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2014.01/20 高純度SiC(3)

高分子に無機の成分をナノ分散すると高分子の難燃性能を向上することができる。ホウ酸エステルとリン酸エステルをポリウレタンに分散し合成された軟質ポリウレタンフォームは、燃焼させると燃焼面でガラスが生成し火が消える。

 

ホウ酸もリン酸も難燃剤として知られていたので、難燃性の無いシリカを使って同様の難燃化技術ができないか検討していた。たまたまフェノール樹脂発泡体で天井材を開発する、というテーマを担当し、フェノール樹脂をポリシリケートで変性する技術を検討した。

 

ケイ酸ソーダから抽出したケイ酸ポリマーをフェノール樹脂に均一分散し、それを発泡させたところ極めて防火性の高いフェノール樹脂発泡体ができた。しかしケイ酸ソーダの抽出にジオキサンとTHFの混合溶媒を使用するのでコストと環境問題が実用化の障害となった。

 

シリカのドメインがどのくらいのサイズであると難燃性の機能を発揮するのか調べたところ、幸いなことにエアロゾルレベルでも十分な難燃性能が得られた。ただし特殊な分散技術が必要でプロセス開発が重要な技術開発テーマとなった。

 

この技術は実用化されシリカ変性フェノール樹脂天井材は某建築会社に納入されたが、5円/m2のコストダウンを議論し、開発したにもかかわらず搭載できなかった技術があり、本欄では書きにくい後味の悪いテーマであった。

 

もともと腐ることは性分に合わないので仕事を面白くしたい、と考え、シリカ変性フェノール樹脂技術についていろいろと実験を行った。成果を後工程に移管し半年後には無機材質研究所への留学が決まっている、という状況だったので、実験室の後片付けと報告書を書く程度の仕事が半年間の業務という状況であった。

 

廃棄処理しなければいけない様々なメーカーのフェノール樹脂を種々の方法でシリカ変性し「ゴミ」を製造した。当時液体の可燃物を廃棄するにはお金がかかったが、樹脂であれば一般ゴミとして廃棄できたので、液状のフェノール樹脂をひたすら固体のゴミに変性した。

 

ただその変性方法として様々なケイ酸ユニットを持つポリマーと混合する方法を用いて、その変化を調べながら捨てた。廃棄物処理というつまらない仕事が楽しく面白い仕事に変わった。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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