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2013.04/24 成功する技術開発(1)

材料開発をセラミックスから有機高分子まで32年間研究開発した経験から、科学的に完璧に否定されない限り、技術開発は新しいことにチャレンジすべきだ、という考え方に至った。現代の科学で完璧に否定される技術はおそらく実現する可能性は低いが、科学で完璧に否定されない技術は実現する可能性がある。さらにその技術が完成したときに新しい科学の世界が広がるので挑戦的技術開発は人類にとって大歓迎すべき活動である。

 

昨年ノーベル賞を受賞したiPS細胞を創る技術は、それが実現するまでできるのかどうか科学的に不確かな世界であった。一つ一つの細胞について確認する作業が続けられている時にトリッキーな実験で一気にヤマナカファクターが完成した。ただしこの時点でそれはiPS細胞を創り出す技術であったが、ヤマナカファクターの研究が進むにつれて科学として完成しつつある。iPS細胞を創り出す技術ができあがってみると、ヤマナカファクターが4個の遺伝子の組み合わせであったので科学的アプローチをまじめに続けていたら膨大な時間がかかったであろうことが理解された。だから山中博士が最初に行った非科学的な実験を否定する人は誰もいない。むしろそのチャレンジ精神を称えている。

 

ヤマナカファクターには及ばないが、高純度SiC合成技術に用いる前駆体高分子の発明も非科学的方法で開発された。ポリエチルシリケートとフェノール樹脂はフローリーハギンズの理論から相溶しない組み合わせと言われていた。フローリーハギンズの理論を科学的に完璧であると認めるとこの組み合わせで均一なポリマーアロイを合成することは不可能なので技術開発しても成功の可能性は極めて低い。しかし、フローリーハギンズ理論は未だに科学的理論とは言いがたい。ゆえにポリエチルシリケートとフェノール樹脂を均一に混合したポリマーアロイの技術開発は成功する可能性があり、それが成功すると新たなポリマーアロイの技術の世界が広る。また、この技術の成功で、もしフローリーハギンズ理論が科学的に正しいならば、科学的な理論として不足している部分を明らかにできる。

 

高純度SiC前駆体の発明を行った時代にリアクティブブレンド技術はポリウレタンRIMのような低分子どおしの反応で用いられていた。これを高分子で行ったらどうなるか考えてチャレンジしたところたった1日で成功した(注)。山中先生と同じでただひたすら反応条件を変えて実験を行い均一になる条件を探したのである。300種以上の組み合わせ実験を行い、最適条件を見いだした。この30年前の実験の成功でフローリーハギンズ理論に対する疑問とカオス混合技術の可能性が結びついた。(明日に続く)

 

(注)ポリエチルシリケートとフェノール樹脂、反応触媒の3種類を混合し、透明な物質になる条件を求めれば良いので、1処方について実験開始から1分で結論は出る。実験準備も含め1日で500種類実験ができるという計算で実験を開始したが、朝9時から始め、ただひたすら撹拌実験を行い技術が完成したのは夜10時であった。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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