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2013.05/19 成功する技術開発(24)

高純度SiCの前駆体ポリマーは、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を触媒存在下で均一混合してできる。このような高分子前駆体を用いてセラミックスを製造する、という概念で世界で初めてSiC合成を成功させたのは故東北大教授矢島先生である。1970年中頃にポリジメチルシランを原料にSiC繊維を合成された。しかし、これは1種類の高分子で実現した技術であるが、2種類の高分子を混合してセラミックスを合成するというゴム会社の高純度SiC合成技術は世界初めてであった。

 

そもそもポリエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせはχが1以上なのでフローリーハギンズ理論では均一混合できない組み合わせである。さらにポリエチルシリケートは無機高分子であり、全く異なる性質の高分子を均一に混合する技術は難易度がかなり高い。科学的に考えていたらアイデアが出てこない組み合わせである。

 

ただし技術は科学と異なるので、科学的にアイデアが出てこなくとも技術的に考えてアイデアを出すことはできる。科学は真理を追究するのが使命だが、技術は機能実現が使命である。科学と技術は使命が異なるので、現象に対する取り組み方も異なる。しかし、学校では教えてくれない困った事情がある。弊社の事業目的の一つに技術の伝承があり、その目的のため研究開発必勝法プログラムを販売している。このプログラムでは技術の視点から問題を考える方法を提供している。

 

技術で現象を捉え考える、とはどのようにするのか。E.S.ファーガソンもその著書のタイトルに使用している「技術屋の心眼」を使うのである。詳細は弊社のプログラムで方法を詳しく説明している。ここでは、SiCを高分子前駆体で合成する方法を考えだしたプロセスを簡単に事例として紹介する。弊社のプログラムを受講すれば誰でもできるようになる簡単な方法である。

 

SiCは、シリカ還元法で合成される。高純度SiCを合成するためには、シリカとカーボンが均一に分子レベルで混合された状態を創り出せばよい。矢島先生のポリジメチルシランはSiとCが分子内に存在するので理想的な状態であるがコストが高い。コストを下げるのは技術屋の仕事である。

 

同一の機能を達成するための一つの方法として、Siを含む安価なポリマーとCを含む安価なポリマーを分子レベルで均一に混合できればよい。前者は当時800円/kgで購入できるポリエチルシリケートがあり、後者は400円/kg以下のフェノール樹脂が存在する。

 

この2種のポリマーの組み合わせはχが1以上なのでフローリーハギンズの理論から相分離する組み合わせとなるが、両者が反応して均一になった状態を心眼で見ることができる。するとできあがったポリマーアロイの中に触媒を見いだすことができる。その触媒はポリエチルシリケートを加水分解する酸触媒であり、またその酸触媒はフェノール樹脂を架橋する触媒でもある。ここまで来れば、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂、酸触媒という三元系が高純度SiC前駆体合成に必要であるというアイデアが自然に出てくる。

 

このアイデアを創出する過程を誰でもできるようにしたのが、研究開発必勝法プログラムである。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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