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2013.04/16 SiC繊維

SiC繊維は故矢島教授により発明されたセラミックス繊維である。炭素繊維は空気中高温度で使用できないが、SiC繊維は1200℃前後の空気中でも使用可能である。SiCの焼結体は1400℃前後まで使用可能であるが、SiC繊維は繊維内部に構造欠陥ができるため1200℃前後までである。この耐熱性を上げるために長年努力がなされ、短時間であれば焼結体に近い温度まで使用可能な繊維となった。

 

このSiC繊維はポリジメチルシランを炭素繊維と同様のプロセスで処理して合成される。原料が高価なので炭素繊維より収率が高いにもかかわらず高価である。SiC繊維が炭素繊維よりも優れている点は、空気中における耐酸化性と表面の性質である。例えばアルミの補強材に炭素繊維を使用すると金属間化合物が生成し界面が脆くなるがSiC繊維の場合にはその問題が無くなる。炭素繊維に関するこれらの欠点は表面の性質を変性することができれば解決できる。

 

フェノール樹脂繊維のカイノールはその性能に比較し安価でコストパフォーマンスが高い繊維である。この繊維にTEOSを含浸させると繊維内部にTEOSが分解しながら拡散し、表面から内部にかけてTEOSの分解物が傾斜組成で分散する。これを1600℃前後で焼成するとSiCが傾斜組成で分散した炭素繊維ができる。但し、反応途中でシリカの還元反応がおきるので焼成条件を見つけるのが大変である。

 

このような複雑な焼成条件を見つけるには熱重量分析(TGA)を利用すると便利である。速度論の解析まで行うことができれば、焼成条件を理論的に机上で決めることが可能となる。多くの場合TGAで得られた曲線の形から速度論的解析結果も予測可能なのでTGAのデータだけでも反応条件を決めることは可能である。

 

カイノールへTEOSを含浸させるにはTEOSとカイノール両者の良溶媒を用いると良い。両者の良溶媒を用いるとカイノールへ効率よくTEOSを含浸させることができる。TEOS100%の溶液へカイノールを浸漬させても傾斜組成の繊維はできるが、傾斜組成となっているのは表面付近だけである。

 

傾斜組成のSiC繊維の強度は、内部までTEOSを含浸させた条件が最も良かった。この条件で製造したSiC繊維とアルミ粉を用い、ホットプレスでSiC補強アルミニウムを製造したところ、文献で報告されているSiCウィスカーで補強したアルミニウムと同等以上の物性を持った複合材料が得られた。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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