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2014.03/10 古くて新しいセルロース(4)

紙の発明は105年とされてきたが、それより250年前にも紙があった、というのが定説である。紙は科学が無い時代に技術だけで発明された情報記録媒体である。科学が無くてもこのような優れた材料を生み出すことができる点に着目し、未来技術へ展開するサイト(www.miragiken.com)を運営しています。

 

ところで、紙の定義は、主として植物体から繊維を取り出して、これを水の中に分散させ、金網や簾で水をこしわけて、薄く平らに絡み合わせて乾燥させたものとされたが、JISではプラスチックの表面を紙のように筆記具で記録可能な形態に変性したものまで紙に入れている。

 

ここでは50%以上のセルロースを含む紙だけをとりあげるが、それでも最近様々な紙が登場している。これらの紙の大半は、セルロースが含まれるパルプと他の材料とのハイブリッドである。

 

例えば、写真の印画紙や高級印刷物、食品容器に使用されるコート紙は、セルロース繊維で作られた紙に樹脂を積層したものである。またインクジェットプリンターで紙に印字するとコクリングが発生するので、その問題を解決するために、ラテックスと複合化したインクジェット専用紙も存在する。

 

また、有機材料であるセルロースと無機材料とを複合化させた有機無機ハイブリッドペーパーも実用化されている。例えば、折り紙で作ったイメージの焼き物を製作するために使用されるセラミックペーパーや、お祝い事に使用される水引に、セルロースと無機材料との複合化により発水性をもたせた超越紙水引と呼ばれる製品も登場している。

 

 

車愛好家に広く知られている“ボール紙ボディーの車”トラバントは、1958年から1991年まで長きにわたり、モデルチェンジもしないで発売された東ドイツの車だが、これは品質が悪いために揶揄された表現で、実際にはセルロース強化プラスチックであるFRPが使用されていた。

 

ちなみに、日本における産業用のゴミの分類では、セルロースからできているパルプが50%以上含まれていれば紙として扱われるので、トラバントの環境技術的先進性を評価すべきかもしれない。

 

約40年ほど前に、環境技術の一手段として古紙のリサイクル性をあげる目的で、混練によるパルプ樹脂複合紙が研究された。10年ほど前には、大阪の町工場で、この材料を用いたゴルフ用品が開発された、とニュースで報じられた。

 

この材料は生分解性を備えており、マナーの悪いゴルファーがティーの形状でゴルフ場に捨てていっても、1年ほどでその形が無くなる、とニュースでは報じていた。しかし、このニュースはいささか怪しく、なぜならばセルロースは多糖類なので土中のバクテリアにより分解しても、複合化に用いた石油由来の樹脂は残るはずである。100%完全な生分解性樹脂ではないが、形状が無くなればゴルファーのポイ捨ての罪悪感は少し救われるのかもしれない。

 

混練によるパルプ樹脂複合材料は、完全な生分解性樹脂ではない、という問題以外に、パルプに含まれるセルロースの水酸基には複雑な構造のアルデヒド類が結合しているので、これが混練時に分解し異臭を放つという難問がある。当然ながら製品にもその異臭は残る。

 

しかしこの異臭の問題については、混練プロセスにおける厳密な温度管理と樹脂の配合を工夫すれば解決できる。その技術で製造されたポリエチレンとパルプの複合材料は、ポリスチレンと同等の弾性率を有し、繊維形状のフィラーの配合された複合材料ゆえに脆さはポリスチレンよりも改善されるという特徴をもつ。フィルム状に押出成形を行えば、記録メディアとして使用可能である。

 

 

紙はセルロースの主要な用途だけでなく、プロセスから材料物性までセルロースの性質をうまく活用した製品と見ることができる。様々な紙の技術が登場しても、歴史のある薄く平らにパルプを絡み合わせて乾燥させた紙は、セルロース分野で優れた商品の位置を占める。

 

カテゴリー : 一般 連載 高分子

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