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2014.04/04 樹脂の熱膨張あるいは熱収縮(1)

材料の熱膨張あるいは熱収縮は、熱機械分析装置(TMA)で試験を行う。セラミックスやガラス、金属については昔から低熱膨張材料というのは重要な研究テーマであった。理由はこれらの材料が800℃以上の高温度で加工され、室温の環境条件で使用するケースがあり熱歪みが力学物性に大きく影響を与えるためである。

 

また無機材料ではガラスを除き結晶が分散した構造となり、結晶が異方性の場合にはその界面に大きな熱歪みを抱え靱性が低下する。原料の微細化やその管理技術が進んでもお茶碗などの陶器が割れやすいのはそのためである。

 

さて、高分子材料の場合には加工温度と使用環境との温度差はせいぜい300℃未満であるのでこのような熱歪みの影響は小さくなるが、概して線膨張率が大きいのでその影響は存在する。さらに微粒子分散系であればクラスター形成がその影響を大きくする。

 

一般に熱歪みを除去するためにアニールが行われる。50年前瀬戸物は割れやすいから一度100℃のお湯で一日処理して使用すると良い(注)、と母から教えられたが、これもアニール処理である。高分子ではTgから5-10℃低い温度でアニールを行うと効果的である、と言われている。

 

高温度短時間処理、という裏技もあるが、この裏技とTg以下のアニールでは、アニール後の高分子の高次構造に違いが出る。以下はすべてTg以下のアニールを前提に話を進める。

 

樹脂のアニールで成形時の熱歪みは緩和されるが、微粒子分散系では十分にアニール効果が現れないことが多い。理由はクラスターの形成状態による歪みまで除去できないからだ。このクラスターの形成状態は、コンパウンドの製造方法と成型加工プロセスの影響を受ける。

 

樹脂のコンパウンディングでは二軸混練機が使用される場合が多く、微粒子分散系は不完全な分散状態でコンパウンドとして提供されている。どの程度不完全かは、3時間以上混練したコンパウンドと比較すれば理解できる。(続く)

 

(注)昔は各家庭に火鉢や練炭のコンロがあり、そこで終日加熱する作業ができた。今ではエネルギーコストがお茶碗の値段よりも高いのであまり行われなくなったが。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

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