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2013.09/28 科学より先行する技術

ゾルをミセルとして用いたラテックス重合技術は科学よりも先行していた。科学の時代において科学で明らかになっていない現象でも技術で機能が実現され活用されている事例は多い。

 

例えば、フローリーハギンズの理論で否定される組み合わせのポリマーアロイは多数ある。コンパチビライザー無添加でポリオレフィンとポリスチレンを相溶させた例や、PPSと様々なナイロンを相溶させるプロセシング技術などはその一例である。

 

半導体用高純度SiCの前駆体について、反応条件を科学的に見つけるのは難しい。また30年以上前に実現した樹脂補強ゴムも、試行錯誤で発見された配合処方である。これら科学的ではない技術成果はなかなか世間から注目されない。もっとも試行錯誤で実現された技術は、科学的に解析した場合にブラックボックスとなるケースが多い。iPS細胞のヤマナカファクターもテレビでその発見手順が公開されるまでどのように発見されたのか誰も分からなかった。

 

あまり関心が持たれていないがゾルをミセルに用いたラテックス重合技術は、有機無機ハイブリッドを製造する簡便な方法である。超微粒子が高分子中で凝集しない状態を容易に製造可能で、応用範囲は広いはずだが学会発表を行っていないので、特許はあまり出願されていない。

 

すでに特許は公開されているがPPSとナイロン樹脂を相溶させるプロセシング技術は、ウトラッキーのEFMのような生産上の制約がなく、様々なポリマーアロイ創出に利用可能な技術である。おそらくこのプロセシング技術については関連する研究が今後報告される可能性がある。高分子自由討論会では2件研究報告がアカデミアからあった。

 

ポリオレフィンとポリスチレンを相溶したポリマーアロイではクロスニコルで暗くなるので位相差板に応用可能である。これはポリスチレンを合成した会社から特許が出ていた。

 

TRIZやUSITを導入する企業が多いように科学的方法が重視されている。確かに科学という思想は、20世紀の技術開発スピードを加速し多くの発明や発見に寄与してきた。しかし、失われた10年が20年となり、そろそろ新しいイノベーションが求められているところへ山中博士のノーベル賞受賞という話題が昨年あった。この受賞の意味するところは技術が科学を先行した点が重要で、ヤマナカファクターを見いだすのに非科学的方法を躊躇無く採用している。

 

科学は役にたつ思想である。しかし、それだけでは新しいイノベーションは難しく、有史以前から人間の営みとして行われてきた技術を今風にアレンジし日々の開発に活用することで、科学にとらわれすぎて見落としてきた新たな現象を発見できるのではないかと考えている。非科学的方法ではあるが、弊社の研究開発必勝法プログラムの目指すところである。

 

カテゴリー : 一般 高分子

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