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2013.08/15 科学と技術(23)

技術開発を行うときに、いつでも科学的情報がすべて手に入るとは限らない。科学の時代の今日においても科学的に明らかにされたことだけで技術開発が可能な分野は限られる。

 

無機材料の固体物理は20世紀かなり科学的に進んだ分野である。有機材料科学の分野と無機材料科学の分野の技術開発について、32年間に両方を担当することができたのは幸運だった。有機材料科学例えば高分子科学の分野は、C-C結合でつながった材料の科学と捉えることが可能である。一方無機材料科学はC以外の様々な元素が織りなす材料科学と捉えることができる。

 

無機材料科学は、金属材料科学とセラミックス材料科学に分けられ、セラミックス材料科学は、金属材料科学以外の無機材料という分野である。例えば、ガラス材料はセラミックス材料科学に分類されるし、カーバイド系材料は主にセラミックス材料科学で取り扱う。この分類は科学の歴史の中で自然にできたものだ。その分類の歴史を見ると、かつて科学と技術2つの違いを科学者が意識していたように思われる。現代は有機無機ハイブリッドなどクロスオーバー材料の研究も盛んで、材料科学の垣根はなくなっている。

 

ところで金属材料科学は、純粋に金属だけを扱う風潮があるように見える。セラミックスフィーバーの時に東北大学の金属材料を研究されている先生にお話しを伺う機会があったが、金属材料工学については20世紀に研究のネタがなくなるのではないか、と言われていた。金属ガラスがその後生まれるのだが、これが最後の大きな研究と言われていた。その先生は、セラミックス材料工学の扱う範囲が広いにもかかわらず、研究者が少ない点やその他の批判を述べられていた。

 

その後大学の講座なども含め国立大学のリストラが行われ、大学の講座の看板から何を研究しているのか分からない時代になった。無機材料科学の一分野である無機固体物理については学問が完成した、と言われる研究者もいるぐらい進歩したようで無機固体物理を前面に出した講座はほとんど見られない。現在の半導体産業において日本が壊滅的状況に至っていることと関係しているように思われる。例えばCPUは、材料科学と言うよりも回路の設計技術が重要であり、科学よりも技術の比重が高い。

カテゴリー : 一般

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