活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2013.08/20 科学と技術(28)

パーコレーション転移について不変の真理として重要なことは、パーコレーション転移の閾値近傍で材料設計してはならない、という点である。

 

例えば絶縁体高分子と導電性微粒子を混合して10の9乗Ωcmから10の4乗Ωcmの領域の材料を閾値近傍の添加量で設計するときに、導電性の高いカーボンを使用すると材料設計が難しくなる(できないわけではない。安定に設計する方法はある。)。

 

それでは、この領域の材料を設計するにはどうしたらよいのか。それはパーコレーション転移のシミュレーションから解が出てくる。詳細は弊社に相談して頂きたいが、何も考えずに閾値近傍の添加量で混合すると材料の抵抗が、大きくばらつく。また仮に実験室で安定に目的の抵抗の材料ができたとしても量産段階で制御できなくなることもある。

 

半導体領域の材料設計でなくとも注意が必要な場合として、絶縁体材料を設計したいが、その材料が持っているある機能が必要なために導電性化合物の配合をしなければいけない、例えば難燃剤として添加したい材料が導電性化合物の場合である。

 

これは、10年以上前に発生したF社製のハードディスクが短期間で使用不能になった事故が有名である。原因はハードディスクのコントローラーが突然誤作動するようになったことだ。ハードディスクのコントローラーは樹脂パッケージのICで、難燃性の機能を付与するために赤燐粒子が添加されていた。

 

赤燐粒子の表面は一部加水分解していてリン酸を生成し導電性がある。そのためシリカ等で粒子の表面処理を行っている製品もある。教科書にも書いてある話である。しかし、実験室の評価では表面が導電性になっていても絶縁性を確保できていたので、そのまま生産に入ったようだ。

 

仮に実験室で安定に分散できる技術ができたとしても、パーコレーション転移の閾値近傍で微粒子を配合したならば、必ずばらつきが大きくなるという科学の真理を思い出さなければならない。閾値近傍より添加量が少なくても、成形段階で分散状態が変化し、樹脂表面に偏在してクラスターを形成することもある。

 

科学の真理は、時として新たな発見でひっくり返ることもあるが、科学の時代における技術開発では、まずそれを重視しなければならない。それを信じた上で、その真理に挑戦する技術開発を行うならば意味のある結果を期待できるが、真理を忘れて技術開発を行うと失敗する。このあたりは無謀な登山と冒険家の登山の違いに似ている。

 

カテゴリー : 一般

pagetop