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2013.06/24 科学と技術(混練7)

昨日外部から調達していたコンパウンドで満足な製品ができなくて困っていたが、コンパウンドメーカーからは、親切にも成形技術に問題があると言われた体験を書いた。品質問題が起きると、コンパウンドメーカーは、成形技術のどこが悪いか、ということを親切に教えてくれる。そのかわり混練技術の問題を指摘しても素人には分からない、といなされる。

 

しかし製品化スケジュールに余裕が無かったので、成形技術の見直しを中断して、二軸混練機の中古機を導入し3ケ月間でコンパウンドから製品までの生産ラインを立ち上げた話を紹介したが、これは同じ事を実行しても異なる結果が出る、科学では許されないことであるが、技術ではしばしば生じる事例だ。

 

同じ二軸混練機を使用しているが、異なる品質あるいは異なる機能の樹脂ができる、科学的にあり得ないことが、技術ではその前後のわずかな方法や手順の違いで劇的な品質の差を創り出すことができる。技術を理解していないとわずかな方法や手順の違いの意味がわからず、すべて同じに見える。

 

科学を知っていても、細かいノウハウの科学的な意味を理解できていなければ多少の違いを見落とす。技術を知らない、と言う言葉はこのような場合に使われる。科学で解明されていない現象が多いプロセスでは技術のブラックボックス化が有効である。

 

技術者は、科学的な解明がされていない現象でも体系化された一つの方法として機能実現のために使いこなせなければならない。科学的に解明されていなければそれを実行できない、というのでは技術でイノベーションを起こすことなどできない単なる職人である。

 

科学的な理解ができていないのに、単なるノウハウとしてその方法を実行しているのなら、それこそ職人ではないか、といわれるかもしれないが、体系化された知識の無い職人にはイノベーションを起こせない。

 

機能実現の方法について体系化された知識を持っているからイノベーションを引き起こすことができ、そこが技術者と職人の違いである。機能実現の方法を知識として体系化するには、現代であれば体系化するための科学的知識が要求される。科学的知識をどれだけ持っているかどうかは、技術者と職人の分岐点である。

 

ゴムの混練ではロールを使用する。生産ラインではバンバリーで5分ほど混練し、その後ロール混練を行うが、バンバリーを使用せず、すべてロールでゴムの配合を仕上げることもできる。研究段階の試作はバンバリーを使用せず、すべてロールだけでゴムの配合を作り上げることがある。

 

職人は、長年の経験とカンで研究用のプロセスを組み立て、ロール温度や回転数、返しの方法など二本のロールで使用可能なあらゆる技から適した方法を選択するが、技術者はゴムの配合と分析データその他を見比べてプロセス条件を決める。

 

同一配合でも、しばしば職人が混練したゴムを用いた成形体の物性が良かったりする。科学的に説明ができない場合には、技術者が職人から「技」を学ぶ機会ができ、それが知識として整理され技術が伝承されてゆく。科学の知識が論文で伝承されるように、メーカーにおいて職人の「技」を知識として伝承するのは、技術者の責任である。

カテゴリー : 一般 高分子

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