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2013.07/19 科学と技術(リアクティブブレンド7)

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のリアクティブブレンドで合成される有機無機ハイブリッド前駆体のロバストの高い技術が4日間で完成し、その顛末をゴム会社へ報告した。人事部所属で留学していたので、報告先は人事部長であった。

 

高純度SiCの開発については、社会現象となったセラミックスフィーバーと社長方針などを背景として会社の50周年記念論文その他で提案し続けてきた内容であり、人事部長も経緯をよくご存じで我が事のように喜んでくださった。研究所へも同様の報告を行ったが大きな温度差があった。たった4日間のデータなので信じて頂いていないことを理解できた。しかし、リアクティブブレンドについては、バケツを使用した合成実験で、10kg以上の前駆体製造もすでに成功していたのでスケールアップのリスクは無かった。

 

無機材質研究所で行った研究なので基本特許を無機材質研究所で出願するという条件について、承認も簡単に下りた。その後いろいろとあったが1ケ月後には社長の前でのプレゼンテーションとなり2億4000万円の先行投資が決まった。ファインセラミックス専用の研究所を建設することになり、3年の留学を1年半で切り上げることになった。

 

先行投資はパイロットプラントの設備導入ために大半が費やされた。SiC化の反応を行う独自に設計した異形横型プッシャー炉が最も高い買い物であった。設備設計については、研究データも満足に無い状況で大胆ではあったが、セラミックスフィーバーが吹き始めて3年経過した当時の日本には、マンガの説明から器用に図面を書き上げる設備メーカーが存在していた。すなわちセラミックスの反応から容易に生産技術へ展開できるレベルに日本のメーカーの技術が到達していたのである。

 

このようにSiC生産技術はすでに存在していたが、シリカ還元法の反応機構の研究は遅れていた。中間体としてSiOガスが必須かどうかの議論をした論文が出たばかりの状態であった。有機無機ハイブリッド前駆体ではSiOガスは生成していない。この前駆体を使用したシリカ還元法の反応機構に関する研究は、セラミックス科学の進歩のため必要であった。

 

また、この反応機構の研究は、前駆体の品質管理に展開できるので高純度SiC生産のためにも重要である。問題は2000℃まで短時間に昇温可能な熱天秤の開発にあった。世の中には1500℃まで昇温可能な熱天秤の技術は存在したが、2000℃まで計測可能な熱天秤は、高温度に耐える装置の材料設計からやらなければならなかった。

 

<明日へ続く>

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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