解決できた、といえます。

 

ところで、「瓦礫撤去作業を進めること」という一つの課題を含む瓦礫の山の問題は、津波の被害という問題の一部の課題とみなすことができますが、それ自身は、先に述べましたようにいくつかの課題の集まりとなっています。さらに津波の被害という問題は、津波の被害対策をすること、と考えると、防災のためにしなければならないことになりますので、防災という問題の中の一つの課題ととらえることができます。このように問題から転化した課題というものは、問題を解決するためにしなければならない「こと」であり、問題を構成する「こと」という要素になりますので、問題と課題とは言葉の意味も、それぞれの位置関係も異なります。また、構成要素をすべて問題に転化し、問題が問題を含んでいるような複雑で大きな問題を考える問題のとらえ方は、問題を複雑で難しくすることになり賢明な方法ではありません。これに対して、含まれるすべての課題についてとるべきアクションとその結果が明確になっている問題は、たとえ課題が多くあっても、問題の見通しが得られている安心感があります。

 

ところで「問題」をあるべき姿と現実との乖離として定義しました。問題をこのように定義しますと、「課題」は、「現実」を「あるべき姿」へ一致させるためにしなければならない「こと」という定義になります。

 

課題が定義されますと、問題との関係が決まります。すなわち、問題というものは、問題に転化できる複数の課題で構成されるという構造を持ち、それぞれの課題の最終ゴールは、課題の目標達成に必要なアクションの実行で到達する「あるべき姿」になります。そして「問題を解決する」とは、問題の定義から「あるべき姿」と「現実」の乖離を無くすことであり、それを実現する方法とは、「現実」から課題の最終ゴールである「あるべき姿」へ、「課題」が解決されてゆく道筋を示せば良いことになります。ただし、それぞれの課題について目標達成のアクションが分からない場合には、その課題を問題としてとらえなおし、あらためて検討しなければなりません。

 

すなわち、本書で課題と表現したものは、「あるべき姿」へ向かう目標を達成できるアクションがわかっている前提で話を進めます。目標を達成するためのアクションがわからない課題は、すべて問題として扱うことにいたします。このような扱いで、問題の構造をアクションが明確になっている課題を用いて表現できた時に、問題解決の見通しが得られた、とみなすことができます。

 

ところで問題の構造の中には、一つの課題を解決すると他の課題も解決され、その結果を受けて別の課題も解決されるという、あたかもドミノ倒しのように課題が解決されていく構造もあります。絵に描いた餅に終わるかもしれませんが、このような解決の道筋が単純になる都合の良い課題を工夫して、課題のゴールとなる「あるべき姿」にむけて課題の組み替えを自由自在に変更できる仕組み、あるいは課題を問題に転化できますので、問題を構成する課題の数が少なくなるように複数の問題にわけ、一つ一つの問題の見通しを良くする工夫などを問題解決法に取り入れれば、「考える技術」として新しい試みになると思います。

 

また、このような問題解決法において、課題と問題の関係は、課題が問題を構成する一要素というだけでなく、課題の組み合わせが問題解決の難易度に影響を与えるという特徴を持ちます。さらに、すでにアクションまで具体化されている課題で構成された問題は、問題認識の共有化を容易にします。

 

                   <明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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