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2013.02/24 弊社の問題解決法について<38>

科学誕生以前の「考える技術」の歴史について調べる時に、宗教や哲学的な内容は本書の目的から少しはずれますので、少なくとも「現代に影響を与えた、科学的な成果を導いた考える技術」というフィルターをかけて歴史を見る必要があります。この目的に近い書として、先に紹介しました「マッハ力学史」が力学の発展史に限定されますが参考になります。

 

「マッハ力学史」には、「本能的知識が、科学的あるいは任意的認識、つまり現象の研究に先行していた」、と記述されていますので、科学成立以前のはるか昔には現代のような考える技術というものが無かった、と思われます。「考える技術」だけでなく、今日の意味における力学の理論なども存在せず、それらが考えられる以前には実物の道具や機械に関する経験や知を伝承しながら進化を進めてきたようです。

 

それでは、いつ、どこで、どのような仕方で、科学の発展が始まったのでしょうか。科学の成立前後には、理論を整理するための技術、考える技術が生まれたはずです。マッハは、「科学成立以前の歴史の中にその史実を調べることは困難」、と述べています。マッハの考察によれば、科学の無い時代には、経験の本能的蓄積が問題の解決を可能にしていた、とのことです。

 

彼は、「欲求の満足をめざす人間は、無反省に本能的に行った経験を無思索的に・無意識に用いる」、と表現しています。この表現から問題を前にして経験を無思索的に・無意識に働かせて考えている時に、それまでの経験に基づく当たり前のアイデアを出すという行動は、人間が昔からとってきたことであり、問題を前にした時の人間の本能と思われます。

 

換言すれば、当たり前のアイデアを出しながら十分に経験が蓄積されたところで無意識に能力が向上し、それまでの経験を超えるアイデアを発案し進化してきたのが人間の歴史ではないかと思います。科学が誕生する時には、恐らく人類の進化のスピードがそれまでの時間の流れに比較し加速度的に早くなっていたと思われ、当たり前のアイデアしか出せない経験不足を補うために考える技術を生み出したのかもしれません。

<明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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