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2013.06/01 科学と技術(脱原発国家ドイツのエネルギー戦略)

昨日ウィメンズプラザで開催された熊谷徹氏の講演会を拝聴した。氏は早稲田大学出身元NHKドイツ特派員などを勤められてベルリンの壁崩壊時にドイツに帰化、現在はフリーで活躍されているジャーナリストである。ドイツに関する著作が13冊ほど。久しぶりにジャーナリストらしい講演を伺った。

 

恐らく日本人ならば現在ドイツに関しては彼に聞け、と言っても過言ではない。日本人の視点であるにもかかわらず、偏らず世界の実情とのバランスもとれた感覚の持ち主である。話題が当方の関心事で情報をそれなりに持ち合わせていたので余計にジャーナリストという職業をまざまざと見せつけられたような状態であった。なぜなら当方が収集していたのは新聞情報がメインで二次情報だったからである。新聞情報の大元の素材を見せつけられた講演会であった。

 

ご存じのようにジャーナリストの情報はそのまま本人の名前とともに公開される場合とジャーナリストの記事を新聞社が加工して新聞社の情報として出てくる場合がある。2年前のドイツの脱原発の話題であったが、なぜか鮮度が落ちていなくて新たな情報に接した感動すらあった。

 

さてその中身であるが、大枠はすでに新聞情報でご存じのように2011年3月11日(小生のコニカミノルタ最終出勤日。)に福島原発事故が発生して直後の3月15日には、ドイツ連邦政府が「原子力モラトリアム」を発令、80年以前に運転を開始した7基の原子炉を停止、7月8日には原子力法の改正案など7つの法案を可決し、急速に脱原子力政策へ転換した背景と今後のエネルギー戦略の話題である。

 

新聞報道にもあったように原子力推進派のメルケル首相が市民の視点で原子力政策を見直した結果であるが、そこにはなぜ迅速に動けたのか、という疑問が残っていた。新聞やニュースでは詳しく報道されていなかったパラダイムシフトがドイツで起きていたのである。講演者の表現では、次のようであった。

 

「原発で大事故が起きても、被害の規模を特定し限定できるという考え方は、福島事故以降説得力を失った。」

 

「福島事故は、この発電所が作られた時に想定されていなかった規模の自然災害によって発生した。この事実は、技術的なリスク評価に限界があることを白日の下に曝した。現実は、地震や津波についての想定をやすやすと越えてしまうことがあることもわかった。」

 

日本で発生した事故であったが、日本よりも政治家はじめすべての国民(アンケート調査結果)がこのようなパラダイムシフトと呼んでいい考え方になったのである。日本人はどうであろうか。ちなみにドイツでは日本のような津波の心配どころか地震の心配の無い国である。その国が、である。

 

講演の詳細レポートを機会があれば公開したいが、この講演の感想を一言で述べれば、日本人は未だに科学の世界で原子力をとらえているが、ドイツ人は技術の世界で原子力をとらえていた、と考えさせられた。地震や津波の発生確率を元にした対策で充分と未だに考えている科学的思想に固まった原子力技術者がいるかぎり、原発事故は日本でまた起きる可能性は高い。

 

原発を科学的判断でとらえるのは間違っており、技術の視点で考えなければならない。技術の視点においてリスク評価に限界があることを本当の技術者はよく知っている。だからフェールセーフという設計の考え方がある。それでも100%の安全は保証されず常に誤差がリスクを発生する、というのが技術者の確率に対する考え方である。これは田口玄一先生の品質工学の根幹にある教えでもあり、SN比を重視した技術開発の重要性でもある。

<明日へ続く>

 

カテゴリー : 一般 学会講習会情報

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