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2014.01/04 混練プロセス

混練は剪断流動と伸張流動で進行する。餅つきでも剪断流動と伸張流動が発生している。最初の段階は杵で餅米をつぶしながら粘りけを出す剪断流動だが、粘り気がでるとつき始める。この餅つきプロセスでは、一人の返し手が餅を折り曲げながらつき手がついてゆく。

 

杵が振り下ろされ餅に圧力が加わった瞬間は剪断流動と伸張流動が働く。その後返し手で餅を折りたたみ、そこへまた杵が振り下ろされる。あたかも偏芯二重円筒で発生するカオス混合のようなプロセスで餅つきは混練を行っている。餅つきで重要な点は剪断流動と伸張流動が高圧で同時に発生している点である。

 

混練が進む過程は何か色素を餅に添加すると確認することができる。例えば、ひな祭りに飾る紅餅の場合、食紅が拡散してゆく様子は不思議な光景である。数度つくだけで全体が赤くなる。子供の頃、年に3回餅つきをやっていた。2月と4月、12月である。2月の餅つきは混練に興味を持つきっかけとなる行事だった。また、餅つきの行事が無くなり、まずい餅の秘密を米屋の友人が見せてくれたのは好奇心を育てるのに十分な役割をした。

 

しかし、餅つき以外にも不思議な現象は身の回りにたくさんあった。いつのまにか餅つきで体験した新鮮な好奇心を忘れていたが、ゴムのロール混練で悪戦苦闘していたときに突然思い出した。それは指導社員がカオス混合を教えてくれたときである。指導社員は少し個性的な物理屋であったが、プロセシングの勘所をよく知っていた。

 

混練をモデル化するときの問題は実際の現象が極めて複雑なのにそれを単純化することだ、と不思議なことを言われたが、単純なロール混練でもそのモデル化は困難だろう、と説明を受け、早い話が混練プロセスをモデル化して解くことは難しい、と言っているだけと理解できた。ロール混練を観察すると剪断流動と伸張流動に分けてモデル化することができないことに気がつく。

 

ゴム種と混練条件でその現象が変化しているからだ。さらに混練が進行するとその比率も変化してゆく。ゴム技術を学んだ後、ポリウレタンの難燃化技術開発を経験したが、この技術ではRIMを始め低粘度の液体を混合し、反応させる「技」の難しさを知った。その後高純度SiCを発明し、セラミックス材料を扱うようになったが、粉体混合の科学が一番分かりやすかった。混練という混合プロセスは極めて難易度の高い技術で未だに科学的に解明されていない。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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