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2013.06/18 科学と技術(混練1)

「混ぜる」技術は存在しても「混ぜる」科学は存在するのだろうか。ゴム会社で研究開発を担当したときの疑問である。「混ざった状態」を議論する科学は存在している。例えばパーコレーション転移がそれだ。ボンド問題とサイト問題として数学者の間で議論され、それぞれの問題で閾値が異なっていた。要するにパーコレーション転移は確率過程の現象である、ということまでは真理として当たっているが、自然現象がボンド問題あるいはサイト問題のいずれに相当するのか分かっていないし、それが分かったところで現実の技術に対する影響はほとんど無い。

 

粒子とバインダーの間に全くの相互作用が無い状態では、パーコレーション転移が確率に制御されて発現する現象という真実は重要である。パーコレーション転移を利用した技術では、ロバスト設計が不可欠である。これを感度重視で設計を行った場合には大きなペナルティーを被る。ロバスト設計を行えばわかるが、閾値近辺の配合処方は、最もロバストが低い処方となる。ゆえにロバストを高めた処方は、この科学の真実を前提としたときに、閾値の手前か転移したあとの配合処方となり、閾値周辺は危険領域となる。

 

閾値周辺の配合処方で配合を組み立てたいときにどうするのか。微粒子のパーコレーションの場合では、微粒子の凝集体が分散した状態で設計することになる。すなわち微粒子の凝集体ではパーコレーション転移が完了した安定状態になっており、その凝集粒子を一単位としてパーコレーション転移が起きる前の割合に配合を組み立てると閾値周辺の配合処方をロバスト高く組み立てることが可能となる。

 

このようなシステム設計を実現できる混練技術はどのようなものか。ここで「混ぜる」過程について、非平衡状態の科学がどこまで有益な情報を提供できるかという問題がある。この科学は難解であり、さらにその研究成果として得られている真理は特定の前提条件を必要としている。すなわち技術を考えるときにこの分野については、「混ざった状態」の科学の制約を受けるが、「混ぜる過程」の科学については、経験を上回る成果は無いのである。すなわち、制御された凝集粒子を用いてパーコレーション転移の制御を混練過程でできるかどうかという議論は無意味で、「混ざった状態」を心眼で見抜き、それを実現する配合処方と既存プロセスの組み合わせで汗を流しながら実験するのか、あるいは奇抜なプロセスを発明して楽をするのか、やってみなければ分からない世界である。但し、蓄積された経験があればできるかどうかの確度の高い予測は可能である。

 

 

 

カテゴリー : 一般

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