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2014.01/22 高純度SiC(5)

フェノール樹脂とポリエチルシリケートを用いた高純度SiCの前駆体合成法は、第三者から見ると簡単に見える。しかし、ノウハウの塊で同じような反応物ができても良好な前駆体が合成されたわけではない。それでも1600℃以上で熱処理すれば高純度SiCとなり、問題が無いように見える。しかし、良好な前駆体を用いると粒度や結晶化度まで揃った高純度SiC粉末になる。

 

この技術を20年前学位論文にまとめたが、前駆体のノウハウについて記載していない。良好な前駆体ができたところから論文は始まっている。良好な前駆体を用いると均一素反応の取り扱いができ、SiC化の反応解析をできるのである。すなわち良好な前駆体とは、フェノール樹脂とポリエチルシリケートが分子レベルで均一に合成され、1000℃で熱処理を行ったときには、シリカとカーボンが分子レベルで化学量論的に均一に混合された状態を作り出す前駆体である。

 

この前駆体ができるまで、シリカ還元法によるSiC化の反応機構ではSiOの関与が示されていたが、良好な前駆体ではSiOを経由せず、直接SiC化まで進行することが解明された。すなわち、SiCの結晶成長はシリカを核として生じる。そしてSiC化の反応は拡散律速過程で進み、反応しながら結晶成長が進む。これはレーリー法でSiCウェハーを製造するときと同様の機構である。昇華法で結晶成長させるときには核がシリカと異なるだけである。

 

この研究成果を利用すると前駆体の品質管理が可能となる。すなわち良好な前駆体の場合にはSiC化の反応がアブラミの式で示される重量減少のプロファイルを示すが、うまく合成されなかった前駆体の場合には、従来のシリカ還元法の反応機構で反応が進行する重量減少を示す。

 

不良品ではどこが問題になるのか。それは不良品の状態によるが、1.副生成物としてウィスカーが生成、2.粒度分布が不均一、3.不純物酸素が残るなどの問題がある。このなかで3は、SiCウェハーの原料として使用するときに問題となる。

 

すでに基本特許の権利が無くなった技術であるが、多くのノウハウのためこの技術を実施している企業は少ない。特許情報によると某セメント会社はアルコール溶媒を用いて前駆体合成を行っているようだが、無溶媒で行う技術を開発できなかった可能性がある。

 

溶媒を使用すると経済性が悪くなる。本前駆体の原料価格は量産レベルで驚くべき低価格となる。ポリエチルシリケートは高純度であればゴミのシリケートでよく、フェノール樹脂もその原料は100円以下である。SiCウェハーの原料となる高純度SiCを、原料調達手段と合成ノウハウさえあれば、驚くべき低価格で合成できる。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料

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