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2014.02/06 ケミカルアタック(5)

ケミカルアタック(4)では実務の具体的手順を示したので「樹脂の破壊」について簡単に説明する。

 

ゴムや樹脂の破壊機構については諸説がある。代表的な破壊の様子を文章で書くと

1.引張応力に対して垂直にクラックが発生して破壊に至る。

2.あるいはクラックが現れる前にクレイズがいっぱい発生して破壊に至る。

3.延性破壊。

 

2から1に進む、と考えて破壊機構は2つ程度と考える人もいる。クレイズは屈折率が元の材料から変化しているので白っぽく見える。あるいはミクロンオーダーの大きさなので光の乱反射で「白トビ」のように見える。クラックの前駆体がクレイズと考えられる。表面にキズがあったり、ボイドがあったりするといきなりクラックが発生することがある。

 

ところで剪断降伏は最大引張方向に対して一定の角度を有する最大の応力の方向(剪断力の方向)に発生するが、この条件下では塑性変形が大きくなり、上記3に至る。以上がケミカル物質が存在しないときの材料の破壊の概略である。

 

ケミカル物質が存在するとどうなるか。

たとえば有機溶剤が存在したときにそれが樹脂中に浸透拡散する場合を考える。このケースではSPやχパラメータが重要視される。樹脂に有機溶剤が拡散すると可塑化効果が観察される。クレイズをよく観察するとフィブリルがたくさん観察されるが、これは高分子の束が滑って抜けている様子で、可塑化効果が進むとこれが生じやすくなる。すなわちクレイズが発生しやすくなる。

 

また、有機溶剤を樹脂が含むと分子運動しやすくなり、すなわちTgが下がり、容易に塑性流動しやすくなってクレイズが発生する、とも説明できる。いずれにせよケミカル物質が可塑剤として働き、樹脂の強度を低下させる現象である。

 

クレイズ発生をフィブリル表面のエネルギーに関連ずける考え方もある。こちらはクレイズ発生臨界歪みを定義し、破壊力学の観点で材料の破壊機構をSPやχパラメーターと結びつけて議論する時に便利である。

 

いずれにせよ、破壊原因となるクレイズ発生についてSPあるいはχパラメータ-が関係していることになるので、ケミカルアタックの問題は、科学的視点からは、SPやχパラメーターに着目すれば防ぐことができる、という結論に至る。しかし、これは現象を狭く捉えた結論で、実際のデータには、SPやχパラメーターと無関係の油と樹脂の組み合わせでケミカルアタックが起きている事例も報告されているから、実務の対応が重要になる。

 

ケミカルアタックの問題が難しいのは高分子のクリープとも関わっているからで、時間のファクターが大きく影響する。科学的にモデルケースを解くことができても、それを一般化して実務にとり込む手続きはしないほうが賢明である。あくまで一つのケースの事例に留めるべきで、科学的に問題解決する以外に実務的な対応が再発防止に重要である。

 

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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