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2013.11/11 動的加硫

ゴム会社で樹脂補強ゴムを開発していた時に、樹脂会社では動的加硫という技術が開発されていた。二軸混練機で樹脂とゴムを混合し、ゴム相を混練しながら加硫する技術である。ゴム相は島で樹脂相が海のため、熱可塑性エラストマー(TPE)になる。面白いのは類似組成を、二軸混練機ではなくバンバリーとロールで混練したときに、物性が大きく異なるゴムとなる。

 

プロセスが異なるので加硫剤や開始剤を変更しなければならないが、圧縮永久歪みや繰り返し引張試験における耐久性などの機械特性が二軸混練機で製造したTPEでは劣る。電子顕微鏡で高次構造を見ると海島構造は同じだがわずかに島のサイズが異なって見える。おそらく組成によりこの差異と物性との関係は異なるだろうが、当時の実験結果ではこのようであり、二軸混練機を用いた動的加硫の技術の可能性について否定的な印象を持った。

 

しかし、生産性は大きく異なる。またバンバリーとロール混練において加硫は成形の時に行う。混練プロセスだけでなく成形プロセスも時間がかかる。学会でTPEの報告を聞くと、耐久試験結果などのデータは出てこない。弾性率や引張試験の結果ぐらいである。

 

樹脂補強ゴムとして開発された組成の加硫剤を変更すると物性が変わる。ゆえに二軸混練機で同一の樹脂とゴムを用いてTPEを製造しても物性の異なる材料になることは予想できる。しかし、弾性率などの物性よりも耐久試験結果が混練プロセスの違いで大きく異なる点は企業がデータを公開しない限り学会で議論されない。

 

ゴム会社でTPEを開発したのは幸運であった。プロセスの影響を肌で知ることができたからである。二軸混練機はL/Dで議論されるが、バンバリーとロール混練プロセスを二軸混練機で実現することは不可能である。例えばPC/ABSのような複雑な組成の樹脂をロールで混練してみると二軸混練では得られないきめ細かな高次構造となる。ただし、樹脂ではゴムほど物性がプロセスから影響を受けにくいのでバッチプロセスで行うありがたみを少ないと感じてしまう。

カテゴリー : 高分子

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