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2013.06/07 科学と技術(タグチメソッド2(誤差))

科学的統計の犯した最大の罪は福島原発の事故である。新聞報道によれば原発の安全に関する設計は科学的統計に従って行われている。タグチメソッドを用いていない。そもそも防波堤の高さを科学的な確率で決めておいて、それで安全としていた技術者の感覚を疑う。一部センサーの電源がはずされていたところがある、という報道から日々の管理の姿勢まで見えてくる。女川原発で大きな事故とならなかったことと合わせて考えると原発システムの安全設計における思想に問題があるのだろう。

 

福島原発の事故の経緯を見ると、防波堤を越える津波がきたときの対策がとられていなかったことは明らかで、外部電源コネクターが電源車のそれと合わなかったなどミスを含め事故が人災であったことを示している。対策をとってはいたが、それが機能しなかった、というのは詭弁である。ロバストネスを高める設計の考え方が無かっただけである。タグチメソッドがこれだけ日本に普及していてその設計思想を知らなかったではすまされない。

 

タグチメソッドと科学的統計との違いは、誤差に対する考え方にある。すなわち防波堤の高さを津波発生確率から決めていたが、発生確率の低い大津波がきたときにどうするか、という誤差の事象に対する考え方にある。福島原発では、それが確率が低いために発生しない(誤差が極めて小さいために0と見なす)、として処理されたという。その結果防波堤が破れたときのロバストネスが極めて低くなっていた。

 

タグチメソッドでは防波堤も含めた安全システムのロバストネスを高めるように設計する(誤差が小さいと0と見るのではなく、誤差の存在を認めそれを小さく制御できる因子を探して対策を取る)。

 

今日本の技術開発の世界には誤差に関して二つの思想が入り乱れている。一つは旧来の科学的統計学の誤差の考え方で、もう一つはタグチメソッドのSN比の考え方である。科学的統計学の誤差の考え方、偶然誤差として捉える考え方が如何に危険な思想であったかは福島原発の事故で証明された。今技術者は全員SN比で誤差をとらえる、すなわち誤差を必然誤差として捉える重要性に気がつくべきである。偶然誤差では確率が極めて低いときに0とする方法が認められているが、タグチメソッドでは誤差の存在を認め、それを限りなく小さくする技術開発が求められている。

 

技術開発の自然な流れを見てみると、理想の値を目標に技術開発を行っていることに気がつく。すなわち「あるべき姿」を目標にそれを行っている、ということもできる。測定値の平均値を目標に技術開発を行っていないのである。

 

ゆえに、その技術開発で現れる誤差というものは、この理想の値との差を意味している。技術開発とは、この理想の値との差を最小にする活動なのである。技術開発では工程管理と異なり統計学で問題となる誤差の分布を仮定する必要はまったく無いのである。

 

誤差の分布を考えなくとも、理想の値との差を最小にすることは可能である。すなわちタグチメソッドでは、このことをSN比を上げる、あるいは改善すると言っている。そしてSN比を改善するために行う多数の実験を効率的に行うために直交表を使う。これがタグチメソッドの基本的な手順である。だから田口先生は、タグチメソッドは統計ではない、とよく力説されていた。

 

<明日に続く>

 

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