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2013.09/04 科学と技術(43:アイデアを出すコツ1)

現代科学の観点からすれば、設計は取るに足らないものだが、工学の観点からは設計が全てである。設計とは、あらかじめ想定された目的を達成するために、各種の手段を意図的に適合させることであり、まさに工学の本質である、とは、エドウィン・T・レイトン・ジュニアの言葉である。

 

この工学の定義については、1828年イギリスの土木学会の憲章に「工学とは、自然界の動力源を人間の利用と利便のために支配する技である」と書かれている。また日本の特許法第二条第一項には「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」とある。これらの定義に科学的に証明されている、あるいは科学的に支持されているという要件が書かれていないことに注意すべきである。

 

すなわち技術は科学的に支持されていようがいまいが、自然法則を利用し機能を実現でき、人間の利用と利便のためそれらを制御できれば、それが技術なのである。科学的アイデアも非科学から誕生しているケースが多いにもかかわらず、この技術について科学的ではない方法や非科学的プロセスで実現された技術を認めない風潮があるのは残念である。

 

PPSと6ナイロンが相溶した材料を電子写真機に実用化した成果で、退職前学会の技術賞に推薦されたが、χが大きな組み合わせで相溶するわけがない、と言われ落選した。相溶しない組み合わせでも相溶させることが可能なプロセシングが存在し、そこに新しい科学の種が存在するにも関わらずアカデミアの支持が得られなかった。

 

落選はしたが、脆いPPSに6ナイロンを相溶した材料は、しなやかさという機能が付与され市場で5年以上トラブル無く活用されている。また、自宅の書斎のカラープリンターにもそのキーパーツは使用されており、普通紙でインクジェットよりも美しく絶好調のフルカラー印刷を実現している。「マジ、このカラー!」と言いたくなるほどである。技術の詳細を発表する機会を失い残念であるが、技術として成功している。

 

この新しい材料は、電子写真機のキーパーツとして設計し、また実用化した技術であり、技術を実現するための多数のアイデアも含め、科学的に研究して導かれた成果ではない。学会の技術賞とはこのような技術の成果についても受け入れ新しい科学の種を拾い上げる活動の一環であるはずである。

 

技術とは何か、という問いには多くの答があるかもしれない。しかし、科学的に明らかな現象を利用した技術であれば、特許としての新規性はやや低くなり、その内容によっては成立性まで無くなる場合がある。科学で説明できない「驚くべき」技術こそ新規性が最も高い。そんな技術開発を可能にするのが弊社の問題解決法であり、アイデアを出すコツも指導している。

 

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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