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2013.07/05 科学と技術(静電気1)

静電気の科学は、進んでいるのか遅れているのかよく分からない分野である。例えば帯電現象が科学的に解明され、その機構も実験結果とともに理論的に説明されているのは金属で生じている現象だけである。このように書くと直感的に不思議に思われるかもしれないが、金属でも帯電するのである。

 

20年ほど前、武蔵野工業大学で帯電現象の可視化技術が開発された。ピエゾ素子を用いた装置で微小電荷の動きを検出し、コンピューターでその時間変化を記録し可視化しているのだが、残念なのは実験結果を厳密に説明できる場合ばかりではないのだ。評価法は恐らく間違っていないのだろう。しかし測定された現象について全てをうまく説明できない。

 

測定法の問題では無く高分子材料というサンプルに問題があるのだが、そのような問題があるためかT先生は評価「技術」として説明されていた。科学的に厳密に説明できなくとも、この評価技術のおかげでフィルムの帯電現象を眺める技術者の心眼に自信ができた。そしてそれまで直流を用いて評価されていたフィルムの帯電防止に関する評価技術を見直すきっかけになった。

 

絶縁性の樹脂フィルムの帯電現象は複雑である。いろいろと現象を眺めていると教科書に書かれているような理想的な電荷の偏りにはなっていないと思われる。その可視化技術の評価結果によれば、帯電した一部の電荷はフィルム内部の中央あたりに長い間いつまでも滞留している。また、表面の単位電荷の拡散は、帯電防止処理がされていても、その拡散速度は意外に遅い。これはフィルムの表面比抵抗の測定で、経験的に一定時間放置してからデータを読まなければならないことと対応している。精度の高い電流計を用いれば電場をかけてから電流が安定するまでの様子を見ることができる。

 

フィルムの帯電防止処理方法あるいはフィルムの体積固有抵抗が異なればこの測定状況は変化する。そのためフィルムの表面比抵抗は、ISOの規格に従い測定しなければならないが、規格通り測定しているから帯電現象を説明できる評価がうまくできているのか、というとそうではない。科学的には、材料の一特性として規格通り測定されたデータに過ぎないのだ。フィルムの帯電防止に関するこのスペックを用途に応じて変えなければならない原因にもなっている。

(明日に続く)

 

*フィルムの帯電防止処理に関し、ご相談事項がございましたらお問い合わせください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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