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2013.07/11 科学と技術(静電気7)

昨日つい一言を書いたために質問が来た。マトリックス樹脂の設計を行うことと高抵抗領域の話が見えない、という内容である。熱心な読者が増えてきた。

 

今後、高分子の相溶についても書く予定にしており、その時に書く話題として考えていた。昨日までマトリックスを構成する高分子材料の凝集粒子へ与える影響について触れてこなかったが、凝集粒子の制御に高分子の相溶と相分離という現象を活用している。

 

カーボンと絶縁体である樹脂を用いて、高抵抗でも放電しやすく、帯電しやすい材料に設計し、それを自由自在に制御するためには、カーボンの凝集状態とその分散状態が制御できなければならない。

 

この制御のためには、マトリックスが単相では不可能でカーボンが分散しやすい樹脂と分散しにくい樹脂を組み合わせて複合材料で設計して機能を実現する。もう少し詳しく書けば性質の異なる樹脂を相溶させてわずかに生じるスピノーダル分解を制御して凝集粒子の凝集状態を制御する。分散状態はスピノ-ダル分解速度が組み合わせる高分子で異なることを利用する。

 

これも科学的な証明はできていないが、このように考えてベルトを作ったら妄想通りにできた。「妄想」と表現したのは周囲が「妄想からできた技術」と評価したからだ。妄想だから気兼ねをしないでもう少し書くと、フローリーハギンズ理論は間違っていないかもしれないが鵜呑みにするな、ということだ。あの理論は高分子材料設計の自由な発想を阻害する場合がある。ただ、できあがった内容について科学の香をつけて説明するときには便利な理論である。

 

どんな高分子でも条件が整えば相溶する可能性がある(注1)。ただその状態は安定ではないのでいつか相分離する。そしてその相分離はスピノーダル分解で進行する。これを無限に遅くするには、それぞれの高分子のTg以下に急冷すれば良い。技術の世界では高分子の相溶と相分離は混練技術や成形技術、冷却プロセスなどで制御できると考えた方が機能実現のための手段が広がる(注2)。

 

複写機のベルトは高抵抗であればあるほど網点再現性が良くなる、と学会報告で聞いたことがあり、また実験データもそのような傾向があった(注3)。しかし、高抵抗のベルトでは放電が難しくなる。このあたりの材料設計の考え方は昨日書いたとおりだが、その実現方法を本日説明した。

 

 

(注1)この考え方には異論があるかもしれないが、この20年間に出会った現象はこの仮説を支持していた。技術の立場ではこの考え方で発想の自由度が広がる。例えば水と油を界面活性剤を添加しないで高速撹拌すると一瞬色が薄くなる現象がある。この実験では、教科書に書かれていない、いろいろな知見が得られる。転職により新しい知識を勉強しなければならない状況になり、教科書を読みながらつまらないことでも疑問に思ったことを実験し確認する作業を誠実真摯に行っていった。その結果、教科書は自然現象を科学という一側面からしか見ていないことを理解できた。科学では見えていないが面白い現象が身近な世界にまだ多数存在する。夏場だからお化けの話では無い。繰り返し再現性も有りロバストの改善も可能な現象である。技術開発の可能性が広い、ということを感じると同時に「科学は自然を理解する為の哲学である」と言われている意味を理解できた。これに対して技術は「自然現象やその法則を利用して人類に役立つ機能を実現する行為」である。新技術は特許により文書化されるが、その伝承方法は現代の課題である。

 

(注2)この先は問い合わせて頂ければ個別に対応する。文章は1行だが、内容はかなり濃厚な技術である。弊社のコンサルティングにおける差別化ポイントである。弊社では弊社独自の問題解決法で科学的成果を踏まえ新しい技術を生み出せるようにコンサルティングを行う独自のスタイルです。新しい技術について科学的研究が必要な場合でも高分子からセラミックス材料まで対応いたします。技術の最適化はタグチメソッドを使用します。

 

(注3)

電子写真システムにおいて網点再現性は各種因子に左右される、と言われている。技術開発の現場ではタグチメソッドを使い最適化するわけだが、このとき制御因子として常識的に見えている因子が選ばれる。TRIZやUSITを使って考えても、あたりまえの因子が選ばれる。

 

当たり前の因子で最適化すれば商品は完成するが、いまやどこの会社でもタグチメソッドやTRIZを使用している。そこで、技術で差別化したり、自分たちの技術にイノベーションを起こすためには、弊社の問題解決法が有効です。

 

「妄想」でもそれが実現し、商品ができれば、そこに新しい科学のネタが生まれています。「開発をやってから研究せよ」これは、マネージャー時代に部下を指導していた時のポリシーです。半導体用高純度SiCの開発では、パイロットプラントを作ってから反応速度論の解析を行い学位を取得いたしました。

 

「妄想」で見えていた均一素反応を実現する異形横型プッシャー炉という発明を最初に特許出願し、それを用いたプラントを作り、「妄想」が現実となったので研究を行った。正しい仮説設定がなされ予備実験でその正しさが確認されれば「妄想」は「科学の仮説」となる。そこで研究を開始するのは研究者で、科学の仮説で機能を実現するのが技術者である。

 

「勘」と「経験」と「度胸」は技術者に必要な素養といった人がいるが、ヤマカンはダメである。クソドキョウもダメである。正しい科学的知識に裏付けられた「勘」と、科学的知識に対して確かな自信に裏付けられた「度胸」が必要で、技術者と職人ではKKDの中身に違いがある。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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