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2013.07/02 科学と技術(混練15)

昨日まで紹介した光学用ポリオレフィン樹脂と特別な重合条件で合成したポリスチレン樹脂との相溶実験は、実験用の小型バンバリー(300cc)を用いて5分程度の混練で実現した結果である。恐らく一般の生産で使用されている二軸混練機でも再現できるだろう。

 

高分子を相溶させると、異なる物性の材料が得られる。二軸混練機は反応装置の視点で扱われていないが、この視点でプロセシングを開発すれば、新たなプロセシング技術を開発できる可能性がある。

 

反応という概念は共有結合が生成する場合に用いる、といわれているが、イオン反応でイオン結合の生成や、錯体化学では配位結合の生成の場合にも反応という言葉が使用されている。二種の異なる高分子の相溶では結合生成こそしないが、単なる「混ぜ物」ではない。技術的視点から「反応して合成された」高分子という見方もできる。

 

このようなポリオレフィン樹脂とポリスチレン樹脂のように1次構造を工夫し混練して全く別物が生成する現象を見ると、混練で相溶させるプロセスを「合成」という機能で捉えることで新たな技術が生まれる可能性を感じる。E.S.ファーガソンの言葉を借りれば、「心眼」で現象を眺めると新たな技術が生まれる、と表現される。

 

あるいは、昨今コンセプトの重要性がさけばれているが、2種の高分子を混練するプロセスをどのようなコンセプトで開発するのか、と考えることで新たな技術を生み出すことが可能となるので、まさに「コンセプト」という言葉の力が生きる視点である。

 

樹脂補強ゴムは、バンバリーとロールを用いたバッチプロセスで生産されていた。不思議なことにゴム業界ではバンバリーとロールを単なる混ぜる機械とみていない。ゴム(高分子)を変性させる装置=合成装置という見方をしている。歴史的にゴムの混練プロセス開発は一種の合成という見方で行われてきた可能性がある。これは混練プロセスだけで工程は完結せず後工程の加硫反応で成形するプロセスまで含めて考えなければゴム業界で材料開発をできなかったためだろう。

 

樹脂業界では、樹脂を混練するメーカーと成形するメーカーが別々に存在する。ゴムのように混練から成形まで一気通貫で行うメーカーは少ない。しかし、二軸混練機の世界にも合成あるいは反応というコンセプトで最近面白い技術が生まれている。

 

1990年代に樹脂補強ゴムとは異なるコンセプトで、高靱性の樹脂や、射出成形でゴム弾性を持つ成形体が得られる動的加硫技術が発展した。樹脂補強ゴムでは、加硫反応を行わなければ成形体ができないが、動的加硫技術による樹脂では、混練中にゴムの加硫を完了しており、成形プロセスで加硫反応を行う必要が無い。この樹脂を用いて射出成形でゴム状の成形体が簡単に得られる。

 

この技術は、1970年末に登場した熱可塑性エラストマー(TPE)と同様の用途に使用されている。すなわちTPEのコストダウン技術として動的加硫ゴムは生まれた。TPEはゴムと樹脂を反応させて製造する、文字通り昔ながらの「反応」や「合成」プロセスによる材料である。そしてTPEを用いて射出成形により簡単にゴムの成形体を製造することができる。加硫反応がいらない便利な材料である。

 

このTPEと同様の用途の材料を二軸混練機で「合成」できるようにしたのが動的加硫技術である。ゆえに2種の高分子を混練して、変性された材料ができる過程を広義の「合成プロセス」ととらえる事により、新たな材料技術が生まれる可能性がある。たとえ科学的に正しい言葉の用い方ではない、と否定されても機能を追求する立場の技術では、そのような概念の拡張は重要である。

 

また、ゴム量を10%程度にして1μm以下のサイズで分散すれば高靱性の樹脂が得られる。3年前再生PET樹脂を用いて環境対応樹脂を開発した時に動的加硫技術を使ったが、加硫剤の選択と混練温度が重要な因子だった。加硫剤としてフェノール樹脂を使用し射出成形可能で難燃剤を用いなくても(可塑剤としてリン系化合物が3%程度入っているが)UL-94V2に合格する射出成形可能なPET樹脂ができた。

 

 

*新しい混練技術を開発いたしました。関心のある方は、弊社へお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 高分子

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