活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2013.10/16 混練のノウハウ(3)

加硫ゴムの混練はバンバリーとロールで行う。ロール工程はたった二本のローラーが回転しているところで操作を行うだけだが、奥が深いプロセスである。また 危険度の高い工程でもある。ゆえにロール工程ではまず安全教育を徹底して行うことが肝要である。週に1回のKYTも含め丁寧に安全教育を行っていれば事故を防ぐことができる。混練操作はどの工程も危険だが、ロール工程の危険度は極めて高いので、これがロール工程で最も重要なノウハウである。

 

事故を目撃すると混練操作にもその影響が出る。自分の指をロールで挟んだことはないが、指が挟まれ、革手袋がノシイカのようになっているのを見た時には、しばらくロール作業を休んでいた。幸い指先が少しつぶれただけであったが、他人の指先でも自分のことのように思われるので不思議だ。そのくらいロール作業は危険で怖い作業であることをまず理解すること。完全自動ロール混練機というものがあれば便利で安全だが、未だロール混練機のロボットが稼働している工程を見たことがない。

 

初めてロール混練を行った時にその奥の深さを体感した。バンバリーで素練りされたゴムがロール上で均一になってゆく様子を眺めていると不思議な気分になる。ゴムの返しなどの技を繰り出さなくても回転しているロールに巻き付いたゴムが混練されて均一になってゆく様子がわかる。こわごわナイフ作業を行うのだが、それにより分散が改善される様子も目視で分かる。うまく混練できた、と思って加硫すると指導社員から渡された比較サンプルの物性に及ばない。

 

教えられたとおり行ったつもりでいた。しかし、素練りのゴムがロール上で美しくなるのを眺めていた時間は少し長かったかもしれない。またナイフ作業も恐怖心から回数が少なかったのかもしれない、などと反省して再度同一配合処方のゴムを練り始めた。

 

後で教えられたことだが混錬が大変難しい配合のゴムだったので、安定な品質を保つためには熟練工でも難しい操作が要求された。数時間の講習を受けた新入社員では品質を安定に混練できない配合処方をわざと課題として与えているのだからいじめに近いが、おかげで大変勉強になった。実験室で悪戦苦闘していると、先輩社員が親切にナイフの技を幾つか教えてくれた。

 

声が大きくがさつではあるが親切な先輩社員や、細身で柔らかい物腰の先輩社員など他部署であるにもかかわらず、かわるがわる覗きに来て、ああだこうだと指導してくださった。そのおかげで5日ほど練習して安定な品質を実現できる ようになった。

 

このように加硫ゴムのロール混練において、配合処方で練条件が変わる点は他の混練プロセスと同じだが、混練条件として「技」が大きく影響する点は二軸混練機と異なる。このことは教科書に書かれていない。特にナイフの使い方が問題で、現場に行くと作業性を改善するために工夫を重ねている状況を職人が自分専用のナイフを持っていることなどからうかがい知ることになる。

 

加硫ゴムの世界がブラックボックス化されるのは、混練の段階から属人的な「技」の因子が多く存在するからで科学だけでは実現できない世界である。 男女雇用機会均等法の精神に反するかも知れないが、ロール工程は「男の世界」だと思う。女性には危険な工程だ。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop