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2013.07/28 科学と技術(7)

科学とは現象を理解するための哲学、と言った人がいる。科学の目的は真理を追究することだ、ということはよく聞く。1883年に物理学者マッハは力学史を著すが、そこで本能的知識が現象の研究に先行している、と述べている。

 

現象の研究とは科学的研究のことで、科学が無くても本能的知識や経験で技術が進歩することをマッハは認めている。また、いつ、どこで、どのような仕方で科学の発展が始まったかという史実を調べることは困難だとも述べている。マッハ力学史を読むと、技術が発展した歴史の中で科学が生まれた様子を知ることができる。マッハは科学の生まれた時代の研究を検証しながら何が科学なのかを明らかにしてゆく。

 

面白いのはニュートン力学を批判し、ニュートンがニュートン力学を生み出す過程を非科学的とマッハは述べている。ニュートン力学は高校の物理で学ぶ科学の一分野でもある。しかしそれはマッハによれば非科学的に生み出された成果である。大学で改めて力学を科学として学び直すが、高校で非科学的な力学を教えていることを誰も指摘しない。これは一つの大切な知恵である。

 

会社の技術開発の現場で、非科学的方法を笑う人がよくいる。技術開発の現場は、理系の大卒以上の学歴の人が多いので皆科学のプロである。ゆえに非科学的手法を見ると批判する。批判はまだ良いが嘲笑する人までいる。

 

科学的手順は大切である。製品の品質管理でも統計学に基づいて行われる。しかし、技術開発の効率を上げたり、イノベーションを起こしたりするときには、この科学的方法が時には足かせになったりする。超高純度SiC新規合成法は、前駆体合成を開発した手順が非科学的であったため学会でひどい目に遭った。

 

また、山中博士は、ノーベル賞を受賞するまでヤマナカファクターを発見した実験を詳しく公開されなかった、とTVで紹介された。その番組で公開された、発見に至る実験の内容は、極めて非科学的方法であった。山中博士を見て自分の軽率さを反省した。

 

時としてイノベーションが非科学的方法から生み出されていることにもっと目を向けるべきである。技術開発では科学にとらわれる必要はなく、自由な発想で取り組むべきであろう。自由な発想が難しいので、科学に技術開発の方法を頼っている、というのが現状の姿ではないだろうか。TRIZやUSITはその時の便利なツールで、このツールを使えば科学的手順を「難しく」確実に行う事ができる。

 

これに対して弊社の研究開発必勝法プログラムでは、非科学的方法もとりいれている技術開発のための問題解決法である。技術開発でコーチングをうまく実施する方法も公開している。このコーチングは科学的方法に準拠していない。部下の発想を促すのに科学的方法論は不要である。機能実現のための真摯さがあれば良い。

カテゴリー : 一般

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